【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

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冬の章 セドルア掃討編

81 お似合いの2人

 初日は予定通り、迷宮2つの魔素掃除を終えたところで日没になり、全員が帰還地点の転移陣から無事にヤズマイシュ支部へと帰投した。

「か~っ、シャバの空気は美味いぜ~っ」
「そうだな。アレ、行きたくなるな?」
「んふふ、そうっすよねぇ、先輩」

 転移エリアの隅で、ウルクとジョエルが珍しく意気投合していたので、アルカは首を傾げた。

「アレってなんだよ?」

 つい口を挟むと、2人は息ぴったりに顔を見合わせた。

「すんません、今回ばかりはアルカさんはちょっと」

 ウルクの言葉に除け者にされた気がして、ややショックを受けていると、ジョエルが気まずげに慌てた。

「いや、その、ウォッカのショットバーに行こうかと」
「えっ、初日からそんなハイペースで大丈夫か?お前たち」

 ぽかんとすると、2人は不敵に笑った。取り敢えず除け者扱いでは無くホッとする。

「休養日に行きましょうね、局長も誘って」
「そうそう。あんまり酔わせると殺されちゃうんで」

 2人はひそひそと告げてから、待ち切れないとばかりに連れ立って行った。
 やや淋しい気もするが、今日の任務は終了、解散のためアルカも素直に見送った。

 飲みか。やっぱりバックスを誘う千載一遇のチャンスでは。

「アルカ、帰るよ」

 見透かしたようなタイミングで、レグルスが隣に寄り背中を押した。

 ヤズマイシュ支部の外に出ると、街も雪に覆われ大きな綿雪が降っていた。
 冬の山の日暮れは早いため、まだ夕刻だが灯りが点っている。王都であればまだ明るい時分だろう。

「疲れてない?どうしようか?」

 レグルスが顔を覗き込む。まだ支部前で職員がたくさんいる。
 ジークは居ないようだが、アルカは少し顔を外して素っ気なく返した。

「飯食って、ホテル行く」

 レグルスは気にした風でも無く、頷いて歩き出した。かじかんだ手を伸ばしかけて、やっぱり止めた。


「ああ、レグルス君とアルカ君」

 情報室員と総本部職員の一部に割り当てられた中級のホテルに着くと、ロビーで書類を見ていた総務部長のシェンに呼び止められた。

「本日以降の業務報告は、こちらに」

 がさっと10日分の報告書用紙が手渡されて、レグルスの代わりに受け取る。

「何か異常はありませんでしたか?」
「特には。魔素は例年より多いようですね」

 レグルスとシェンの会話を聞きながら、書類の様式を確かめる。

 シェンはあまりやり合いたくない相手のため、レグルスに任せて気配を消す。
 たまに勤怠管理で是正勧告をされることがあるが、またその話が正論な上、ねちっこい。

「そうそう、君たち」

 特に問題も無いためフロントへ向おうとすると、シェンはいつもの笑っていない笑顔で呼び止めてきた。
 2人で振り返ると、シェンは一層目を細めた。

「仲が良いのは良いことですが、2人とも立場がありますから、きちんと弁えてくださいね。全国の職員が集まっていること、くれぐれもお忘れなく」

 2人がそういう関係だということは、もう隠さずにピアスでも示しているが、厭に含みのある言い方だ。
 釈然としないまま曖昧に頷いてフロントに向かう。

「マクファーレン様と、メイヤー様ですね……。はい、こちらがお部屋の鍵となります」

 差し出された鍵は1つだった。バッと横を向くと、レグルスは涼しい顔で鍵を受け取る。

 背後からあからさまな視線を送られているが、レグルスはさっさと廊下を歩き出した。
 ちらほら居る職員は特に気にしていないようなので、アルカは一旦口を閉じて後に続いた。

