4 / 55
第一章
空から落ちた死神は少女と出会う。1
しおりを挟む「わああああああああああぁぁあぁぁああ」
オレはどこから落とされたのか。考える隙もなく、物凄い速さで急降下していた。雲になった水蒸気が顔に当たる。地面に当たる恐怖で必死に目をつむる。
バサバサバサッ
「つっっっ」
葉がこすれる音。感触的に木に落ちているのだろう。バキバキベキベキと枝が折れる音もする。
ドサッ
「ぐっ、たぁっ…………」
落ち終わり、しばらくそのまま横たわっていた。
恐る恐る目を開けると、見えるのは空、と枝が中途半端に折れ空中にぶら下がって揺れている木々。辺りの木の多さから森か林に落ちたことがわかった。
「あいつ、殺す気か…………」
オレを落としたであろう赤髪の死神を思い出しながら、勢いよくオレは上半身を起こした。
「はっ」
ぺたぺた両手で自分の身体の至る所を確かめる。
「な……あんな高さから落ちたんだぞ……?」
気がつけば無傷に五体満足でいた。落ちた瞬間に痛かったはずの背中もすでになんともない。
「はは……」
オレは思った。
オレはどこかの森で迷い遭難し、今の今までそれを忘れてただけで。どこからか滑り落ちた瞬間に気を失ってただけなんだと。
気を失ってた間、変な夢を見ていただけ……。
──「夢じゃないってば」
赤髪をした自称死神をもう一度思い出す。
「………………」
確かに、ここがどこかもわからないのに夢だったという証拠もない……か。
「それに……」
なんだか自分の服装には違和感がしていた。
黒くて長いローブに、黒いシャツとズボン。さっきまで着ていた服とは違うような……。
これじゃまるで──
「『死神』じゃないか」
ただその場に座り込んでいても何も解決しないため、オレはここがどこか確認するためになにかないかと探すことにした。
「よっ」
土で不安定な足元。立ち上がり服に付いた汚れを手で払いながら全身を動かす。
「やっぱりなんもないよな……」
痛みも何もない身体に、空から落ちていた事実との矛盾を感じながらオレは適当に歩き出そうとした。
その時、ひらりと自分の服から下に、なにかが落ちるのが見えた。
「なんだ……?紙?メモ?」
拾い上げて折りたたまれたそれを広げる。
〈こっちで調べて得ている情報!
その1、その少女は学生らしい。
その2、森の中のお寺に住んでるらしい。
その3、両親の影はなし、一人暮らし?
その4、生活には困ってない模様、資金面は問題がない?
追伸、1日の終わりにちゃんと仕事の報告はいれること!以上! メル〉
「………………」
「雑だな……」
とりあえず夢ってことにしようとしていたオレの考えが甘かったらしい。事実がどうであれ、夢は夢なのだと思いたかったのに。
「『死神』の仕事か……なんだっけ……」
メルとの会話を思い出す。『神様』とかいうメルの上司からの依頼。
──「えーっと。〈ここ最近、死期を迎えていない人間の勝手な死が増えているような気がします。処理するのが緊急になるから面倒くさいので、原因調べてどうにかしてください。神様〉だって。」
「雑だったな……」
「それでそれをどうにかしろとか、結局やることは何もわからないじゃないか……」
「はぁー……」
オレはため息をついた。仕方ないがやるしかなさそうだ。
今までの聞いた情報を整理すると、その原因に関わってそうな少女がいると。
それでメルのメモによると森の中に寺があってそこにいる、らしい。
らしいってのが曖昧すぎて気になるが、他にアテもない。それにメルがオレを落としたとして、全く関係のない場所に落とすか……?
そう考えると、オレが今いるこの森が少女の住んでる森なんだろう。
(というか、森に住んでるってなんだよ。めちゃくちゃ野生児、的な……? 親の代わりはオオカミとか……)
突飛した想像をしつつオレは行く先を決める。
「まずは、日が暮れる前に寺探しか……」
太陽の方向を見る。細かくはわからないが昼過ぎだろう。夕方までそんなに時間はない。ここには人工的な明かりもないだろう。そうなると暗くなって探すどころじゃなくなる。
「とりあえず、歩くか」
簡単には会えそうにない、そう覚悟した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―
コハラ
ライト文芸
余命半年の夫と記憶喪失の妻のラブストーリー!
愛妻の推しと同じ病にかかった夫は余命半年を告げられる。妻を悲しませたくなく病気を打ち明けられなかったが、病気のことが妻にバレ、妻は家を飛び出す。そして妻は駅の階段から転落し、病院で目覚めると、夫のことを全て忘れていた。妻に悲しい思いをさせたくない夫は妻との離婚を決意し、妻が入院している間に、自分の痕跡を消し出て行くのだった。一ヶ月後、千葉県の海辺の町で生活を始めた夫は妻と遭遇する。なぜか妻はカフェ店員になっていた。はたして二人の運命は?
――――――――
※第8回ほっこりじんわり大賞奨励賞ありがとうございました!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる