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第39話 光
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クリアがミヤを含め捕まっている被害者の人々を解放するために荷車の中を見渡せば、相変わらずヒカリ以外の人々は意識が無いようだった。
……先程のヒカリとのやりとりで二人ともかなり大きな声で話していたにも関わらずに、だ。
——……まいったな。一人一人外に出して枷を外していたらとんでもなく時間がかかってしまう……。
この荷車の出入り口は人が出入りするのによくて二人同時が限界の広さしか無い。
その上、例え外に連れ出して枷を外しても、意識が無い以上、外し終えた者をもう一度荷車の中に戻すか石路の上に寝かせておくことになってしまう。
かと言って、全員を【不可視疑の一部】でまとめて抱えながらこの薄暗い中それぞれの枷を解錠できるかと言われれば……今のクリアには不可能な芸当だ。
しかし、あまり悩んではいられない。
とにかく、レッドへの追手を王国騎士団をグリーンが足止めしてくれている今のうちに全てを解錠し、荷車ごとヒカリ達と共にここを離れたいと言うのがクリアの本音だ。
【どこからでもドア】で彼女達被害者をとりあえず移動させることもクリアは考えたが、当初の目的であるあの四人に枷をかけるという事が実行できないため選択肢から無くす他なかった。
——とりあえずできることをやるしか無い。
そう考えたクリアは、ミヤを出来るだけ出入り口の近くに移動させるため——クリアの中で、当然この中で優先すべきは他の女性に申し訳ないとは思いながらもミヤだったからだ——近くに寄ろうとした時だった。
突如、薄暗い荷車の中は光で満たされて、一目で内部の状況がわかるようになったのだ。
光属性の術式である、【照明球】だ。
強烈な光の球を空中に浮かべることで、かなりの広範囲を照らすことができる少々難易度が高い術式。
この状況でこの術式を使用できるのは、——例え彼女のキャスティングできる属性をクリアが知らなかったとしても——ただ一人。
「……ヒカリ」
【照明球】を術式名無しで行使した彼女の名をクリアは振り向かずに呼んだ。
……いや、今のクリアは、ヒカリの反応が怖くて振り向けなかったと言った方が正しいのかもしれない。
それぐらい、クリアはヒカリに対して負い目を感じていた。
ずっと仲の良かった人を裏切ったような気持ちが、クリアの心に重石のようにのしかかる。
しかし、そんなクリアにヒカリはいつも通り……とはいかずとも、臆さずに言葉をかける。
「クリア……『ごめん』じゃないよ。
……あのね、私、クリアが色々私に隠し事をしてるのは本当になんとなくだったけどわかってたよ。ほら、自分で言うのもあれだけど、私ってあなたに対しての勘が結構鋭いじゃない?
それでも言わないのは、それが私のためを思って言わないでくれてると思ってたの。
だから、クリアがどんな【力】を秘めていても、もし隠している事情を話してくれても驚かないようにしようって決めてたの。
だから言いたく無い事を聞いて傷つけちゃったなら、私の方こそ『ごめん』だよ。
……これからも、言いたく無い事、隠していたい事について私は何も聞かないようにする。言わなくても全然いい!
だから、……お願いだから私の事をもっと信じて欲しいの……っ‼︎」
ヒカリの様々な感情が入り混じった、しかしはっきりと思いを伝えたい意志を乗せた言葉は、とても長く。
とにかくクリアに自分の気持ちを伝えようと、言葉を紡いだのだろう。
そんなヒカリの言葉は、すっとクリアの心にのしかかっていた罪悪感を取り払うかのようにすっと自分の心に染み込んだようにクリアは感じた。
クリアが懸命なヒカリの言葉に応えるように振り向くと、そこには悲しそうで、それでいて凜とした表情を浮かべたヒカリがじっとクリアを見つめて立っていた。
——ボクは何をしているんだ? ボクはヒカリの何を見てきたんだ?
この子はいつだってボクなんかの事を思ってくれていて、そんなヒカリに笑顔でいて欲しいから今まで組織の裏側を隠してきたんだろう?
この力のことをヒカリに知られて怖がられて距離を置かれるのが怖かっただけじゃ無いのか? ……ふざけるな!
ヒカリがそんな子じゃないって知ってるくせに!
ヒカリを信じられると思ったからあの日の事を含めて自分のことを話したんだろ⁉︎ だったらちゃんと向き合って信じなよ、ヒカリの事を!
