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春の章 始まり編
6 アルカの休日
ポタ、と鏡の中の自分の髪から1つ、雫が滴り落ちる。
前世を思い出して、早2週間。覗き込んだ先に映る顔にも、大分慣れてきた。
アルカは改めてじっくりと、洗面台の鏡に向かう。
ホワイトアッシュの髪。紫の瞳。すっと通った細目の鼻筋に、長い睫毛が縁取る僅かに垂れた切れ長の目。
薄い唇が少し冷たい印象を与えるが、整った綺麗な顔立ちと言えよう。
気怠げと言うか、良く言えば仄暗い色気がある。前世の顔からすれば100倍イケメンである。
身長も175cmと、前世よりも少し高い。
体質的にやや細身ながら、実戦に基づいた戦うための筋肉がしっかり付いている。一般人に比べれば、体格が良い筈だ。
それなのに。この世界では実に平凡な見た目だった。
元にホムンクルスが入っているためか、この世界ではある程度に整った顔立ちの人が多数を占めている。
身長すら平均身長であるため、外見だけならアルカを通りに放り込めば完全に景色に紛れ込む。
体格だって、ギルドに行けば平均になる。
そしてキミアカの作中にアルカの存在はおろか、背景の一部としても出ていない。
何故ならレグルスの登場シーンの背景スチルは、ギルド1階にある貴賓用応接室のみ。
後はギルドの玄関のスチルがあったが、ぼやけた通行人しか描かれていなかった。
何なら冒険者ギルド総本部がこれ程広大な建物で、200名近くの職員がいることすら設定に無かった。
まとめると、アルカはモブ中のモブである。
国の最強魔術師のレグルスすら、モブなのだ。アルカなんて話にもならない。
「せっかくイケメンに生まれたのにな……」
歩の感覚で呟いてみたが、これまでを思い出してバスルームを出た。
アルカは、愛だの恋だのは縁遠く生きてきた。
基本的に魔力量が多いほど、人を惹きつける傾向がある。
顕著なレグルス程ではないが、アルカも結構な頻度で言い寄られたりする。
その言い寄る人の質の悪いのが、アルカの悩みの種だった。最初は普通なのだが、段々と粘着され追い回される。
そういう人に好かれやすいのは、アルカの属性のせいのため最早どうしようもない。
アルカは随分前に、恋愛事には早々に見切りを付けている。
気を取り直して窓を開けて、新しい風を入れる。
年度末デスマーチが漸く終わり、久々の休暇だ。しかも2連休。
昼までゆっくりと寝たため体が軽い。空は快晴、温まった風が草の匂いを運ぶ。
「ナン」
「お、久しぶり、ナン」
開け放った出窓に、のっそりと大きな猫が入って来た。大家の猫で、この古いアパートを借りた決め手でもある。
名前はナン。言わずもがな、特徴的な鳴き声が由来だ。
前世のメインクーンに良く似ているが、もう3倍は大きい。そして大きい分、モフみもすごい。
橄欖石色の瞳と真っ黒の艶々した体毛を持ち、腹、尻尾と足の先だけが白く、タキシードのようで可愛い。
「ナン様、こちらお納めください」
「ナン」
ストックしている、あの猫用麻薬に似たおやつを差し出すと、ナンはのしのしとやって来てあっという間に平らげた。
それからドスッとベッドに飛び乗り、親父座りをして鋭い眼光でナンと小さく鳴いた。
「ありがとうございます~~!」
ばっとモフモフの白毛の腹に飛び付いて吸い込むと、少し迷惑そうな声を出されたが、たしたしと肉球で頭を叩いていただけた。
すぅぅぅーー。世界で唯一、ここでしか取れない栄養がある……!
