【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

文字の大きさ
99 / 168
冬の章 セドルア掃討編

91 霊峰セドルア 前編

 2合目に転移したアルカとレグルスは、昨夜欠員が出た6班が迷宮に入るのを補佐しながら、出現場所を改めた。

「足跡大きいね。20メートルくらいあるかもなぁ」

 雪が積もっているにも関わらず、隠し切れない穴のような足跡を見て、レグルスがのんびり呟いた。
 北部の魔物は大型化しやすく竜も同様だが、中々大きな個体だ。

「要はさ、襲われ待ちなんだよな?」

 雪の積もった周囲を見渡しながら、アルカは溜息を吐いた。

「うん。罠を用意するにも時間かかるしね」
「こう、穴掘って、エレメントと魔熊たくさんぶち込むとか?」

「それは俺も思うけど、竜は死んだ生物は食べないから、大量に生け捕りにしないと呼び寄せられないよ」

 確かに。まして竜は別に狩りに困る生き物ではないため、興味を引くなら大量の生き餌が必要になる。
 エレメントと魔熊を生け捕りにするのは、かなり骨が折れるだろう。

「足跡追ってみる?」
「うん……、それは最終かな。ルート外れると、セドルアでは死ぬかも知れないしね」

 それも最もで、ただの遭難なら緊急転移陣を使えれば何とかはなる。
 だが、ルート外には一発致命傷のクレバスや、踏み抜いた先が実は断崖の雪庇で、そのまま数百メートルダイブからの即死という場所が多数ある。
 他にも硫化水素の溜まり場や、雪崩の危険もある。

 2合目はまだ高地といえる高度のため、比較的多様な魔物がいて、魔狼が襲って来たのを捌く。
 こうやって簡単に、襲って来てくれれば楽なのだが。

「あ!いた!生き餌!」
「わあ、どうしたの、急に」

 思い付いて大声を出すと、隣で魔狼を焼却していたレグルスがビクついた。

「ほら、俺!俺が生き餌になれるじゃん!俺の、魔力って……」

 レグルスの顔を見た途端に、言葉が尻すぼみになる。

「アルカぁ?」

 過去一の笑顔だったが、漏れ出る空気が暗黒過ぎて後退る。

「俺さ、アルカ1人くらい全然養えるくらい稼いでるんだよね。だから、別にいいよね?」
「ま、待て、落ち着け!何にも良くないんだわ!1回説明させろよ!」

 省略された部分が空恐ろしく、アルカはわっと叫んだ。

「俺が精霊由来の魔力を出せば、魔物が寄って来るだろ?エレメントが好物なんだから、精霊の気配がすれば、竜だったら寄って来るだろうが」

 レグルスが笑みを深めたが、こめかみにビキリと血管が浮く。

「君をスノウドラゴンに差し出すなんて、絶対やだ。絶対に、い、や、だ」

 語気を強めて一語一句はっきりと、レグルスは拒絶を示した。
 こんなに頑なレグルスは珍しい。いつもは有効な作戦なら直ぐに採用してくれるのに。

「よく考えろよ。このまま年末年始まで延びたらどうすんの?俺、こんなとこで、お前と初めての年末年始過ごしたくない」

 レグルスが弱くなる上目遣いをすると、微かに怯むのが分かった。

「それにさ、ここに居る限り、ずーっと我慢しないといけないんだよ?俺だってそろそろ、お前にちゃんと抱かれたいし」
「……う、」

 目元を染めたレグルスの視線が泳ぐ。効いてる効いてる。

「俺は年末年始はずーっと2人きりで、朝から晩までイチャイチャしたかったのに……。レグルスはそうでも無かったんだな……」
「あ、うう……」

 是非が半々と言った表情になったところで、額を強めに指で弾く。

「お前が守れよ、俺を!竜だろうが人だろうが、誰にも渡すな!」

 語気を強めて一喝すると、レグルスは唖然とした後、額を手で押さえて俯いた。

「なんなの、アルカ。なんでそんなに俺を喜ばせちゃうの」
「ふふ、お前が俺のものだから」

「ッスー……はぁー……、分かった」

 天を仰いで、息を吐いたレグルスが頷いた。
 漸くやる気を出したようで、美しいエメラルドの瞳にギラついた光が宿っている。

「速攻で殺してやる」
「おっ……、おぉ、頑張って」

 焚き付けた癖に、レグルスの静かな宣言に若干引きながら、他人事のように応援した。

「でさ、2人でいける?少なくとも誘き寄せるまでは、他人に見せたくないんだけど」

「そうだね。誘き寄せたら、アルカは精霊の力は引っ込めて。それは俺も他人に知られたくないから」

 その言い草に少し擽ったくなって笑むが、レグルスは眉を吊り上げた。

「本当に無茶しないでよ!アルカは俺のサポートするだけね!」
「はいはい、全力出すなら邪魔だろうから、ちゃんと後ろにいるよ」

 くすくす笑うと、レグルスはムスッとしながら地図を取り出した。

「ここからだと、3合目の西壁手前、ヤパシュカ平が1番戦いやすいと思う。雪はあるけど下は確実に地面だから」

 地図を確かめるが、確かにここからならそこが1番近いだろう。
 西壁下には国境砦があるが約3キロの高低差があるため、戦いの余波は届かないと判断する。

 2班に行動指示した後、2人で避難小屋から3合目へ転移し、ヤパシュカ平へのルートを辿った。

 ヤパシュカ平は左右を切り立った崖に囲まれていて、山頂までのルートが奥の方に見渡せる。
 100メートル程の広場になっているため、スノウドラゴンとも十分に渡り合えるだろう。

