【完結・おまけ更新中】相方の最推しVが俺で溺愛されてます??

漠田ロー

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34 おまけ 恋の次は 3

「レンにーに、お帰り~!」
「ちぃ~、今日も店手伝ってて偉いなぁ、ほら飴ちゃんやる」
「おぅ、レンか、お帰り!」

 家庭料理屋つきしろに顔を出したのは、次の休みだった。まだ大学生の千弘は相変わらず可愛くて天使かなって感じだし、おっちゃんも相変わらず元気でホッとする。

「この間差し入れありがと、美味かった。おばちゃんと婆ちゃんは?」
「奥にいるよ、声かけてきな」

 昼営業の開店前で、おっちゃんと千弘は仕込みで忙しそうにしてたため、俺も手早く家の方に回る。

「レン、お帰り!」
「ただいま、おばちゃん。ほいタッパ。美味かったよ。婆ちゃんどしたの?」
「うん、何かお腹痛いって」
「いいんだよ、大丈夫だから」

 婆ちゃんは御年八十歳で、かなり小さくなってしまった。酒飲みだった爺ちゃんは、俺が高校の時に天国に行ってしまってる。
 最近では足腰が弱まってしまったせいで、色々曖昧になりがちで、静かに座ってることが多くなったけど、昔から優しい婆ちゃんだ。

「全然良くないよ、俺がせんせーのとこ連れてくわ」
「本当? 助かるわ。お義母さん、あたしらの言うことは、全然聞いてくんないから。レンなら任せられるわ、ありがとう」
 
 おばちゃんがホッとしたように笑った。変に遠慮されずに信頼してもらえることが嬉しい。

「幸恵ちゃん、俺とデートしてくれませんか」
「……レンちゃんみたいな色男となら、しょうがないわねえ」

 少し笑ったからあまり症状は重くなさそうだけど、本人が自覚出来ていない場合があるから、俺は婆ちゃんを背負った。
 立ち上がった俺のポッケに、おばちゃんが車の鍵を突っ込んで、手首に婆ちゃんの病院用の巾着をかけてくれた。

「悪いけど、よろしくね」
「ん、行ってきます」

 店の仕入れや用事なんかで、役に立つように免許取っていた甲斐がある。俺は婆ちゃんを丁重に近所のかかりつけ医にエスコートした。
 平日の昼中だから医者は混んでいて時間はかかったけど、婆ちゃんは軽い風邪だったらしい。ホッとしながら薬を貰って、また婆ちゃんを車に乗せる。

「あ、あ、レンちゃんレンちゃん、止まって」

 婆ちゃんが必死で車から降りようとしたから、車を出す前に、助手席に回って降ろしてやる。婆ちゃんは俺の手を握って、一散に向かいのたい焼き屋に向かった。
 それからたい焼きを一つ買って、笑顔で俺に差し出す。

「レンちゃんは、いつも手伝ってくれて偉いね。もう宿題は終わったの?」
「……まだ、これからだよ。な、幸恵ちゃん、たい焼き半分こしよっか」

 婆ちゃんとたい焼きを半分こして、店の前のベンチで二人で食べる。甘いあんこが喉に染みた。

 たい焼きを食べて寝てしまった婆ちゃんを連れて店に戻ると夕方で、バーが休みの深澄も来ていた。

「婆ちゃん、なんだって?」
「軽い風邪だって。寝ちゃったから、部屋に寝かせてくる」
「いいよ、俺が連れてくから、休んでな」

 深澄にバトンタッチすると、エプロンを着けて夜営業前の仕込みをしている皆に混ざる。

「ありがとね、レン」
「婆ちゃんに、たい焼き買ってもらっちゃった」
「あら、本当にデートじゃない」

 おっちゃんが買い置きの缶コーヒーをくれたから、ありがたく喉を潤してから仕込みにかかる。夜営業は酒も出すから、ほとんど居酒屋みたいになってかなり忙しい。

「今日は、千弘のダチが宴会してくれんだよ。小上がり貸し切りな」
「そうなんか。ちぃ、大学楽しーか?」
「うん! 今日はサークルの仲良い奴らが来てくれんの」
「うっ、お兄ちゃん、嬉しい。友達百人出来たか?」

 千弘はちょっと引っ込み思案で純粋だから、大学に入ると聞いた時にはかなり心配したもんだ。俺は大学通ってないからよく知らんけど、悪いやつに騙されたり誑かされたらと思うと、深澄より心配し過ぎて引かれた。

 そうこうしている内に深澄も戻り、夜営業が始まって、婆ちゃんの世話も挟みつつ、忙しくしている内に元気な集団がやって来た。
 厨房から客席が見えるから、千弘に悪影響を及ぼすような奴が居ないか目を光らす。と、ホールに居た深澄に走り寄った影がいた。

「深澄さん! お久しぶりです、会いたかった!」

 少し小柄で大きな目の美少年みたいな男が、無邪気な感じでさり気なく深澄の腕を取った。
 あいつ絶対こっち側の人間だ。俺は瞬時に悟る。しかも深澄狙いだ。

「は、はぁ~???」
「おっ、おお、ごめん、俺オーダー間違えちまったか?」

 ちょうど配膳カウンターに、料理を持って来たおっちゃんがビクついた。おっちゃんごめん、マジごめん。

「あれ、何」
「あ? ああ、あの子か、千弘のダチだよ。最近良く来てくれんだ、がはは」
「いや、笑ってる場合じゃねーだろ」
「えっ、なんで?」

 俺がピキったのに、おっちゃんはまたビクついた。おっちゃんは豪快に振る舞うけど、本当は繊細でビビリなの知ってる。
 しかし今は正直おっちゃんどころじゃない。

 深澄ぃ、なんでそいつにベタベタさせてんの、笑って話してんの。なんで愛想振り撒いて、見つめ合っちゃってんの。
 
「おぉっ、今日もレンのキャベ千、冴え渡るな~」

 何か機嫌を取ってきたおっちゃんを睨んで、俺はズダダダと高速でキャベツを千切りにしていった。

 九時近くになると店は一段落して、十時からは二次会の客が流れてくる。千弘は友達の卓に混ざり、俺と深澄は先に賄いを食えとの指示で、一度家に引っ込んだ。

 寝室に寝かせた筈の婆ちゃんが、居間の座椅子で寝ていたから、ついでにまた部屋に運ぶ。
 それから二人で、賄いが用意されているダイニングテーブルに着いた。

「レン、何か怒ってない?」

 席に着くなり深澄が不思議そうにした。薄く笑みを湛えた甘いマスクが、今はめちゃくちゃ憎らしい。こいつのこの柔らかい雰囲気に、年下はすぐ騙されて引っかかるんだ。

「なんなんだよ、アレ。ベタベタしちゃってさあ」
「……どれのこと?」

 本気で分からない顔をされて、俺はそれ以上を止めた。深澄が何も気づいてないなら、わざわざ気づかせる義理も無いし。
 せっかくの美味い賄い、今日は大好きなおばちゃんのカレーなのに、お代わり出来なかったので深澄を恨んだ。
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