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冬の章 セドルア掃討編
91 霊峰セドルア 前編
2合目に転移したアルカとレグルスは、昨夜欠員が出た6班が迷宮に入るのを補佐しながら、出現場所を改めた。
「足跡大きいね。20メートルくらいあるかもなぁ」
雪が積もっているにも関わらず、隠し切れない穴のような足跡を見て、レグルスがのんびり呟いた。
北部の魔物は大型化しやすく竜も同様だが、中々大きな個体だ。
「要はさ、襲われ待ちなんだよな?」
雪の積もった周囲を見渡しながら、アルカは溜息を吐いた。
「うん。罠を用意するにも時間かかるしね」
「こう、穴掘って、エレメントと魔熊たくさんぶち込むとか?」
「それは俺も思うけど、竜は死んだ生物は食べないから、大量に生け捕りにしないと呼び寄せられないよ」
確かに。まして竜は別に狩りに困る生き物ではないため、興味を引くなら大量の生き餌が必要になる。
エレメントと魔熊を生け捕りにするのは、かなり骨が折れるだろう。
「足跡追ってみる?」
「うん……、それは最終かな。ルート外れると、セドルアでは死ぬかも知れないしね」
それも最もで、ただの遭難なら緊急転移陣を使えれば何とかはなる。
だが、ルート外には一発致命傷のクレバスや、踏み抜いた先が実は断崖の雪庇で、そのまま数百メートルダイブからの即死という場所が多数ある。
他にも硫化水素の溜まり場や、雪崩の危険もある。
2合目はまだ高地といえる高度のため、比較的多様な魔物がいて、魔狼が襲って来たのを捌く。
こうやって簡単に、襲って来てくれれば楽なのだが。
「あ!いた!生き餌!」
「わあ、どうしたの、急に」
思い付いて大声を出すと、隣で魔狼を焼却していたレグルスがビクついた。
「ほら、俺!俺が生き餌になれるじゃん!俺の、魔力って……」
レグルスの顔を見た途端に、言葉が尻すぼみになる。
「アルカぁ?」
過去一の笑顔だったが、漏れ出る空気が暗黒過ぎて後退る。
「俺さ、アルカ1人くらい全然養えるくらい稼いでるんだよね。だから、別にいいよね?」
「ま、待て、落ち着け!何にも良くないんだわ!1回説明させろよ!」
省略された部分が空恐ろしく、アルカはわっと叫んだ。
「俺が精霊由来の魔力を出せば、魔物が寄って来るだろ?エレメントが好物なんだから、精霊の気配がすれば、竜だったら寄って来るだろうが」
レグルスが笑みを深めたが、こめかみにビキリと血管が浮く。
「君をスノウドラゴンに差し出すなんて、絶対やだ。絶対に、い、や、だ」
語気を強めて一語一句はっきりと、レグルスは拒絶を示した。
こんなに頑なレグルスは珍しい。いつもは有効な作戦なら直ぐに採用してくれるのに。
「よく考えろよ。このまま年末年始まで延びたらどうすんの?俺、こんなとこで、お前と初めての年末年始過ごしたくない」
レグルスが弱くなる上目遣いをすると、微かに怯むのが分かった。
「それにさ、ここに居る限り、ずーっと我慢しないといけないんだよ?俺だってそろそろ、お前にちゃんと抱かれたいし」
「……う、」
目元を染めたレグルスの視線が泳ぐ。効いてる効いてる。
「俺は年末年始はずーっと2人きりで、朝から晩までイチャイチャしたかったのに……。レグルスはそうでも無かったんだな……」
「あ、うう……」
是非が半々と言った表情になったところで、額を強めに指で弾く。
「お前が守れよ、俺を!竜だろうが人だろうが、誰にも渡すな!」
語気を強めて一喝すると、レグルスは唖然とした後、額を手で押さえて俯いた。
「なんなの、アルカ。なんでそんなに俺を喜ばせちゃうの」
「ふふ、お前が俺のものだから」
「ッスー……はぁー……、分かった」
天を仰いで、息を吐いたレグルスが頷いた。
