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平凡枠に転生したから仕方がないと受け止めていたら、違った。
平凡枠に転生したから仕方がないと受け止めていたら、違った。※
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デジャブのように相手が言う言葉や、行動を知ってると思う時がある。
最初は不思議だった。だけどある日突然わかった。
おれは本の世界に転生したんだ。
本の名前は忘れた。
前世はスーツと呼ばれる服をきて、信じられないくらい人に溢れた電車と呼ばれる乗り物に揺られながら通い、暗くなるまで働いていた記憶がうっすらある。
おれは暗くていじめられていて、いつのまにか本にも出てこなくなった平凡なモブだ。
8才のころ王都の学校に入って、その時はよかった。まだアトラスもおれをいじめてこなくて、身分の差はあるが、仲良く遊んでいた。
いつからかおれの容姿が見てられないから顔を隠せとか、みんなといるのにおれをいじめてきて、命令してきて子分扱いしてくるのようになった。
アトラスはこの国に数人しかいない侯爵の嫡子だ。
金髪碧眼のわかりやすい王子さまフェイスに、同年代と比べて一回りは立派な体格。
アトラスはいるだけで、どこにいても文句なく目立つ。悔しいがおれをバカにするのもわかるくらい頭もいい。おれはどちらかというと頭も悪い。
平民で平凡なおれはアトラスの使いパシリや荷物持ちをさせられている。
アトラスだけでも嫌だったのに。13才の時、子爵の息子のマイルズが入学してきた。位は劣るが領地に鉱山のあるマイルズはこの国でも突出している金持ちだ。
マイルズはおれに初めてあった時、瞳孔が開いたような顔で見てくるから気持ち悪いと思った。その後、なぜかおれの行くところに現れる。
積極的にいじめてこないだけ、アトラスよりましか。ただやっと一人になってホッとしたのに、マイルズが目の前にいた時は恐怖だ。
マイルズはプラチナブロンドの肩までの直毛をさらりと揺らしながら、屈み込んでおれの顔を見てくる。
マイルズの身長は高い。身長だけならアトラスに勝つだろう。甘やかな顔立ちは優しそうに見える。
そうやって顔を近づけるのに無言である。マッチなら数本乗りそうな睫毛はくるんと上を向いているのがわかる。
唇が触れそうなくらい近づいてくるから、くるっと後ろを向いて逃げた。
マイルズもアトラスもそうだが、素材一つ一つが立派すぎる。
明らかに凡人と違う体格。キラキラの髪や艶々の肌。顔の造作も鼻筋は通り、唇も綺麗な形だ。指も苦労したことがないからか、二人とも長くてきれいだ。
剣の訓練もしてるって言ってたのに、主人公補正か手にタコもできないんだろう。
いくら王都では有名な学校でも、商人や町人も入るような学校だ。アトラスもマイルズもなぜこの学校にいるんだ。貴族は普通貴族学校や騎士養成学校に行く。
噂ではアトラスもマイルズも一目惚れした子を探しているとか。それならおれなんかに構ってないで、その子を追いかけたらいいのに。それがヒロインか。
おれだって最初から、顔を隠すような髪型や、いつも俯いてばかりじゃなかった。
アトラスが、おれの顔を誰にも見せるなと言うから、いつのまにか俯いて長くした髪で顔を隠すようになった。そんなに不細工なんだおれ。
アトラスにこの髪型にしろって言われているし。
前髪が目の前を覆っているのって好きじゃない。
だけどアトラスに怒られるのもしんどい。後少し、ヒロインが現れるまでの我慢だ。
いじめられるのも仕方がないんだ。
そう言う役回りだからだ。
この一年を乗り越えたら、アトラスとマイルズはヒロインを巡ってライバルになる。アトラスはヒロインと結びつくからそれまでの我慢だ。マイルズはどうなったか知らん。
二人ともヒロインに夢中になったら、おれなんかに見向きもしないはずだ。
そう思って我慢して生きていた。
ヒロインは赤い髪を持つ、元平民出身の男爵令嬢だ。
ついにヒロインがクラスに転入してきた。本と同じ特徴を持っている彼女がヒロインに違いない。
主人公であるアトラスはヒロインと出会ったのに反応が薄い。無表情だ。姿勢正しく座ったままだ。
ヒロインは実は貴族の娘だが、幼い頃に誘拐されて、鍛冶屋に拾われて育てられた。その後、無事に両親に見つけてもらい、今に至る。
ヒロインは苦労しているのに、明るくて前向き、そんなところにアトラスもマイルズも惹かれるんだ。
もう少しで解放だって我慢してたのに、アトラスとマイルズの二人はおれを巡ってケンカしている。
やめて?
