【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

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秋の章 人工魔石事件編

64 流星群

「ヨシ、ここかな」

 結局強化を使って、大峡谷の更に奥の1番高い崖に登り、アルカは満足そうに息を吐いた。

「あ、アルカは、時々、振り切る、よね……」

 ぜえぜえと、レグルスが隣に座り込んだ。
 もうすっかり真夜中だろう。月が西に傾き始めている。

「まあまあ、見ろよ」

 アルカも座って、目の前の景色を見渡す。
 月明かりでも満月のためか、遠くまで良く見える。

 広がる赤土の幾重にも重なった地層、カラガスの町の灯り、アズカン地方に広がる大草原には、ミニチュアのような遊牧民のテントが見える。

 左手には遥かな山脈が連なり、北のセドルア山系へ繋がっている。
 遥か先に雪を冠した、霊峰セドルアの先端が小さく見えた。

「すごいな。こんな近くで星空、見たことない」

 レグルスがぽつりと呟く。手の届きそうな距離に、星がひしめいて輝いている。

 遠い宇宙を覗いているようで、神秘的で胸がわくわくする。この世界の外には、何が広がっているのだろうか。

 前世のようにロケットなんてものは無いし、未だ到達されていないけど、太陽や月もあるくらいだから、似たような宇宙もあるんだろう。

「寒くない?」

 腰に手を回して引き寄せながらレグルスが問う。隣同士にくっついて、肩に頭をもたれかける。

「風吹いてないし、レグルスが温かいから大丈夫」
「……そっか。寒くなったら言って」

 どこまでも気遣う声に、少しだけやるせなくなる。
 
「あ、流れ星」
「ああ、今、流星群が見えるって酒場で聞いたな」

 不意に星の間をすり抜けて消えた、光の軌道に目を瞬かせた。
 レグルスと黙って夜空を見上げると、1つ2つと次々に星が流れて消えていく。

「な、願いごとした?」
「願いごと?」

 レグルスの横顔を覗き見ると、少し困った顔をしていた。

「願いごと、……願いごとかぁ」
「何?なんもないの?」

 本気で困惑した声に視線を向ければ、レグルスは上を向いたままうんうんと唸っていた。

「う~ん、全部叶っちゃったしな」
「はぁ?全部?何、どんなの?」

 俄に頷けず、思わず問い詰めてしまう。レグルスはアルカを見て、瞳を柔らかく細めた。

「君」

 恥ずかしいのに心臓がぐっとなって、アルカはわなわなと震えた。
 案外こういうストレートな口説き文句に、弱いところがある。

「ほ、本気で言ってんの、ソレ……」
「本気だよ?アルカが全部、俺の願い叶えちゃったから」
「んぐぐ、も、やめ……。やめよ」

 ふふと静かにレグルスが笑う間に、気持ちを落ち着ける。

「いや、無欲過ぎるだろ。折角なんだからホラ、レグルスももっと願っとけよ。例えば、俺がもっと優しくなりますようにとか、怒られませんようにとか」

「はは!それ言ったら絶対、俺怒られるやつじゃん!」

 珍しくレグルスがけらけら笑った。

「でも、そうだよね、俺の願いはアルカだから」

 見惚れるような笑顔に顔に熱が集まって、誤魔化しながらそっぽを向く。

「ぐ、……も~しょうがないなあ。じゃあ、この俺が何でも1つ願いを叶えてやる」

「えっ、今、何でもって言った?」
「……俺に二言は無い。とりあえず聞いてやる」

 念押ししたレグルスに気圧されつつ、アルカは頷いた。

 少し早まったかも知れない。
 そう思わないでもないが、レグルスが収納袋に手を突っ込んだのを、黙って見守る。

 袋から取り出した手の平には、小さなビロードのケースが握られている。

「あのね、これ」

 パクンと開かれたケースの中に、一対のピアスが収まっていた。

「これ……」

 2つで1つのピアスの片方は、アメジストの小さな珠がプラチナの台座に嵌り、そこから繊細な2つの鎖で結ばれた菱形のエメラルドが吊り下がっている。
 もう片方は、逆の組み合わせだ。

