【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

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秋の章 人工魔石事件編

62 工房

 レグルスはユアンを引き摺ったまま、そのまま奥の通路を進み、長い階段を下りていく。

 段差に打たれてうめき声をあげる、ユアンなどには目もくれない。
 ユアンの折られた足首も、引き摺られ打ち付けられる度に、どんどんどす黒くなっていく。

 やがて大きな空間に下り立った。
 まるで何かの工場のように、天井のあちこちからたくさんの配管が通されている。
 絶え間無い機械の作動音も聞こえ、煩いくらいだ。

 奥に進んで行くと配管の集束する、仕切られた区画に着く。
 そこには円柱状の大きなガラスのポッドが、5体設置されていた。

 ポッドはそれぞれ、天井の配管と繋がっている。
 4つは中が真っ黒で外からでは窺えないが、結界の気配がした。

「説明しろ」

 レグルスがポッドの前で、無造作にユアンを放った。痛みに呻くユアンを許さず、再度無機質に問う。

「知らねぇ……、俺は無関係だから」

 ユアンの腫れた足首を強く踏んで、レグルスはもう1度同じ問いを繰り返した。

「いてえ!やめろよ!お前は何なんだよ!?アルカの新しい男か!?」

 口を開きかけたアルカを制して、レグルスは片手で男を空のポッドの中へ放り投げた。

「話さないなら、お前で試す」

 レグルスは淡々と、ポッドの扉を閉める。

「やめろ!俺は侯爵家の生まれだぞ!お前なんかどうにでも出来るんだ、出せよ、今すぐ!」

「へえ、それが?それなら俺は公爵家だから、お前なんか殺しても何の問題も無いな?」

 ポッドの扉を叩いていたユアンが絶句した。しかし直ぐに、ワナワナと震え出す。

「家名を言えよ!父上から正式に抗議してもらう!ここから出せ!」
「話聞いてたか?喋らないんだったら、お前は用済みだ」

 レグルスは扉の横の計器類に手を触れた。ボタンとメーターが付いている。

「それっぽいの、適当に押せばいけるかな」
「やめろ!マジでやめろ!魔石になんかなりたくねえ!」

「魔石?こんな機械で、魔石が造れる訳無いだろ?嘘吐いてるだけだろ?やっぱりお前で試した方が早い」
「違う!マジなんだよ!話すから出せよ!」

 たっぷり間を取って、ユアンに散々泣き言を言わせてから、レグルスは漸く扉を開いた。

「これは人を魔石に変える装置なんだよ!詳しい仕組みは分からねえけど、光魔法を使うってマーカスが!大体俺は、マーカスに唆されただけだ!言う通りにすれば借金チャラにして、儲けさせてくれるって!」

 ポッドから這って出てきた、ユアンが喚き散らした。

「マーカス?そいつはどこに行った?」
「知らねえよ!部屋にでもいるだろ!俺はただ人を集めただけだって、悪いのはマーカスだ!なあ、案内してやるから見逃せよ」

 レグルスの足元に縋り付いて、ユアンは下卑た笑みを浮かべた。だが、レグルスは冷たく見据えたまま首を振る。

「知ってて、被害者を連れて来てるだろう。お前も重罪だ」

 取引すら出来ないと思い知ると、ユアンは甲高い悲鳴を上げた。
 発狂されたなら面倒だなと、アルカは溜息を吐く。

「クソクソ!アルカ、てめぇまたか!あん時はジーク、今度は公爵!また強い男を唆して、俺の邪魔をするんだな!?」

 急に明後日の方向で矛先が向いて、アルカは片眉を上げた。
 どこまでも逆恨みする男だ。だが、レグルスを誑かしているのは強ち間違いではないなどと、呆れて場違いな感想を抱いた。

「おい、お前!俺はなぁ、こいつの初めての男なんだよ……!知ってるか、こいつ嫌だ嫌だって泣き喚く癖に、体は正直なもんでよ、尻の具合だって中々でな。しかもその後、すぐ他の男を咥え込んで、人を貶める淫乱クソ野郎なんだぞ!お前も騙されてんだよ!分かるだろ?」

 よくもまあ回る口だと半ば感心していると、レグルスは予備動作無く、ユアンの股間を思い切り蹴り潰した。
 見ていたアルカの方が、身が縮み上がった。ユアンは声もなく泡を吹いて痙攣している。

 気絶したユアンの髪を鷲掴みにして、無理に上向かせたレグルスは、ポーションと気付け薬をその口に一気に流し込む。
 到底下半身は治らないが、意識を戻すには充分だった。

「何すんだぁ……、貴様ァ……!!」
「ネフディト監獄じゃ、お前みたいな玉無しでも可愛がってもらえるから安心しろ」

「あ?……う、嘘だろ、ネフディトに俺を送るつもりか!?」

 痛みに血走った目つきで泣きながら、ユアンが声を振り絞る。

「そう。死ぬまでそこで、可愛がってもらえ。いいか、やられたらやり返される。お前が踏み躙った以上に、お前も踏み躙られろ」

 あ、やばい。レグルスの表情が、見たことの無い程の殺意に満ちていて、アルカはその腕に触れた。

「1個訂正しとくわ。俺が誑し込んでんのは、こいつだけ。だって俺の男だからね。……こいつってさ、強くて、逞しくて、……すごーく大きいんだよ、色々と。……先輩と違ってさ?」

