凜恋心

降谷みやび

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予期せぬ治療 (おまけ)

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そんな起きたての後、雅は三蔵の元に向かっていた。

コンコン

『誰だ』
「相変わらず…おんなじ返答…クスクス…」
「終わったのか?」
「ん……でも…さすがにちょっと…堪えるのかも…」
「…全く…」

そう言いながらも雅は椅子に座る三蔵にきゅっと巻き付いた。

「…薬クセえな…」
「ごめんね?」
「後、ハイライトか…」
「…それもごめん」
「まぁそうだろうな…一晩一緒にいたんじゃ…」
「嫌味満載みたいに聞こえる…」
「みたい、じゃねえよ。嫌味だ」
「クスクス…」
「何笑ってやがる」
「…ありがとう」

そう答えると雅の体をグッと押し戻し三蔵は話し出す。

「昨日ほど雅に力が無けりゃ…って思ったことはねえな」
「三蔵?」
「良く考えてみろよ。俺でも雅に添い寝で治されたことねえんだ」
「無いに越したこと無いでしょ?」
「でもまぁ、良いか…」
「三蔵?」
「たかが治療のふれあいなんかじゃねえからな…」

そう呟いた。

「ばか…」
「……ほぅ?そのバカに溺れてんのは誰なんだよ」
「溺れてるのは三蔵でしょ?」
「あぁ、確かにな。」
「……もぉ…いつもみたいに『うるせえ』って言ってくれないと……」
「……Mだったのか…?」
「違う!!」
「訳解らねえな、どうしろってんだ?」
「……バカ」
「どの口が言ってやがる!」

椅子から立ち上がり、雅の体を反転させて逆に椅子に座らせると逃げ場を無くすかの様に壁に押し付ける。

「力使って疲れてるだろうからと甘く見ていたが…そうでも無さそうだな」
「…さ…んぞう?」
「気が変わった」

そう言うと唇を重ねた。しかしすぐに離れるとにっと笑いながら隙間から言葉を発する。

「口、開けろ」
「…ッッ…」
「早くしろ、」
「……三蔵…ッン…」

突如射し込まれた舌に深さも一気に押し寄せてきた。良いだけ絡めるとスッと離れる。

「ごちそうさま」
「さ……んぞう?」
「何だ」
「…キス…だけ?」
「あぁ」
「……ッッ…」
「それとも何だ?朝から盛ってんのか?」
「言い方!!!」

振り上げた右手の拳をぼすっと腹部に命中させるもなにも無いかの如くに微動だにしない三蔵。クツクツと喉を鳴らしながら法衣を着ると、さっさと部屋を後にしていった。

「こんの……バカ三蔵!!」

部屋に響いたのは雅の声だけだった。
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