【完結・おまけ更新中】相方の最推しVが俺で溺愛されてます??

漠田ロー

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7 肉屋に来て、肉以外食うの意味分からんくね?

「本気な訳ないじゃん、気持ちわりぃ。ただの処理係だって」
「うわ、ひっど。アイツ、お前のことマジじゃん」
「な、分かりやすいよな。いっつもスキスキビーム出てんじゃん」

「は、ナイナイ。俺、彼女一筋だし、あいつと結婚するから。浮気は絶対しない」
「いや、アイツは浮気になんねーのかよ」
「ノーカンだろ。ただのオナホなんだし」
「ギャハハ、ひでー。ゲスやん」

「彼女、お嬢様校だしさ、卒業まで絶対ヤらしてくんねーの。その癖、嫉妬深いし心配症だし。だから男同士ならバレないし、アイツ俺の言うことは絶対だから、マジで便利。二人だけの秘密の関係つったら、面倒なデートしなくてもヤらせてくれるし、女との浮気よりコスパ良くてちょー楽」
「猿やん、引くわ。つか、よく男相手に勃つよな」
「あー、なんかアイツ妙にエロいんだよ。締まりも良いし、妊娠しねーから中出しし放題」

「うわ生々しい。仮にもいつメンの、尻事情とかエグいて」
「も~彼女思い出したら、チンコ爆発しそう。俺の彼女マジ巨乳だし美人だし、やべーのよ。はあ、オナホ使うかぁ。どこ行った?」

「オナホ呼び、止めてやれよ」
「ふ、だって俺、全然アイツ好きじゃないから、そうとしか見えないし。ま、アイツも俺に抱かれて嬉しそうだし、ウィンウィンじゃん」

 スマホが鳴った。




「……、……?」

 眩しい光がカーテンの隙間から細く差し込んで、顔を照らしていた。
 知らない天井に一瞬混乱して、緩く瞬きを繰り返す。落ち着いた白灰の壁紙に、濃紺の寝具。洗練された空間に、慧の家に泊まっていることを思い出す。

 枕元のスマホを確認するともう十一時で、すっかり寝坊したと飛び起きる。隣のベッドはもぬけの殻で、俺は慌てて寝室を飛び出した。

「おはよ、カズイ。ちょうど起こしに行くとこだった」
「おはよ、ごめん、寝過ごした……!」

 居間のダイニングテーブルにちょうど皿を置いた慧が、いつもの顔でそこに居た。
 ただそれだけでホッとして、言葉に詰まる。

「……なんか、顔色悪いな。良く眠れなかった?」

 近づいて来た慧が首を傾げて、そっと目元に触れて来て、思わずビクついて後退りする。

「カズイ……?」
「あっ、あれ、あの、ホラゲーの後って、俺、悪夢見がちで」
「あ~、怖い夢見ちゃったの? そうか、ケア足んなかったな……」

 後半をぶつぶつと口の中で呟いていたせいで、良く聞き取れなかったけど、慧が心配してくれてるのは分かったため、切り替えて笑う。

「なぁ、なんかすごい良い匂いすんだけど」
「あ、そうそう。朝飯出来たから、冷めない内に食べよ。顔洗ってきなよ」
「は~、マジ五つ星、ありがとうごぜ~ます~」

 少し笑った慧のエプロン姿が眩しく、軽口を叩いてから、顔を洗いに行く。洗顔中に慧が洗面所に顔を出し、口煩くズボンを履けと上下のスウェットを置いていった。

 だからでけーのよ。裾引き摺るどころの騒ぎじゃねーのよ。と、ウェストを締めて裾を捲って、居間に戻る。

「はわ~、何これ~、豪華ぁ。マジ慧は神なの?」
「ふ、崇め奉れよ」

 ちょっと得意気な顔をした慧が面白くて、笑いながら席に着く。
 テーブルの上には、約束のフレンチトーストとかりかりベーコン、サラダ、カットフルーツ、それからスムージーやメープルシロップまである。