漸くやる気を出したようで、美しいエメラルドの瞳にギラついた光が宿っている。
「速攻で殺してやる」
「おっ……、おぉ、頑張って」
焚き付けた癖に、レグルスの静かな宣言に若干引きながら、他人事のように応援した。
「でさ、2人でいける?少なくとも誘き寄せるまでは、他人に見せたくないんだけど」
「そうだね。誘き寄せたら、アルカは精霊の力は引っ込めて。それは俺も他人に知られたくないから」
その言い草に少し擽ったくなって笑むが、レグルスは眉を吊り上げた。
「本当に無茶しないでよ!アルカは俺のサポートするだけね!」
「はいはい、全力出すなら邪魔だろうから、ちゃんと後ろにいるよ」
くすくす笑うと、レグルスはムスッとしながら地図を取り出した。
「ここからだと、3合目の西壁手前、ヤパシュカ平が1番戦いやすいと思う。雪はあるけど下は確実に地面だから」
地図を確かめるが、確かにここからならそこが1番近いだろう。
西壁下には国境砦があるが約3キロの高低差があるため、戦いの余波は届かないと判断する。
2班に行動指示した後、2人で避難小屋から3合目へ転移し、ヤパシュカ平へのルートを辿った。
ヤパシュカ平は左右を切り立った崖に囲まれていて、山頂までのルートが奥の方に見渡せる。
100メートル程の広場になっているため、スノウドラゴンとも十分に渡り合えるだろう。
注意しなければいけないのは、崖からの転落だ。
遥か下に国境砦が見えるが、そこまで段々の崖になっていて、落ちたら助からない高さだ。
上を見渡せば雪で山頂は見えないが、魔法の輝きがあちこちで見える。
中層に集団が見えるため、ジークとイドもいる可能性が高い。
イドなら影を使えばすぐ下りて来るだろうが、ジークはどうだろうか。
「じゃあ始める」
雑念を振り払い、広場中央に立つ。竜以外の魔物も呼ぶため、レグルスにはその対処もしてもらう。
精霊の魔力は普段は使わないようにしているが、アルカの根源に深く入り込んでいる。
久し振りの感覚に項の産毛が逆立つ。心臓の上の精霊刻印に魔力を流し、魔力を大きくしていく。
人が持てない力が身体中を満たして巡り、本能的な万能感が奥底から迫り上がって来る。
いつの間にか辺りを魔物が取り囲んでいる。
狙いは勿論、アルカだ。この状態で魔力を使えば、より精霊の気配を撒き散らせるだろう。
「レグルス、ちゃんと俺を守れよ!」
「当然……!」
水魔法は氷属性の魔物には効き辛いが構わずに、上級魔法を撃つ。
魔素がそれなりにあるため、アブゾーブで何とかなる。
魔熊も集まり出してお誂え向きだ。この騒ぎなら竜も顔を出すだろうと思った瞬間、4合目付近に白い雪煙が立つのが見えた。
雪煙はどんどん加速してこちらへ向かってくる。山を揺らすような足音が響く。
「レグルス!」
既に反応していたレグルスは、火魔法の特級で群がっていた魔物を一掃した。
「アルカ、備え!」
広場より随分手前で一際高い雪煙が上がるや否や、辺りが暗い影に覆われた。
反射的にレグルスと自分に強化を重ねて、影の範囲から飛び退る。
数メートル積もっていた広場の雪が、柱のように上に吹き飛んだ。
立っていれば大怪我は免れない衝撃波に、タイミングを合わせて受け身を取り転がる。
西壁の一部から雪が崩れて谷底に流れていく。雪煙が治まると、そこには20メートル級の真っ白な竜が四つ足で立っていた。
鱗に虹色の虹彩を持ち、全身がオーロラのように輝く美しい竜だった。
「漸ク見ツケタ」
低い唸りと共に聞き取りにくい、くぐもった声が聞こえた。
脳の処理が追いつかずに辺りを見回してしまう。前方に立ったレグルスでさえ、驚いているのが伝わる。
「オ前、精霊持チ」
もう1度響いた唸り声に似た声に、信じられないが認めるしかない。会敵したのは、人語を話す竜だ。
