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第91話 クリアのルーツ
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「懐かしいな。もう、あれから十年以上経つのか」
クリアはこの山の中で、目の前に不自然に広がる巨大なクレーターを見ながら感慨深く一人呟いた。
『知ってんのかァ、この場所をよォ』
「知ってるも何も——」
ザ・クロの質問に、クリアは珍しく声に出して答える。
「——ボクが作ったんだ、このクレーターをね」
まるで、自分自身に言い聞かせるように。
あの時と夢の光景で幾度も見てきたこの場所は、あれから年月が経ったことで自然にクレーターの中にも草や花が生えており、何も知らなければそういう場所なのだろうと思うかもしれない。
だからこそなのだろうか。
クリアは自分の頬と胸に、何が熱いものが込み上げてくるのを感じた。
——ああ、まさかアーク達との決戦の場所がここになるなんて。
奇しくも運命のような、もしくは因縁のようなものを感じながらも、足止めは食らっていられないクリアは周囲に探索用の【力】を展開していく。
『おい、ここは何処なんだァ? お前がそこまで思い入れがある場所なんだろォ?』
「ここは……ボクの全ての始まりの地だよ。ねえザ・クロ」
『なんだァ?』
変に高めに、そして大きめの声をかけてきたクリアに、ザ・クロは珍しく若干戸惑いながら聞き返す。
そんなザ・クロに、クリアは笑顔で言葉を続けた。
「ここは昔、小さな村があったんだよ。そしてこのクレーターはね、ボクが作ったんだよ」
『…………ほォ』
ザ・クロは少しの沈黙の後、納得したように一言を返した。
今更、全てをわざわざ伝えなくてもザ・クロはクリアの思考や感情が伝わるのでクリアもそれ以上の説明をすることはしない。
それは、今ではザ・クロが許す限りでクリアにも同じ事が言える間柄になっている。
故に。
ザ・クロの思った疑念がクリアに伝わり、クリアはそれに答えた。
まるで、アーク達を探す間の暇つぶしのように。
そしてまるで、自分にも言い聞かせるように。
「なんでその村の人達のお墓が無いんだろうって? それはね、まだ皆生き続けているからだよ。……ボクの中に、ね」
『…………』
クリアの勝手にした返答に、ザ・クロは沈黙で返した。
クリアは、そんなザ・クロに構いもせず、探索をしながららしく無く饒舌に話し続ける。
「キミもわかるだろう、ボクの中に絶対に使わないのに保持し続けているエレメントがあるのを。それがこの村の人達を構成していたエレメントなんだ」
『別に聞いてねェよ。……まァ一人で勝手に喋りたきゃ好きにすればいィがな』
呆れるように返したザ・クロに、クリアは止まらず独り言のように話し続けた。
それは、日が登り始めるまで続いた。
ようやく、クリアの口数が減り始めた頃。
それらはクリアの【力】にかかった。
「……見つけた」
クリアはかかったモノの一部に【力】をくっ付けると、それ以外の場所に広げていた【力】を体に戻しながら追いかけるように走り出す。
クリアが彼らに追いつくまで、そう時間はかからなかった。
何故なら、まるでクリアが来る事を待っていたように、彼らはあまり移動する事もなく陣形を組むようにクリアを待ち構えていたのだった。
「お久しぶりですね、皆さん。
わざわざ『セインテッド』からこの場所まで何用で来たんですか?」
クリアの前に立ちはだかるは、全員ローブを身に纏いながらもハッキリと伝わってくる強者の雰囲気。
全員がフードを脱げば、すぐさま見覚えのある顔がさらけ出された。
長旅でところどころ汚れてはいるが、あの日姿を消したセインテッド・アーク・イクス、もとい聖のルーツ。
そして後ろにいるのは、目の光を失ったレッド、グリーン、ゴールドの『所有者』三人。
それぞれローブで隠れてはいるが、腕輪に指輪、そしてイナズマの形をしたピアスを付けているのをクリアは探知した。
どうやら、エレメンタルアームズをアクセサリーにする方法を覚えたらしい。
それはよりルーツとの親和性を深めた事を意味している。
故に、クリアは思わずにはいられなかった。
——彼らは既に、ルーツに支配されているのではないか?
