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battle46…神と煩悩の狭間
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翌朝、八戒も悟浄も動けるようになっていた。
「雅、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ!」
「……の割には、少し足がもつれてますが…」
「はは、大丈夫!」
そう話していた。しかし、その理由を三蔵から聞いていた八戒は心配そうに顔を覗き込む。
「三蔵から聞いているんです。しんどいなら言ってくださいね?」
「んー、解った…」
「じゃぁ、悟空?買い出しいきますよ?」
「解った!!」
そう言って八戒は悟空をつれて買い出しに行く。戻り次第出発をするからと三蔵に言われていた。身支度を整える、と雅は揃っている部屋を後にする。残ったのは悟浄と三蔵の二人だった。
「……おい」
「ん?」
「…体はもういいのか」
「おんや、三蔵が珍しい…」
「…ッチ…もう聞かん」
「十分回復した。」
「だろうな」
「……悪かったな…」
「なにがだ。」
「いや…その」
「いっておくが、雅が貴様にしたのは治療行為以外の何物でもねえからな…」
「解ってるって…」
「だったら無駄なことなんざ言ってんじゃねえよ」
「……わり」
そう話していた。一時間、一時間半とした頃、八戒と悟空も戻ってきて荷物を詰め込むと出発していったのだった。
それから約一ヶ月。なぜか行く先々の街や村では宿は取れても大部屋ばかり、それでないと野宿…という形になっていた。
「なぁ、なんか……最近三蔵超機嫌悪くねえか?」
「確かに…でも…なにかあったんでしょうか…」
「思い当たる節はねえんだよな…」
「同感です。」
「なぁ、三蔵?」
「うるせえ」
いつもと同じ返事なのにも関わらず、何故かひしひしと苛立ちが伝わってくる。
「なぁ、雅?」
「何?」
「なんか三蔵機嫌悪くない?」
「そうなんだよね…どうかしたのかな……」
「雅でもわかんねえとなると……」
「重症、ですね」
そう話していた。
そしてある日の夕方……今夜は野宿かと諦めかけていた時だ。一つの寺院が見えてきた。
「あ、あそこで一泊だけさせて貰えないのかな?」
「野宿よりかはましか…」
「三蔵、話してこいよ!!」
「なんで俺が…!」
しかし、無情にも八戒はジープを停めた。気付けば寺院の前についていたのだ。
「どうかされ……!!その格好は!!」
中から出てきた一人の坊主は三蔵の格好を見ると慌てた様子で寺院の中に入っていった。
「なんだ?」
皆同じ疑問を抱えていたとき、奥から少し年いった坊主が一緒に出てきた。
「これは、玄奘三蔵法師殿…ではないでしょうか…?」
「…第三十一代唐亜玄奘三蔵。旅の途中で今夜一晩宿を借りたいとここに立ち寄った。」
「これはこれは!!滅相もない!一晩と言わず一ヶ月…いや、一週間でも!!」
そんな会話を聞いていた三蔵以外の面々は改めて三蔵の偉大さを目の当たりにしていた。
「実は三蔵ってスッゲェのな…」
「相変わらず、というところなんでしょうが……」
「猫何匹被ってんだよ……」
「あの、そちらの方々は…侍従の方々でしょうか…?」
「侍従?…下僕だ」
「どこでも言うのね…」
「いったな……」
「これも変わりませんね……」
「言うと思った……」
「やはりそうでしたか…三蔵法師様というお方の侍従の方々にしても柄の悪いお方々だと思いました。」
「…なぁんか棘あんだよねぇ……」
「まぁまぁ、悟浄」
「…歓迎…いたみいる」
「はい!!……あ」
