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番外編

待てが出来ない藤井に俺は失笑せざる得ない

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 やっとこいつら付き合ったのか。

 夏休み明け、前より甘い雰囲気がだだもれな藤井と二木。特に、藤井の二木に対する過保護がさらにひどくなっている。
 

 一学期
 こいつらがモダモダしているから、クラスの雰囲気がおかしかった。
 特に藤井。クラスで一番背が高くて、ガタイがよくて、顔もよくて、スポーツもできて、ついでに頭もそこそこいいらしい。

 だが二木に、対する態度がキメェ。

 入学式の時から狙っていたのか、ずっと隣の席をキープして、窓の外を眺める二木をずっと眺める藤井。

 他のやつが、二木に話かけると無言で圧力かけやがる。それだけでなく呼び出して、必要最低限しか話しかけるなと言ってるのを聞いた時には、引いた。

 最初はいじめなのかと思った。藤井が二木をターゲットにして、クラスで孤立させようとしているのかと。
 それはそれで幼稚な行為だと思った。

 だけど、なぜか自分は率先して二木と関わろうとするし、話をすることがない割にはうっとりしたり、一人スマホを見てにやにや笑ってたりするのを見て、キメェと思う。

 ちらっと画面が見えたが、二木がうつっていたような。
 ストーカーもやってるのかとぞっとする。
 
 二木は何も気づかず、一人過ごしている。クラスのやつらから、引かれているのには気づいているみたいだが、自分から積極的に声をかけるタイプでもないみたいだ。

 ある日、担任から二木にプリントを渡すように渡された。めんどくせーと思いながら、二木にプリントを渡す。

 隣の席から、藤井が睨んでくる。お前は番犬か。ヘタレな番犬。飼い主に気づかれていない、駄犬。
 失笑してしまう。

 その日から、駄犬が飼い主に話しかけるようになっていた。キャンキャンうるせーなって思っていたが、二木が駄犬相手に嬉しそうに笑ってるから、仕方がねーなって思ってた。

 その駄犬のせいでクラスから浮いてたの知ってるか?って言いたくなったが、何事も自己責任と思うおれは何も言わなかった。

 二木を駄犬に差し出せば。駄犬が落ち着き、クラスも過ごしやすくなる。

 人身御供

 生け贄

 狙われた草食動物

 次々頭に浮かぶが、頭を振って追い出す。


※※


 二木が授業中に転んで左膝を怪我した。と言っても転けた本人も痛いとも言わないし、もちろん泣きもしない。少し血が出てただけだ。

 番犬改め、馬鹿な駄犬が大慌てで、二木を膝下から掬い上げ、背中から肩に手を回し、胸に体を当てて、「保健室行きます」と言って走り去った。

 あまりのスピードに
 「すげーな」
 「あれお姫様抱っこだよな」
 「そんなに大変な怪我ならストレッチャーとかで運んだ方が良くないか?」

 クラスがざわめく。

 みんな、まともなことを言ってやるな。たぶん連れ去られた本人が一番そう思ってるだろうから。

 次の授業前には戻ってきたが、二木は眠そうな目でぼんやりとしていたが、藤井は浮かれた充実してますオーラを出していて、まじウゼェ。

 二木の鞄を持ってやったり、机のフックにかけてやったりとまじ甲斐甲斐しくて気持ち悪い。

 いや、二木普通になんでもできるやつだぜ?
 なんの意味がある? と思う。

 はたっとこれもみんなに対する牽制か、と思いあたる。だれも二木の世話なんかしたがるやついねぇって、思ってたけど、二木と目が合えば顔を赤くしたり、藤井みたいに、見つめ続けているやつもいることに気づいた。

 二木 男難の相でも出てんじゃないか?

 二学期、二人が付き合い初めて、クラス的には落ち着いてきていた。

 体育の時に、たまたま委員会で藤井が遅れている時に限って、ペアで柔軟や、筋トレになった。

 当然だれも二木とは組みたがらない。「松木は二木ちゃんと組んであげなよ」結構仲良くしている田中に言われる。

 こいつも話題にはしたことはないが、藤井二木に思うとこあるんじゃないかな。

 田中はかしこくて、藤井の前だけ、藤井サイドの人間だよって雰囲気で二木に話しかける。

 二木はきっと田中と藤井、もしかしたら俺も藤井の友達って思ってるかも知れない。

 残念ながら、独占欲の強い粘着質なヘタレワンコは友達じゃねぇ。

 嫌だって言いたかったが、きっと二木はクラスで友達がいねぇと思ってて、話すのも下手で、新学期から一ヶ月以上もクラスで孤立させられていたような奴だ。

 自己責任といいたいが、俺も気付いていたのにほっていた罪悪感があった。

 しゃあーねーな。

 たぶんこの後、藤井から被害にあうのは二木だけど、きっとそうなるのは遅いか早いかだけ。

 今この場で話す相手がいない方が辛いかも知れない。

 「二木やるか」

 声をかけると、ぱっと周りが明るくなるような、可憐な笑顔をみせた。

 二木の周りのやつらが顔を赤くして、二木を見ている。男子に可憐ってどうかと思うけど。あの藤井が、ほれるくらいだから可愛いいのは決まってる。
 
 俺としたら容姿よりも性格が良さそうなのが好感度が高い。

 「ありがとう」
 二木はニコリと恥ずかしそうに笑う。

 たぶんこの恥ずかしそうな顔に、みんなやられるんだろうな。
 一緒に柔軟していたら、二木は身なりを構わないのか、体操服がペロリと捲れて、白い肌が見えている時が有った。
 これ、これ。

 周囲の奴が、二木の腹を見てる視線を感じるが、二木は鈍感なのか何も気付かない。
 いや、服直せよ!
 捲れてるって、と世話をしそうに、なってハッとする。やべわ、藤井化しそうに、なっていた。

 もしかして、藤井が、やばいんじゃなくて。やばいのは二木かと思い直しているところに、凶暴と化した番犬がすごいスピードで戻ってきた。

 周囲の視線を蹴散らしながら、二木の元に辿り着くと、せっせっと服を直している。

 そのまま二人で、ペアを組みそうになっていたが。二木が、俺を振り返る。
 「松木君」
 藤井が、撫然としている。
 「何こいつと組んでたの」
 学校の授業だからね。文句あるなら、先生に言ってくれ。
 
 「松木君も一緒にしよ」
 ジョーダン。隣の駄犬が凶暴化してる。表情抑えろって。

 「俺こいつと組むの忘れてた」
 ちゃっかり見学している田中の首根っこ捕まえる。

 「そうなの?」こらこら二木、残念そうな顔しない。隣の嫉妬深い駄犬の限界超えそう。駄犬の凶暴化に笑いそうになる。

 俺は二木の顔を眺める。隣の表情に気付かず平和そうな顔だ。この後二木がどうなるのか考えたくもない。

 「ま、がんばれよ」
 俺はあくまで他人事のエールを送った。

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