この世界の動物も魔力があり、体の大きさが比例する。魔力が高いほど、意思疎通が可能で寿命も永くなる。
ナンは言葉こそ話せはしないが、鳴き声でも会話が不自由無く成り立つので、かなり魔力の強い猫となる。
魔力が高いといっても通常の動物は、人と違って魔法を使わない。
動物の体の仕組み的に、魔力を寿命や身体能力の補助に使うという話だ。
「ナン、聞いてくれよ。色々あったんだよ。本当色々あってさあ~」
「ナン」
モフモフを顔に抱えながら、すりすりゴロゴロしていると、肉球で頭を打たれる。
本当にありがとうございます。もっとください。
ナンは賢く包容力のある猫だ。目つきが三白眼気味で声も渋いが、知る限り誰よりもイケメンな対応をしてくれる。
「くたびれたけど、今日はせっかくの休みだし、何しようかな。ナンとゆっくり過ごすのも良いかと思うのですが、いかがでしょうか?」
へいこらとお伺いを立てると、ナンは嫌そうに顔を顰めた。
時々、愚痴に付き合ってくれるのだが、今日のナンは気が乗らないらしい。ヌルっと腕の中から抜け出て、窓辺に立つ。
「ナン」
「分かったよ、ありがとう」
外に出ろ、と言われた気がして礼を言う。ナンの言葉が正確に分かることは無いが、直感的に通じるのだ。
きゅっと鋭い瞳で念を押すようにアルカを見て、ナンは小さなベランダへ飛び出て行ってしまった。
どうもアドバイスのようだ。時々ナンが強く伝えてくる念のような感覚は、従った方が後々幸運なことが多い。
アルカは素直に戸締まりをして部屋を出た。
アルカの住むアパートメントは、真ん中に吹き抜けの階段、その左右に2部屋、5階建ての細長くこじんまりした建物だ。
古いながら清潔に保たれ、立地は昔ながらの路地の奥でのんびりしている。
アパート裏手には林と、王都を縦断するレーヴァン川が流れていて、自然の魔素を感じられて大変に居心地が好い。
フロアに2部屋しかないため余計な人間関係もなく、アルカにとっては有り難い。
部屋自体も居間と寝室2部屋、キッチン、トイレ風呂別でどこも広さが充分に確保されている。
中心部よりはやや外れているが、ギルドも徒歩圏内で通勤も楽だ。
値段は富裕層向けで、アルカの稼ぎなら少々値は張るが、それでも破格と言える好条件。
そして、アルカの愛して止まない猫が、遊びに来てくれるのだ。住まない選択肢は無いだろう。
不満を言うとすれば、アルカの部屋は最上階で、階段が多いのが玉に瑕といったところだ。
長い階段を降りながら、エレベーターか転移陣を設置したいと毎度真剣に検討する。
「アルカちゃん、お出かけ?」
「イザベラさん、こんにちは。街をぶらついてきますが、何かあれば、ついでに買ってきますよ」
1階に降りると大家のイザベラが、植え込みの花の手入れをしていた。
もう70歳近いはずだが、かなりかくしゃくとしていて元気だ。
夫を亡くした彼女は1階に住み、道楽でこのアパートメントを経営していると聞いた。
道楽故か、彼女とナンが気に入らない人には、部屋は絶対に貸さないらしい。
イザベラの魔力量や隠すように密かに張られた、各部屋の守りや防音結界から、かなりの魔術師と見受けられるが、アルカを含め誰も詮索はしない。
皆、穏やかに心地好く暮らすのが、このアパートメントの唯一のルールだ。
「今日は良いのよ、いつもありがとうね。いつでも良いから、帰りにでもシチューを取りに寄んなさいな」
「それは有り難いです。遅くならない内に寄らせていただきます」
イザベラはたまに作り過ぎたと言って、煮込みやシチューなんかを住人にお裾分けしてくれる。
それが王都内の有名店以上に美味いため、アルカは遠慮せずに頷いた。
イザベラと別れ大通りに出ると、腹がくうと鳴いた。イザベラのシチューと聞いて、胃が空腹を訴えている。
起きてから何も食べていない。連日家には寝に帰っていただけなので、ナンのおやつ以外の食料が無かったためだ。
