【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

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秋の章 人工魔石事件編

57 アズカン高地

 特別任務開始の朝、アルカを始めとする選抜メンバーは、ギルド総本部地下の転移陣フロアに集合した。

 最終申し送りを済ませ、各自に緊急転移陣と伝令陣が配布された。今回の任務の危険性を加味し、特別に配布されたものである。

 伝令陣は緊急転移陣よりは流通していて、遠距離の連絡に使われるが、大体は個人設置では無くギルドや伝令屋に設置してある。
 双方向で陣に置いた手紙を送れるもので、要は魔術を使った電報だ。

 この世界では魔力に頼りがちのため、魔術を使わない技術が発展しにくく、電波や腕時計なんかがその代表になる。
 逆を言うと魔術を使えば何とかなるものは、割と力技でどうにか出来てしまう世界だ。

 ヒト魔石が、その顕著な例だろう。とは言え、余りに倫理感からかけ離れ過ぎている。

 放置すれば国を巻き込んだ、いや他国や世界をも巻き込んで、また大戦が起こるかも知れない。
 室員を見渡せば、誰もが一様に緊張感を漂わせていた。

「ジーク」

 出立前の僅かな隙間に、壁に寄りかかって腕組みをしていたジークに走り寄る。

「例の件、頼むな。油断するなよ、何かあったらすぐ引くんだぞ」

 機嫌が悪そうなジークは、片眉を上げた。

「少なくとも俺は、ツルに吊るされんから、お前よりは大丈夫」
「な!俺だっていつも吊るされてる訳じゃねーわ!」

 ピピ=ティティテスタ大密林に隣接するテスタ・ルルーカ湿原も、やはり植物魔物の宝庫なのだ。
 だからレグルス班の担当はそちらじゃなかったのかとは、レグルスに聞けないでいる。

「なあ、お前、本当にどうなってんの?」
「……どうって何が?」

 ジークはじっと瞳を見つめてきたが、アルカは首を傾げた。
 溜息を吐いたジークは、肩に手を乗せて耳に顔を寄せてきた。

「帰ったら話があるから」
「……おう?分かった」

 態々耳打ちされることだったかと思ったが、するりと頬をジークの指が撫でてから、容赦無くつねられた。

「あ゛!?喧嘩売ってんのかお前!?」
「じゃ。後で続きやろうぜ」

 ジークはさっさとウルクにじゃれついていたイドを回収して、テスタ行きの転移陣へ消えて行った。

「何なんだよ、……ったく」

 独り言ちてからジョエルとウルク組や、他の組にも激励をして見送り、レグルスの元へと戻る。
 一部始終を見ていただろうレグルスが、しゅんとしていたので、背中を叩いて気合いを入れる。

「俺は心の狭いダメなやつ……」

 グジグジと言いながら後をついてくるレグルスを、アズカン地方行きの転移陣に押し込む。

「そのダメなヤツが良いって物好きがここにいるんだから、自信持て!ほら、仕事開始だ!」

 レグルスがまた何か言う前に、アルカは転移陣を起動させた。

 瞬時にアズカン地方支部の、転移フロアに着く。
 今回は冒険者の振りをして調査を進めるため、気配遮断を使い密かにギルドのロビーに紛れる。

 アズカン高地は、バブ・イルムがあるバビルアジャフ地方の砂漠地帯を北上した先、標高1500メートルに位置し、剥き出しの地層が幾重にも重なる広大な峡谷を有している。

 西北の隣国と分ける山脈と接しているため、強い偏西風が吹きやすく常に乾燥している地域だ。

 アズカン地方支部は、高地の入り口に当たり、山道と崖を利用して造られた町カラガスにある。
 アズカン地方は人口が少ないのと特有性のため、カラガスにある支部が地方全土を纏めている。

