【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

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冬の章 セドルア掃討編

92 霊峰セドルア 後編

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「失敗作、出来損ナイ、忘レタノカ?」
「やめろ、違う、そんな筈ない……!」

 レグルスのこめかみから汗が流れた。見開かれた目と震える拳が、レグルスの異常を物語っている。

「私ハ、オ前ノ製作者ダトイウノニ」
「黙れ!!」

 この竜は、何を言っている?
 そしてレグルスは何故そんなに動揺して、魔力が暴走するほど混乱している?

 そんなアルカの疑問を消し飛ばす程の衝撃に、身を低く屈める。
 レグルスから放たれた火魔法の最上位魔法の業火が、まるでこの世の終わりのように、辺りを包んで紅蓮に染め上げる。

 レグルスの業火は威力が強過ぎて、滅多なことでは使わないものだ。
 範囲は相当絞った筈だが、スノウドラゴンを中心に半径50メートルが雪は疎か地面さえ蒸発して窪み、赤い溶岩となっている。

 その中心に立っているのは、レグルスと黒焦げの竜だけだ。
 範囲外に出ていたアルカの結界でさえ、爆発的な魔力を耐えたもののヒビが入り割れた。

 レグルスが裏で、対軍兵器と呼ばれる所以を見た。
 俄には信じられない威力に呆然としたが、レグルスを確かめねばと見渡した瞬間、途轍もない怖気に見舞われる。

 山の頂上から何か来る。それも正気ではいられないほどの、圧倒的な魔力の何か。

 奥の登山道を駆け下りてくる、ジークとイドの姿が見えた。その後に、10メートル程の白銀の球体が視える。

「アルカーーーっ!!逃げろーーーっ!!」

 ジークが大声で叫んだ。
 違う、逃げなければいけないのはジークたちだ。途轍もない速度で迫る球体が、ジークたちを間合いに入れる。

 球体、正しくは細かな氷が渦巻いている球状の凍気、その中心を確かめて息が止まる。

「精霊だ……」

 知らずに、震えた声が漏れた。
 ジークたちを襲おうとしているのは、霊峰セドルアの最奥部に住まうとされる、氷の精霊。

 それも最奥部を常に猛吹雪の結界で覆う程の魔力がある、成熟した成体の精霊だ。
 人が生半に挑める相手では無い。そんな魔力ではない。

「よくも我のものに、手を出したな……!」

 美しい女体の形をした氷精霊が、指先を口元に当てる。精霊の周りに、大海嘯のような雪の山が迫り上がる。

「イドーーーっ!!!」

 全身全霊で叫ぶと、まだ顔も見えないくらいの距離だが、イドが真っ直ぐにこちらを見た気がした。

 その刹那、雪の山は一斉に崩壊し、ジークとイドを飲み込む。
 雪崩と化した何10トンあろう雪が時速200キロで登山道を下り、広場を目掛けて襲い掛かってくる。

 更には触れた者を全て氷漬けにする、氷精霊の死のブレスが吹き込まれた。

「レグ……!」

 後は崖、その下は国境砦。逃げることは出来ない。
 アルカは最大範囲の防御結界を展開した。

 レグルスは振り向かずに魔力を練り上げている。海底神殿と同じく、五色の光がレグルスを包んだ。

 魔力を持った雪崩が生き物のように広場を包んでいき、先ほどレグルスが溶岩にした土さえ凍らせていく。
 その凍気と共に、数メートルはある氷の精霊が姿を現した。

 レグルスが再び、先程よりも広範囲で業火を放ち、雪崩と焔がぶつかり合い互いに打ち消していく。
 その勢いは凄まじく、高温の水蒸気と爆風を撒き散らし、アルカの結界を大きく揺らした。

