【完結・おまけ更新中】相方の最推しVが俺で溺愛されてます??

漠田ロー

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18 スパダリ度がマシマシ

「っわー、すげー、楽しー……」
「だな」

 公園のマーケット区画は、たくさんの店が出店していて、いかにもクリスマスな可愛い飾り付けや、スノウマンやトナカイの電飾のオブジェ、木々に飾り付けられたイルミネーションが、眩しい色が溢れる非日常の世界を作り上げている。

 何より一番奥の飲食スペースにある、大きなクリスマスツリーにわくわく感が止まらない。

「早く行こう」
「待った、はぐれそう」

 慧を急かすと、しっかり手を繋いで来た。こんな人混みの中、手を繋ぐなんてと見上げれば、慧は不敵に笑った。

「だから逆に、分かんないよ」

 ちゃんと汲んでくれた慧は、そう言い切った。まあ確かに、隣の人とは肩が触れそうなくらい距離が近い。それに目を奪われる物はたくさんあって、わざわざ俯いて俺たちの手元を見るような暇な人は居なさそうだ。

「じゃあ、離さないで」
「当然。全部一緒に見て回ろう」

 またあの宝物を見るみたいな瞳を向けられる。マスクと前髪で顔の大半は隠れてるし、声音だってぶっきらぼうに聞こえるけど、もう俺はこんな時慧がどんな表情をしてるのか、当てることが出来る。

「見て見て、オーナメントのお店やさんだ! あっ、スノードームの店もある!」

 大きな声を出せない分、自然と顔を近づけて話すことになる。その度に視界には慧だけしか映らなくなって、吸い込まれるように見惚れてしまうのを止められない。
 
「何か、思い出になるもん買おう」

 目を細めた慧は人混みを上手く捌いて、俺を店へと導いてくれる。

「ツリー持ってないや。来年は小さいの買おうかな」
「じゃあ来年はツリー買って、一緒に飾ろう」

 赤いサンタとトナカイのオーナメントを差し出して、慧はジッと俺を見た。

「く、クローズさん……!」
「トラウマになっとるやん」

 ふっと笑って、オーナメントを戻そうとした慧の袖を引く。

「紛れるように他にも買お。で、来年、慧と二人で、大きなツリーに飾る」
「……さっき、モミの木の販売申し込みあったな」
「だから富豪かて」

 使途不明の丸い玉や、ステッキ、星なんかの飾りをいくつか買って、混雑している店の前を抜ける。

「ホットチョコレートとチュロスセットだって。カズ、好きそうじゃない?」
「うん! 並ぼ並ぼ」

 だんだん暮れて夜の暗さが辺りを包むと、光は輝きを増して洪水みたいになる。きらきらした明かりが、慧の瞳の中で輝いて、星みたいに光ってるのが綺麗だ。

 吐く息は白く、一人ならかじかむ手も慧の温もりに包まれて温かい。
 嬉しい、幸せだ。声には出せないけど、隣を見上げれば、慧は眉を下げて少し顔を外しかけたものの、こちらを向いて目を細めた。多分笑ってくれたんだと思う。マスクがもったいない。

 じゅわっと油の匂いと、砂糖の甘い匂いが漂ってくる。並んでいる人が多くて声が出せない分、時々指を悪戯に動かして視線を絡ませるのが、今日は特別に擽ったい。
 熱々のホットチョコレートとチュロスを受け取るために、手が離れて淋しくなった分、ほとんどくっついて歩く。

 お目当ては巨大ツリーだ。家の二階くらいはある大きなもので、ザ・クリスマスみたいな飾り付けがレトロ可愛い。
 かなりの混雑ぶりで、わあわあ騒ぎたいのを口をぎゅむっと閉じて我慢する。きょろきょろ辺りを見回していた慧が、目配せしたので後をついて行った。

「ごめん、座るところ無かったから、公園の方、行かない?」
「うん。ツリーも見たし満足だよ。それにやっぱ話せないと辛いね。慧と色々話したかったから」

 マーケット外に出ると公園は比較的空いていて、遠くの芝生でヤンチャな集団が駆け回り、暗がりにはチラホラとカップルが座っていた。
 俺たちもちょうど空いていたベンチに座る。

「寒くない?」
「大丈夫。慧は?」
「うん。寒いからくっつくわ」

 何でも無いように隙間無く座り直してから、慧はマスクを下ろして不敵に笑った。
 
「はい、どうぞ」

 まとめて持ってくれていたチュロスの袋を渡され、二人でまだ温かいそれに齧りつく。
 かりっ、もちっとした食感にざらざらの砂糖がぎゅっと甘くて、幸せの味だ。

「本場はホットチョコレートに浸すらしい」
「採用」

 試しに一口、とっぷりホットチョコレートに浸して齧ると、濃厚なチョコの風味が加わって幸せ二倍な味になる。

「美味し? 気に入った?」
「うん!」
「ほーん。そ。……今日はカズイがやりたいこと、全部やる」

 さらりと言われた言葉に、少し不思議な感じがして首を傾げる。

「何か、今日ずっとそんな感じじゃない? 俺を優先し過ぎてない?」
「いや? 過ぎるなんてことはないよ」

 全く軽く言われてるのに、良く考えると中身は中々クソデカ感情が覗いているような。
 とは言え、表情も声音も、甘さが隠れていない。何というか今日の慧は、天邪鬼が封印されて、スパダリ度がマシマシな気がする。

「クリスマス、カズイは色々夢があるでしょ」
「……夢?」

 反芻しても何のことか分からず見つめ返すと、慧はあちこちに視線を彷徨わせた。

「それで、あの……。今はもう雪溶けちゃったけど、朝はあったし、今日はホワイトクリスマスってことで良いよね?」
「うん、そうな。いんでない?」

 朝もそう会話していたし頷くと、慧が安堵したみたいに小さく息を吐いた。

「……今日、話があるって言った話、したいんだけど」
「あ、ああ、なんだっけ?」

 そう言えばキス未遂のパニックで、そのことを忘れていた。いつもより深刻な様子に、怖くなってくる。
 悪い話だろうか。いつも余裕で飄々とした慧が、言い淀んで迷っている。

 すっかり暗くなった公園に、寒風が吹き抜けて行く。慧の前髪をはらりと乱して、その顔が露わになる。

「何から話そうかな……」
「何でも聞くよ」

 迷子みたいな顔をした慧の手を握ると、その瞳が揺れた。

「……カズイ、誤解しないで、聞いて欲しいんだけど」

 緊張して不安そうな顔に、こちらまでそわそわしてくる。誤解の要素ってなんだろう。俺たちの間にそんなのあっただろうか。
 コンビに不満があるとか、だったらどうしよう。

 見つめ合ったまま、しばらく時間が止まり、迷いながらも慧が口を開いた。

「俺、実は」

 いつもは温かい慧の手が冷え切って、微かに震えていた。
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