「うわ! あのホテルと同じメニューだ! すごいよ、慧!」
「へ~、そうなんだ。まあ、平伏しながら食べるが良い」
「かたじけない、いただきま~す!」

 差し出されたメープルシロップをたっぷりかけて、ナイフで切り分けたトーストを口に入れる。

「うま~、幸せ~」
「ふーん。良かったね」

 少し俯き気味に自分の分を食べ始めた慧は、昨夜と同じように嬉しそうに笑った。
 料理の邪魔だったのか、長い前髪は輪ゴムでぴょんと結ばれていて、いつもは隠している表情が余すこと無く見える。

 食事をする慧の顔は、酷く優しい表情に見えて、俺はようやく息が出来る気持ちになった。


 結局その後、映画を観たり、防音室で歌みたの練習をしたりで、ずっと慧と過ごしてしまい、すっかり日が暮れてしまった。
 声でバレるのを警戒してるから、二人とも家の方が気兼ねがないので、なんともまったりのんびり存分に気を抜いて過ごせた。

「な、送るから、飯付き合って」
「あ~、車は出さなくて良いけど、飯は奢るよ」
「走らせた方がメンテになるから。行こう」

 帰り支度をしていると、慧が車の鍵を取り出して、上着を羽織った。シンプルなのにセンスの鬼みたいな黒コーデで、やたら様になる。
 いつも外に出る時にする黒マスクをすれば、長い前髪と合わせて、その顔は殆ど見えなくなる。
 慧は顔を見られるのを避けている節があって、せっかくイケメンなのにもったいないことだ。

「何食べたい?」
「なんかがっつりしたの。カズイは?」
「焼肉行く?」
「いいね。じゃあオススメに連れてく」

 クソ高い店に連れてく気じゃあ……、と思ったけど、それくらいの厚遇をしてもらっているから、俺はどんと胸を叩いて頷いた。

「らっしゃーせ!」

 連れて来られたのはサラリーマンの聖地の、込み入った路地裏にある焼肉屋で、煙がもくもくして、男性客が大半の混雑した店だった。

「ここならさ、女子が少ないし、すごい賑やかだから大丈夫そうでしょ。それに高くないし美味い」
「おお~、すげー、良いとこ知ってんじゃん!」

 カウンターの端っこのこじんまりした席に通される。でんと七輪があって狭いけど、声を張らなくても良い距離だから有り難い。

「モツ美味いんだよ。カズは飲みたきゃ飲んでも良いからね」
「酔っちゃうから、今日は止めとく」

 配信中に間違えて呼ぶのを防ぐため、所属ライバー間では、プライベートでも基本的に本名は呼ばないことを決めていて、外ではライバー名を少し変えて呼ぶ。慧の場合、名前が一般的だからそのままだ。
 ウチの事務所はそのルールと、本人のアバターへの親近感を上げるために、本名を一部取り入れることを意識していて、漢字はともかく響きはわりと一般にも居そうな名付けをしている。

 花翠もカズと呼んでしまえば、良くある名前やニックネームになるから、ライバー同士で食事に行ったりするとそう呼ばれることが多い。

 わいわいした店の中で、二人ひっそりと肉を焼いて声を潜めて盛り上がる。おじさんが多くて、忘年会シーズンのせいか、楽しそうに大声で盛り上がっていて笑い声が店に満ちている。

「良い雰囲気だね」
「気に入った?」
「うん、ありがとう、ケイ」
「別に。肉追加しよ。一応聞くけど、野菜食う?」

 ワードで文字を打っただけの、ペラペラのメニュー表を見ながら言う慧は、やっぱり目元が緩んでる。

「肉屋に来て、肉以外食うの意味分からんくね? こちとら胃のリソース、肉のために全部空けてるんすよ」
「それな」

 二人でにっと笑って、欲望のまま肉を食い、大満足で店を出た。
 慧が少し離れた駐車場から車を回してくるとのことで、店の前で待つ。

 飲み屋街ではまだまだ宵っ張りの時間で、たくさんの人で混雑していた。
 大学卒業して普通に就職していれば、こんな風にスーツを着て、会社の人たちと忘年会とかしてたんだろうか。

 選ばなかった道を生きている人たちを、ぼうっと眺めていると、焼肉屋からサラリーマンの一団が出て来た。
 これから二次会みたいな話をガヤガヤし出したので、少し避ける。

 と、街灯の光が影に遮られる。不審に思って顔を上げると、スーツの青年が居た。

「鴫原、だよな」
「――、ぇ」

 そこに居たのはスーツを着た悪夢だった。
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