こいつらはドキドキの恋愛より、いじめでどっちがイニシアチブを取るかで争っている。なんて幼稚な奴らだ。
おれの人生終わってる。
剣捌きが、どっちが綺麗だったか、どっちがおれを守れるか訳のわからない理由で、胸ぐらを掴みあっている。
「おいシモンズ俺の剣の方が優れていると言え。言えばお前をついでに守ってやる」
「シモンズ君、私の方が上手ですよね。あなたを守れるのは私です」
知らねー。平民には剣の授業ないし、剣なんて普段見ないし。今は自分の授業を捨てて、アトラスの荷物持ちをしているだけだ。あーあ、自分の授業受けたかったな。
知らない顔をしていたら
「「シモンズ!」」
こういう時だけ息ぴったりだな。
それに守るって言うけど、この平和な世の中で何から守るって言うんだ。
もしかしてそんな危険があるところにおれを連れて行く気か。
貴族怖い。
二人はジト目でこちらを見ている。
おれを咳を一つして、仕方がなく二人を見た。
なんでこいつらこんなに仲が悪いんだ。ヒロインを取り合う仲だから仕方がないんだろうか。
おれはこういう時どうすればいいか知っている。いじめられているうちに身につけた処世術だ。
「・・・アトラスさまは」
おれが口を開くと二人とも、真剣な顔で聞き始めた。
「力強い剣です。どんな獰猛な魔物も退治できるでしょう」
アトラスが勝ち誇った顔をしている。
「マイルズ様は優美で俊敏な剣です。どんな俊敏な魔物でも退治できるでしょう」
マイルズも悪くないって顔をしている。
ぶっちゃけ二人の剣捌きなんか知らないんで、イメージで言ってみた。
それぞれ褒められて満足したみたいだ。なんとか場を凌いだとほっとしたのに
「「どっちの剣が好きなんだ!」」
ちらっと見ただけで、細マッチョで優美でタイプの違う美形な二人が肩当てに剣を持っていると、ワイルドさも加わってカッコいい。この絵姿を売るだけでしばらく食べていけそうだ。
見てるだけでイライラする。僻みである。
同じクラスの生徒がおれを呼んでいる。やった。
「シモンズ! 先生が呼んでいるぞ」
「はーい」といいながら、おれは手に持っていたアトラスの荷物をマイルズに預ける。
「「シモンズ!」」
「アトラス様たちも早く着替えに行かないと次の授業に遅れますよ」
気を遣っているように言いながら走り去る。
「シモンズ!」
アトラス様が怒ってる。
でもおれも怒っているのである。何年も何年も我慢していたんだ。アトラスの使いパシリも、ヒロインが転入してきたら終わるって。
念願のヒロインがやってきても何も変わらないってどういうことだ。
さすがのおれも考える。
もうやめたい。いや、やめよう!