「レグルス!なんで同室なんだよ!」

 部屋の扉を閉めるなり我慢していた分ワッと叫ぶと、レグルスはシレッとした顔をしていた。

 予算の都合上、宿泊は2人1組で1室の決まりではあるが、出発前に確認した際には、相手はジョエルと思い込まされていた。

「予約したの総務だよ?2人組みで泊まることになってるから、当然の配慮じゃない?」
「いや、お前、態と教えなかっただろ!」

 レグルスは悠々と備え付けのソファに座って、つんと窓の外を見た。

「だって言ったら、アルカ、部屋変えちゃうじゃん。逆に言うと、誰と10日も泊まるつもりだったの?」
「え、それはジョエルとか」

「俺を差し置いて、俺の目の前で、他の男と10日も2人で過ごすとか、正気?」
「う……」

 珍しくむっつりしたレグルスが、ポンポンとソファを叩く。有無を言わさぬ圧力に隣に座ると、膝の上に抱え直される。

「だって、シェンさんの言う通り、何も出来ないじゃん」
「別に強いマーキングしなきゃバレないし。ていうかアルカは、何も出来ないなら俺と居たくないの?」

 どこか機嫌の悪そうなレグルスを覗き込む。
 ぶすっとした顔を上向かせても、レグルスは頑なに目を合わせない。

「そうじゃなくて……」

 ちゅ、とゆっくり唇を合わせる。直ぐに互いの魔力が惹かれ合う気配がして、アルカは苦笑した。

「ホラ、すぐ混ざっちゃうだろ。何もしなくてもレグルスと居たいけど、一緒に寝たら俺が我慢できなくなるの。お前に触れるのに触っちゃ駄目だなんて、辛すぎて死んじゃう」

 ぎゅっと抱き締めて頬擦りをすると、漸くレグルスの雰囲気が和らいだ。

「アルカのえっち」
「そうだよー、俺はお前限定でスケベになんの。お前がそうしたんだから、責任取れよなー」

 ぎゅーと力を込めながらゆらゆら揺れると、レグルスが嬉しそうに笑った。

「今日、ずっとバックスさんばっか見てたでしょ」
「ん゛!……そんなことないよ」

「俺の目は誤魔化せないんだからな。アルカが何見てるかなんて、すぐ解るんだから」

 ぐりぐりと肩に頭を擦られ、レグルスの髪が頬を掠めて擽ったい。

「ふふ、バックスさんにまで嫉妬すんなよな」

 美しい紅髪を梳くように、ゆっくり撫でる。レグルスは少し身を離して顔を合わせてきた。

「だってさ、ぽーっとした顔で見惚れちゃってさ。俺のことなんか全然見ないし。俺以外見ないでって、あんなにお願いしたのに」

 湿度の高い熱が浮かんだ瞳を見て、漸く安堵する。
 こんなに嫉妬でやきもきしている男が、余所見なんてする暇は無いはずだ。

 今朝ヤズマイシュ支部の玄関ロビーで見た光景を思い出す。
 レグルスとオルデン辺境伯は、まるで1枚の絵画のように美しく完璧だった。

 どこからどう見ても、お似合いの2人。家格だって釣り合いが取れてる。
 それから辺境伯の言葉。あれはまるで。

「アルカ?」
「魔力操作の練習、しようか」
「う、んむ」

 強引に唇を奪って、最初から深く仕掛ける。惹かれ合う魔力を引き離して留める。

 他者に対してはあれ程簡単に止められるのに、レグルスとは交ざるのが抗えない。
 あれ程、嫌だった触れ合いも、したくてしたくて堪らない。

 今更この男を逃してなるものかと、本能が囁く。

「アルカ、流れて来ちゃってる。抑えて……」
「は……、レグが止めて、受け入れないで……、っん」

 水音を響かせて、ゆっくりと口内を貪る。混ざりそうで混ざらない感覚がもどかしい。

「アルカを受け入れないなんて、無理」
「ふ、練習だって。これじゃあ10日もお預けになるよ……?」
「やだ……!」

 キスを続けながらも、器用に眉根を寄せて駄々を捏ねたレグルスに笑う。

「自分だって、したい癖にさ……」
「したいに決まってる。ねぇ、ずるい、アルカばっかり。ちゃんと閉じて」

 鼻先を触れ合わせて瞳を合わせる。どこにも不安は無い筈だ。

「なんか、すごく、レグのことヨシヨシしてあげたくなっちゃったんだけどな……?」
「う、……ほんとずるいなあ」

 誰にも見せない顔を見せて、よくレグルスがアルカに乞う言葉だ。

 今、欲に塗れて弱り切ったその顔を間近にし、アルカも漸く身につまされた気がした。
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