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第17話 目覚ましは元気な声で、早朝に
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「おっはよ~クリア! 朝から超元気なヒカリちゃんが特別に君を起こしに来てあげたわよ~!」
現在時刻、朝の六時。
クリアがいつも目を覚ます時間より、三十分は早い時間だ。
そんな時間に突如としてクリアの部屋に——以前クリアが渡した合鍵を使って——現れたヒカリは、クリアの寝ているベッドのかけ布団を大声と同時に剥ぎ取った。
「ん……おはようヒカリ。今日も朝から元気だね……」
ヒカリと対照的に眠そうにクリアは来ることがわかっていたかのように挨拶を返した。
……しかし、ヒカリはクリアの挨拶に反応しない。
不思議に思ったのかクリアがヒカリに視線を向ければ、彼女は手に掛け布団を持ったまま固まっていた。
「んぅ……なんですかぁ? こんな朝早くから~……」
「あ、おはようミヤ。もう少し寝ててもいいよ?」
ヒカリが恐らく固まることになった原因である、薄ピンクの寝巻きに身を包みクリアにぴったりとくっついて寝ていたミヤも、ヒカリの大きな声で目が覚めたようだ。
「私も起きます~」
クリアの言葉にまだ眠そうに目を擦りながらあくびをしつつ、上体を起こして「くぅ」と可愛らしく伸びをしたミヤは着替えを取ろうとベッドから降り、ハンガーラックへ向かっていく。
「ヒカリ、ボクはシャワーを浴びて着替えてくるから。もしよかったら、ミヤの着替えを手伝ってあげてくれないかな?」
確かに、ハンガーラックに掛かっている今日ミヤが着るために持ってきていた洋服は、組織の仕事としての外回り用のもので、フリルをたくさん誂えた黒を基準としたドレスのようなデザインのワンピースであり凝った作りをしていた。
ミヤが一人で着るのは大変なので、本当はクリアが手伝うつもりだったが。
丁度良いタイミングで来てくれたヒカリに頼むと、彼女はぎこちなく「……わかった」と返事をした。
そんなヒカリに「ありがとう」と伝えつつ、クリアは自分の着替えを持って部屋を出て行った。
「で、朝のあの状況についてご説明いただけるかしら? クリアさん?」
「そんな怖い顔で詰め寄らなくても……」
——相変わらずテンションが上がると言葉遣いが変になるのは面白いところだ。
とクリアは思うが流石に言葉にはできなかった。
あの後、シャワーを浴びて部屋に戻ると、着替えも髪の手入れも仕上がったミヤと、何故かベッドメイキングに勤しむヒカリの姿がクリアの目に入った。
その光景にクリアは特に気にせず——気にしないようにしたと言ったほうが正しいかもしれない——普段より早い朝食を三人で取り、ミヤを彼女の付き人の元へ送り届けた。
そして、ヒカリと待機室——任務まで時間を持て余した人々が集まる部屋で、主に談話室と化している——に向かっている途中で今の状況に到るのだ。
ヒカリは通路の途中でクリアの顔の横に向かって壁に手を付き、朝の状況説明を求めてきたのである。
「なんでクリアの部屋でミヤちゃんが寝てたのかって聞いてるんですけど~?」
更にずいっと顔を近付けてきたヒカリに、クリアはたじろいだ。
ヒカリは興奮気味で気付いていないかも知れないが、二人の顔の距離は吐息がかかるぐらいまで近くなってしまっている。
いくら仲が良いとはいえ、クリアだって健全な男性である。
今のこの状況に、自然と顔が紅潮してしまうのは仕方がない、むしろ普通の反応だとクリアは思いたかった。
「と、とりあえず落ち着いてよ! 事情があるんだ!」
「む~、事情~?」
クリアの言葉に耳を傾けるため、「仕方ない」といった感じでヒカリは顔の距離を遠ざけた。
……相変わらず手はそのままの位置だったが。
