55 / 55
第四章
亡くし屋の少女は貴方に問う。
しおりを挟む
亡くし屋の少女、雪乃亞名は夜の学校の屋上に立っていた。短めのサラリとした黒髪を風で揺らし、その髪を顔にかからないように左手で耳元へとかける。
その前髪が少しかかった隙間からはとても深い青色をしていてまるで吸い込まれそうな瞳が覗いていた。
屋上にはもう一人少女が立っていた。こちらは今にも落ちそうな縁に立っていて柵に手をかけ辛うじて落ちないでいるようなそんな状況だ。
亡くし屋の少女は聞いた。
「貴方は、死ぬことが悪いことだと思いますか?」
と。
対して問われた少女は言った。
「だって、しょうがないじゃない。これしか、これしかないんだもの」
亡くし屋の少女は続ける。
「それは貴方が自ら選んだことですか? それとも誰かのせいにしたいからですか?」
と。
少女は震えながら答える。
「し、死んであいつらを見返してやるのよっ、遺書だってちゃんと書いてあるし」
亡くし屋の少女は伏し目がちに言った。
「死はそこにあるだけです。それでも貴方はそれを選びますか?」
と。
少女はそれに動揺し、
「それってどういうことなのよ」
と亡くし屋の少女を問い詰める。
すると亡くし屋の少女は、
「わたしは死んだことがないのでわかりません」
と答えた。
それに少女は憤りを感じ、
「いいから早くしてよ! 殺してくれるんでしょ!」
と叫び始める。
亡くし屋の少女は動じず、
「わたしは殺しません。亡くすだけ」
そう言った。
続けてこうも言った。
「死ぬことは悪いことだとわたしは思いません。けれどそれが自分で、自らの意思で選んだ『死』でなければわたしは亡くすことはしない。新たにそう決めたんです」
「貴方は死ぬことは悪いことだと思いますか?」
その前髪が少しかかった隙間からはとても深い青色をしていてまるで吸い込まれそうな瞳が覗いていた。
屋上にはもう一人少女が立っていた。こちらは今にも落ちそうな縁に立っていて柵に手をかけ辛うじて落ちないでいるようなそんな状況だ。
亡くし屋の少女は聞いた。
「貴方は、死ぬことが悪いことだと思いますか?」
と。
対して問われた少女は言った。
「だって、しょうがないじゃない。これしか、これしかないんだもの」
亡くし屋の少女は続ける。
「それは貴方が自ら選んだことですか? それとも誰かのせいにしたいからですか?」
と。
少女は震えながら答える。
「し、死んであいつらを見返してやるのよっ、遺書だってちゃんと書いてあるし」
亡くし屋の少女は伏し目がちに言った。
「死はそこにあるだけです。それでも貴方はそれを選びますか?」
と。
少女はそれに動揺し、
「それってどういうことなのよ」
と亡くし屋の少女を問い詰める。
すると亡くし屋の少女は、
「わたしは死んだことがないのでわかりません」
と答えた。
それに少女は憤りを感じ、
「いいから早くしてよ! 殺してくれるんでしょ!」
と叫び始める。
亡くし屋の少女は動じず、
「わたしは殺しません。亡くすだけ」
そう言った。
続けてこうも言った。
「死ぬことは悪いことだとわたしは思いません。けれどそれが自分で、自らの意思で選んだ『死』でなければわたしは亡くすことはしない。新たにそう決めたんです」
「貴方は死ぬことは悪いことだと思いますか?」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
熱い風の果てへ
朝陽ゆりね
ライト文芸
沙良は母が遺した絵を求めてエジプトにやってきた。
カルナック神殿で一服中に池に落ちてしまう。
必死で泳いで這い上がるが、なんだか周囲の様子がおかしい。
そこで出会った青年は自らの名をラムセスと名乗る。
まさか――
そのまさかは的中する。
ここは第18王朝末期の古代エジプトだった。
※本作はすでに販売終了した作品を改稿したものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる