彷徨うヤンデレは幼馴染に求愛されて幸せになった。

くまだった

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魔獣編

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 マイラの天幕から出たリタはそのまま、対策本部にいる第7王子の元に向かう。

 天幕の中には歴戦の隊長や団長クラスが、テーブルの上の地図を見ながら、作戦会議をしている。

 第7王子は今回は王の代理として来ている。真正面の真ん中の椅子に座り、話し合いを見ていた。

 リタが入ってくるのを見ると、薄く笑う。

 「現状をもう一度経緯から報告せよ」第7王子が命令する。たぶんリタにわかるように。

 「魔獣七体が発見され、四体は退治しましたが、後三体が残存しています。うち二体はこの谷に隠れており、火と毒を吐くので近寄れません。一体はこちらの攻撃で弱ってきていますが、こちらの平野部で身動きが取れないまま、常時威圧と毒を出し続けており、手出しが出せない状態です。こちらの被害は甚大で、毒の大気中の含有量が・・・」

 長い話を聞いて、手も足も出ない状態に陥ってることがわかった。

 「殿下、そちらは一体・・・」
 魔術団にかつて所属して何でも屋のように働いていたリタを知っているものも多くいるようだ。魔獣討伐や野党退治も騎士団と協力して行ったこともある。
 マイラ副団長と結婚して引退したはずだが、なぜこの場にいるのか。

 マイラ副団長のお見舞いにしても、この場にいるのはおかしい。

 リタは今は魔術団に所属していないから、魔術師団の制服のローブは着ていない。

 動きやすいように、騎士団の服のような格好に自前のローブを羽織っている。長い髪は後ろに一つにくくり、後ろ手に手を組み、股を開いて直立不動で立っている様子は凛々しい若い騎士や兵士のようだった。
 ローブだけが、魔術使いだと主張している。

 「こちらは魔術師のリタリヤ殿だ。三年前の魔獣討伐で功績をあげている。今回の停滞している状況の打開策の要として参戦してもらう」

 「おー!!」
 リタの活躍を知っている者は感嘆の声をあげ、リタの見た目だけで判断したものは、眉を顰めた。

 「リタリヤここに」
 王子の執務官に、王子の前の床に案内される。
 第7王子の御前で片膝つき、頭を下げる。

 「王の名において、リタリヤ マーグレンに、今回の魔獣討伐を任命する。また討伐に当たって国宝 至高の杖の使用を許可する。我が国の威信にかけて早急に解決せよ」

 どよめきが周囲から起こる。
 「国宝を使うなんて」
 「単独で行うのか? 我々騎士でも難しいのに、魔術師が1人で戦うなんて」
 「いや3年前の魔獣討伐を知らないのか。見事な手腕だった」
 「またあの戦う姿を見れるのか」
 様々な意見が聞こえる。


 リタは茶番だなと思いながら、国宝の杖を恭しく受け取った。




 
 

 風と雷属性の魔法を使うリタに取って、雨と風は味方だ。
 雨は毒を地面に落としてくれるし、雷の効果を何倍にもしてくれる。風もそうだ。たくさんの風が最初から吹いてくれてる方が操りやすい。
 雨と風の降る日を選んだ。他の討伐隊は遠くから離れた丘の上からリタを見ていた。気のいいものはリタが一人で行くことを心配し、中には単独で討伐をするリタをやっかむものもいた。

 国宝とも神器とも言われる至高の杖は雷属性でリタの魔力と相性がよい。杖を手にしたリタは無双だった。

 国宝の杖が壊れるとか、大事にしないとか考えない。
 こんな良いものがあるんだったら、さっさと出しやがれ。国民の命を何と考えている。怒りの方が先だった。

 雨が降る中、躊躇なく、杖を振り上げ天空から雷を呼ぶ。天から至高の杖まで雷が光の鋭い帯となって繋がる。魔獣の弱点である額の小さな宝玉めがけて杖を投げる。杖と一緒に雷の光も伸びていく。魔法だけで攻めればいいところを、物理でも攻撃する。腹が立って仕方がないから。

 宝玉に刺さった杖にそのまま天空から雷が落ち続けて魔獣を貫いた。魔獣が断末魔の叫びを威圧と毒と共に撒き散らす。想定内なため、リタは動じない。雨と雷によって更に魔獣の全身が感電する。

 リタは知らないが離れて見ると、空から魔獣までの雷と、雨に放電して、あたり一帯が光輝き何回もハレーションを起こしていた。
 まるで神が起こした奇跡のようだった。

 その光は魔獣討伐を知らない遠く離れた村や、町からも見えたという。
 神が起こした何かに、人々は膝を折り、祈り続けた。

 遅れて、ド、ド、ド、ドーンと雷が落ちた大きな割れるような音がして、離れて見ている者たちの体を震わした。

 リタの戦う姿を見た者はあまりの人智を超えた強さと闘い方に恐れ慄き、腰を抜かし、祈った。

 リタの強さも知っていた王子でさえ、規模が違いすぎる光景に衝撃で冷や汗が流れた。




 こいつの牙でマイラがこんな状態になったかと思えば、やり返さないと気が済まない。おれはしつこいんだ。

 完全に黒く焦げて撃沈した魔獣の額から杖を拾う。


 長い黒髪を靡かせ、谷を見下ろし、怒りのオーラを撒き散らしながら、次の魔獣を風の魔法で縛り切り裂き、電撃の魔法で止めをさす。


 何ヶ月も苦戦していた魔獣との戦いに、終止符を打ったリタは、電撃の魔術師として、伝説になった。






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