「実は先日——」
クリアは、ルーツの事はぼかしながら、先日のミヤのと出来事を手短に話した。
そして、その時の恐怖を思い出して眠れないので一緒に寝て欲しいと目尻に涙を溜めて言うミヤの願いを誰が断れようか。
その願いを聞いた結果が今朝に繋がるのだ。
話を進めるにつれ、ヒカリの表情はどんどん曇っていき、説明が終わる頃には壁についていた手も下ろされていた。
「そっか、そんなことが……。ミヤちゃん、心に傷が残らないといいね」
ヒカリもまた、ミヤへの呼称でも分かるように仲が良い。
なので、まるで姉の様にミヤの事を気にかけているヒカリにとって心配になるのは当然のことだった。
「うん、そうだね。……それにしても、なんでヒカリはそんなに取り乱したりしたの?」
ヒカリだって、クリアとミヤが兄妹の様に仲がいいのは知っているはず——。
幼い頃から仲のいい妹のような存在と一緒に寝るのは、そんなに変なことなのだろうか? とクリアは首を傾げた。
「あ、え~っと、それは……あははは~」
ものすごくわかりやすく笑って誤魔化したヒカリは、何故だか少しだけ顔が赤くなっていた。
「と、とりあえず過ぎたことはもういいじゃない! それより今日の——」
ヒカリがこれまたわかりやすく話題をすり替えようとした時だった。
ヒカリの言葉を遮るように、組織の連絡用端末の呼び出し音が廊下に響いた。
音の発信源はヒカリの制服のポケットからだ。
ヒカリは「お?」と表情を変えながら端末を取り出し通話に出た。
——着信音からして、ヒカリの上司の人だ。
そうクリアは推測する。
何故わかったかといえば、クリアが以前ヒカリと何気ない会話をしている時に、着信相手によって着信音をこまめに変えている——ちなみに最後までクリアからの着信音は教えてくれなかった——と言う話を聴いたことがあったからだ。
「はい、はい? ……え~、そんなぁ! うぅ、……わかりましたぁ」
上司との会話が進むにつれ、段々と暗くなっていくヒカリの表情からはあまり良い内容の話ではなかったらしい——。
現在時刻、朝の六時。
クリアがいつも目を覚ます時間より、三十分は早い時間だ。
そんな時間に突如としてクリアの部屋に——以前クリアが渡した合鍵を使って——現れたヒカリは、クリアの寝ているベッドのかけ布団を大声と同時に剥ぎ取った。
「ん……おはようヒカリ。今日も朝から元気だね……」
ヒカリと対照的に眠そうにクリアは来ることがわかっていたかのように挨拶を返した。
……しかし、ヒカリはクリアの挨拶に反応しない。
不思議に思ったのかクリアがヒカリに視線を向ければ、彼女は手に掛け布団を持ったまま固まっていた。
「んぅ……なんですかぁ? こんな朝早くから~……」
「あ、おはようミヤ。もう少し寝ててもいいよ?」
ヒカリが恐らく固まることになった原因である、薄ピンクの寝巻きに身を包みクリアにぴったりとくっついて寝ていたミヤも、ヒカリの大きな声で目が覚めたようだ。
「私も起きます~」
クリアの言葉にまだ眠そうに目を擦りながらあくびをしつつ、上体を起こして「くぅ」と可愛らしく伸びをしたミヤは着替えを取ろうとベッドから降り、ハンガーラックへ向かっていく。
「ヒカリ、ボクはシャワーを浴びて着替えてくるから。もしよかったら、ミヤの着替えを手伝ってあげてくれないかな?」
確かに、ハンガーラックに掛かっている今日ミヤが着るために持ってきていた洋服は、組織の仕事としての外回り用のもので、フリルをたくさん誂えた黒を基準としたドレスのようなデザインのワンピースであり凝った作りをしていた。
ミヤが一人で着るのは大変なので、本当はクリアが手伝うつもりだったが。
丁度良いタイミングで来てくれたヒカリに頼むと、彼女はぎこちなく「……わかった」と返事をした。
そんなヒカリに「ありがとう」と伝えつつ、クリアは自分の着替えを持って部屋を出て行った。