 アズカン高地の麓からバビルアジャフ地方の間には、大草原が横たわり、そこに住む移動性遊牧民が人口の大半のためだ。

 加えてアズカン大峡谷を中心に広がる迷宮フィールドは、別名風の迷宮とも呼ばれ、かなり多くの冒険者が訪れるため、ここも忙しい支部の1つだ。

 仮にクエスト中に、行方不明や不慮の事故が起きても、充分な調査が出来る程の余裕は無さそうに見える。

「支部長以外は俺の顔知らない筈だけど、念の為、俺はずっと気配遮断しておくね」

 人で混雑したロビーで、レグルスは耳打ちしてきた。
 アルカは最初から認識しているため阻害の影響は無いが、傍から見ると1人で喋る人になるため頷くに留めた。

 掲示板に張り出されている、多数のクエストを確認していく。
 大峡谷で採れる風魔石は、生活で使う頻度や量が多いため、その採取依頼が一番多い。

 殆どがギルドや商会の買取用の正規の依頼に見えるが、辛抱強く1枚ずつ見ていく。

「兄ちゃん、見ない顔だな、新参か?」

 不意に筋骨隆々の男に話しかけられた。中々に強そうなタンク型に見えるが、隣に居るレグルスには気付く程ではない。

「ああ、風の迷宮に観光ついでに行ってみようかと。初めてなんだけど、割の良い依頼はあるか?」

「金払いの良いってんなら、奥まで行くようなのしかねぇよ。兄ちゃんみてぇな、細っこいのじゃ危ねぇよ」

「ちなみにどの依頼だ?」

 男は隅に貼られた1枚を指差した。礼を言って、移動しようかと踏み出すと遮られる。

「まあ、待ちなよ。最近ソロでクエストしてると、危ないって噂があるんだよ。なあ、悪いことは言わねぇから、俺と組まないか?」

 親切より下心の強い顔で男は笑った。

「外に連れ待たせてんだ、ありがとうな」

 軽くいなすと、男も深追いせずに引いた。アルカはさっさと依頼書の場所へ移動する。
 横からの視線が煩いが、アルカは黙って内容を改めてからギルドを出た。

 ギルドから出て、通りを暫く歩いた適当なところで、漸くレグルスが気配遮断を解く。

「もしかしてアルカって、いつもああいうのに絡まれてたりする?」

「……俺は昔からソロでやってるけど、ソロなんてそんなもんだから。一々相手になんか、してないよ」

「やっぱ遮断はもうしない……!」

 ぎっと唇を食い縛ったレグルスに嘆息して、話を仕事に戻す。

「レグは何か気になる情報は見つけたか?」
「そうだね……、高額と言う点なら数件、毛色と言うなら1件」

「うん。後はソロでクエストしてると、危ないって噂か」

 アルカは唇に指を押し当てて、少し考えてから口を開いた。

「レグルス」
「駄目です」
「まだ何も言ってない」
「駄目です。絶対にダメ」

「俺が囮になった方が絶対効率良いだろ」

 レグルスが額に手を当てて、それはそれは大きな溜息を吐いた。

「鎖、買ってくるかな」
「ヨシ、もう1度、依頼の整理するか」

 光の失われた真っ暗な瞳で呟かれたため、アルカは急いで手の平を返した。

「高額の4件は、いずれも商会からの直接の依頼だな。内2件は、全国展開してる大きな商会だ。残りはこの辺りの商会か」

「魔導具工房に卸すと考えれば、あの量と金額なら妥当に見えるね」

 レグルスが何事も無く返答してきたのに、安堵して話を続ける。

「依頼4件とも支店がこの町にあったから、少し様子を見に行こう」
「うん。毛色の違うのは、アルカはどう思う?」
「短期魔石採掘バイトの件だろ?これが良く分からないんだよな」

 アルカは首を捻った。ギルドにクエストとして人手募集することもあるので、別におかしくはないが引っ掛かる。

「出来高じゃないから、この給料なら割が良いと言えるね」
「そうなんだよな。魔石関連は依頼が多いから、安定確保のためなら、これも有りではあるけど……」

「取り敢えずここも店があるから、5軒の商会の実態を少し探ろう」

 レグルスがゆったりと微笑む。方針が決まったところで、アルカたちは一先ず宿を取ることにした。

 乾いた赤土造りの町を回る。宿は色々とあったがどこも満室で、漸く段々の崖をくり抜いた部屋が、1部屋見つかった。
 そこそこ清潔でツイン、風呂とトイレは共用だが、直ぐに迷宮調査に入るだろうし文句は無い。

「先に言っとくけど」

 部屋を眺めたアルカは、腕を組んだ。

「任務が終わるまで、そーゆーのナシな」

 物珍しそうに剥き出しの洞窟の壁を確かめたり、サイドテーブルの引き出しを開けていたレグルスが首を傾げた。

「そーゆーの?」

 分かってるのか違うのか、レグルスは大人しくアルカの説明を待っている。

「……お触り禁止、待て、だから!」
「えっ!?なんで!?」

 分かっていなかった。レグルスはショックを受けた顔で、詰め寄って来る。

「当たり前だろ?何しに来てると思ってんの?任務だよ?仕事で泊まってんのに、公私混同が過ぎるだろ!」

「任務だけど、宿の時間は退勤後とみなせるじゃん!寝る時まで仕事してないじゃん!」

 いつになくムキになって、食い下がるレグルスに若干引く。

「それはそうだけど、示しがつかないだろ。そんなの」

「別に言わなきゃバレないし言わないよね、他人にそんなこと。任務終わりに、マーキングしなきゃ良い話だし。あと俺、局長だし。局長としても、皆に任務時間以外のこと、常識の範囲なら煩く言ったことないし」

「局長なら尚更しっかりしろよ……。いや、どんだけしたいの、お前」

「はぁ?アルカになら、ずっと触ってたいよ、俺は。ねぇ、アルカが本当に嫌なら何もしないけど、本当に、絶対、少しもだめなの?」

 また1歩距離を詰められ、部屋の扉とレグルスの間に挟まれる。
 腕で囲うように閉じ込められて、気付いた時には壁ドンが完成していた。

「……だって、少しでも触ったら、我慢出来なくなるだろ」
「やらしいこと我慢するから、キスまではしてもいい?じゃないと俺死んじゃう、任務に集中出来ない」

 見下ろしてるのに、懇願する瞳も言い方も本当にずるい。
 近くなった分、感じる熱に簡単に煽られて溺れるのは、寧ろ自分の方だ。

「もう昼から何言ってんだよ!飯食って調査!はい行くぞ!」
「あ、アルカの鬼~」

 壁ドンから抜け出して背を向けて歩き出せば、ぐずぐず泣き言を言いながらレグルスが付いてきた。

 ジーク組も心配だが、こちらも不安になって来た。アルカはぐったりと宿を出た。
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