 見せつけるように笑んで、レグルスにしなだれかかる。
 正しく意味を理解したユアンが、再び顔を真っ赤にするのを見届けて、アルカは睡眠を付与した。

「……レグルス?」

 昏倒したユアンを掴んだまま強張った体に見上げると、レグルスも顔を真っ赤にして視線を逸らしていた。

「ナニ、想像したのかなぁ~、レグルス君は」

 ニヤニヤと頬を突くと、レグルスはぎゅっと顔を顰めて口を結ぶ。
 それからポイッと、ユアンを放り捨てた。

 良かった。この顔に戻ったら安心だ。アルカは少しほっとして、身を離した。

「アルカは本当に、……格好良いね」

 眩しいものを見るような、それでいてどこか寂しそうなレグルスの顔に首を傾げる。

「レグ?」
「アルカは、どんなことも、あれだけ苦しんだ過去も1人で乗り越えるんだから、本当にすごいよ。尊敬する」

「はぁ~?お前、自分で言ったこと忘れたのかよ?」

 ぐいっと胸倉を掴んで、引き寄せた。

「お前が一緒に背負ってくれてんだから、1人で乗り越えたんじゃないの、俺は」
「……ほんと?」

 レグルスの子供みたいな頼りない表情に、笑顔で応える。

「本当。正直、あいつの玉、潰してやったのには心底スカッとした!ありがとう、レグ」
「っ、……そっか。……ふふ、そっか。アルカがすっきりしたなら良かった」

 おまけにワシワシと頭を撫でてやると、レグルスも漸く笑った。
 
「さ、マーカスを探そう」
「うん、でもちょっと待って」

 調子を戻したレグルスは、再び並んだ黒いポッドに近づいた。

「この黒いの、魔障に似てない?」
「……確かに。だけどガラス内側に結界を張られてて、良く分からないんだよな……」

 人をポッドに入れて、魔石にする。ユアンは確かにそう言った。

 では通常の魔石とは、どうやって出来るのか。
 滝裏洞窟のように魔素が高濃度に溜まっている場所で、長い年月をかけて、自然に結晶化されるのが普通である。

 ダンジョン内にある魔石も同じ理屈だ。
 ダンジョンは誕生時の爆発的な魔素で、そもそも魔石を内包して産まれてくる。

 魔素濃度が高いことと、生育速度が外と違って数倍も速いことで、魔石は迷宮の終末期まで精製され続ける。
 後は稀に魔力の高い魔物が、魔核や魔石として体内に内包していたりする。

 魔石はつまり、魔素濃度の高い、何かしらの内部に精製される。

「……レグルス、魔障に冒され続けた人の、本当の最後って?」

 微かに震えた指を握る。レグルスも黒いポッドを見つめたまま答えた。

「魔物に転化した時点で殺す決まりだから、多分誰も知らない。……俺も」

 ポッドに繋がる配管が、低く唸り声を上げた。
 シューッと音を立てて、脈動するように震えている。この天井の上はアズカン大峡谷の谷底、魔素が満ち溢れた場所だ。

「スイッチを切ろう」

 レグルスが足を踏み出した瞬間、振り返り結界を張った。結界術と光結界が、打つかり合い弾けた。

「マーカス……!」

 アルカも咄嗟に腰の収納袋から、双剣を瞬時に抜いた。

「とんだ拾い物が紛れてましたねぇ」

 マーカスがにこにこと、区画の入り口に姿を現した。裸の照明に照らされて、きっちり分けた七三が艶めいている。

「お二人ともすごい魔力量だ。最終日に2人も上玉が手に入るなんて、僥倖だあ」

 にぱっと口を開いて笑うマーカスに底知れぬものを覚え、アルカは密かに戦慄した。

「特に君、面白いよ、凄く」

 急に爛々とした瞳に認識され、アルカは後退った。すかさずレグルスが一歩詰め、守るように体を前に出す。

「君の中は君だけじゃないね?違う魔力の質を感じる」

 まさかとは思うが、マーカスはレグルスさえ見破れなかった、精霊の力を感じ取っているのだろうか。
 そんなことある訳無い。だが嫌な焦燥を感じる。

「なあ、これ、何なんだよ、マーカス」
「魔石精製装置ですよ」

 当たり前のことを聞くなど言わんばかりに、マーカスは首を竦めた。

「もう仕上げなんで、見逃してくれません?」
「はいそうですかなんて、言う訳無いだろう」

 レグルスが前に出ると、マーカスが首を捻った。

「お前は捕縛する」

 レグルスが剣を抜いた。証拠保全の意図を理解し、アルカも双剣を構える。

「まあまあ、落ち着いて」

 仕掛けたレグルスに、光魔法の封印が放たれる。
 しかし、レグルスは瞬時に剣に火魔法を付与し、それを斬り伏せた。光と炎がぶつかり合い、光が押し負けて爆ぜる。

「これは……」
「お前くらいの半端な魔力なら、打ち消せる」
「ふ、ふふふ……、久しぶりに楽しめそうだ」

 マーカスが邪悪に笑んだ。
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