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第83話 聖間戦争5 必殺の剣
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「直撃……したんですよね」
目の前の王が平然と立ち歩いて戻ってくるという信じられない光景を目の当たりに、ついクリアはそう漏らした。
現状を言葉で表すのに、これ以上のものはいらないと言えるほどにセインテッド・アーク・イクスという男はクリアのとっておきの一つであった【黒き消去する者】を受けても平然としていた。
困惑により乱されたクリアの思考。
その隙を突くように遠距離からの術式ではなく、あくまで真っ向から炎の大剣の剣先から炎を噴射して迫って来たレッドは、そのまま噴射と慣性力を利用して薙ぎ払う様に横に剣を振るってくる。
——受け止める……のは無理か!
隙を突かれながらも冷静に判断を下しクリアは足元に術式と言うにはあまりにお粗末な闇を霧散させるようにキャスティングしてレッドの視界を塞ぎつつ、その勢いを利用して後ろ側に跳んだ。
直後、元々クリアがいた場所に豪快な斬撃が綺麗な弧を描いた。
剣先の噴射を振りに合わせて絶妙に位置を調整し、剣の勢いを殺さず振り抜けるようにレッドはキャスティングしていた。
やはり、受け止め無いという判断は正しかったとクリアは自分の代わりに薙ぎ払われた闇を見て、そして振るわれた際に発された暑い風圧を肌で受け、ひしひしと感じた。
だが、クリアはそれと同時に違和感を覚えた。
レッド達はクリアが【無属性療法】——名付け親は言うまでもなくクリアだ——により治療したが、動けるようになったのは目算で昨日のはずだった。
——以前のこの場で戦った時よりも、さらに強くなっている様に感じられたのは、いったい何故なんだろうか。
修行している暇など無かったはずだ、とクリアは心の中で付け足す。
しかし、長々と考察をする事を許さないと言わんばかりに、レッドは続けてクリアに向かってお得意の剣術で追い打ちをかけてくる。
タイマンに持ち込んで指示を出させない気なのだろうか。
だが、クリアももう心に甘えは無い。
『所有者』相手を不殺で倒すためには出し惜しみなどしていられない。
「【影の騎士団】!」
あちらが存分にルーツの力を振るってくるなら、こちらも同じく使わせてもらう。
——彼らの動きは任せたよ!
『あいよォ』
クリアのとっておきの二つ目。
ザ・クロは、どうやら術式の行使をクリアの中でもできるらしく。
クリアがザ・クロに体を明け渡していた時に外の光景を見ていた様に、ザ・クロもまたクリアの内から見ることができている、らしい。
ただし、あくまでザ・クロができるのは術式の実行と持続だけだ。
クリアの内面にいる間は周囲の感覚を感じる事ができないらしく、『アンシャネリア』の時の様に正確に相手を捕捉して襲わせることは難しいらしい。
実際、現れた数十体もの【影の騎士団】達はクリアが視界に入れているレッドを囲むように表れたが大して攻撃することもなく、次々とレッドに切り裂かれては消えていく。
一応、けん制の意味も込めて出したのだが。
だが、実体を持って一応襲い来る【影の騎士団】を無視してクリアに向かって来ることはできないようで。
クリアが次の準備を整える時間は充分に確保できた。
——一旦イクス王は後回しだ! 先にルーツを回収して回ろう!
多少の焦燥感が無意識に混じっていたのは、クリアが未だに王の健在を信じられなかった故だった。
ロザリアとソングに通信機でで後方支援を継続する様伝えながら、クリアは左手に【無属性】の力を集約させ、直剣の形に整えた【不可視疑の一部】を構え、レッドの元へ駆け出す。
【全てを切り裂く直剣】。
無限に等しいエレメントを生み出しそれを形にしたエレメンタルアームズに対抗すべくクリアが擬似的に作り出した、【無属性】のエレメンタルアームズ。
【無属性】の【分解】の力と、高密度に圧縮して作り出した力が無くとも切れ味抜群のこの不可視の剣は、その名の通り一振りであらゆるものを切り裂いて見せる。
——あくまで、武器破壊を前提に!
繰り返し心で自分に教え込むように言い続けながら、レッド——もとい人にに向かって初めてクリアは殺傷力のある武器を振るった。
普通なら、何も持っていない様に見えるクリアの手が自分に届かない距離で振るわれたなら、ただ滑稽な行いをしているよう目に映るだろう。
しかし、レッドは幾度もクリアと対峙し、【不可視疑の一部】の存在を知っている。
それ故か、直感的か冷静に思い出したかの真偽は不明だが、見えていないはずのクリアの斬撃に合わせる様にエレメンタルアームズの刃と自分の体をクリアの手が振るわれてきた方向に合わせて向けた。
——直後。
クリアはレッドの首元ギリギリでその手を止めていた。
目の前の信じがたい光景に、今度はレッドが目を丸くしていた。
音も立てず切り払われたレッドの炎の大剣の刀身はクリアの直剣の剣筋に従ってその剣先を失っていた。
図らずも、『アスラカチミオ』でレッドの体験を破壊した時の再現になった様に思え、クリアはデジャヴを感じる。
『……おめェ、よく既の所で止められたなァ』
流石のザ・クロも、驚いたようにクリアに感想を述べてくる。
あのまま振り切っていれば、今頃レッドの首は体とさよならをしていたところだろう。
——本当に危なかった……!