「どうかしたか」
「いえ……ここは寺院でして…」
「それがどうした」
「女人は……」
そう言うと住職の視線は雅に向いた。
「あ……そういう…」
「構わん。あの女も一緒に『なりません!』……おい」
「ここは煩悩を滅するところでもあり、女人の立ち入りは……」
「ハァア……」
「どうするよ、三蔵」
「三蔵?」
「こら!そこの女人!!お前ごときが三蔵法師様を呼び捨てなど許されないぞ!」
「……そか、じゃぁ三蔵様?私ジープと一緒に外で寝るよ」
「ちょ…っ!!雅?何言って…」
「大丈夫だって!!みんなの分の毛布とかもあるし!」
「まぁそれでしたら…」
「おい、何言って……!」
グッと近付く三蔵。住職に聞こえないように雅は言葉を紡ぐ。
「皆の宿まで奪えない…私なら大丈夫」
「そうじゃなくて…!」
「三蔵?……ここは寺院だよ?状況や決まりごとは誰より三蔵が一番解ってるでしょ?」
「…だがな」
「三蔵?大丈夫。たった一泊だし。これがあの住職さんの言う通りに一週間も一ヶ月もとなるとしんどいけどね…」
「三蔵様、いきますよ?」
「ほら、呼んでる…!」
そういって背中を押された三蔵。後ろ髪を引かれるように一行は住職と坊主達につれていかれた。
「ごめんね?白竜…」
「キュキュキュ…」
「八戒と一緒に居たいのに……お外でごめんね?」
「キュキュ!」
大丈夫といっているかのようにジープの姿に変身した白竜の上に乗り、毛布を出すとくるっと体に巻き付けた。
「一人の野宿……か…どれくらいぶりだろうな……」
そう呟く言葉は白竜しか聞いていなかった…
連れていかれた一行も三蔵とその他の三人、といわんばかりに部屋を分けられた。
「はぁぁ…屋根があるところで寝られるってのはいいんだけどよ?」
「雅……大丈夫かな…」
「敷地内に入れさせて貰えてるだけでもよしとするべきなんでしょうか…」
「こんなんだったら皆で野宿のがよっぽどよかったじゃん…」
「今更、ですよ、悟空」
「風邪、引いたりしなきゃいいんだけど……」
「てか、このまま三蔵が黙ってれんのか?」
そっと悟空が襖を開けると二人係で廊下に正座し、見張り番といわんばかりの坊主が居るのを見た。
「なぁ…三蔵出れなくねぇかな…」
「は?」
「見張りが二人もいる……」
そういわれた時に八戒と悟浄ははぁっとため息をついた。しかしながらもそれぞれが各々の場所で眠りに付き、漆黒の空には金色に光る付きがじっと見下ろしている時だ。
ガサ……ガサ……
雅の眠るジープに近付く不穏な影…ギシリと乗り掛かると息を荒げた男二人が雅を押さえ込んだ。
「…!!!」
「大人しくしてたらすぐ終わるよ…」
「ずっと女なんていなかったからな……」
「ンンーー!!」
「大人しくしろって!!」
しかし白竜も身動きが取れない。放り投げれば雅まで落とすことになる。
「……!!ハァ…白竜!落として!」
「キュキュ…」
「いいから…!!」
その言葉でぽいっと三人は車外にいともあっさり放り投げられる。
「いって……!この……」
しかし坊主二人にすぐ捕まった雅。手を捕まれ、口は手で覆われ、一人ずつ、といわんばかりに一人が押さえ、もう一人が上に跨がる。
「すぐよくなるからな…」
「黙ってろよ?」
「ンンーー!!」
「胸は…少し小さいがまぁいいか…」
「ヘヘ、男よりは気持ちい体だろ?」
「まぁなぁ」
そう話しながら舌を這わせる。思いっきり顔を左右に振り口を押さえる手が外れた瞬間だった。
「…んぞ……三蔵ーー!!」
「…ッ!こいつ!おい!しっかり押さえてろって!」
「黙れっていってんだろうが!」
バシッと頬を叩かれ再度口を塞がれた雅。しかし、その声を三蔵が聞き逃すはずもなかった。
パシィィン!!