「丁度良イ、アレヨリ、オ前ノ方ガ、楽ソウダ」
スノウドラゴンは濁った目で真っ直ぐにアルカを見て、口の横を上げた。細かく鋭い牙が覗き、凶悪な顔だった。
「笑った……」
「待て!お前は何者だ!」
こちらに注意が向いたせいか、レグルスが声を張る。
竜は初めて気づいたとばかりに、レグルスを見下ろした。
「アア、失敗作カ」
レグルスがビクリと固まった。竜はまた凶悪な顔をしてみせた。
「邪魔ダ、失敗作」
スノウドラゴンの爪がレグルスを襲う。火魔法でそれを弾いたが、レグルスの様子がおかしい。
そうだ。失敗作だ。その単語には覚えがある。
「レグルス!!」
一喝すると、レグルスはハッとして竜へ攻撃を仕掛ける。アルカも精霊の魔力を閉じて、照明弾を打ち上げた。
ジークたちを呼ぶというより、他班が近づかないようにするためだ。
照明弾を上げて、影縛りを竜に付与する。
しかし、確かに竜の影を縛っている筈だが、その動きは止まらずにレグルスと戦い続けている。
「オ前ニ用ハナイ、退ケ」
強烈な尻尾の振り払いが放たれ、掠めた断崖に亀裂を走らせた。
難無く避けたレグルスは特級火魔法の爆炎を放つ。
竜もまたスノウブレスで迎え討つが、レグルスの火勢が強く押し切った。
スノウドラゴンが燃え盛る炎に包まれて爆発する。
黒煙の中から、半身に火傷を負ったスノウドラゴンが立ち上がる。
並の魔物であれば消し飛んでいたが、やはり竜は頑強だ。
「駄作ノ分際デ、忌々シイ」
「……お前、マーカス、なのか」
レグルスが顔面蒼白で、額に汗を滲ませながら呟いた。
「ソウ名乗ッタコトモアル、ダガ、分カルダロウ?」
「やめろ……」
レグルスが一歩後退った。瞳孔が開かれて、金色の虹彩が揺らめく。
「失敗作、出来損ナイ、忘レタノカ?」
「やめろ、違う、そんな筈ない……!」
レグルスの魔力が急激に膨れ上がる。不味い。暴走の兆候だ。
「私ハ、オ前ノ製作者ダトイウノニ」
「黙れ!!」
咄嗟にレグルスから距離を取り結界を張る。同時にレグルスから、火魔法の最上位魔法の業火が放たれた。
「足跡大きいね。20メートルくらいあるかもなぁ」
雪が積もっているにも関わらず、隠し切れない穴のような足跡を見て、レグルスがのんびり呟いた。
北部の魔物は大型化しやすく竜も同様だが、中々大きな個体だ。
「要はさ、襲われ待ちなんだよな?」
雪の積もった周囲を見渡しながら、アルカは溜息を吐いた。
「うん。罠を用意するにも時間かかるしね」
「こう、穴掘って、エレメントと魔熊たくさんぶち込むとか?」
「それは俺も思うけど、竜は死んだ生物は食べないから、大量に生け捕りにしないと呼び寄せられないよ」
確かに。まして竜は別に狩りに困る生き物ではないため、興味を引くなら大量の生き餌が必要になる。
エレメントと魔熊を生け捕りにするのは、かなり骨が折れるだろう。
「足跡追ってみる?」
「うん……、それは最終かな。ルート外れると、セドルアでは死ぬかも知れないしね」
それも最もで、ただの遭難なら緊急転移陣を使えれば何とかはなる。
だが、ルート外には一発致命傷のクレバスや、踏み抜いた先が実は断崖の雪庇で、そのまま数百メートルダイブからの即死という場所が多数ある。
他にも硫化水素の溜まり場や、雪崩の危険もある。
2合目はまだ高地といえる高度のため、比較的多様な魔物がいて、魔狼が襲って来たのを捌く。
こうやって簡単に、襲って来てくれれば楽なのだが。
「あ!いた!生き餌!」
「わあ、どうしたの、急に」
思い付いて大声を出すと、隣で魔狼を焼却していたレグルスがビクついた。
「ほら、俺!俺が生き餌になれるじゃん!俺の、魔力って……」
レグルスの顔を見た途端に、言葉が尻すぼみになる。
「アルカぁ?」
過去一の笑顔だったが、漏れ出る空気が暗黒過ぎて後退る。
