【完結・おまけ更新中】相方の最推しVが俺で溺愛されてます??

漠田ロー

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11 運動後の風呂、牛乳からのカレーコンボの最強さは異常

 アーアーと烏の鳴き声が聞こえる夜明けすぐ、目をギンギンに充血させた俺は慧の家をそっと出た。慧は本当にぐっすり眠っていて、全然起きなかった。
 鍵はポストの中に入れて、ただ一言、それだけメッセージを送っておく。出来れば昨日泊まったことの記憶が失くなっていると良い。昨日送っただけということにしたい。

 冬晴れの朝の空気は冷え込んでいて、ブルゾンの前をしっかり締めて、足早に駅へと向かった。ぎらぎらの朝日も眩しく、冷気と合わせて目に染みる。
 ああ、早く家に帰って風呂入って仮眠したい。そうそう、蓮くんと約束あるし。うんうん。帰って早く寝よう。うん。

「いや! なんでよ!? マジでなんでよ!? 相方のグッズ、奉ってんのなんでなん!?」

 家に帰ってシャワーを浴びながら、俺は魂の叫びをようやく解放し、ベッドに倒れ込んだのだった。



「オィス~……って、なんか昨日より顔ヤバ」

 午後いつもの場所で落ち合うと、蓮くんは目を丸くさせた。

「うん。まあ、色々」
「え~、今日やめとくか? 帰って休めば?」
「やるよ。久し振りに皆集まってるじゃん」

 そう言って首を巡らせて、河川敷に集まったVタレントや事務所の社員さんたちを見た。
 蓮くん、悠くんと俺はスポーツが好きで、フットサルやバスケ、草野球とか色々する事務所のスポーツ部と称した集まりに定期的に参加している。

 活動はゆるくて、やりたい時にやりたい人がやるって感じで、強制も無いし気楽だけど、みんなスポーツが好きで熱量はあるから単純に楽しい。
 今日皆でやるのはフットサルだ。集まった人たちは、既に準備運動を始めている。

「じゃあ無理すんなよ。終わったら話聞くわ」
「ん、ありがとう」

 ポンポンと俺の頭を撫でて、蓮くんは皆に合流すべく河川敷の階段を下り出したので後に続く。
 
「れんれん、カズカズ~! こっちこっち~!」

 明るく手を振った先輩たちにつられ、笑顔で走り出して、その後はいつも通り楽しく運動出来た。



「あ゛~、整うぜ~」
「オヤジくさ」

 フットサルで存分に汗を流してストレス発散した後、俺と蓮くんはいつもスポーツ後に寄る銭湯に居た。
 平日の夕方前、まあまあ空いている中、ゆっくりとサウナ・水浴び・外気浴を三セット繰り返す。

「来週、寒波で都内も雪降るらしい」
「話題無いと天気の話なりがちらしい」

 寒いくらいの外気浴スペースだが、不思議と体が楽になってくる。蓮くんとだらだら中身の無い会話をして、最後に軽くシャワーを浴びて浴場を出る。
 この銭湯はネオ銭湯で銘打っていて、昔ながらの銭湯をいい感じにリノベしていて、休憩所や食事処が充実している。

 風呂上がりのフルーツ牛乳を飲みながら、蓮くんとだらっと休憩所で寛ぐ。

「カレー食おうかな」
「採用」

 牛乳片手に二人で食事処に移動して、俺は辛さマシカレー、蓮くんは甘口カレーを頼む。
 運動後の風呂、牛乳からのカレーコンボの最強さは異常。中学までやってた部活みたいな感じで、どこか懐かしい。

「で、なんかあったの」

 カレーを豪快に大きな一口で頬張った蓮くんが、じっとこっちを見つめた。
 蓮くんのさらりとした長めの黒髪が流れて、セクシーな切れ長の目が細められる。

「う、ん……。ちょっとありすぎて、何から話せば良いか」

 黒曜石みたいな深い瞳は、知らない時は少し怖かったけど、今では優しい人だと良く知っている。見た目はチャラいけどアングラ系というか、ちょっと怖いお兄さんかと思ったし。長い襟足に入れた青のインナーカラーも、いかにも遊び人みたいだったし。

『自分、ゲイだろ』

 初めて会った時に二人きりになった瞬間、そう耳元で囁かれた時には顔面が蒼白になったものだ。そんな俺に、俺もそうだからと笑った顔は屈託がなくて、一気に緊張が解けたのを覚えている。