わいわいとした喧騒の中、レーヴァン川沿いの通りへと向かう。
川向うに王城が臨めるエリアで、カフェや屋台、遊歩道や河川敷公園が整備されている人気スポットだ。
レーヴァン川を境に東に王城、下流域に貴族街があり、西に商業街、平民街となる。
アルカの家は、今歩いているこの商業街に位置する。ちなみに北と南は農地で、王都の食を支えている。
ここもゲームには出て来なかったなと思いながら、良い匂いを辿るように歩いて行く。
焼き立てパンの香ばしい香りに、異国風のスパイシーな串焼きの匂い。そう言えば職員に人気が高い、ヌードル屋台もあった。
肉か麺か、或いは全く違うジャンルにするか。考える程に胃が急かしてくる。
悩んだ末、両方食べれば解決すると天啓を得たアルカは、串焼きとヌードル、リッカエールを屋台で購入し、広い河川敷へ降りて昼餉を始めた。
熱々の串焼き肉に齧り付けば、じゅわっと肉汁があふれ、胡椒と辛味、少しきつめに振られたハーブ塩の風味が広がる。
熱くなった喉に、良く冷えたリッカの果汁を加えたエールを流し込めば、思わず感嘆の息が漏れた。
アルカは酒呑みでも無いし、特段酒好きという訳では無いが、こういった天気の良い日の昼下がりに外で呑むのは好んでいる。
こうしてゆっくりと味わう解放感は、酒精の力もあってより特別に思う。
もう1本の串は、ライム果汁と唐辛子を効かせた醤油ベースの甘辛味だ。
どこも中世ヨーロッパ風な景色だが、醤油や米、ラーメンまで流通しているので、流石、日本産ゲームである。
まあ、もう何でも良い。おかげで美味い飯が食える。
アルカはこの2週間でご都合設定にはツッコミを止め、全て受け入れることにした。
実際便利だし、元がどれほど虚構の世界であろうと、ここに肉体という器があって、それを動かす魂があるのなら、それはもう生きていることに違いない。
海老雲呑ヌードルを咀嚼しながら、そんなことを取り留めなくぼんやりと考える。
ぽかぽかと背中を温める陽射しに、肌を撫ぜる風に公園で憩う子供や人の話し声が乗って、通り抜けていく。
近くの木々がざあっと葉を揺らし、木漏れ日が川面に反射して煌めいた。
これが嘘でも作り物でも、どうだっていい。
心地良さに足を投げ出して、アルカは柔らかい草むらに寝転んだ。
前世を思い出して、早2週間。覗き込んだ先に映る顔にも、大分慣れてきた。
アルカは改めてじっくりと、洗面台の鏡に向かう。
ホワイトアッシュの髪。紫の瞳。すっと通った細目の鼻筋に、長い睫毛が縁取る僅かに垂れた切れ長の目。
薄い唇が少し冷たい印象を与えるが、整った綺麗な顔立ちと言えよう。
気怠げと言うか、良く言えば仄暗い色気がある。前世の顔からすれば100倍イケメンである。
身長も175cmと、前世よりも少し高い。
体質的にやや細身ながら、実戦に基づいた戦うための筋肉がしっかり付いている。一般人に比べれば、体格が良い筈だ。
それなのに。この世界では実に平凡な見た目だった。
元にホムンクルスが入っているためか、この世界ではある程度に整った顔立ちの人が多数を占めている。
身長すら平均身長であるため、外見だけならアルカを通りに放り込めば完全に景色に紛れ込む。
体格だって、ギルドに行けば平均になる。
そしてキミアカの作中にアルカの存在はおろか、背景の一部としても出ていない。
何故ならレグルスの登場シーンの背景スチルは、ギルド1階にある貴賓用応接室のみ。
後はギルドの玄関のスチルがあったが、ぼやけた通行人しか描かれていなかった。
何なら冒険者ギルド総本部がこれ程広大な建物で、200名近くの職員がいることすら設定に無かった。
まとめると、アルカはモブ中のモブである。
国の最強魔術師のレグルスすら、モブなのだ。アルカなんて話にもならない。
「せっかくイケメンに生まれたのにな……」
歩の感覚で呟いてみたが、これまでを思い出してバスルームを出た。
アルカは、愛だの恋だのは縁遠く生きてきた。