長年の勘でアトラスが声をかけてくるタイミングがわかる。
その前に席を立つ。さっと教室から走り抜け、だれもいない裏庭で密かに用意したランチボックスを食べる。
あー前からこうしてればよかった。
すると、予想通りマイルズがニコニコ顔で、側に寄ってくる。どうやっておれがどこにいてもわかるのか知りたい。座っていいかも聞いてこないし、図々しいやつだ。
それに「美味しそう」っておれのランチを物凄く欲しそうに見てくる。また距離が近い。サラサラのプラチナブロンドを片耳にかけて、おれを見てニコニコしている。ホントキレイな顔。
仕方がないから、「ほら」とフォークでさして渡すと、目を輝かして「美味しい」と言ってくるから悪い気はしない。
寮に帰ると、案の定、腕を組んで怒っているアトラスが待っていた。おれはアトラスの使いパシリとして同室にさせられている。故におれに心休まるプライベートはない。
「今日一日なぜおれから逃げた」
「別に」
「なぜ逃げた」
すごい圧で壁際まで追いやられる。
「なぜだ」
「逃げてない。別に自由に行動したっていいだろ」
「なんだと、お前はおれのいうことを聞いていればいい」
アトラスはおれのズボンを下ろすと、片手でおれのアソコを触ったり揉んだりしてくる。
「ぎゃー」
緩く立ち上がってくると、扱き始める。
「や」
こんなことされたことない。潰されるのかと顔面蒼白になる。まごうことなき男の急所である!
「ほら顔をみせろ」
顔を覆っている、前髪を手櫛で、耳にかけられる。額と目が現れる。おれもアトラスを間近に見えてしまう。
おれが涙目になっているのを見て、アトラスは満足気に笑うと、そのまま耳たぶを唇で食んでくる。本当性格悪い。
おれの体がビクンとなると、アトラスはにやりと笑う。
そのまましゃがむと、おれの完全勃ったものに舌を這わす。
「あ」
アトラスはおれの顔を見ながら、ジュブジュブなめてしゃぶって咥えてくる。
あの、俺様の偉そうで、王子さまのようにかっこよくて綺麗なアトラスが、おれの物を舐めながら上目遣いでおれを見てくる構図に、信じられなくてすぐにイッてしまいそうになる。
アトラスなんでこんなことをする?
戸惑いながらも、初めての感覚に振り回される。
「怖い」
「逃げるな」
「や・ん、ん」おれが感じいって身を捩る。
「いけ!」
アトラスの頭をかかえて、アトラスの口の中に射精する。いつの間にか、アトラスの顔に下腹を押さえつけていた。
あまりの気持ちよさに惚けていると、「こんなに恥ずかしくて気持ちいいことをしてやれるのはおれだけだ。わかったらおれから離れるな」
と口を拭ったアトラスに言われる。
アトラスに子供のように、下着とズボンをあげられる。
え、アトラスおれの飲んじゃったの?
「仕方がないやつだ」ってフフって笑ってるけど、おれのせいじゃない!
次の日もヒロインなんか目に入らない様子で、おれにしょうもない用事をいいつけてくる。おれの首に腕を回しながら。密着度がすごい。
なんか悪化してないか?
アトラスが先生に呼び出されたといって、先生の部屋に行った。おれはその部屋の前に待機しとけと言われる。
先生の部屋の前で待機とか、罰を受けているみたいで、気が乗らないが、しぶしぶ待っている。
あれから、なんか弱みを握られた気になって、アトラスの言うことをきいている。アトラスの思惑通りだ。ため息しか出ない。
廊下の向こうでマイルズが、手を振っておれを呼んでいる。少しくらいならいいかと、部屋の前から離れると、マイルズに腕を引っ張られて、使っていない部屋に入れられる。
「ひどいよシモンズ。裏庭で待っていたのにこないんだから」
「約束なんてしてない」
「それにアトラスにベタベタ触らせて、私に妬かせたいのか?」
「ち、違う」
何言ってるんだこいつ。
「そうだよね。悪いのはアトラスだよね。私も好きにする」
マイルズはいきなり口を覆ってきた。噛み付くようなそれが、キスだと気づくのに少し時間がかかった。
なんだこいつ、と思って離れようともがくが、体格差があって離れられない。
初めてのキスが!