勢いよく襖は開き、見張りの坊主達もハッとうたた寝から目を覚ます。
「三蔵法師様!」
「退け!」
そのまま一目散に素足のまま庭に出てくる。
「おい!逃げろ!」
「捕まったら終わりだぞ!」
そういう坊主達のいくてを阻むかの様に悟浄と八戒も出てくる。少し遅れて悟空も参戦した。それをみて三蔵は雅のもとへとかけてくる。
「おい…!」
「……三蔵…ぉ」
「なにされた…」
「なにも……ただ…」
「…ッッ…チッ…もういい」
ふわりと抱き締めた三蔵。
「悪かった……」
「さ…んぞ…」
そんな所に悟浄と八戒が男共を連れてやってきた。
「おい、三蔵。どうする?」
「……」
三蔵は法衣を脱ぎ、雅に着せると八戒に目配せをして雅に着いて貰うと、二人の前にたった。
「何してんだよ、てめえら」
「な……何って……女人が…寒くないかと……」
「吐くならもっとましな嘘吐けってんだ、よ!!」
言い終わるが早いか三蔵の拳はその坊主の頬に直撃した。
「おい」
「ひ……ひぃぃ」
「ナメた真似してんじゃねえよ…」
「そ…そんな…暴力など……!」
「だったらてめえらが雅にしたのは許されるってのか?…面白れぇ……笑えねえ冗談だな!」
もう一人の胸ぐらをつかみ、再度頬に拳をいれる。地面に倒れ込む坊主達。そんな騒ぎを聞き付けた住職と付き人はやって来る。
「なんの騒ぎですか!三蔵法師様!」
「うるせえよ」
「暴力は!御仏様の前で」
「うるせえって言ってんだろうが」
「まぁ、そうなるわな」
「同感です。大丈夫ですか?雅…」
「ごめ……油断してた」
「あなたのせいじゃないですよ」
「キュキュ……」
「白竜も…ありがと」
「貴様は坊主達の管理も出来ねえのか」
「そ…それは…一体何があったんですか!」
「そんな事はそこの二人に聞くんだな」
そういうと八戒の元に戻り雅を抱き上げた三蔵。
「あぁっ!!そんな…!三蔵法師様ともあろうお方が……!そんな女人を…!」
「ガタガタうるせえんだよ。それとも何だ、俺のすることに文句があるのか…?」
「そうではなく…!」
「煩悩だ何だかんだって言う前にテメエの下に就いてる坊主の教育でもしてやがれ」
「で……でしたら玄奘三蔵様御自ら説法等をお教え願えれないでしょうか…?」
「……は?」
「二代に渡って来院されるのは御仏のお導きにまちがいないのです。女人の立ち入りも特別に許可致します!」
「…それ、光明三蔵にも同じこと言ったろ」
「えぇ……ですが丁寧にお断りされまして…」
「…相変わらず甘いな、お師匠様は…光明三蔵法師が敢えて言わなかった事、変わりに言ってやるよ。」
「……なんと…!」
「いい年こいてわがままばっかり抜かしてんじゃねえよ、ばーーーか」
それを聞いた一行はふっと笑いをこらえ、住職達は呆気に取られながらもやいのやいのと反論している。関係なく三蔵は抱き上げたままの雅を連れて部屋に戻っていった。それを見ながらも一行は三蔵の足元に気付いていた。
「おい…三蔵の足元…」
「……あ、」
「雅の声に草履すら履くのを忘れてくるとは…」
「あぁあ、全く。うちの三蔵ったら…」
そう話しながらもそれぞれ二部屋にわかれて執心に入ろうとしていた。しかし、雅と三蔵は眠れるわけもなかった。
「悪かったな…やっぱりあの時、無理矢理にでも連れていけばよかった。」
「そんな…三蔵のせいじゃないよ…」
「俺のせいだろうが…」
「大丈夫…」
「…たく」
再度ふわりと抱き締める三蔵。
「そんな震えてんのに大丈夫とか言うなよ…」
「……でも…ッッ…三蔵…!?」
ふと腕が緩んだとき、雅は三蔵の足が砂まみれになっていることに気付いた。
「なんだ」
「足……!どうして…」
「は?何言ってんだ」
「だって…!!」
「……あぁ、草履も履くの忘れてたな」
「忘れてたって…こんな砂だらけで…」
「大したことねえよ」
「そんな…お湯とタオル借りて来る!」
「バカ!」
後ろからグッと抱き締めた三蔵。
