【完結・おまけ更新中】相方の最推しVが俺で溺愛されてます??

漠田ロー

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1 目指せ全メンバー登録者数百万人!

「あっ、あっ、やっ、は……!」

『えっど』
『えっっ……ですね』
『喘ぐなw』
『センシティブ大丈夫そ?』
『音量注意』

「きぃやあああアアア!!」

 目の前に現れた幽霊に思わず叫んで、俺は思わず椅子から滑り落ちた。

『鼓膜ないなった』
『鼓膜バイバイ』
『これを待ってたww』
『耳しんだが?』

 暗闇の中、白く光る画面には草付きのコメントが流れていく。

「ごめん、椅子から落ちた。ああ、もう無理怖い進めないぃ」

 我ながら情けない声でマイクに声を乗せる。画面の中ではゲームオーバーの文字と怯えた顔の3Dキャラクター。
 そう、俺は只今絶賛ホラーゲーム配信中だ。更になんと、配信者事務所所属のVチューバー空原花翠そらはらかずいの中の人である。ユニットまで組んでいて、Vの中ではそこそこの知名度があり、歌とダンスに定評がある、とまとめに載せていただいてる。

 そしてホラーが大の苦手である。
 大事なことなのでもう一回言うけれど、ホラーが大の苦手である。
 そしてこの無様なホラー配信が、俺のチャンネルの中で一番伸び代があり、面白いと大好評なのである。

 解せぬ。こっちはマジでチビりそうになりながら、冷や汗をかいて動悸息切れ心臓麻痺を起こしながら、やりたくもないホラーゲームをプレイしているが、コメント欄は草草の草である。

『今行く@星降慧』
『おっ、相方きちゃ!』
『待ってましたあああ!!』
『助かる。寿命延びる』
『これ待ちまである』

 コメント欄が盛大に盛り上がると同時に、連絡アプリから相方の星降慧ほしふりけいの連絡があり、俺も視聴者に負けないくらい歓喜した。

「カズイ、椅子から落ちたって、大丈夫そ?」
「け、慧~! ありがと、大丈夫。マジ助かる~」
「ん。ほら、乗せていいよ」

 低くて柔らかな落ち着いた相方の声に、さっきまで立っていた鳥肌が治まっていく。
 
「はい、ということで、俺の相方が来てくれましたんで、再開しま~す」
「ども~、星降です~」

 ホラゲー配信が結局相方とのコラボ配信になるのもいつもの流れで、後は怖いながらも楽しく配信を終えることが出来た。
 登録者人数や同接もまずまず、アーカイブでも伸びるといいなと思いながら、配信を終えて改めてスマホから慧に連絡する。

「今日もありがとう、慧」
「ああ、いーよ。いつものことだろ」

 はあ、良い声。慧の声聞いてると本当、落ち着く。マイナスイオン出てる。一生聴いてたい。特にホラゲー終わった後は。

「な~、もうちょっと寝るまで繋げてていい?」
「はぁ、また? ……風呂入った?」
「……へへ、これから。な、お願いぃ」
「一人で風呂にも入れなくなるとかさぁ。所詮ゲームなんだけど?」

 通話を繋げながら風呂場に行き、さっさと服を脱ぐ。だってホラゲーの後の深夜の風呂とか、絶対目つむれないやつだし。

「ん? こら、風呂入ろうとしてるだろ」
「慧様お願いします。何か作業してて良いからさ~!」

「今何時だと思ってんの。俺はもう寝るとこだよ?」
「じゃあ寝落ちするまででいいから、お願いお願い」

「うわ、だる……」
「あっ、あっ、寝る声出さないで!」
「うるさ」

 急いで風呂場に駆け込み、適当なことを話しながらシャワーを浴びる。

「ちゃんと湯船に入れよ」
「慧が付き合ってくれんなら入る」
「はぁ~……、マジお前マジ」
「明日レッスン前に、昼メシ奢るからさ」

 ごしごしと体を洗いながら、調子良くそんなことを言うと、慧はまた大きな溜息を吐いた。面倒臭そうに話す癖に、なんだかんだ寝るまで付き合ってくれるから、本当良い奴だ。

「慧様!? 寝てない!?」
「うるせー……、寝てーの、俺は……」

 ちょっと掠れたセクシーな声にどきりとしながら、慌てて湯船に浸かる。

「あっ、3Dライブの歌、練習しよ?」
「だから、今何時だと思ってんの」

 ふっと笑った声に、ちゃぷんと湯に顔を半分まで埋める。

「明日、十一時に迎えに行く」
「いいよ、悪いじゃん」
「飯奢らせるついで」
「く~、イケメンかよ~」

 電話の向こうで低く笑う声がする。慧は高身長ハイスペックイケメンでイケボ、車持ち高層マンション住みという、この世の全てを持った奴で、スパダリ属性を相方にまで惜しみなく発揮してくる。
 ほんと、Vじゃなくて生身のアイドルの方が良さそうなもんだけど。