 小ぶりで目立ちはしないが、しっかり磨かれて宝石となった原石は、上品で存在感がちゃんとある。
 それにあまり揺れない長さで、戦闘の邪魔にもならない。

 片方ずつ、菱形がエメラルドの方をアルカが、アメジストをレグルスが着ければ、光に煌めく度に一目で、誰が誰のものか知らしめることが出来るだろう。
 
「でも、レグルス、穴開いて無いよな?」

 アルカは首を傾げた。アルカはピアスホールを開けていて、気分によって適当な物を着けている。

「うん。……だから、君に開けて欲しいって……」

 少し俯き加減に、顔を赤くしながらレグルスが希う。

 こういうのを、キュートアグレッションって言うんだな、きっと。
 据わった目でレグルスの膝の上に乗り上げて、両肩を掴んで見下ろす。

「跡、つけちゃっていいの?」
「うん。俺に一生消えない跡、つけて」

 レグルスの瞳が、熱で揺らめいている。

「俺がアルカのものだったって、一生残る証が欲しい」

 ポーチから取り出したピアス穴用の針を、手渡したレグルスの指先も熱い。

「それで俺が死ぬまで、ずっと君のものでいたい。それだけは無くならないように、体に刻んで」

 1つ1つが殺し文句で、否応なくアルカの熱も上がってくる。

「なんで過去形なんだよ。一生消えない傷、残すんだったら責任は取るよ、俺は」

「……アルカ。俺を、アルカのものにして」

 レグルスの欲に染まった声に、息が震える程に神経が昂る。
 右耳を差し出したレグルスの頬に触れて、指を滑らす。

「痛くしていい?」
「……うん。忘れないようにして」

 氷で冷やすことも出来たが、敢えてそのまま薄い皮膚に針先を当てる。
 は、と浅い呼吸が聞こえた。

 針を当てたまま焦らすように顔を確認すると、思った通り、レグルスは恍惚を耐える表情をしていた。
 ベッドの中で見慣れた顔に、薄く笑む。

「……っ」

 ゆっくりと針を皮膚に突き立てる。レグルスの肩が跳ねた。
 尻の間に硬い感触を感じる。

「はは、……変態。……勃ってる」
「……っう、ぁっ」

 視線を合わせたまま、態とゆっくり力を込めて、針が肉を抉じ開ける感触を焼き付ける。
 レグルスをなじった癖に、自分もすっかり張り詰めてしまっている。

「……はっ、……っ!」

 ぶちりと針が最後の皮膚を破って貫通した。
 僅かに零れた血を指で受け止めて、見せつけながら舐め取った。

 レグルスが荒い息のまま、惚けたように見詰めている間に針を抜き取る。
 また跳ねたレグルスの手から、アメジストが主体のピアスを取る。

 開けたばかりだが、構わずにピアスを嵌めた。
 留め具を装着して、自分の色に縛られたレグルスをじっくり見下ろす。

「……俺のものだね」

 ぞくぞくと背骨から脳まで、駆け上がる支配欲が満たされる快感に、堪らずに声が掠れて欲情を隠し切れない。

 誰よりも強い、皆の憧れの男を独占して首輪を付けたのだ。倒錯的な快感に目が眩む。

「レグルス、俺にも新しいの開けてよ」

 レグルスの瞳が、はっきりと浅ましい熱を灯した。鼻先が触れる距離まで、顔を近づける。

「俺の体にも、入れて。……俺の男だって、自分の手で俺に刻み付けて、分からせてよ?」

 挑発するように口の端を上げると、レグルスが顔を赤くして身動ぎをした。

「ねぇ、君、ほんと、どこでそう言うの覚えて来たの……?時々すごく、刺激的な言い方するよね」

「ふふ、知りたい?」
「……知りたい。アルカのことなら、何でも」
「じゃあ、入れてよ?レグルスので貫いて、俺のこと」

 態と卑猥な言い回しで耳元に囁くと、分かりやすくレグルスが動揺したのが分かった。

「早く、して」
「……っ!」

 興奮しているのか微かに震えた指先が、左の耳朶に触れる。
 元々開けていた穴の隣に針が当てられる。充分真ん中と言える場所だ。

「……ここでいい?」
「レグルスの好きにしていいよ」
「~~~っ」

 一々煽られてくれる可愛い男に笑みが止まらない。顎に手をかけて囁く。

「目にちゃんと、焼き付けろよ。俺がお前のものになるところ」

 喉仏が大きく動いて、瞳孔が開いてしまっているレグルスに、自らも煽られながら瞳で促す。

「は……っ」

 耳朶をなぞられてから、待ち望んだ針先が皮膚を貫いてくる。

 ゆっくりと押し入って来る先端は、痛みというよりも熱を生む。見つめ合ったまま熱に侵されていく。

 永遠みたいな時間だった。いや、確かに永遠を分け合っていたのかも知れない。

「……ふ」

 熱いままの左耳にエメラルドのピアスが収まり、アルカは漸く息を吐いた。

 レグルスの両肩に腕を回し、しなだれ掛かる。柔く耳殻に唇を付けて食んだ。

「俺、平民の中で育ってきたって話たよな?」
「っ、うん」

「それで平民の悪ガキがやることは、大抵全部やってるんだけど」
「う、……はぁ」

 言葉を区切る度に、首筋を辿り太い血管や筋に甘く噛み付く。ぬるりと舌を這わせると、レグルスが大きく跳ねた。

「娼館の姐さん兄さんに、色々手解きを受けたって訳」

 ぢゅと音が鳴る程、強く首の付け根を吸う。レグルスの腰が動いて、硬いものが当たる。

 アルカは悪ガキたちと下町を根城にしていたため、ずっと娼婦たちに可愛がられていた。
 故にあの事件の後に、アルカの性的な異変に直ぐに気づいたのも彼らだった。

 性的弱者として扱われる彼らは、性的な傷やトラウマには敏感で、ほとんどが似たような尊厳を傷付けられる体験があった。
 故に同類相憐れむではないが、2度とそんな目に合わないような性的な処世術や、ついでに房術の類などを教えてくれた。