こいつとなんか、ノーカンだ。
ガラッと教室のドアが開くとアトラスが入ってくる。
「シモンズ何をしている!」
いや、おれじゃない!
アトラスは、おれが動けなくて、マイルズが止めないのを見ると、しゃがみこんでおれのズボンを下ろす。またおれのをいきなり咥え始めた。
や、やめて
マイルズには唇と舌をニュルニュルチュッチュッと吸われながら、なぜか服ごしに胸を揉まれ、アトラスにはお尻を揉まれながら、ちんこをチュパチュパと口で扱かれる。
おれは意味がわからなさすぎて、パニックになった。
酸欠みたいになりながら、無理やり射精させられる。
解放されて、床にへたり込む。
「私がいかせた」「いや、おれだ」
おれの頭上で言いあってたいたはずの二人が、途中からなぜか熱心に頭を突き合わせて相談しているのが見えた。
「ここは順番に」「いや、それよりも」
なんか協力し合おうとしてる?
おれはイッた余韻もそこそこに、パンツとズボンをそっと履いて、ダッシュでその場から逃げた。
いやだ。こいつら怖い!
おれはヒロインがきたら、こいつらとは関係がなくなる、いつのまにかストーリーから消えてなくなるモブだ。だから仕方がない、今だけだと我慢していたのだ。
それなのに話が違う!
おれは学校を抜け出すと、王都の家まで直接帰った。
もう学校なんてやめる。たまたま計算が得意だから、もったいないからと学校に行かせてくれた母ちゃんごめん。
突然帰ってきて、部屋に閉じこもったおれを両親は心配した。布団に潜り込みながら「貴族怖い」とガクガク震えながら呟く。
おれは知らなかった。豪華な馬車で正装したアトラスとマイルズがおれを迎えに来ることを。
立派な貴族が親切な顔で迎えにきたことに感動した母ちゃんが、二人を部屋に入れることを。
最初は不思議だった。だけどある日突然わかった。
おれは本の世界に転生したんだ。
本の名前は忘れた。
前世はスーツと呼ばれる服をきて、信じられないくらい人に溢れた電車と呼ばれる乗り物に揺られながら通い、暗くなるまで働いていた記憶がうっすらある。
おれは暗くていじめられていて、いつのまにか本にも出てこなくなった平凡なモブだ。
8才のころ王都の学校に入って、その時はよかった。まだアトラスもおれをいじめてこなくて、身分の差はあるが、仲良く遊んでいた。
いつからかおれの容姿が見てられないから顔を隠せとか、みんなといるのにおれをいじめてきて、命令してきて子分扱いしてくるのようになった。
アトラスはこの国に数人しかいない侯爵の嫡子だ。
金髪碧眼のわかりやすい王子さまフェイスに、同年代と比べて一回りは立派な体格。
アトラスはいるだけで、どこにいても文句なく目立つ。悔しいがおれをバカにするのもわかるくらい頭もいい。おれはどちらかというと頭も悪い。
平民で平凡なおれはアトラスの使いパシリや荷物持ちをさせられている。
アトラスだけでも嫌だったのに。13才の時、子爵の息子のマイルズが入学してきた。位は劣るが領地に鉱山のあるマイルズはこの国でも突出している金持ちだ。
マイルズはおれに初めてあった時、瞳孔が開いたような顔で見てくるから気持ち悪いと思った。その後、なぜかおれの行くところに現れる。
積極的にいじめてこないだけ、アトラスよりましか。ただやっと一人になってホッとしたのに、マイルズが目の前にいた時は恐怖だ。
マイルズはプラチナブロンドの肩までの直毛をさらりと揺らしながら、屈み込んでおれの顔を見てくる。
マイルズの身長は高い。身長だけならアトラスに勝つだろう。甘やかな顔立ちは優しそうに見える。