 でも、四人組ユニットFreeKのコンビとして、慧とペアになれたのは本当にラッキーだったと思う。
 四人全員二十代前半から半ばの同年代で、歌やダンスの相性が良くて、仲も良い。特に慧は一つ年下なのに面倒見が良くて、一番世話になってる。学ぶところも多くて最高の相方だ。
 
「明日さ、……何、食いたいか、考えといて……」
「うん。おやすみ、カズイ」

 結局だらだらと眠気に目蓋が開かなくなるまで、慧と通話して寝落ちした。



「花翠くん、昨日は良かったよ! 慧くんもフォローすごく良かった、いつもありがとうね」

 翌日のレッスン前のミーティングで、マネージャーさんの佐々井さんから褒められた。若干慧の方が褒められ比重が大きい気がすると、じとっとしていると、隣から大きな手が伸びてきて頭を撫でる。

「カズカズ、ホラー嫌いなのに頑張ってたじゃん。偉い偉い」
「悠くん……、えへへ、あんがと」

 ユニット最年長の彼方悠大かなたゆうだいは、俺がVチューバーを目指すきっかけになった憧れの人だ。Vのキャラクター、つまりガワも中身も王子様みたいな外見で陽キャ代表みたいな人。

「そうそう。今度は俺が一緒にやってやろうか?」

 そう言ってテーブルの向かい側に座る湖水蓮こすいれんは、ちょっと危ない香りのする黒髪お兄さんキャラで、チャラいけど優しい。

「ありがと、蓮くん! じゃあさ、ちょうど一緒にやりたいのあってさ」
「だめ、ホラー係は俺って決まってる」

 蓮くんに身を乗り出すと、その隣に座っていた慧が手の平をひらひらさせた。

「なに、コンビ愛?」
「違うよ、ね、佐々井さん」

 ばっさり言い切った慧に、佐々井さんが苦笑して俺を見た。

「今日言おうと思ってたんだけど、花翠くんのホラー配信ってさ、君のゲーム配信の中で一番人気でしょ? 慧くんが出るとファンを引っ張って来るから、視聴数も跳ね上がるのは分かってるよね」
 
 ちょっと悔しいが確かにそう。コラボ配信の利点は正にそうで、歌もゲームも単独でやるより、ユニットでやる配信やコラボ配信の方が断然伸びる。
 
「ユニットデビューしてから二年、ウチの所属でもV界隈でも認知度も上がって来てるけど、もっと上に行けるチームだからね、君たちは。だからそのために色んなことをやらなきゃいけない」
「はい。……それとホラゲーが何か?」

 佐々井さんの言うことは正しいので神妙に頷いたものの、何かヤな予感がする。

「それで、花翠くんと慧くんの名前組の、ホラゲーオフコラボを定期的にする企画をやってみないかな?」
「えーっ、やだあ!」
「は?」

 反射的に叫ぶと向かいの慧がぎろっと睨んで来た。さっき昼に飯を食いに行った時にはあんなに機嫌良かったのに、変わり身の早さにビビる。

「さっ、佐々井さん、俺がどんだけホラゲー中に寿命を擦り減らしてるか知ってるよね!? このままだと三十で禿げて四十で召されるよ、俺!?」

「ぶふっ、禿げんだ。草は生えるけど」
「コメント大草原、頭頂部荒野とか、配信者の鏡だな。あっ、ハゲだけに」
「悠くん蓮くん、上手いこと言わんで!? こっちは真剣なんだよ!?」

 笑い合う苗字組を涙目で睨む。ちなみに、FreeKの由来は熱狂とかもあるけど、メンバー全員のキャラ名のイニシャルが偶々Kだったからそう名付けられた。さらにユニット内で、苗字のKと名前のKで組になってる。
 苗字組が悠くん蓮くんで、名前組が慧と俺。

「大事なのは未来より現在だろ。十年後ある保証の無い毛根なんて気にするなよ」
「あるわ! 家は皆フサフサの家系だわ! 禿げんならホラゲーのストレスがえぐいからだわ!」

 きりっとした顔で告げた慧に、いーっと突っ込むと、佐々井さんが目を輝かせた。

「ほら、叩けば良い声で鳴くじゃない、花翠くんって。それ引き出すのは、やっぱり慧くんが一番上手いんだよ。絶対人気増えるから! 目指せ全メンバー登録者数百万人! 年収が増えたら植毛だって自由自在!」

「……ウチのジャーマネ、一番えぐない?」
「時々後から刺してくるよな……」

 苗字組がボソボソ話しているけど、佐々井さんは熱く燃える瞳で俺の両肩を掴んだ。助けろよと慧を睨んでも、本人はしらっと明後日の方を見ている。

「オフコラなんだから、慧くんいるし大丈夫だって。まずは試しにやってみようよ!」
「え~……、……まあ、とりあえず、一回だけなら……」

 佐々井さんの熱意と、後からの慧の圧力に俺は泣く泣く頷いたのだった。
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