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ギロチンは落とされたが、飛んできた一本の刀がギロチンを動かす歯車に刺さり、ギーコギーコガシャンと大きな音を立てながら止まった。
じっと目を閉じていたが、いつまで経っても意識がある状態に、僕は恐る恐る血と涙で固まった目を開ける。
首が落とされても目は見えるのだろうか?
僕の死を望んで大声を上げていた群衆たちが、今となっては見慣れたカーディナル国の制服を着た兵士の進攻に逃げまどっている。
群衆だけでなく、僕の処刑を執行しようとしていた者や、貴族席や王族席から観覧していた者たちも逃げまどうが切られていく。
手足を拘束され断首台にうつ伏せになって固定されている僕は身動きできない。
ギーギーと音を立てて、剣が刺さった歯車がギロチンの重みに耐えかねてゆっくりと動き出そうとしていた。剣がゆっくりと歯車から抜け落ちようと倒れ始めた。
「ティノ!!」
ギロチンが勢いをつけて僕の首に降りかかる直前、体を後ろに引っ張られる。ギロチンが目の前を通りすぎて大きな音を立てる。ガンっとギロチンの歯が勢いよく落ちた。
「ティノ! ティノ! 遅くなってすまない。ティノ!」
僕は夢を見ているのだろうか。
ベンにそっくりな人が僕の腕をつかみ抱き寄せ、何度も僕の名前を呼ぶのが聞こえる。
「ティノティノ」
何度の僕の名前を呼び、その人の顔が当たっている僕の肩がどんどん温かい物で濡れていく。
「ティノ愛している、ティノ」
僕の顔を覗き込むのは、優しい色合いの金髪に涙のせいでキラキラと輝く澄んだ青い瞳、整った顔だちはいつもより疲れがにじみ出て、やつれていた。
「ティノをこんな目に合わせたやつらを許せない」
僕の拘束をすべて外して、僕を必死になって介抱するベンの顔を改めて見つめる。
「ベン?」
僕は幸せな夢を見ているのだろうか。生きているベンに会える幸せな夢。
「ティノ」
僕らは互いを確認するように何度も名前を呼び、顔を何度も見る。
優しく僕を見る眼差し。愛しているとその瞳で全身で言ってくる姿。
僕は信じられなくて、嬉しくて、でも信じられなくて、ベンの腕をつかみ、何度も縋りつくようにして確認する。長い間拘束されていた腕は力が入らず、口元もうまく動かせず血とよだれがこぼれていく、名前もうまく言えない。
だけどベンは辛抱強く僕にされるがままになり、そして僕を強く抱きしめた。
お互いがお互いを愛し、慈しみあう。あの画で描かれていた僕には一生縁がないと思っていた抱擁。
一生会えないと思っていたベンにこの世で会えたことの喜び。信じられなくて、胸が苦しい。
「・・・ごめんベンごめん」
「ティノおれこそごめん。・・・さあティノうちに帰ろう。おれたちの家に帰ろう」
カーディナル軍の攻撃は終わらず、僕たちの周囲は逃げまどう人々の阿鼻叫喚の声が聞こえている。
あーだけど、僕はきっと自分勝手で薄情なんだ。きっとこの国では正しく不吉な象徴なんだろう。
ちっとも可哀そうだとか、やめてあげてとかも思わず、ただ帰ろうというベンの言葉に小さくうなずき、体力気力共に限界がきて、ベンに体を預けて気を失った。
じっと目を閉じていたが、いつまで経っても意識がある状態に、僕は恐る恐る血と涙で固まった目を開ける。
首が落とされても目は見えるのだろうか?
僕の死を望んで大声を上げていた群衆たちが、今となっては見慣れたカーディナル国の制服を着た兵士の進攻に逃げまどっている。
群衆だけでなく、僕の処刑を執行しようとしていた者や、貴族席や王族席から観覧していた者たちも逃げまどうが切られていく。
手足を拘束され断首台にうつ伏せになって固定されている僕は身動きできない。
ギーギーと音を立てて、剣が刺さった歯車がギロチンの重みに耐えかねてゆっくりと動き出そうとしていた。剣がゆっくりと歯車から抜け落ちようと倒れ始めた。
「ティノ!!」
ギロチンが勢いをつけて僕の首に降りかかる直前、体を後ろに引っ張られる。ギロチンが目の前を通りすぎて大きな音を立てる。ガンっとギロチンの歯が勢いよく落ちた。
「ティノ! ティノ! 遅くなってすまない。ティノ!」
僕は夢を見ているのだろうか。
ベンにそっくりな人が僕の腕をつかみ抱き寄せ、何度も僕の名前を呼ぶのが聞こえる。
「ティノティノ」
何度の僕の名前を呼び、その人の顔が当たっている僕の肩がどんどん温かい物で濡れていく。
「ティノ愛している、ティノ」
僕の顔を覗き込むのは、優しい色合いの金髪に涙のせいでキラキラと輝く澄んだ青い瞳、整った顔だちはいつもより疲れがにじみ出て、やつれていた。
「ティノをこんな目に合わせたやつらを許せない」
僕の拘束をすべて外して、僕を必死になって介抱するベンの顔を改めて見つめる。
「ベン?」
僕は幸せな夢を見ているのだろうか。生きているベンに会える幸せな夢。
「ティノ」
僕らは互いを確認するように何度も名前を呼び、顔を何度も見る。
優しく僕を見る眼差し。愛しているとその瞳で全身で言ってくる姿。
僕は信じられなくて、嬉しくて、でも信じられなくて、ベンの腕をつかみ、何度も縋りつくようにして確認する。長い間拘束されていた腕は力が入らず、口元もうまく動かせず血とよだれがこぼれていく、名前もうまく言えない。
だけどベンは辛抱強く僕にされるがままになり、そして僕を強く抱きしめた。
お互いがお互いを愛し、慈しみあう。あの画で描かれていた僕には一生縁がないと思っていた抱擁。
一生会えないと思っていたベンにこの世で会えたことの喜び。信じられなくて、胸が苦しい。
「・・・ごめんベンごめん」
「ティノおれこそごめん。・・・さあティノうちに帰ろう。おれたちの家に帰ろう」
カーディナル軍の攻撃は終わらず、僕たちの周囲は逃げまどう人々の阿鼻叫喚の声が聞こえている。
あーだけど、僕はきっと自分勝手で薄情なんだ。きっとこの国では正しく不吉な象徴なんだろう。
ちっとも可哀そうだとか、やめてあげてとかも思わず、ただ帰ろうというベンの言葉に小さくうなずき、体力気力共に限界がきて、ベンに体を預けて気を失った。
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