そうやって顔を近づけるのに無言である。マッチなら数本乗りそうな睫毛はくるんと上を向いているのがわかる。
唇が触れそうなくらい近づいてくるから、くるっと後ろを向いて逃げた。
マイルズもアトラスもそうだが、素材一つ一つが立派すぎる。
明らかに凡人と違う体格。キラキラの髪や艶々の肌。顔の造作も鼻筋は通り、唇も綺麗な形だ。指も苦労したことがないからか、二人とも長くてきれいだ。
剣の訓練もしてるって言ってたのに、主人公補正か手にタコもできないんだろう。
いくら王都では有名な学校でも、商人や町人も入るような学校だ。アトラスもマイルズもなぜこの学校にいるんだ。貴族は普通貴族学校や騎士養成学校に行く。
噂ではアトラスもマイルズも一目惚れした子を探しているとか。それならおれなんかに構ってないで、その子を追いかけたらいいのに。それがヒロインか。
おれだって最初から、顔を隠すような髪型や、いつも俯いてばかりじゃなかった。
アトラスが、おれの顔を誰にも見せるなと言うから、いつのまにか俯いて長くした髪で顔を隠すようになった。そんなに不細工なんだおれ。
アトラスにこの髪型にしろって言われているし。
前髪が目の前を覆っているのって好きじゃない。
だけどアトラスに怒られるのもしんどい。後少し、ヒロインが現れるまでの我慢だ。
いじめられるのも仕方がないんだ。
そう言う役回りだからだ。
この一年を乗り越えたら、アトラスとマイルズはヒロインを巡ってライバルになる。アトラスはヒロインと結びつくからそれまでの我慢だ。マイルズはどうなったか知らん。
二人ともヒロインに夢中になったら、おれなんかに見向きもしないはずだ。
そう思って我慢して生きていた。
ヒロインは赤い髪を持つ、元平民出身の男爵令嬢だ。
ついにヒロインがクラスに転入してきた。本と同じ特徴を持っている彼女がヒロインに違いない。
主人公であるアトラスはヒロインと出会ったのに反応が薄い。無表情だ。姿勢正しく座ったままだ。
ヒロインは実は貴族の娘だが、幼い頃に誘拐されて、鍛冶屋に拾われて育てられた。その後、無事に両親に見つけてもらい、今に至る。
ヒロインは苦労しているのに、明るくて前向き、そんなところにアトラスもマイルズも惹かれるんだ。
もう少しで解放だって我慢してたのに、アトラスとマイルズの二人はおれを巡ってケンカしている。
やめて?
こいつらはドキドキの恋愛より、いじめでどっちがイニシアチブを取るかで争っている。なんて幼稚な奴らだ。
おれの人生終わってる。
剣捌きが、どっちが綺麗だったか、どっちがおれを守れるか訳のわからない理由で、胸ぐらを掴みあっている。
「おいシモンズ俺の剣の方が優れていると言え。言えばお前をついでに守ってやる」
「シモンズ君、私の方が上手ですよね。あなたを守れるのは私です」
知らねー。平民には剣の授業ないし、剣なんて普段見ないし。今は自分の授業を捨てて、アトラスの荷物持ちをしているだけだ。あーあ、自分の授業受けたかったな。
知らない顔をしていたら
「「シモンズ!」」
こういう時だけ息ぴったりだな。
それに守るって言うけど、この平和な世の中で何から守るって言うんだ。
もしかしてそんな危険があるところにおれを連れて行く気か。
貴族怖い。
二人はジト目でこちらを見ている。
おれを咳を一つして、仕方がなく二人を見た。
なんでこいつらこんなに仲が悪いんだ。ヒロインを取り合う仲だから仕方がないんだろうか。
おれはこういう時どうすればいいか知っている。いじめられているうちに身につけた処世術だ。
「・・・アトラスさまは」
おれが口を開くと二人とも、真剣な顔で聞き始めた。