 ちなみに蓮くんはどことなく中性感もあるくらい、キレイでセクシーな顔立ちをしているけど、バリタチとのことだ。
 上背も俺より高いし、細身に見えて筋肉質でバッキバキである。

「前にさ、高校の時に、バレた時の話したじゃん」
「おー」

 もぐもぐと良い食いっぷりでカレーを消費していく蓮くんとは裏腹に、俺はスプーンを置いてしまった。

「……そん時の一人と、偶然会って」
「マ?」
「マ」

 蓮くんとは同じ性的嗜好ということで、互いの過去やノンケには話せない悩みなんかを気兼ねなく話せて、すごく貴重な友人だ。
 ゲイバーとかにも縁が無いまま、身バレ出来ない仕事に就いたこともあり、ゲイの友達は蓮くんが初めてだ。前に夜職をやってた蓮くんは顔が広いみたいだけど、俺のことも大事な友達と言ってくれる。

「え、それって主犯のやつ? 一発ぶん殴ってやったか?」
「……まさか。あとそいつは同じグループだけど、主犯ではないよ」

 テーブルに置いて握り締めていた拳に、蓮くんの綺麗な形の指が置かれた。

「何かされたか?」
 
 眉を下げた蓮くんは真剣な瞳をしていた。

「話を聞いて欲しいって、チャンスが欲しいって、番号渡された」
「……図々しい。お前からチャンスを奪った癖に、どの面下げて言ってたんだ」

 ちょっとヤのつく方々みたいな雰囲気を出して、蓮くんは舌打ちした。

「本当、今更だよ。俺はあの時、全部失くしたのに」
「カズ……」

 きゅっと拳を包む手に力が入る。心配されているのに申し訳ないのと有り難いので、笑って見せる。

「しかもそん時、慧も一緒に居てさ、揉めてるの見られて」
「……なるほど」

 少しだけ中空を見た蓮くんは、納得したように頷いた。

「別に慧にバレた訳でも、奴らとまた繋がった訳じゃないし、大したことじゃないんだよ……」
「色々、思い出して辛くなった?」

 分かってると言うように、蓮くんが言葉を引き取った。

「……まあ、そうだね。頻繁に昔を、夢に見る」

 俯くと、つ、と蓮くんの指先が手の甲を滑る。

「……寝かせてやろうか」

 指先の動きが、ぎりぎり悪ふざけで済む動きをして、ペチンと叩く。

「蓮くん、たまにからかうのやめて。俺はそう言う冗談嫌いって知ってるでしょ」
「あながち冗談でもないけどなあ」

 軽口に似せた注意をすると、叩かれた指先を撫でながら、蓮くんは冗談とも本気とも取れぬ口調をした。
 時々こうやって、蓮くんは反応に困ることを言う。蓮くんの口癖は、そう重くいかなくていい、だし、本当にたまに誘われているのかなと勘繰る時もある。

「難しいことは抜きにしてさ、臆病になる時は、考えずに軽く気楽に流されていいんだよ」

 多分蓮くんの言ってるのは恋愛のことだ。俺だって子供じゃないし、気楽な付き合いもアリだとは思う。
 ゲイバーに集う人たちは、関係を持つのにフッ軽な人が多いらしい。何度か試して合わなきゃバイバイ、合うってなったら恋愛になるとか何とか。

 そう言う価値観に合わせて、その底無しの黒い瞳と、何でも解ってるって顔に促されるまま、溺れてしまっても楽だろうとは思う。

「冷めちゃうから食べたら?」

 何も言えずにいると促されて、それもそうかとカレーを口に運ぶ。何が面白いのか、とっくに自分の分を食べ終わった蓮くんは、俺をただ見つめている。正直めちゃくちゃ食べ辛い。

「慧」
「んっ、ぐ」

 不意打ちの単語に思わず咽せて、牛乳で流し込んでぜえはあと息をする。

「へ~、慧とも何かあったんだあ」

 笑ってるのか笑ってないのか、よく分からない顔で蓮くんは背もたれに背を預けた。

「なんも無いよ。大体、仕事仲間なんて、どうにもなりようがないじゃん」
「そうかね~。別に自由じゃね?」

 ハッと挑発的に笑った蓮くんは、机に肩肘をついて、頬杖をしながら俺の目を真っ直ぐに見た。

「懲りないねぇ。一回ノンケで酷い目見てんのにさぁ」

 囁くように潜められた声は、それでも鋭く胸に刺さった。
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