「さっきの事、もう忘れたのかよ…」
「でも…」
「問題ない」
「そんな……」
「うるせえよ…もう少し自分の事考えやがれ…」
そういいながら腕を緩めることなく三蔵は抱きいれたままだった。
「……三蔵…」
「あんな所だったから声は届いたけど……奥に連れ込まれていたら…聞こえなかったかも知れないと思ったら……俺が正気じゃいられなくなる…」
「三蔵…」
「それに…」
「……それに?」
「いや、何でもない」
ゆっくりと腕を緩めた三蔵はゆっくりと立ち上がった。
「足洗ってくる。先に寝てろ…」
「三蔵…?」
「なんだ」
「すぐ…戻ってくる?」
「あぁ。」
そう返事をして部屋を後にした。残された雅は三蔵の法衣にくるまり、気付けばいつのまにか眠りへと落ちていった。
「雅、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ!」
「……の割には、少し足がもつれてますが…」
「はは、大丈夫!」
そう話していた。しかし、その理由を三蔵から聞いていた八戒は心配そうに顔を覗き込む。
「三蔵から聞いているんです。しんどいなら言ってくださいね?」
「んー、解った…」
「じゃぁ、悟空?買い出しいきますよ?」
「解った!!」
そう言って八戒は悟空をつれて買い出しに行く。戻り次第出発をするからと三蔵に言われていた。身支度を整える、と雅は揃っている部屋を後にする。残ったのは悟浄と三蔵の二人だった。
「……おい」
「ん?」
「…体はもういいのか」
「おんや、三蔵が珍しい…」
「…ッチ…もう聞かん」
「十分回復した。」
「だろうな」
「……悪かったな…」
「なにがだ。」
「いや…その」
「いっておくが、雅が貴様にしたのは治療行為以外の何物でもねえからな…」
「解ってるって…」
「だったら無駄なことなんざ言ってんじゃねえよ」
「……わり」
そう話していた。一時間、一時間半とした頃、八戒と悟空も戻ってきて荷物を詰め込むと出発していったのだった。
それから約一ヶ月。なぜか行く先々の街や村では宿は取れても大部屋ばかり、それでないと野宿…という形になっていた。
「なぁ、なんか……最近三蔵超機嫌悪くねえか?」
「確かに…でも…なにかあったんでしょうか…」
「思い当たる節はねえんだよな…」
「同感です。」
「なぁ、三蔵?」
「うるせえ」
いつもと同じ返事なのにも関わらず、何故かひしひしと苛立ちが伝わってくる。
「なぁ、雅?」
「何?」
「なんか三蔵機嫌悪くない?」
「そうなんだよね…どうかしたのかな……」
「雅でもわかんねえとなると……」
「重症、ですね」
そう話していた。
そしてある日の夕方……今夜は野宿かと諦めかけていた時だ。一つの寺院が見えてきた。
「あ、あそこで一泊だけさせて貰えないのかな?」
「野宿よりかはましか…」
「三蔵、話してこいよ!!」
「なんで俺が…!」
しかし、無情にも八戒はジープを停めた。気付けば寺院の前についていたのだ。
「どうかされ……!!その格好は!!」
中から出てきた一人の坊主は三蔵の格好を見ると慌てた様子で寺院の中に入っていった。
「なんだ?」
皆同じ疑問を抱えていたとき、奥から少し年いった坊主が一緒に出てきた。
「これは、玄奘三蔵法師殿…ではないでしょうか…?」
「…第三十一代唐亜玄奘三蔵。旅の途中で今夜一晩宿を借りたいとここに立ち寄った。」
「これはこれは!!滅相もない!一晩と言わず一ヶ月…いや、一週間でも!!」
そんな会話を聞いていた三蔵以外の面々は改めて三蔵の偉大さを目の当たりにしていた。
「実は三蔵ってスッゲェのな…」
「相変わらず、というところなんでしょうが……」
「猫何匹被ってんだよ……」
「あの、そちらの方々は…侍従の方々でしょうか…?」
「侍従?…下僕だ」
「どこでも言うのね…」
「いったな……」
「これも変わりませんね……」
「言うと思った……」