「力強い剣です。どんな獰猛な魔物も退治できるでしょう」
アトラスが勝ち誇った顔をしている。
「マイルズ様は優美で俊敏な剣です。どんな俊敏な魔物でも退治できるでしょう」
マイルズも悪くないって顔をしている。
ぶっちゃけ二人の剣捌きなんか知らないんで、イメージで言ってみた。
それぞれ褒められて満足したみたいだ。なんとか場を凌いだとほっとしたのに
「「どっちの剣が好きなんだ!」」
ちらっと見ただけで、細マッチョで優美でタイプの違う美形な二人が肩当てに剣を持っていると、ワイルドさも加わってカッコいい。この絵姿を売るだけでしばらく食べていけそうだ。
見てるだけでイライラする。僻みである。
同じクラスの生徒がおれを呼んでいる。やった。
「シモンズ! 先生が呼んでいるぞ」
「はーい」といいながら、おれは手に持っていたアトラスの荷物をマイルズに預ける。
「「シモンズ!」」
「アトラス様たちも早く着替えに行かないと次の授業に遅れますよ」
気を遣っているように言いながら走り去る。
「シモンズ!」
アトラス様が怒ってる。
でもおれも怒っているのである。何年も何年も我慢していたんだ。アトラスの使いパシリも、ヒロインが転入してきたら終わるって。
念願のヒロインがやってきても何も変わらないってどういうことだ。
さすがのおれも考える。
もうやめたい。いや、やめよう!
長年の勘でアトラスが声をかけてくるタイミングがわかる。
その前に席を立つ。さっと教室から走り抜け、だれもいない裏庭で密かに用意したランチボックスを食べる。
あー前からこうしてればよかった。
すると、予想通りマイルズがニコニコ顔で、側に寄ってくる。どうやっておれがどこにいてもわかるのか知りたい。座っていいかも聞いてこないし、図々しいやつだ。
それに「美味しそう」っておれのランチを物凄く欲しそうに見てくる。また距離が近い。サラサラのプラチナブロンドを片耳にかけて、おれを見てニコニコしている。ホントキレイな顔。
仕方がないから、「ほら」とフォークでさして渡すと、目を輝かして「美味しい」と言ってくるから悪い気はしない。
寮に帰ると、案の定、腕を組んで怒っているアトラスが待っていた。おれはアトラスの使いパシリとして同室にさせられている。故におれに心休まるプライベートはない。
「今日一日なぜおれから逃げた」
「別に」
「なぜ逃げた」
すごい圧で壁際まで追いやられる。
「なぜだ」
「逃げてない。別に自由に行動したっていいだろ」
「なんだと、お前はおれのいうことを聞いていればいい」
アトラスはおれのズボンを下ろすと、片手でおれのアソコを触ったり揉んだりしてくる。
「ぎゃー」
緩く立ち上がってくると、扱き始める。
「や」
こんなことされたことない。潰されるのかと顔面蒼白になる。まごうことなき男の急所である!
「ほら顔をみせろ」
顔を覆っている、前髪を手櫛で、耳にかけられる。額と目が現れる。おれもアトラスを間近に見えてしまう。
おれが涙目になっているのを見て、アトラスは満足気に笑うと、そのまま耳たぶを唇で食んでくる。本当性格悪い。
おれの体がビクンとなると、アトラスはにやりと笑う。
そのまましゃがむと、おれの完全勃ったものに舌を這わす。
「あ」
アトラスはおれの顔を見ながら、ジュブジュブなめてしゃぶって咥えてくる。
あの、俺様の偉そうで、王子さまのようにかっこよくて綺麗なアトラスが、おれの物を舐めながら上目遣いでおれを見てくる構図に、信じられなくてすぐにイッてしまいそうになる。
アトラスなんでこんなことをする?
