【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

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冬の章 セドルア掃討編

78 セドルア合宿

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 冷え込んだ朝の空気に冬の到来を知る。
 離れがたい布団の温もりから、アルカは渋々身を起こした。

「レグ、起きて、時間だよ。レグ」

 掛け布団を捲ると仰向けのレグルスと、その上に乗って眠るナンがいた。

 アルカのセミダブルのベッドで、3人でぎゅうぎゅうになっているが温かくて居心地が良い。そんな季節になった。

 自分もまたその輪に戻りたかったが、そろそろ起きて準備しなければいけない。

「レグルス、起きろ。今日は遅れられないよ」
「う……ん……、アルカ……」

 寝ながら返事をしたレグルスは、ギュッとナンを抱き締めて頭を撫でている。
 初期はアルカとナンを間違えていたようだが、今はナンとアルカを間違えるようになった。

 起き抜けにギュッとやられて不快だったのか、ナンがレグルスの顎をバチンと打ってから起きた。
 そのまま伸びをしてから、アルカの元に擦り寄って来た。

「おはよう、ナン。ナンはちゃんと起きれて偉いなー。世界一の猫様だー」

 頬擦りしてすーはーしていると、肉球で頬を突っ張られた。ナンも出勤時間らしい。出窓に飛び乗ったので開けてやる。

「ナン、じゃあ暫く行って来るから、あんまり食べ過ぎるなよ」
「ナァン」

 ナンは橄欖石色の瞳を数度瞬かせて、レグルスをチラッと見た。
 それから、たしたしとアルカの頭を撫でて窓から出て行った。

 朝の冷たい空気を吸い込んでから窓を閉めていると、後からベッドに引きずり込まれる。

「アルカ、どこ行くの……」
「仕事だよ、仕事。起きろ、局長」
「やだぁ……、めんどくさい、アルカとここにいる……」

 グズグズと項に頬擦りをして、レグルスが縋ってくる。

「局長、しゃんとして下さい」
「やだ、行きたくない、アルカと離れたくない。昨日ナンのせいで邪魔されたし、仕事なんてしないでイチャイチャしてよー……」

 ちゅ、ちゅっと項や背中に唇が落とされる。正直、魅力的な誘いではある。

「今日からセドルア大掃除の現場責任者なんだから、情けないことを言わないで下さい、局長」
「う゛……、やめて、聞きたくない」

 向き直って、その両頬をガシッと掴んで濃厚な口付けをする。

「やる気出すなら、イイコトしても良いよ」

 抱き合って触れる中心が朝だからか、もう臨戦体勢になっている。レグルスの目元が赤く染まった。

「朝ご飯抜きになっちゃうよ……?」
「手早く、マーキング禁止でな?」

 尻に手を当て浄化魔法を掛けながら、ローションのボトルに手を伸ばす。
 一昨日もしているから、多少無理しても大丈夫だろう。

「しばらく出来ないから、お前の形忘れないようにさ、中に精子たくさん頂戴」

 ローションを尻に塗り込めながら、レグルスの右耳を甘噛みする。
 尻を解す指を取られて、一緒にレグルスの節くれ立った指が入ってくる。 

「アルカって本当、えっちで……最高です」
「ふ……、局長の太くて大きいの、俺に挿れてください」
「うっ、だから止めてよ、それ!」

 ギンと硬度が増した感触と久しぶりの全力の赤面を見て、アルカは機嫌良く笑った。


 何とか集合時間に間に合い、アルカたち当日移動組は地下の転移陣エリアに集合した。

 今回の霊峰セドルアの魔素掃討は、ギルド総本部が統括指揮担当と言うことで、多数の職員が参加する。
 そのため、先行組、前日入り組、当日組の3回に分けて現地入りすることになっている。

 統括指揮はベテランの総務部長が務め、現場指揮の責任者がレグルスとなっている。
 先ほどまで淫靡な顔で腰を振っていたレグルスは一転、真面目くさった澄まし顔で総務部長と話している。