「やはりそうでしたか…三蔵法師様というお方の侍従の方々にしても柄の悪いお方々だと思いました。」
「…なぁんか棘あんだよねぇ……」
「まぁまぁ、悟浄」
「…歓迎…いたみいる」
「はい!!……あ」
「どうかしたか」
「いえ……ここは寺院でして…」
「それがどうした」
「女人は……」
そう言うと住職の視線は雅に向いた。
「あ……そういう…」
「構わん。あの女も一緒に『なりません!』……おい」
「ここは煩悩を滅するところでもあり、女人の立ち入りは……」
「ハァア……」
「どうするよ、三蔵」
「三蔵?」
「こら!そこの女人!!お前ごときが三蔵法師様を呼び捨てなど許されないぞ!」
「……そか、じゃぁ三蔵様?私ジープと一緒に外で寝るよ」
「ちょ…っ!!雅?何言って…」
「大丈夫だって!!みんなの分の毛布とかもあるし!」
「まぁそれでしたら…」
「おい、何言って……!」
グッと近付く三蔵。住職に聞こえないように雅は言葉を紡ぐ。
「皆の宿まで奪えない…私なら大丈夫」
「そうじゃなくて…!」
「三蔵?……ここは寺院だよ?状況や決まりごとは誰より三蔵が一番解ってるでしょ?」
「…だがな」
「三蔵?大丈夫。たった一泊だし。これがあの住職さんの言う通りに一週間も一ヶ月もとなるとしんどいけどね…」
「三蔵様、いきますよ?」
「ほら、呼んでる…!」
そういって背中を押された三蔵。後ろ髪を引かれるように一行は住職と坊主達につれていかれた。
「ごめんね?白竜…」
「キュキュキュ…」
「八戒と一緒に居たいのに……お外でごめんね?」
「キュキュ!」
大丈夫といっているかのようにジープの姿に変身した白竜の上に乗り、毛布を出すとくるっと体に巻き付けた。
「一人の野宿……か…どれくらいぶりだろうな……」
そう呟く言葉は白竜しか聞いていなかった…
連れていかれた一行も三蔵とその他の三人、といわんばかりに部屋を分けられた。
「はぁぁ…屋根があるところで寝られるってのはいいんだけどよ?」
「雅……大丈夫かな…」
「敷地内に入れさせて貰えてるだけでもよしとするべきなんでしょうか…」
「こんなんだったら皆で野宿のがよっぽどよかったじゃん…」
「今更、ですよ、悟空」
「風邪、引いたりしなきゃいいんだけど……」
「てか、このまま三蔵が黙ってれんのか?」
そっと悟空が襖を開けると二人係で廊下に正座し、見張り番といわんばかりの坊主が居るのを見た。
「なぁ…三蔵出れなくねぇかな…」
「は?」
「見張りが二人もいる……」
そういわれた時に八戒と悟浄ははぁっとため息をついた。しかしながらもそれぞれが各々の場所で眠りに付き、漆黒の空には金色に光る付きがじっと見下ろしている時だ。
ガサ……ガサ……
雅の眠るジープに近付く不穏な影…ギシリと乗り掛かると息を荒げた男二人が雅を押さえ込んだ。
「…!!!」
「大人しくしてたらすぐ終わるよ…」
「ずっと女なんていなかったからな……」
「ンンーー!!」
「大人しくしろって!!」
しかし白竜も身動きが取れない。放り投げれば雅まで落とすことになる。
「……!!ハァ…白竜!落として!」
「キュキュ…」
「いいから…!!」
その言葉でぽいっと三人は車外にいともあっさり放り投げられる。
「いって……!この……」
しかし坊主二人にすぐ捕まった雅。手を捕まれ、口は手で覆われ、一人ずつ、といわんばかりに一人が押さえ、もう一人が上に跨がる。
「すぐよくなるからな…」
「黙ってろよ?」
「ンンーー!!」
「胸は…少し小さいがまぁいいか…」
「ヘヘ、男よりは気持ちい体だろ?」
「まぁなぁ」
そう話しながら舌を這わせる。思いっきり顔を左右に振り口を押さえる手が外れた瞬間だった。
「…んぞ……三蔵ーー!!」
「…ッ!こいつ!おい!しっかり押さえてろって!」
「黙れっていってんだろうが!」
バシッと頬を叩かれ再度口を塞がれた雅。しかし、その声を三蔵が聞き逃すはずもなかった。
パシィィン!!