普通に炎の大剣だけ狙っていたと言うのに、レッドが受け止めるために武器と同じラインに体を向けたことで、危うく殺してしまうところだった事に、クリアはより緊張感を高める事になった。
目の前の王が平然と立ち歩いて戻ってくるという信じられない光景を目の当たりに、ついクリアはそう漏らした。
現状を言葉で表すのに、これ以上のものはいらないと言えるほどにセインテッド・アーク・イクスという男はクリアのとっておきの一つであった【黒き消去する者】を受けても平然としていた。
困惑により乱されたクリアの思考。
その隙を突くように遠距離からの術式ではなく、あくまで真っ向から炎の大剣の剣先から炎を噴射して迫って来たレッドは、そのまま噴射と慣性力を利用して薙ぎ払う様に横に剣を振るってくる。
——受け止める……のは無理か!
隙を突かれながらも冷静に判断を下しクリアは足元に術式と言うにはあまりにお粗末な闇を霧散させるようにキャスティングしてレッドの視界を塞ぎつつ、その勢いを利用して後ろ側に跳んだ。
直後、元々クリアがいた場所に豪快な斬撃が綺麗な弧を描いた。
剣先の噴射を振りに合わせて絶妙に位置を調整し、剣の勢いを殺さず振り抜けるようにレッドはキャスティングしていた。
やはり、受け止め無いという判断は正しかったとクリアは自分の代わりに薙ぎ払われた闇を見て、そして振るわれた際に発された暑い風圧を肌で受け、ひしひしと感じた。
だが、クリアはそれと同時に違和感を覚えた。
レッド達はクリアが【無属性療法】——名付け親は言うまでもなくクリアだ——により治療したが、動けるようになったのは目算で昨日のはずだった。
——以前のこの場で戦った時よりも、さらに強くなっている様に感じられたのは、いったい何故なんだろうか。
修行している暇など無かったはずだ、とクリアは心の中で付け足す。
しかし、長々と考察をする事を許さないと言わんばかりに、レッドは続けてクリアに向かってお得意の剣術で追い打ちをかけてくる。
タイマンに持ち込んで指示を出させない気なのだろうか。
だが、クリアももう心に甘えは無い。
『所有者』相手を不殺で倒すためには出し惜しみなどしていられない。
「【影の騎士団】!」
あちらが存分にルーツの力を振るってくるなら、こちらも同じく使わせてもらう。
——彼らの動きは任せたよ!
『あいよォ』
クリアのとっておきの二つ目。
ザ・クロは、どうやら術式の行使をクリアの中でもできるらしく。
クリアがザ・クロに体を明け渡していた時に外の光景を見ていた様に、ザ・クロもまたクリアの内から見ることができている、らしい。
ただし、あくまでザ・クロができるのは術式の実行と持続だけだ。
クリアの内面にいる間は周囲の感覚を感じる事ができないらしく、『アンシャネリア』の時の様に正確に相手を捕捉して襲わせることは難しいらしい。
実際、現れた数十体もの【影の騎士団】達はクリアが視界に入れているレッドを囲むように表れたが大して攻撃することもなく、次々とレッドに切り裂かれては消えていく。
一応、けん制の意味も込めて出したのだが。
だが、実体を持って一応襲い来る【影の騎士団】を無視してクリアに向かって来ることはできないようで。
クリアが次の準備を整える時間は充分に確保できた。
——一旦イクス王は後回しだ! 先にルーツを回収して回ろう!
多少の焦燥感が無意識に混じっていたのは、クリアが未だに王の健在を信じられなかった故だった。
ロザリアとソングに通信機でで後方支援を継続する様伝えながら、クリアは左手に【無属性】の力を集約させ、直剣の形に整えた【不可視疑の一部】を構え、レッドの元へ駆け出す。
【全てを切り裂く直剣】。
無限に等しいエレメントを生み出しそれを形にしたエレメンタルアームズに対抗すべくクリアが擬似的に作り出した、【無属性】のエレメンタルアームズ。
【無属性】の【分解】の力と、高密度に圧縮して作り出した力が無くとも切れ味抜群のこの不可視の剣は、その名の通り一振りであらゆるものを切り裂いて見せる。
——あくまで、武器破壊を前提に!
繰り返し心で自分に教え込むように言い続けながら、レッド——もとい人にに向かって初めてクリアは殺傷力のある武器を振るった。
普通なら、何も持っていない様に見えるクリアの手が自分に届かない距離で振るわれたなら、ただ滑稽な行いをしているよう目に映るだろう。
しかし、レッドは幾度もクリアと対峙し、【不可視疑の一部】の存在を知っている。
それ故か、直感的か冷静に思い出したかの真偽は不明だが、見えていないはずのクリアの斬撃に合わせる様にエレメンタルアームズの刃と自分の体をクリアの手が振るわれてきた方向に合わせて向けた。
——直後。
クリアはレッドの首元ギリギリでその手を止めていた。
目の前の信じがたい光景に、今度はレッドが目を丸くしていた。
音も立てず切り払われたレッドの炎の大剣の刀身はクリアの直剣の剣筋に従ってその剣先を失っていた。
図らずも、『アスラカチミオ』でレッドの体験を破壊した時の再現になった様に思え、クリアはデジャヴを感じる。
『……おめェ、よく既の所で止められたなァ』
流石のザ・クロも、驚いたようにクリアに感想を述べてくる。
あのまま振り切っていれば、今頃レッドの首は体とさよならをしていたところだろう。
——本当に危なかった……!
普通に炎の大剣だけ狙っていたと言うのに、レッドが受け止めるために武器と同じラインに体を向けたことで、危うく殺してしまうところだった事に、クリアはより緊張感を高める事になった。
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