基本的に魔力量が多いほど、人を惹きつける傾向がある。
顕著なレグルス程ではないが、アルカも結構な頻度で言い寄られたりする。
その言い寄る人の質の悪いのが、アルカの悩みの種だった。最初は普通なのだが、段々と粘着され追い回される。
そういう人に好かれやすいのは、アルカの属性のせいのため最早どうしようもない。
アルカは随分前に、恋愛事には早々に見切りを付けている。
気を取り直して窓を開けて、新しい風を入れる。
年度末デスマーチが漸く終わり、久々の休暇だ。しかも2連休。
昼までゆっくりと寝たため体が軽い。空は快晴、温まった風が草の匂いを運ぶ。
「ナン」
「お、久しぶり、ナン」
開け放った出窓に、のっそりと大きな猫が入って来た。大家の猫で、この古いアパートを借りた決め手でもある。
名前はナン。言わずもがな、特徴的な鳴き声が由来だ。
前世のメインクーンに良く似ているが、もう3倍は大きい。そして大きい分、モフみもすごい。
橄欖石色の瞳と真っ黒の艶々した体毛を持ち、腹、尻尾と足の先だけが白く、タキシードのようで可愛い。
「ナン様、こちらお納めください」
「ナン」
ストックしている、あの猫用麻薬に似たおやつを差し出すと、ナンはのしのしとやって来てあっという間に平らげた。
それからドスッとベッドに飛び乗り、親父座りをして鋭い眼光でナンと小さく鳴いた。
「ありがとうございます~~!」
ばっとモフモフの白毛の腹に飛び付いて吸い込むと、少し迷惑そうな声を出されたが、たしたしと肉球で頭を叩いていただけた。
すぅぅぅーー。世界で唯一、ここでしか取れない栄養がある……!
この世界の動物も魔力があり、体の大きさが比例する。魔力が高いほど、意思疎通が可能で寿命も永くなる。
ナンは言葉こそ話せはしないが、鳴き声でも会話が不自由無く成り立つので、かなり魔力の強い猫となる。
魔力が高いといっても通常の動物は、人と違って魔法を使わない。
動物の体の仕組み的に、魔力を寿命や身体能力の補助に使うという話だ。
「ナン、聞いてくれよ。色々あったんだよ。本当色々あってさあ~」
「ナン」
モフモフを顔に抱えながら、すりすりゴロゴロしていると、肉球で頭を打たれる。
本当にありがとうございます。もっとください。
ナンは賢く包容力のある猫だ。目つきが三白眼気味で声も渋いが、知る限り誰よりもイケメンな対応をしてくれる。
「くたびれたけど、今日はせっかくの休みだし、何しようかな。ナンとゆっくり過ごすのも良いかと思うのですが、いかがでしょうか?」
へいこらとお伺いを立てると、ナンは嫌そうに顔を顰めた。
時々、愚痴に付き合ってくれるのだが、今日のナンは気が乗らないらしい。ヌルっと腕の中から抜け出て、窓辺に立つ。
「ナン」
「分かったよ、ありがとう」
外に出ろ、と言われた気がして礼を言う。ナンの言葉が正確に分かることは無いが、直感的に通じるのだ。
きゅっと鋭い瞳で念を押すようにアルカを見て、ナンは小さなベランダへ飛び出て行ってしまった。
どうもアドバイスのようだ。時々ナンが強く伝えてくる念のような感覚は、従った方が後々幸運なことが多い。
アルカは素直に戸締まりをして部屋を出た。
アルカの住むアパートメントは、真ん中に吹き抜けの階段、その左右に2部屋、5階建ての細長くこじんまりした建物だ。
古いながら清潔に保たれ、立地は昔ながらの路地の奥でのんびりしている。
アパート裏手には林と、王都を縦断するレーヴァン川が流れていて、自然の魔素を感じられて大変に居心地が好い。
フロアに2部屋しかないため余計な人間関係もなく、アルカにとっては有り難い。
部屋自体も居間と寝室2部屋、キッチン、トイレ風呂別でどこも広さが充分に確保されている。
中心部よりはやや外れているが、ギルドも徒歩圏内で通勤も楽だ。
値段は富裕層向けで、アルカの稼ぎなら少々値は張るが、それでも破格と言える好条件。