クリアは長い葛藤の末、自分の頬を思い切り平手で叩く。
そんなクリアのいきなりの行動に少しだけ驚きを見せたヒカリに、クリアはすぐさま頭を下げて、自分の思いを口にする。
「ごめんヒカリ! ボクはきっと怖かったんだ。自分の深いところまでキミに知られてしまえばキミに嫌われてしまうかもって。ヒカリの事を信じてたはずなのに!」
「…………」
クリアが頭を上げてヒカリの顔を見れば、クリアの言葉に耳を傾けるかのように、ヒカリはクリアを先程と同じようにじっと見つめて黙っていた。
先程のと違うとことがあるとすれば、少しだけヒカリの表情が和らいだようにクリアの目に映ったと言うところだろうか。
そんなヒカリに、クリアは続けて口を開いた。
「だから、いつか話せる時が来たら全部キミに話したい。だからごめん、勝手だけど、今はボクに力を貸して欲しい!」
クリアの言葉がヒカリに伝わったのかはわからない。
だが、次の瞬間——。
「もっちろん! このヒカリちゃんにできることならなんでもまっかせなさい!」
そういつもの笑顔でクリアに返したヒカリに、クリアもつられて笑顔になったのだった。
……先程のヒカリとのやりとりで二人ともかなり大きな声で話していたにも関わらずに、だ。
——……まいったな。一人一人外に出して枷を外していたらとんでもなく時間がかかってしまう……。
この荷車の出入り口は人が出入りするのによくて二人同時が限界の広さしか無い。
その上、例え外に連れ出して枷を外しても、意識が無い以上、外し終えた者をもう一度荷車の中に戻すか石路の上に寝かせておくことになってしまう。
かと言って、全員を【不可視疑の一部】でまとめて抱えながらこの薄暗い中それぞれの枷を解錠できるかと言われれば……今のクリアには不可能な芸当だ。
しかし、あまり悩んではいられない。
とにかく、レッドへの追手を王国騎士団をグリーンが足止めしてくれている今のうちに全てを解錠し、荷車ごとヒカリ達と共にここを離れたいと言うのがクリアの本音だ。
【どこからでもドア】で彼女達被害者をとりあえず移動させることもクリアは考えたが、当初の目的であるあの四人に枷をかけるという事が実行できないため選択肢から無くす他なかった。
——とりあえずできることをやるしか無い。
そう考えたクリアは、ミヤを出来るだけ出入り口の近くに移動させるため——クリアの中で、当然この中で優先すべきは他の女性に申し訳ないとは思いながらもミヤだったからだ——近くに寄ろうとした時だった。
突如、薄暗い荷車の中は光で満たされて、一目で内部の状況がわかるようになったのだ。
光属性の術式である、【照明球】だ。
強烈な光の球を空中に浮かべることで、かなりの広範囲を照らすことができる少々難易度が高い術式。
この状況でこの術式を使用できるのは、——例え彼女のキャスティングできる属性をクリアが知らなかったとしても——ただ一人。
「……ヒカリ」
【照明球】を術式名無しで行使した彼女の名をクリアは振り向かずに呼んだ。
……いや、今のクリアは、ヒカリの反応が怖くて振り向けなかったと言った方が正しいのかもしれない。
それぐらい、クリアはヒカリに対して負い目を感じていた。
ずっと仲の良かった人を裏切ったような気持ちが、クリアの心に重石のようにのしかかる。
しかし、そんなクリアにヒカリはいつも通り……とはいかずとも、臆さずに言葉をかける。
「クリア……『ごめん』じゃないよ。
……あのね、私、クリアが色々私に隠し事をしてるのは本当になんとなくだったけどわかってたよ。ほら、自分で言うのもあれだけど、私ってあなたに対しての勘が結構鋭いじゃない?
それでも言わないのは、それが私のためを思って言わないでくれてると思ってたの。
だから、クリアがどんな【力】を秘めていても、もし隠している事情を話してくれても驚かないようにしようって決めてたの。
だから言いたく無い事を聞いて傷つけちゃったなら、私の方こそ『ごめん』だよ。
……これからも、言いたく無い事、隠していたい事について私は何も聞かないようにする。言わなくても全然いい!
だから、……お願いだから私の事をもっと信じて欲しいの……っ‼︎」
ヒカリの様々な感情が入り混じった、しかしはっきりと思いを伝えたい意志を乗せた言葉は、とても長く。
とにかくクリアに自分の気持ちを伝えようと、言葉を紡いだのだろう。
そんなヒカリの言葉は、すっとクリアの心にのしかかっていた罪悪感を取り払うかのようにすっと自分の心に染み込んだようにクリアは感じた。
クリアが懸命なヒカリの言葉に応えるように振り向くと、そこには悲しそうで、それでいて凜とした表情を浮かべたヒカリがじっとクリアを見つめて立っていた。
——ボクは何をしているんだ? ボクはヒカリの何を見てきたんだ?
この子はいつだってボクなんかの事を思ってくれていて、そんなヒカリに笑顔でいて欲しいから今まで組織の裏側を隠してきたんだろう?
この力のことをヒカリに知られて怖がられて距離を置かれるのが怖かっただけじゃ無いのか? ……ふざけるな!
ヒカリがそんな子じゃないって知ってるくせに!
ヒカリを信じられると思ったからあの日の事を含めて自分のことを話したんだろ⁉︎ だったらちゃんと向き合って信じなよ、ヒカリの事を!
クリアは長い葛藤の末、自分の頬を思い切り平手で叩く。
そんなクリアのいきなりの行動に少しだけ驚きを見せたヒカリに、クリアはすぐさま頭を下げて、自分の思いを口にする。
「ごめんヒカリ! ボクはきっと怖かったんだ。自分の深いところまでキミに知られてしまえばキミに嫌われてしまうかもって。ヒカリの事を信じてたはずなのに!」
「…………」
クリアが頭を上げてヒカリの顔を見れば、クリアの言葉に耳を傾けるかのように、ヒカリはクリアを先程と同じようにじっと見つめて黙っていた。
先程のと違うとことがあるとすれば、少しだけヒカリの表情が和らいだようにクリアの目に映ったと言うところだろうか。
そんなヒカリに、クリアは続けて口を開いた。
「だから、いつか話せる時が来たら全部キミに話したい。だからごめん、勝手だけど、今はボクに力を貸して欲しい!」
クリアの言葉がヒカリに伝わったのかはわからない。
だが、次の瞬間——。
「もっちろん! このヒカリちゃんにできることならなんでもまっかせなさい!」
そういつもの笑顔でクリアに返したヒカリに、クリアもつられて笑顔になったのだった。
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