「俺さ、アルカ1人くらい全然養えるくらい稼いでるんだよね。だから、別にいいよね?」
「ま、待て、落ち着け!何にも良くないんだわ!1回説明させろよ!」
省略された部分が空恐ろしく、アルカはわっと叫んだ。
「俺が精霊由来の魔力を出せば、魔物が寄って来るだろ?エレメントが好物なんだから、精霊の気配がすれば、竜だったら寄って来るだろうが」
レグルスが笑みを深めたが、こめかみにビキリと血管が浮く。
「君をスノウドラゴンに差し出すなんて、絶対やだ。絶対に、い、や、だ」
語気を強めて一語一句はっきりと、レグルスは拒絶を示した。
こんなに頑なレグルスは珍しい。いつもは有効な作戦なら直ぐに採用してくれるのに。
「よく考えろよ。このまま年末年始まで延びたらどうすんの?俺、こんなとこで、お前と初めての年末年始過ごしたくない」
レグルスが弱くなる上目遣いをすると、微かに怯むのが分かった。
「それにさ、ここに居る限り、ずーっと我慢しないといけないんだよ?俺だってそろそろ、お前にちゃんと抱かれたいし」
「……う、」
目元を染めたレグルスの視線が泳ぐ。効いてる効いてる。
「俺は年末年始はずーっと2人きりで、朝から晩までイチャイチャしたかったのに……。レグルスはそうでも無かったんだな……」
「あ、うう……」
是非が半々と言った表情になったところで、額を強めに指で弾く。
「お前が守れよ、俺を!竜だろうが人だろうが、誰にも渡すな!」
語気を強めて一喝すると、レグルスは唖然とした後、額を手で押さえて俯いた。
「なんなの、アルカ。なんでそんなに俺を喜ばせちゃうの」
「ふふ、お前が俺のものだから」
「ッスー……はぁー……、分かった」
天を仰いで、息を吐いたレグルスが頷いた。
漸くやる気を出したようで、美しいエメラルドの瞳にギラついた光が宿っている。
「速攻で殺してやる」
「おっ……、おぉ、頑張って」
焚き付けた癖に、レグルスの静かな宣言に若干引きながら、他人事のように応援した。
「でさ、2人でいける?少なくとも誘き寄せるまでは、他人に見せたくないんだけど」
「そうだね。誘き寄せたら、アルカは精霊の力は引っ込めて。それは俺も他人に知られたくないから」
その言い草に少し擽ったくなって笑むが、レグルスは眉を吊り上げた。
「本当に無茶しないでよ!アルカは俺のサポートするだけね!」
「はいはい、全力出すなら邪魔だろうから、ちゃんと後ろにいるよ」
くすくす笑うと、レグルスはムスッとしながら地図を取り出した。
「ここからだと、3合目の西壁手前、ヤパシュカ平が1番戦いやすいと思う。雪はあるけど下は確実に地面だから」
地図を確かめるが、確かにここからならそこが1番近いだろう。
西壁下には国境砦があるが約3キロの高低差があるため、戦いの余波は届かないと判断する。
2班に行動指示した後、2人で避難小屋から3合目へ転移し、ヤパシュカ平へのルートを辿った。
ヤパシュカ平は左右を切り立った崖に囲まれていて、山頂までのルートが奥の方に見渡せる。
100メートル程の広場になっているため、スノウドラゴンとも十分に渡り合えるだろう。
注意しなければいけないのは、崖からの転落だ。
遥か下に国境砦が見えるが、そこまで段々の崖になっていて、落ちたら助からない高さだ。
上を見渡せば雪で山頂は見えないが、魔法の輝きがあちこちで見える。
中層に集団が見えるため、ジークとイドもいる可能性が高い。
イドなら影を使えばすぐ下りて来るだろうが、ジークはどうだろうか。
「じゃあ始める」
雑念を振り払い、広場中央に立つ。竜以外の魔物も呼ぶため、レグルスにはその対処もしてもらう。
精霊の魔力は普段は使わないようにしているが、アルカの根源に深く入り込んでいる。
久し振りの感覚に項の産毛が逆立つ。心臓の上の精霊刻印に魔力を流し、魔力を大きくしていく。
