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第85話 聖間戦争7 違和感の正体
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「くっ、【竜巻烈風刃】!」
迫るクリアを退けようとグリーンは直線上に進行する術式を放つ。
術式の規模はクリアを優に飲み込む大きさだった。
発生と対照へ向かう速度の速さにクリアは驚きつつも、闇のルーツの力を存分に発揮できるようになったクリアの前では、それは届かない。
「【闇の盾】!」
散々ザ・クロの戦い方から学んだ、闇属性エレメントの効率的な使い方。
ルーツありきだが、発生させた闇が闇を増幅させ合い、強大な質量となる特性を利用する物理的運用。
【闇の盾】もその例に漏れず、クリアの目の前に【竜巻烈風刃】の規模を遥かに超える巨大な壁として現れ、それを受け止めて見せた。
——感覚的に【無属性】のそれと近いキャスティングの仕方ができるから闇のエレメントは他のエレメントより使いやすいかもしれない。
そんな事を考える余裕ができるほど、ルーツの力がとてつもないモノだと思い知らされたクリアは、「そりゃ、『所有者』四人を同時に相手して聖属性に横槍を入れられたら簡単に負けてしまうよな……」と一人納得する。
「クリアさん、竜巻一つ防いだからと油断しないで! どんどん来ますよ!」
シングの声が後ろからではなく耳元でクリアに届く。
特定の相手にのみ伝える音属性の術式、【伝言音球】だった。
そう、レッドは近接戦闘を得意とし持ち込んで来るタイプだったため【全てを切り裂く直剣】で武器破壊《アームブレイク》して戦意を喪失させた——そうだったとクリアは勝手に結論付けたため真偽は定かでは無い——が、遠近両方できおまけに探知まで器用にこなし、さらにそれらも決して器用貧乏ではなく全てがハイスペックなグリーンを打ち負かすには、どちらかと言えば近接戦闘の方がやりやすい。
近くにイクス王がいるためタイマンに持ち込めるかは不明だが、【全てを切り裂く直剣】の威力を目の当たりにして遠距離攻撃術式をメインに切り替えたと考えるなら、近寄るべきだとクリアは考えた。
【竜巻烈風刃】が【闇の盾】とぶつかり合う音は未だ消えていない。
むしろ、【闇の盾】が無限に再生し続けるとはいえ切り刻まれ削られていく音を耳にし、あの術式も以前ここで戦った時より強力な術式を会得して行使してくるグリーンにレッドの時と同じ違和感を覚える。
【闇の盾】が巨大なためグリーンとイクス王の姿は視界に入れることは叶わなかったが、違和感に誘導されるように一瞬クリアはライズとゴールドの戦闘を視界に入れる。
そこには、それなりにいい勝負をしているライズとゴールドの姿があった。
本来ならそれはいい事のはずなのに、クリアはその光景にも違和感を覚える。
——いくら『トーライ』以来ライズさんが訓練して強くなったからとはいえ雷のルーツを持ちライズさんより雷属性のキャスティング能力が高かったゴールドさん相手に『いい勝負』をしている?
見たところ、ライズは身体強化を惜しみなく使っている様に見える。
対して、ゴールドはどうだろうか。
ライズの攻撃を雷のルーツを使い上手く捌いているようにも見えるが、その挙動の一々がギリギリタイミングを合わせてやっと裁いているようにも見える。
『おィ、俺に【闇の盾】の持続をやらせておいて何ぼけっと考えてんだァ!』
——……ザ・クロ、おかしいと思わない?
『あァ?』
——ボクの中に、本当に火のルーツはあるのかな?
『…………』
クリアの疑問に、ザ・クロは沈黙で返した。
もしくは、確かめてくれているのだろうか。
クリアの中にあるはずの火のルーツが本当に取り込めているのかを。
クリアにはルーツを取り込んでも、体の何処にあるかはザ・クロの時もそうだったようにわからない。
そしてくどいようだがレッドを【吸収】した時に覚えた違和感。
その二つが合わさり、クリアの中で急速にこの戦い自体が違和感に変わっていく。
ライズには悪いと思いつつ、ある事を確かめにいられなかったクリアは【全てを切り裂く直剣】を再び形の無い【力】に戻し、【不可視疑の一部】として横槍を入れる形でゴールドに向かって放った。
結果、ライズの攻撃を捌くことで精一杯らしかったゴールドはたやすく【不可視疑の一部】で捕まえる事ができ。
そのままクリアはゴールドを自分の元まで一気に引き寄せた。
「クリアテメェ! そいつは俺のだぞ!」
ライズから当然の如く非難の声が飛んできたが、クリアはそのライズの言葉に耳を貸さず。
——『トーライ』の時には手を貸せってうるさかったのに……。
ゴールドを【力】で包み、有無を言わさず【吸収】した。
そして、ゴールドを【吸収】したことにより違和感が確信に変わった事でクリアは、セインテッド・アーク・イクスという人物の思考に恐怖すら覚える。
「……あなたは、人をなんだと思っているんだ!」
もはや敬語など必要ないと思わせる程の怒りを込めて、クリアは叫んだ。
ライズ、ロザリア、そしてシングはクリアの突然の叫びに理解が追いつかないのだろう、特に戦いを無理やり中断され怒っていたライズが黙った事でよりその事が顕著に三人の困惑が目に見えてわかる。
——この男は、最初からまともに戦うつもりなんて無かったんだ!