以前、ザ・クロがアスラという名前を出した事がある。
火のルーツに宿る人格は、アスラというのだろう。
少なくとも、火のルーツにはザ・クロやアークの様に人格が封じ込められていることがわかる話だった。
——もし、レッドさん達が全員ルーツに支配されているのだとしたら……。
単純にザ・クロのような非戦闘向きの属性のルーツでも『所有者』を打ち負かす力を発揮した。
今回は戦闘に長けた属性が四つも揃っている。
中でも聖属性は【無属性】並に応用が効く優秀な属性であり、普通に戦えば苦戦することは火を見るより明らかだ。
「……む、『ホルダー』よ。まさかお前一人でこの場にきたと言うのか?」
聖属性お得意の感知能力で辺りを調べたのだろうか。
クリア以外の気配が感じ取れなかったことについて問いかけてきたアークは、驚愕を通り越して呆れた顔をクリアに向けてきた。
そんなアークに、クリアは先ほどから浮かべ続けている笑顔で返す。
「ええ。だって、貴方達にはボク一人で十分ですから。ボクに敵わないことを以前の戦闘時に悟ったからわざわざこんな辺境の地へと逃げてきたんでしょう?」
「ふん、何だその勝ち誇ったような笑みは?
趣味が悪いぞ貴様。まあ、『所有者』共にルーツ達の人格が宿るまで時間が必要だったことは認めよう」
やはり、今はもう目の前にいる彼らはレッドやグリーン、ゴールドでは無いらしい。
「それで? 無事アスラさん達は乗っ取りに成功したんですか? それにしては貴方のように目から意志を感じ取れないのですが」
「意志などいらぬだろう。ルーツとしての力を全て発揮できれば、アスラ達の人格など最早不要だ」
あまりな発言に、クリアの浮かべていた笑顔が少し崩れた。
『流石、アーク様だなァ。俺たち他のルーツすら見下してやがらァ』
自分以外全部道具がなにかと勘違いしているらしい。
そういう振る舞いがひしひしと伝わってくることに、クリアは苛立ちを覚えた。
「まあ、お互い長話をする為にここにきたわけでは無いでしょう。……生き残りをかけて、始めましょうか」
クリアの言葉で、この場は一瞬で緊張感に包まれた。
先程まで浮かべていた笑みも今は引っ込め、クリアは目の前のかつて無いほどの恐ろしい力を秘めた四人に向かって歩き出した。
数歩、クリアが歩み寄った時。
それは突然クリアを囲う様に現れ、そのままクリアを仕留めるべく襲い掛かり……壮大に土煙を上げたのだった。
クリアはこの山の中で、目の前に不自然に広がる巨大なクレーターを見ながら感慨深く一人呟いた。
『知ってんのかァ、この場所をよォ』
「知ってるも何も——」
ザ・クロの質問に、クリアは珍しく声に出して答える。
「——ボクが作ったんだ、このクレーターをね」
まるで、自分自身に言い聞かせるように。
あの時と夢の光景で幾度も見てきたこの場所は、あれから年月が経ったことで自然にクレーターの中にも草や花が生えており、何も知らなければそういう場所なのだろうと思うかもしれない。
だからこそなのだろうか。
クリアは自分の頬と胸に、何が熱いものが込み上げてくるのを感じた。
——ああ、まさかアーク達との決戦の場所がここになるなんて。
奇しくも運命のような、もしくは因縁のようなものを感じながらも、足止めは食らっていられないクリアは周囲に探索用の【力】を展開していく。
『おい、ここは何処なんだァ? お前がそこまで思い入れがある場所なんだろォ?』
「ここは……ボクの全ての始まりの地だよ。ねえザ・クロ」
『なんだァ?』
変に高めに、そして大きめの声をかけてきたクリアに、ザ・クロは珍しく若干戸惑いながら聞き返す。
そんなザ・クロに、クリアは笑顔で言葉を続けた。
「ここは昔、小さな村があったんだよ。そしてこのクレーターはね、ボクが作ったんだよ」
『…………ほォ』
ザ・クロは少しの沈黙の後、納得したように一言を返した。
今更、全てをわざわざ伝えなくてもザ・クロはクリアの思考や感情が伝わるのでクリアもそれ以上の説明をすることはしない。
それは、今ではザ・クロが許す限りでクリアにも同じ事が言える間柄になっている。
故に。
ザ・クロの思った疑念がクリアに伝わり、クリアはそれに答えた。
まるで、アーク達を探す間の暇つぶしのように。
そしてまるで、自分にも言い聞かせるように。
「なんでその村の人達のお墓が無いんだろうって? それはね、まだ皆生き続けているからだよ。……ボクの中に、ね」
『…………』
クリアの勝手にした返答に、ザ・クロは沈黙で返した。