人が持てない力が身体中を満たして巡り、本能的な万能感が奥底から迫り上がって来る。
いつの間にか辺りを魔物が取り囲んでいる。
狙いは勿論、アルカだ。この状態で魔力を使えば、より精霊の気配を撒き散らせるだろう。
「レグルス、ちゃんと俺を守れよ!」
「当然……!」
水魔法は氷属性の魔物には効き辛いが構わずに、上級魔法を撃つ。
魔素がそれなりにあるため、アブゾーブで何とかなる。
魔熊も集まり出してお誂え向きだ。この騒ぎなら竜も顔を出すだろうと思った瞬間、4合目付近に白い雪煙が立つのが見えた。
雪煙はどんどん加速してこちらへ向かってくる。山を揺らすような足音が響く。
「レグルス!」
既に反応していたレグルスは、火魔法の特級で群がっていた魔物を一掃した。
「アルカ、備え!」
広場より随分手前で一際高い雪煙が上がるや否や、辺りが暗い影に覆われた。
反射的にレグルスと自分に強化を重ねて、影の範囲から飛び退る。
数メートル積もっていた広場の雪が、柱のように上に吹き飛んだ。
立っていれば大怪我は免れない衝撃波に、タイミングを合わせて受け身を取り転がる。
西壁の一部から雪が崩れて谷底に流れていく。雪煙が治まると、そこには20メートル級の真っ白な竜が四つ足で立っていた。
鱗に虹色の虹彩を持ち、全身がオーロラのように輝く美しい竜だった。
「漸ク見ツケタ」
低い唸りと共に聞き取りにくい、くぐもった声が聞こえた。
脳の処理が追いつかずに辺りを見回してしまう。前方に立ったレグルスでさえ、驚いているのが伝わる。
「オ前、精霊持チ」
もう1度響いた唸り声に似た声に、信じられないが認めるしかない。会敵したのは、人語を話す竜だ。
「丁度良イ、アレヨリ、オ前ノ方ガ、楽ソウダ」
スノウドラゴンは濁った目で真っ直ぐにアルカを見て、口の横を上げた。細かく鋭い牙が覗き、凶悪な顔だった。
「笑った……」
「待て!お前は何者だ!」
こちらに注意が向いたせいか、レグルスが声を張る。
竜は初めて気づいたとばかりに、レグルスを見下ろした。
「アア、失敗作カ」
レグルスがビクリと固まった。竜はまた凶悪な顔をしてみせた。
「邪魔ダ、失敗作」
スノウドラゴンの爪がレグルスを襲う。火魔法でそれを弾いたが、レグルスの様子がおかしい。
そうだ。失敗作だ。その単語には覚えがある。
「レグルス!!」
一喝すると、レグルスはハッとして竜へ攻撃を仕掛ける。アルカも精霊の魔力を閉じて、照明弾を打ち上げた。
ジークたちを呼ぶというより、他班が近づかないようにするためだ。
照明弾を上げて、影縛りを竜に付与する。
しかし、確かに竜の影を縛っている筈だが、その動きは止まらずにレグルスと戦い続けている。
「オ前ニ用ハナイ、退ケ」
強烈な尻尾の振り払いが放たれ、掠めた断崖に亀裂を走らせた。
難無く避けたレグルスは特級火魔法の爆炎を放つ。
竜もまたスノウブレスで迎え討つが、レグルスの火勢が強く押し切った。
スノウドラゴンが燃え盛る炎に包まれて爆発する。
黒煙の中から、半身に火傷を負ったスノウドラゴンが立ち上がる。
並の魔物であれば消し飛んでいたが、やはり竜は頑強だ。
「駄作ノ分際デ、忌々シイ」
「……お前、マーカス、なのか」
レグルスが顔面蒼白で、額に汗を滲ませながら呟いた。
「ソウ名乗ッタコトモアル、ダガ、分カルダロウ?」
「やめろ……」
レグルスが一歩後退った。瞳孔が開かれて、金色の虹彩が揺らめく。
「失敗作、出来損ナイ、忘レタノカ?」
「やめろ、違う、そんな筈ない……!」
レグルスの魔力が急激に膨れ上がる。不味い。暴走の兆候だ。
「私ハ、オ前ノ製作者ダトイウノニ」
「黙れ!!」
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