「で、朝のあの状況についてご説明いただけるかしら? クリアさん?」
「そんな怖い顔で詰め寄らなくても……」
——相変わらずテンションが上がると言葉遣いが変になるのは面白いところだ。
とクリアは思うが流石に言葉にはできなかった。
あの後、シャワーを浴びて部屋に戻ると、着替えも髪の手入れも仕上がったミヤと、何故かベッドメイキングに勤しむヒカリの姿がクリアの目に入った。
その光景にクリアは特に気にせず——気にしないようにしたと言ったほうが正しいかもしれない——普段より早い朝食を三人で取り、ミヤを彼女の付き人の元へ送り届けた。
そして、ヒカリと待機室——任務まで時間を持て余した人々が集まる部屋で、主に談話室と化している——に向かっている途中で今の状況に到るのだ。
ヒカリは通路の途中でクリアの顔の横に向かって壁に手を付き、朝の状況説明を求めてきたのである。
「なんでクリアの部屋でミヤちゃんが寝てたのかって聞いてるんですけど~?」
更にずいっと顔を近付けてきたヒカリに、クリアはたじろいだ。
ヒカリは興奮気味で気付いていないかも知れないが、二人の顔の距離は吐息がかかるぐらいまで近くなってしまっている。
いくら仲が良いとはいえ、クリアだって健全な男性である。
今のこの状況に、自然と顔が紅潮してしまうのは仕方がない、むしろ普通の反応だとクリアは思いたかった。
「と、とりあえず落ち着いてよ! 事情があるんだ!」
「む~、事情~?」
クリアの言葉に耳を傾けるため、「仕方ない」といった感じでヒカリは顔の距離を遠ざけた。
……相変わらず手はそのままの位置だったが。
「実は先日——」
クリアは、ルーツの事はぼかしながら、先日のミヤのと出来事を手短に話した。
そして、その時の恐怖を思い出して眠れないので一緒に寝て欲しいと目尻に涙を溜めて言うミヤの願いを誰が断れようか。
その願いを聞いた結果が今朝に繋がるのだ。
話を進めるにつれ、ヒカリの表情はどんどん曇っていき、説明が終わる頃には壁についていた手も下ろされていた。
「そっか、そんなことが……。ミヤちゃん、心に傷が残らないといいね」
ヒカリもまた、ミヤへの呼称でも分かるように仲が良い。
なので、まるで姉の様にミヤの事を気にかけているヒカリにとって心配になるのは当然のことだった。
「うん、そうだね。……それにしても、なんでヒカリはそんなに取り乱したりしたの?」
ヒカリだって、クリアとミヤが兄妹の様に仲がいいのは知っているはず——。
幼い頃から仲のいい妹のような存在と一緒に寝るのは、そんなに変なことなのだろうか? とクリアは首を傾げた。
「あ、え~っと、それは……あははは~」
ものすごくわかりやすく笑って誤魔化したヒカリは、何故だか少しだけ顔が赤くなっていた。
「と、とりあえず過ぎたことはもういいじゃない! それより今日の——」
ヒカリがこれまたわかりやすく話題をすり替えようとした時だった。
ヒカリの言葉を遮るように、組織の連絡用端末の呼び出し音が廊下に響いた。
音の発信源はヒカリの制服のポケットからだ。
ヒカリは「お?」と表情を変えながら端末を取り出し通話に出た。
——着信音からして、ヒカリの上司の人だ。
そうクリアは推測する。
何故わかったかといえば、クリアが以前ヒカリと何気ない会話をしている時に、着信相手によって着信音をこまめに変えている——ちなみに最後までクリアからの着信音は教えてくれなかった——と言う話を聴いたことがあったからだ。
「はい、はい? ……え~、そんなぁ! うぅ、……わかりましたぁ」
上司との会話が進むにつれ、段々と暗くなっていくヒカリの表情からはあまり良い内容の話ではなかったらしい——。
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