 注意しなければいけないのは、崖からの転落だ。
 遥か下に国境砦が見えるが、そこまで段々の崖になっていて、落ちたら助からない高さだ。

 上を見渡せば雪で山頂は見えないが、魔法の輝きがあちこちで見える。

 中層に集団が見えるため、ジークとイドもいる可能性が高い。
 イドなら影を使えばすぐ下りて来るだろうが、ジークはどうだろうか。

「じゃあ始める」

 雑念を振り払い、広場中央に立つ。竜以外の魔物も呼ぶため、レグルスにはその対処もしてもらう。

 精霊の魔力は普段は使わないようにしているが、アルカの根源に深く入り込んでいる。

 久し振りの感覚に項の産毛が逆立つ。心臓の上の精霊刻印に魔力を流し、魔力を大きくしていく。
 人が持てない力が身体中を満たして巡り、本能的な万能感が奥底から迫り上がって来る。

 いつの間にか辺りを魔物が取り囲んでいる。
 狙いは勿論、アルカだ。この状態で魔力を使えば、より精霊の気配を撒き散らせるだろう。

「レグルス、ちゃんと俺を守れよ!」
「当然……!」

 水魔法は氷属性の魔物には効き辛いが構わずに、上級魔法を撃つ。
 魔素がそれなりにあるため、アブゾーブで何とかなる。

 魔熊も集まり出してお誂え向きだ。この騒ぎなら竜も顔を出すだろうと思った瞬間、4合目付近に白い雪煙が立つのが見えた。

 雪煙はどんどん加速してこちらへ向かってくる。山を揺らすような足音が響く。

「レグルス!」

 既に反応していたレグルスは、火魔法の特級で群がっていた魔物を一掃した。

「アルカ、備え!」

 広場より随分手前で一際高い雪煙が上がるや否や、辺りが暗い影に覆われた。
 反射的にレグルスと自分に強化を重ねて、影の範囲から飛び退る。

 数メートル積もっていた広場の雪が、柱のように上に吹き飛んだ。
 立っていれば大怪我は免れない衝撃波に、タイミングを合わせて受け身を取り転がる。

 西壁の一部から雪が崩れて谷底に流れていく。雪煙が治まると、そこには20メートル級の真っ白な竜が四つ足で立っていた。

 鱗に虹色の虹彩を持ち、全身がオーロラのように輝く美しい竜だった。

「漸ク見ツケタ」

 低い唸りと共に聞き取りにくい、くぐもった声が聞こえた。

 脳の処理が追いつかずに辺りを見回してしまう。前方に立ったレグルスでさえ、驚いているのが伝わる。

「オ前、精霊持チ」

 もう1度響いた唸り声に似た声に、信じられないが認めるしかない。会敵したのは、人語を話す竜だ。

「丁度良イ、アレヨリ、オ前ノ方ガ、楽ソウダ」

 スノウドラゴンは濁った目で真っ直ぐにアルカを見て、口の横を上げた。細かく鋭い牙が覗き、凶悪な顔だった。

「笑った……」
「待て!お前は何者だ!」

 こちらに注意が向いたせいか、レグルスが声を張る。
 竜は初めて気づいたとばかりに、レグルスを見下ろした。

「アア、失敗作カ」

 レグルスがビクリと固まった。竜はまた凶悪な顔をしてみせた。

「邪魔ダ、失敗作」

 スノウドラゴンの爪がレグルスを襲う。火魔法でそれを弾いたが、レグルスの様子がおかしい。

 そうだ。失敗作だ。その単語には覚えがある。

「レグルス!!」

 一喝すると、レグルスはハッとして竜へ攻撃を仕掛ける。アルカも精霊の魔力を閉じて、照明弾を打ち上げた。
 ジークたちを呼ぶというより、他班が近づかないようにするためだ。

 照明弾を上げて、影縛りを竜に付与する。
 しかし、確かに竜の影を縛っている筈だが、その動きは止まらずにレグルスと戦い続けている。

「オ前ニ用ハナイ、退ケ」

 強烈な尻尾の振り払いが放たれ、掠めた断崖に亀裂を走らせた。
 難無く避けたレグルスは特級火魔法の爆炎を放つ。

 竜もまたスノウブレスで迎え討つが、レグルスの火勢が強く押し切った。
 スノウドラゴンが燃え盛る炎に包まれて爆発する。
 
 黒煙の中から、半身に火傷を負ったスノウドラゴンが立ち上がる。
 並の魔物であれば消し飛んでいたが、やはり竜は頑強だ。

「駄作ノ分際デ、忌々シイ」
「……お前、マーカス、なのか」

 レグルスが顔面蒼白で、額に汗を滲ませながら呟いた。

「ソウ名乗ッタコトモアル、ダガ、分カルダロウ?」
「やめろ……」

 レグルスが一歩後退った。瞳孔が開かれて、金色の虹彩が揺らめく。

「失敗作、出来損ナイ、忘レタノカ?」
「やめろ、違う、そんな筈ない……!」

 レグルスの魔力が急激に膨れ上がる。不味い。暴走の兆候だ。

「私ハ、オ前ノ製作者ダトイウノニ」
「黙れ!!」

 咄嗟にレグルスから距離を取り結界を張る。同時にレグルスから、火魔法の最上位魔法の業火が放たれた。
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。