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春の章 始まり編
1 プロローグ
舞い落ちる紙の音が嫌に鮮明で、ふわりと鼻を掠める淡いホワイトムスクの香りが思考を奪った。
見開いた目に飛び込んできたのは、絶世の美貌の男性。
理知的な額に高くすっきりとした鼻梁。彫りの深いくっきりした二重の優しげな目。大きめでふっくらした唇。
高名な彫像と言われてもおかしくないくらい、整った美がそこにあった。
きりっとした眉と無駄の無い顎のラインが精悍で、美しいのに寧ろ男性的で、色気まである。
何より真っ直ぐな力強いエメラルドの瞳と、燃え盛るような深紅の豊かな髪が、彼をまるで軍神のように雄々しく印象付ける。
か、顔良~~~。
「大丈夫ですか!?」
こ、声も良~~~。
「アルカ君!?」
心配そうに寄せられた眉根にハッとして、自分がとんでもない美丈夫に抱きかかえられていることを知る。
というかこの人、俺の推しにそっくり!?
「……っ、レグルス、様?」
自らの声が耳に届いた瞬間、バチンと眼の前に火花が散り、一ノ瀬歩は唐突に理解した。
転生したこと。一ノ瀬歩は転生して、この世界でアルカ・メイヤーとして生きてきたこと。
歩とアルカの人生の記憶が一気に脳に蘇る。
倍速再生で流れる情報に、脳が焼き切れそうになる。
「アルカ君!!」
発狂しそうだ。なんだって、こんなことになってるんだ。
いや理由は分かってる。だが何故。歩とアルカの思考が反目しあって、堪らず呻く。
身体の内側で、何かが猛烈に荒れ狂っている。その奔流が行き場を求めるように、脳や内臓を締め上げる。
体がバラバラになりそうな感覚に、息すら上手く出来ない。
「アルカ君、すみません!緊急事態なので!」
何が、と問う間もなく、眼の前の顔が滲んで唇に柔らかな感触がした。
「……っ」
塞がれた唇から何か、温かいものが流れ込む。
レグルスの魔力だ。ゆっくりと呼吸が合わされ、波長が深く混ざる。
心地良い海の中を漂う感覚に、あれ程荒れ狂っていた自らの奔流が凪いでゆく。
閉じていた目蓋をゆっくり押し上げると、涙でぼやけた視界に澄んだ碧と金の虹彩が瞬いている。
そうか、彼が魔力を使う時の、瞳の煌めきが好きだったな。
そんなこと、設定には無かったな。魔力使用時に虹彩が輝くなんて他のキャラのスチルにも無かった。
2つの思考が同時に浮かぶ。
震える指を伸ばすと、力強い大きな手にしっかりと握られる。温かくて少しかさついた硬い掌。
塞がれたままの唇の柔らかさ。それから頬を滑る紅蓮の髪の擽ったさ。体を支えるしっかりした体躯の温もり。
あのレグルス・マクファーレンの存在を全身で感じる。
これは紛れも無い現実だ。
そうだ。一ノ瀬歩は転生した。かつて日本で生きていた頃、プレイしたゲームの世界へ。
見開いた目に飛び込んできたのは、絶世の美貌の男性。
理知的な額に高くすっきりとした鼻梁。彫りの深いくっきりした二重の優しげな目。大きめでふっくらした唇。
高名な彫像と言われてもおかしくないくらい、整った美がそこにあった。
きりっとした眉と無駄の無い顎のラインが精悍で、美しいのに寧ろ男性的で、色気まである。
何より真っ直ぐな力強いエメラルドの瞳と、燃え盛るような深紅の豊かな髪が、彼をまるで軍神のように雄々しく印象付ける。
か、顔良~~~。
「大丈夫ですか!?」
こ、声も良~~~。
「アルカ君!?」
心配そうに寄せられた眉根にハッとして、自分がとんでもない美丈夫に抱きかかえられていることを知る。
というかこの人、俺の推しにそっくり!?
「……っ、レグルス、様?」
自らの声が耳に届いた瞬間、バチンと眼の前に火花が散り、一ノ瀬歩は唐突に理解した。
転生したこと。一ノ瀬歩は転生して、この世界でアルカ・メイヤーとして生きてきたこと。
歩とアルカの人生の記憶が一気に脳に蘇る。
倍速再生で流れる情報に、脳が焼き切れそうになる。
「アルカ君!!」
発狂しそうだ。なんだって、こんなことになってるんだ。
いや理由は分かってる。だが何故。歩とアルカの思考が反目しあって、堪らず呻く。
身体の内側で、何かが猛烈に荒れ狂っている。その奔流が行き場を求めるように、脳や内臓を締め上げる。
体がバラバラになりそうな感覚に、息すら上手く出来ない。
「アルカ君、すみません!緊急事態なので!」
何が、と問う間もなく、眼の前の顔が滲んで唇に柔らかな感触がした。
「……っ」
塞がれた唇から何か、温かいものが流れ込む。
レグルスの魔力だ。ゆっくりと呼吸が合わされ、波長が深く混ざる。
心地良い海の中を漂う感覚に、あれ程荒れ狂っていた自らの奔流が凪いでゆく。
閉じていた目蓋をゆっくり押し上げると、涙でぼやけた視界に澄んだ碧と金の虹彩が瞬いている。
そうか、彼が魔力を使う時の、瞳の煌めきが好きだったな。
そんなこと、設定には無かったな。魔力使用時に虹彩が輝くなんて他のキャラのスチルにも無かった。
2つの思考が同時に浮かぶ。
震える指を伸ばすと、力強い大きな手にしっかりと握られる。温かくて少しかさついた硬い掌。
塞がれたままの唇の柔らかさ。それから頬を滑る紅蓮の髪の擽ったさ。体を支えるしっかりした体躯の温もり。
あのレグルス・マクファーレンの存在を全身で感じる。
これは紛れも無い現実だ。
そうだ。一ノ瀬歩は転生した。かつて日本で生きていた頃、プレイしたゲームの世界へ。
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