この場で唯一状況を理解したクリアは、憤慨のあまり激情に任せ【闇の盾】を貫くように【黒き消去する者】を最大出力で擊ち出した。
迫るクリアを退けようとグリーンは直線上に進行する術式を放つ。
術式の規模はクリアを優に飲み込む大きさだった。
発生と対照へ向かう速度の速さにクリアは驚きつつも、闇のルーツの力を存分に発揮できるようになったクリアの前では、それは届かない。
「【闇の盾】!」
散々ザ・クロの戦い方から学んだ、闇属性エレメントの効率的な使い方。
ルーツありきだが、発生させた闇が闇を増幅させ合い、強大な質量となる特性を利用する物理的運用。
【闇の盾】もその例に漏れず、クリアの目の前に【竜巻烈風刃】の規模を遥かに超える巨大な壁として現れ、それを受け止めて見せた。
——感覚的に【無属性】のそれと近いキャスティングの仕方ができるから闇のエレメントは他のエレメントより使いやすいかもしれない。
そんな事を考える余裕ができるほど、ルーツの力がとてつもないモノだと思い知らされたクリアは、「そりゃ、『所有者』四人を同時に相手して聖属性に横槍を入れられたら簡単に負けてしまうよな……」と一人納得する。
「クリアさん、竜巻一つ防いだからと油断しないで! どんどん来ますよ!」
シングの声が後ろからではなく耳元でクリアに届く。
特定の相手にのみ伝える音属性の術式、【伝言音球】だった。
そう、レッドは近接戦闘を得意とし持ち込んで来るタイプだったため【全てを切り裂く直剣】で武器破壊《アームブレイク》して戦意を喪失させた——そうだったとクリアは勝手に結論付けたため真偽は定かでは無い——が、遠近両方できおまけに探知まで器用にこなし、さらにそれらも決して器用貧乏ではなく全てがハイスペックなグリーンを打ち負かすには、どちらかと言えば近接戦闘の方がやりやすい。
近くにイクス王がいるためタイマンに持ち込めるかは不明だが、【全てを切り裂く直剣】の威力を目の当たりにして遠距離攻撃術式をメインに切り替えたと考えるなら、近寄るべきだとクリアは考えた。
【竜巻烈風刃】が【闇の盾】とぶつかり合う音は未だ消えていない。
むしろ、【闇の盾】が無限に再生し続けるとはいえ切り刻まれ削られていく音を耳にし、あの術式も以前ここで戦った時より強力な術式を会得して行使してくるグリーンにレッドの時と同じ違和感を覚える。
【闇の盾】が巨大なためグリーンとイクス王の姿は視界に入れることは叶わなかったが、違和感に誘導されるように一瞬クリアはライズとゴールドの戦闘を視界に入れる。
そこには、それなりにいい勝負をしているライズとゴールドの姿があった。
本来ならそれはいい事のはずなのに、クリアはその光景にも違和感を覚える。
——いくら『トーライ』以来ライズさんが訓練して強くなったからとはいえ雷のルーツを持ちライズさんより雷属性のキャスティング能力が高かったゴールドさん相手に『いい勝負』をしている?
見たところ、ライズは身体強化を惜しみなく使っている様に見える。
対して、ゴールドはどうだろうか。
ライズの攻撃を雷のルーツを使い上手く捌いているようにも見えるが、その挙動の一々がギリギリタイミングを合わせてやっと裁いているようにも見える。
『おィ、俺に【闇の盾】の持続をやらせておいて何ぼけっと考えてんだァ!』
——……ザ・クロ、おかしいと思わない?
『あァ?』
——ボクの中に、本当に火のルーツはあるのかな?
『…………』
クリアの疑問に、ザ・クロは沈黙で返した。
もしくは、確かめてくれているのだろうか。
クリアの中にあるはずの火のルーツが本当に取り込めているのかを。
クリアにはルーツを取り込んでも、体の何処にあるかはザ・クロの時もそうだったようにわからない。
そしてくどいようだがレッドを【吸収】した時に覚えた違和感。
その二つが合わさり、クリアの中で急速にこの戦い自体が違和感に変わっていく。
ライズには悪いと思いつつ、ある事を確かめにいられなかったクリアは【全てを切り裂く直剣】を再び形の無い【力】に戻し、【不可視疑の一部】として横槍を入れる形でゴールドに向かって放った。
結果、ライズの攻撃を捌くことで精一杯らしかったゴールドはたやすく【不可視疑の一部】で捕まえる事ができ。
そのままクリアはゴールドを自分の元まで一気に引き寄せた。
「クリアテメェ! そいつは俺のだぞ!」
ライズから当然の如く非難の声が飛んできたが、クリアはそのライズの言葉に耳を貸さず。
——『トーライ』の時には手を貸せってうるさかったのに……。
ゴールドを【力】で包み、有無を言わさず【吸収】した。
そして、ゴールドを【吸収】したことにより違和感が確信に変わった事でクリアは、セインテッド・アーク・イクスという人物の思考に恐怖すら覚える。
「……あなたは、人をなんだと思っているんだ!」
もはや敬語など必要ないと思わせる程の怒りを込めて、クリアは叫んだ。
ライズ、ロザリア、そしてシングはクリアの突然の叫びに理解が追いつかないのだろう、特に戦いを無理やり中断され怒っていたライズが黙った事でよりその事が顕著に三人の困惑が目に見えてわかる。
——この男は、最初からまともに戦うつもりなんて無かったんだ!
この場で唯一状況を理解したクリアは、憤慨のあまり激情に任せ【闇の盾】を貫くように【黒き消去する者】を最大出力で擊ち出した。
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