 それから体に触られるトラウマも、少しずつリハビリしてくれたのも彼らだ。
 ジークと媚薬効果のせいとは言え、最後まで出来てしまったのは、このリハビリの効果だ。

 その2つで漸く性行為への嫌悪感は、最低限は克服出来たのだ。

「ねぇ、俺の可愛い男を誑し込みたいんだけど、試してみない?凄く甘やかしてやりたい気分なんだ。……たくさんお預けさせたし、ね?」

 先程開けたばかりの、レグルスのピアスに口付ける。
 もう、レグルスのスイッチがどこか、良く知ってしまっている。

 顔を覗き込むと、期待に満ちた眼とかち合う。欲情に塗れて笑って、両頬を挟んで深く口付けた。
 レグルスの熱い舌を、何度も吸い上げて扱くように絡める。

 唾液でさえ甘く感じるのだから、何の抵抗もなく味わい、こちらからも流し込む。
 レグルスの喉が上下するのに、深い満足を覚える。

 足の間でぎちぎちに張っている昂りを、腰を動かして刺激すると、レグルスの口から色っぽい吐息が漏れる。

「……こんなにして、かわいそうだね、レグルス」

 言葉とは全く真逆の声音で告げると、レグルスのシャツをたくし上げ、鎖骨から順番に下に唇で辿る。
 腹筋の割れ目を辿り、形の良い臍の下に吸い付く。

「ま、待って、アルカ、そんなとこ……!」

 パンツ越しに、張り詰めた昂りに唇を落とす。
 レグルスの焦った制止も聞かず、ジッパーを歯で挟んで下げた。
 それから固い腹筋を撫でて、ぐいっと下着を下げる。

 ぶるんと飛び出た逞しい怒張が、目の前に晒される。血管を浮かび上がらせ、反り返る程に勃ち上がっている。
 ふうと息をかけると、大袈裟にビクついた。

「あ、アルカ、待って!き、汚いって」

 ついこの間同じ台詞を吐いたが、レグルスは気にしないと答えた。
 上目遣いに見上げたまま、逞しい幹に頬摺りをしてキスをする。

「うぁっ、ヤバいって……!」

 意地になったのか、漸くされる方の心情を理解したのか、2人分の浄化魔法が掛けられた。

「あっ、こら、勝手なことするな……!」
「だって、アルカの綺麗な顔に、そんなの……、んっ!?」

 ぱくりと、涙を溢している先端を口に含んだ。音を立てて吸い上げる。
 強烈な媚薬みたいに、癖になる甘い味がする。やはり魔力相性が良いと、体液が美味いのは本当だと改めて実感する。

 これまでの躊躇はなんだったのだと、夢中でレグルスの味を絞り出すように舌を当てて、吸い上げながら頭を上下させる。

 弱り切った表情で、レグルスが躊躇いがちに頭に触れて、やわやわと髪を撫でる。
 褒められているような擽ったさに、どんどん夢中になる。

「……上手、……っ」
「ひもひひーひ?」
「うあ……そこで喋るのやばい……!」

 うっそり笑うと、裏筋にベッタリと舌を這わせて、絞るように手も使いながら引き込んでいく。
 敏感な口の天井が何度も擦られて、じわじわと快感を感じ出す。

「アルカ……!すぐ、出るって……!」

 パンパンに張った袋も柔く揉んで、じゅるじゅると下品な音を立てて吸い上げる。
 チラと見上げると、腹筋がびくびくと震えた。

「離して、口……!アルカぁ……!」
「ん、……ふ、ぅ……んぐ」

 喉奥に飲み込むように、引き摺り込む。奥に欲しい。
 この男の全てを、体に入れたい。喰い尽くして、1つになってしまいたい。
 湧き上がる欲のまま、一際強く吸い上げた。

「っあ!」
「んぐっ!」

 喉奥にまともに強く迸りが叩きつけられ、咽ながら必死で飲み下した。
 我慢していたと分かる程に、どろりと濃くて熱い。雄の臭いとレグルスの味に、くらくらする。

 ずるりと引き抜かれる感触に、飲み下せなかった精液と涎が、口から1筋零れた。それを指で拭って口に含む。
 
「はっ……はぁ……、ちゃんと、全部飲んだよ、見て」

 荒い息のまま、舌を出して笑いながら誘惑する。ただ1人の男を。

 世界でたった1人だけの、アルカの男を呼ぶ。

「俺のことも、可愛がって。レグルス」
「アルカ……!」

 星空の下、酷く余裕の無い顔で自分を求める男を、心から愛しいと思った。
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