勢いよく襖は開き、見張りの坊主達もハッとうたた寝から目を覚ます。
「三蔵法師様!」
「退け!」
そのまま一目散に素足のまま庭に出てくる。
「おい!逃げろ!」
「捕まったら終わりだぞ!」
そういう坊主達のいくてを阻むかの様に悟浄と八戒も出てくる。少し遅れて悟空も参戦した。それをみて三蔵は雅のもとへとかけてくる。
「おい…!」
「……三蔵…ぉ」
「なにされた…」
「なにも……ただ…」
「…ッッ…チッ…もういい」
ふわりと抱き締めた三蔵。
「悪かった……」
「さ…んぞ…」
そんな所に悟浄と八戒が男共を連れてやってきた。
「おい、三蔵。どうする?」
「……」
三蔵は法衣を脱ぎ、雅に着せると八戒に目配せをして雅に着いて貰うと、二人の前にたった。
「何してんだよ、てめえら」
「な……何って……女人が…寒くないかと……」
「吐くならもっとましな嘘吐けってんだ、よ!!」
言い終わるが早いか三蔵の拳はその坊主の頬に直撃した。
「おい」
「ひ……ひぃぃ」
「ナメた真似してんじゃねえよ…」
「そ…そんな…暴力など……!」
「だったらてめえらが雅にしたのは許されるってのか?…面白れぇ……笑えねえ冗談だな!」
もう一人の胸ぐらをつかみ、再度頬に拳をいれる。地面に倒れ込む坊主達。そんな騒ぎを聞き付けた住職と付き人はやって来る。
「なんの騒ぎですか!三蔵法師様!」
「うるせえよ」
「暴力は!御仏様の前で」
「うるせえって言ってんだろうが」
「まぁ、そうなるわな」
「同感です。大丈夫ですか?雅…」
「ごめ……油断してた」
「あなたのせいじゃないですよ」
「キュキュ……」
「白竜も…ありがと」
「貴様は坊主達の管理も出来ねえのか」
「そ…それは…一体何があったんですか!」
「そんな事はそこの二人に聞くんだな」
そういうと八戒の元に戻り雅を抱き上げた三蔵。
「あぁっ!!そんな…!三蔵法師様ともあろうお方が……!そんな女人を…!」
「ガタガタうるせえんだよ。それとも何だ、俺のすることに文句があるのか…?」
「そうではなく…!」
「煩悩だ何だかんだって言う前にテメエの下に就いてる坊主の教育でもしてやがれ」
「で……でしたら玄奘三蔵様御自ら説法等をお教え願えれないでしょうか…?」
「……は?」
「二代に渡って来院されるのは御仏のお導きにまちがいないのです。女人の立ち入りも特別に許可致します!」
「…それ、光明三蔵にも同じこと言ったろ」
「えぇ……ですが丁寧にお断りされまして…」
「…相変わらず甘いな、お師匠様は…光明三蔵法師が敢えて言わなかった事、変わりに言ってやるよ。」
「……なんと…!」
「いい年こいてわがままばっかり抜かしてんじゃねえよ、ばーーーか」
それを聞いた一行はふっと笑いをこらえ、住職達は呆気に取られながらもやいのやいのと反論している。関係なく三蔵は抱き上げたままの雅を連れて部屋に戻っていった。それを見ながらも一行は三蔵の足元に気付いていた。
「おい…三蔵の足元…」
「……あ、」
「雅の声に草履すら履くのを忘れてくるとは…」
「あぁあ、全く。うちの三蔵ったら…」
そう話しながらもそれぞれ二部屋にわかれて執心に入ろうとしていた。しかし、雅と三蔵は眠れるわけもなかった。
「悪かったな…やっぱりあの時、無理矢理にでも連れていけばよかった。」
「そんな…三蔵のせいじゃないよ…」
「俺のせいだろうが…」
「大丈夫…」
「…たく」
再度ふわりと抱き締める三蔵。
「そんな震えてんのに大丈夫とか言うなよ…」
「……でも…ッッ…三蔵…!?」
ふと腕が緩んだとき、雅は三蔵の足が砂まみれになっていることに気付いた。
「なんだ」
「足……!どうして…」
「は?何言ってんだ」
「だって…!!」
「……あぁ、草履も履くの忘れてたな」
「忘れてたって…こんな砂だらけで…」
「大したことねえよ」
「そんな…お湯とタオル借りて来る!」
「バカ!」
後ろからグッと抱き締めた三蔵。
「さっきの事、もう忘れたのかよ…」
「でも…」
「問題ない」
「そんな……」
「うるせえよ…もう少し自分の事考えやがれ…」
そういいながら腕を緩めることなく三蔵は抱きいれたままだった。
「……三蔵…」
「あんな所だったから声は届いたけど……奥に連れ込まれていたら…聞こえなかったかも知れないと思ったら……俺が正気じゃいられなくなる…」
「三蔵…」
「それに…」
「……それに?」
「いや、何でもない」
ゆっくりと腕を緩めた三蔵はゆっくりと立ち上がった。
「足洗ってくる。先に寝てろ…」
「三蔵…?」
「なんだ」
「すぐ…戻ってくる?」
「あぁ。」
そう返事をして部屋を後にした。残された雅は三蔵の法衣にくるまり、気付けばいつのまにか眠りへと落ちていった。
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