そして、アルカの愛して止まない猫が、遊びに来てくれるのだ。住まない選択肢は無いだろう。
不満を言うとすれば、アルカの部屋は最上階で、階段が多いのが玉に瑕といったところだ。
長い階段を降りながら、エレベーターか転移陣を設置したいと毎度真剣に検討する。
「アルカちゃん、お出かけ?」
「イザベラさん、こんにちは。街をぶらついてきますが、何かあれば、ついでに買ってきますよ」
1階に降りると大家のイザベラが、植え込みの花の手入れをしていた。
もう70歳近いはずだが、かなりかくしゃくとしていて元気だ。
夫を亡くした彼女は1階に住み、道楽でこのアパートメントを経営していると聞いた。
道楽故か、彼女とナンが気に入らない人には、部屋は絶対に貸さないらしい。
イザベラの魔力量や隠すように密かに張られた、各部屋の守りや防音結界から、かなりの魔術師と見受けられるが、アルカを含め誰も詮索はしない。
皆、穏やかに心地好く暮らすのが、このアパートメントの唯一のルールだ。
「今日は良いのよ、いつもありがとうね。いつでも良いから、帰りにでもシチューを取りに寄んなさいな」
「それは有り難いです。遅くならない内に寄らせていただきます」
イザベラはたまに作り過ぎたと言って、煮込みやシチューなんかを住人にお裾分けしてくれる。
それが王都内の有名店以上に美味いため、アルカは遠慮せずに頷いた。
イザベラと別れ大通りに出ると、腹がくうと鳴いた。イザベラのシチューと聞いて、胃が空腹を訴えている。
起きてから何も食べていない。連日家には寝に帰っていただけなので、ナンのおやつ以外の食料が無かったためだ。
わいわいとした喧騒の中、レーヴァン川沿いの通りへと向かう。
川向うに王城が臨めるエリアで、カフェや屋台、遊歩道や河川敷公園が整備されている人気スポットだ。
レーヴァン川を境に東に王城、下流域に貴族街があり、西に商業街、平民街となる。
アルカの家は、今歩いているこの商業街に位置する。ちなみに北と南は農地で、王都の食を支えている。
ここもゲームには出て来なかったなと思いながら、良い匂いを辿るように歩いて行く。
焼き立てパンの香ばしい香りに、異国風のスパイシーな串焼きの匂い。そう言えば職員に人気が高い、ヌードル屋台もあった。
肉か麺か、或いは全く違うジャンルにするか。考える程に胃が急かしてくる。
悩んだ末、両方食べれば解決すると天啓を得たアルカは、串焼きとヌードル、リッカエールを屋台で購入し、広い河川敷へ降りて昼餉を始めた。
熱々の串焼き肉に齧り付けば、じゅわっと肉汁があふれ、胡椒と辛味、少しきつめに振られたハーブ塩の風味が広がる。
熱くなった喉に、良く冷えたリッカの果汁を加えたエールを流し込めば、思わず感嘆の息が漏れた。
アルカは酒呑みでも無いし、特段酒好きという訳では無いが、こういった天気の良い日の昼下がりに外で呑むのは好んでいる。
こうしてゆっくりと味わう解放感は、酒精の力もあってより特別に思う。
もう1本の串は、ライム果汁と唐辛子を効かせた醤油ベースの甘辛味だ。
どこも中世ヨーロッパ風な景色だが、醤油や米、ラーメンまで流通しているので、流石、日本産ゲームである。
まあ、もう何でも良い。おかげで美味い飯が食える。
アルカはこの2週間でご都合設定にはツッコミを止め、全て受け入れることにした。
実際便利だし、元がどれほど虚構の世界であろうと、ここに肉体という器があって、それを動かす魂があるのなら、それはもう生きていることに違いない。
海老雲呑ヌードルを咀嚼しながら、そんなことを取り留めなくぼんやりと考える。
ぽかぽかと背中を温める陽射しに、肌を撫ぜる風に公園で憩う子供や人の話し声が乗って、通り抜けていく。
近くの木々がざあっと葉を揺らし、木漏れ日が川面に反射して煌めいた。
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