 ざわざわとした人混みの中、アルカも先ほどまで卑猥な言葉を吐いて咥え込んでいたことなどおくびにも出さず、粛々と段取りを確認していく。

 当日組の中にジークの姿は無い。
 ジークとイドはヒト魔石の件で、1週間前から現地入りしていて、正直安堵する気持ちが大きいのが本音だ。

 あれからジークとは、業務以外の会話は一切していない。
 ジークの勘の良さではアルカの決定的な変化など、僅かも見逃さないだろう。

「うっ、アルカさん、最近ちょっと艶々し過ぎて眩しいっす」

 当日組のジョエルとウルクの元に行くと、ここにも勘の良いガキがいた。

「ウル君、今日からよろしくねぇ。俺、君の活躍楽しみにしてるんだぁ」

 ガシッと肩を組むと、ウルクがアルカの背後を見て、ひぃと小さく叫ぶ。

「やめ、やめて……、すげー殺気が刺さるぅ……!」
「ジョエルもよろしくな。先行組からの話聞いたけど、今年は天気が悪くて骨が折れそうだって」

 ウルクの肩を組んで締め上げたまま、ジョエルに向き合う。

「はい、アルカさんのサポートはお任せください!」
「うん、頼りにしてる」
「アルカさんん、俺、殺されちゃうぅ!」

 ジョエルは水属性のため、セドルアの氷雪系魔物との交戦は有利にも不利にもならないが、ウルクが土と火属性のため問題無いだろう。

 魔素掃除がメインのため、中級治療や防御魔術の得意なジョエルが居れば、ウルクに取ってもバランスが良い。

「さぁ、そろそろ行きましょうか」

 にこにことレグルスが寄って来て、アルカから漸く解放されたウルクの肩を組む。

「ジョ、ジョエルしぇんぱい、助けてぇ」

 涙目のウルクが引き摺られながら、セドルア行きの転移陣の列に連行されていく。
 アルカとジョエルは、のんびりと列に並んだ。

 転移した先、霊峰セドルアの麓の街ヤズマイシュは既に真冬だった。

 アルカは氷属性だが氷魔法無効というだけで、寒さは普通に感じる。
 他の職員もヤズマイシュ支部に着くと、慌てて寒冷用装備を着込み出した。

 アルカたちも収納袋から、毛に火魔石粉が織り込まれた布で出来た職員用コートを引っ張り出した。こちらは市街地向けで、山に入る時はもっと重装備になる。

 ヤズマイシュは北部最大の都市で、セドルア大連山の向こうにある北方国との最前線となるオルデン辺境伯領都になる。

 北方三国とは侵略の歴史があるが、ここ50年程度は大きな戦争は起きていない。
 しかし油断のならない緊張状態は、国の有史以来ずっと続いている。

 セドルア大掃除にはオルデン辺境伯の支援もあり、街の施設は格安でギルド職員に解放される。
 全国から集まる職員100余名用の宿も、彼女の尽力で不自由無く滞在出来る。
 
 全国から集まった生え抜きたちが、続々と転移陣から姿を現す。
 アルカたちも人波に乗って、ヤズマイシュ支部のロビーへ集合した。

 本日の支部営業時間は午後からとなるが、集った職員で満員だ。
 その人混みの中に、何人か顔見知りの支部職員を見つけた。

「アルカ!久しぶり!」
「ロジェ、マイス、久しぶり!」

 学生時代の級友で、ギルド職員になった男女2人組みを見つけて懐かしさに走り寄る。

「元気してた?懐かしーわぁ!」

 深緑色の長い髪を後ろで高く括った、そばかすが愛嬌のロジェが懐っこく腕に触れて笑う。

 濃紺の短髪で切れ長の目が凛々しい、マイスも肩を叩いて来た。
 その際に2人の指に光った揃いの指輪を見つけて、アルカは目を丸くした。

「えっ、嘘、お前らそんな気配なんにも……」
「へへ、気づいちまった?」

 デレデレとマイスが指を見せびらかしながら、ロジェの肩を引き寄せた。

「この間婚約しました~!」
「おぉ、おめでとう!」

 わっと3人で、何故か握手して盛り上がる。

 級友時代は特に男女の仲では無かったらしいが、マイスがロジェの勤めるセドルア地方の支部に異動になり、距離が縮まったとのことだ。

「なんか時の流れを感じるなー。お前らが結婚ねぇ」
「そうなのよ。あの頃の私も信じられないと思うわ!私は本の虫、マイスは悪ふざけばっかりだったでしょ」

「悪ふざけは俺だけの専売じゃないぞ。あの頃はアルカだって悪ガキだったろ」

 3人で笑いながら、過去を懐かしむ。

「それで?我らが悪童代表はどうなんだよ?いい人は出来たか?」

 ニヤニヤとマイスが肘で突いてくる。ロジェもからかうような笑みを浮かべた。

「私もその意味深なピアス、気になってた」
「ああ、アレ、俺の」

 少し離れた先で他支部の知り合いと話しているレグルスを顎で指し示すと、2人はぽかんと口を開けた。

「うっそ……、あのレグルス様……!?」
「情報局に入って出世したとは思ってたけど、こりゃまた凄いの捕まえたな……!?」

「そうなんだよ。俺もびっくり」
「いや、でも、何かしっくりくるわ。お似合いだと思う!」
「うん、……いや、でも」

 ロジェに同意しかけたマイスが眉根を寄せた。

「俺はてっきり、……ジークと付き合ってるのかと。だってジーク、ずっとお前のこと」
「こら、マイス!勝手に言わない!」

 ロジェが慌ててマイスの口を手で塞いだ。痛いところを突かれて、アルカも口を閉じた。
 そう言えばジークも集合している筈だ。

「アルカ、大丈夫?その、同じ職場でしょ?修羅場っちゃってない?」
「うん……。まあケジメは付けてるし……」

「えっ、そうかぁ……。な、時間合えば合宿中、飲みにでも行こうぜ!話聞くからさ!」
「うん、ありがとうな」

 そろそろブリーフィングの開始が近づき、アルカたちは解散した。
 支部毎に固まって説明を受けるため、アルカも総本部のシマにいるジョエルたちの元へ戻る。

 向こうに騒がしくしているイドと、腕を組んで壁にもたれているジークの姿を見つける。

 先ほどのマイスの言葉を思い出す。
 レグルス然り、周りに自分たちがどう見えていたのか、ジークが昔からどう自分を見ていたのか、知らぬは自分ばかりだった。

 改めて突き付けられた事実に、アルカは暫し上の空でウルクの四方山話に相槌を打った。
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