クリアは、そんなザ・クロに構いもせず、探索をしながららしく無く饒舌に話し続ける。
「キミもわかるだろう、ボクの中に絶対に使わないのに保持し続けているエレメントがあるのを。それがこの村の人達を構成していたエレメントなんだ」
『別に聞いてねェよ。……まァ一人で勝手に喋りたきゃ好きにすればいィがな』
呆れるように返したザ・クロに、クリアは止まらず独り言のように話し続けた。
それは、日が登り始めるまで続いた。
ようやく、クリアの口数が減り始めた頃。
それらはクリアの【力】にかかった。
「……見つけた」
クリアはかかったモノの一部に【力】をくっ付けると、それ以外の場所に広げていた【力】を体に戻しながら追いかけるように走り出す。
クリアが彼らに追いつくまで、そう時間はかからなかった。
何故なら、まるでクリアが来る事を待っていたように、彼らはあまり移動する事もなく陣形を組むようにクリアを待ち構えていたのだった。
「お久しぶりですね、皆さん。
わざわざ『セインテッド』からこの場所まで何用で来たんですか?」
クリアの前に立ちはだかるは、全員ローブを身に纏いながらもハッキリと伝わってくる強者の雰囲気。
全員がフードを脱げば、すぐさま見覚えのある顔がさらけ出された。
長旅でところどころ汚れてはいるが、あの日姿を消したセインテッド・アーク・イクス、もとい聖のルーツ。
そして後ろにいるのは、目の光を失ったレッド、グリーン、ゴールドの『所有者』三人。
それぞれローブで隠れてはいるが、腕輪に指輪、そしてイナズマの形をしたピアスを付けているのをクリアは探知した。
どうやら、エレメンタルアームズをアクセサリーにする方法を覚えたらしい。
それはよりルーツとの親和性を深めた事を意味している。
故に、クリアは思わずにはいられなかった。
——彼らは既に、ルーツに支配されているのではないか?
以前、ザ・クロがアスラという名前を出した事がある。
火のルーツに宿る人格は、アスラというのだろう。
少なくとも、火のルーツにはザ・クロやアークの様に人格が封じ込められていることがわかる話だった。
——もし、レッドさん達が全員ルーツに支配されているのだとしたら……。
単純にザ・クロのような非戦闘向きの属性のルーツでも『所有者』を打ち負かす力を発揮した。
今回は戦闘に長けた属性が四つも揃っている。
中でも聖属性は【無属性】並に応用が効く優秀な属性であり、普通に戦えば苦戦することは火を見るより明らかだ。
「……む、『ホルダー』よ。まさかお前一人でこの場にきたと言うのか?」
聖属性お得意の感知能力で辺りを調べたのだろうか。
クリア以外の気配が感じ取れなかったことについて問いかけてきたアークは、驚愕を通り越して呆れた顔をクリアに向けてきた。
そんなアークに、クリアは先ほどから浮かべ続けている笑顔で返す。
「ええ。だって、貴方達にはボク一人で十分ですから。ボクに敵わないことを以前の戦闘時に悟ったからわざわざこんな辺境の地へと逃げてきたんでしょう?」
「ふん、何だその勝ち誇ったような笑みは?
趣味が悪いぞ貴様。まあ、『所有者』共にルーツ達の人格が宿るまで時間が必要だったことは認めよう」
やはり、今はもう目の前にいる彼らはレッドやグリーン、ゴールドでは無いらしい。
「それで? 無事アスラさん達は乗っ取りに成功したんですか? それにしては貴方のように目から意志を感じ取れないのですが」
「意志などいらぬだろう。ルーツとしての力を全て発揮できれば、アスラ達の人格など最早不要だ」
あまりな発言に、クリアの浮かべていた笑顔が少し崩れた。
『流石、アーク様だなァ。俺たち他のルーツすら見下してやがらァ』
自分以外全部道具がなにかと勘違いしているらしい。
そういう振る舞いがひしひしと伝わってくることに、クリアは苛立ちを覚えた。
「まあ、お互い長話をする為にここにきたわけでは無いでしょう。……生き残りをかけて、始めましょうか」
クリアの言葉で、この場は一瞬で緊張感に包まれた。
先程まで浮かべていた笑みも今は引っ込め、クリアは目の前のかつて無いほどの恐ろしい力を秘めた四人に向かって歩き出した。
数歩、クリアが歩み寄った時。
それは突然クリアを囲う様に現れ、そのままクリアを仕留めるべく襲い掛かり……壮大に土煙を上げたのだった。
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