戸惑いながらも、初めての感覚に振り回される。
「怖い」
「逃げるな」
「や・ん、ん」おれが感じいって身を捩る。
「いけ!」
アトラスの頭をかかえて、アトラスの口の中に射精する。いつの間にか、アトラスの顔に下腹を押さえつけていた。
あまりの気持ちよさに惚けていると、「こんなに恥ずかしくて気持ちいいことをしてやれるのはおれだけだ。わかったらおれから離れるな」
と口を拭ったアトラスに言われる。
アトラスに子供のように、下着とズボンをあげられる。
え、アトラスおれの飲んじゃったの?
「仕方がないやつだ」ってフフって笑ってるけど、おれのせいじゃない!
次の日もヒロインなんか目に入らない様子で、おれにしょうもない用事をいいつけてくる。おれの首に腕を回しながら。密着度がすごい。
なんか悪化してないか?
アトラスが先生に呼び出されたといって、先生の部屋に行った。おれはその部屋の前に待機しとけと言われる。
先生の部屋の前で待機とか、罰を受けているみたいで、気が乗らないが、しぶしぶ待っている。
あれから、なんか弱みを握られた気になって、アトラスの言うことをきいている。アトラスの思惑通りだ。ため息しか出ない。
廊下の向こうでマイルズが、手を振っておれを呼んでいる。少しくらいならいいかと、部屋の前から離れると、マイルズに腕を引っ張られて、使っていない部屋に入れられる。
「ひどいよシモンズ。裏庭で待っていたのにこないんだから」
「約束なんてしてない」
「それにアトラスにベタベタ触らせて、私に妬かせたいのか?」
「ち、違う」
何言ってるんだこいつ。
「そうだよね。悪いのはアトラスだよね。私も好きにする」
マイルズはいきなり口を覆ってきた。噛み付くようなそれが、キスだと気づくのに少し時間がかかった。
なんだこいつ、と思って離れようともがくが、体格差があって離れられない。
初めてのキスが!
こいつとなんか、ノーカンだ。
ガラッと教室のドアが開くとアトラスが入ってくる。
「シモンズ何をしている!」
いや、おれじゃない!
アトラスは、おれが動けなくて、マイルズが止めないのを見ると、しゃがみこんでおれのズボンを下ろす。またおれのをいきなり咥え始めた。
や、やめて
マイルズには唇と舌をニュルニュルチュッチュッと吸われながら、なぜか服ごしに胸を揉まれ、アトラスにはお尻を揉まれながら、ちんこをチュパチュパと口で扱かれる。
おれは意味がわからなさすぎて、パニックになった。
酸欠みたいになりながら、無理やり射精させられる。
解放されて、床にへたり込む。
「私がいかせた」「いや、おれだ」
おれの頭上で言いあってたいたはずの二人が、途中からなぜか熱心に頭を突き合わせて相談しているのが見えた。
「ここは順番に」「いや、それよりも」
なんか協力し合おうとしてる?
おれはイッた余韻もそこそこに、パンツとズボンをそっと履いて、ダッシュでその場から逃げた。
いやだ。こいつら怖い!
おれはヒロインがきたら、こいつらとは関係がなくなる、いつのまにかストーリーから消えてなくなるモブだ。だから仕方がない、今だけだと我慢していたのだ。
それなのに話が違う!
おれは学校を抜け出すと、王都の家まで直接帰った。
もう学校なんてやめる。たまたま計算が得意だから、もったいないからと学校に行かせてくれた母ちゃんごめん。
突然帰ってきて、部屋に閉じこもったおれを両親は心配した。布団に潜り込みながら「貴族怖い」とガクガク震えながら呟く。
おれは知らなかった。豪華な馬車で正装したアトラスとマイルズがおれを迎えに来ることを。
立派な貴族が親切な顔で迎えにきたことに感動した母ちゃんが、二人を部屋に入れることを。
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