 凄まじい魔力の競り合いに、辺りの壁が震えて岩が落ちてくる。
 レグルスの魔力量が多いのは知っていた。だがこれ程、桁違いとは。

 人と精霊の戦いの域を超えている。レグルスがまるで精霊と同格の存在で、これは神話の戦いか何かとすら錯覚してしまう。

 地面を大きく揺らがす程に轟音を轟かせ、辺り一面が包まれる程の爆発が起きた。
 
 もうもうと上がる煙が薄れるにつれ、辺りの惨状が明らかになる。
 西壁は一部が消失し、広場はレグルスを中心に大きく陥没していた。

 氷精霊が引き起こした雪崩は全てレグルスの焔で全て相殺され、山道までの雪は全て消え去っていた。
 だが、ある筈の精霊とスノウドラゴンの死骸は無く、レグルスだけが佇んでいた。

「レグルス……!」

 傾いだ体に、瞬時に駆け付けて支える。
 レグルスの顔は真っ白で、極度の魔力枯渇を引き起こしているのが判る。
 うっすら開いた瞳が、完全に金色の虹彩で覆われている。

「はな、れて……」

 理由など問わずに口を塞いで魔力を送るが、これでは駄目だ。枯渇している癖に、暴走しそうな気配がある。
 収納袋から緊急転移陣を取り出して、急いで展開する。

「お主ら!無事か!」

 燻る煙を潜って、バックスが駆け付けた。

「バックスさん!」
「すまなんだ!儂では傍に寄ることさえ、出来なかった!」

「ちょうど良かった!すみません、ジークとイドが後から出てくる筈です。多分職員も駆け付けるので、俺と局長は緊急治療のため、王都に転移したと伝えて下さい!」

「相分かった、任せられい!」

 頷く時間も惜しく、ぐったりしたレグルスを支えながら、緊急転移陣を発動させた。

 一瞬で飛んだ先はアルカのアパートメントの1室、レグルスが勝手に転移陣を敷いた部屋だ。

「レグルス!しっかりしろ!今助けるからな……!」

 来客用のベッドに引き上げて、レグルスの服を全て脱がす。

「だめ、だ……、アルカ、離れて……」

 意識を取り戻したレグルスが、掠れた声で首を振る。

「馬鹿!このままじゃ死ぬ!」

 構わずに自分の服も全て脱ぎ捨てると、レグルスに覆い被さって肌を合わす。あっという間に魔力が吸われていく。

「駄目だって!アルカを殺しちゃう……!」
「煩い!」 

 未だ弱々しいものの、渡した分だけ煩くなった声を、口を塞ぎ封じ込めて更に魔力を送る。
 半分以上渡しても未だ吸われて、アルカは精霊の魔力も解放した。

「アルカ!やめろ!」

 カッと瞳を開いたレグルスが、動けるようになったのか体を引き離しにかかった。

「まだ全然足りないだろうが……!」
「だから駄目なんだ!精霊の魔力は消せ、早く!」

 触れている肌から送る魔力を拒絶される。だが、レグルスの瞳孔は縦に開いて金色が揺らめいている。

「今の俺には、我慢出来ない……!殺すまで貪る、きっと……!」

 見開かれたままの瞳が身震いする程に、飢えて獰猛に輝いている。
 まるで、ずっと我慢していたご馳走を前にした犬のように、レグルスが喉を鳴らして息を浅くしている。

「嫌だ、違う、俺は……、俺は!」
「レグルス!」

 魔力暴走の気配を感じて、両頬を挟んで瞳を無理やり合わせる。

「俺は死なない。お前に喰い殺される前に、奪い返すから大丈夫。お前は絶対に、俺だけは殺せない」
「あ、アルカ……、っ」

 未だに弱々しく抵抗する魔力を押し退けて、レグルスに魔力を入れていく。どんどん引き込まれていき、もう7割を吸われている。

「っ、あぁ……、アルカ、アルカ……!」
「うっ……!」

 首筋に犬歯を突き立てられて、皮膚が食い破られる感触に思わず呻く。
 反射的に瞑った目を開くと、爛々と目を輝かせたレグルスが恍惚の顔で、首筋に喰らい付いていた。

「……ふ、ふふ、分かった、分かったよ、レグルス。そんなに俺が喰いたいなら喰わせてやるから、こっちにしろ、よ」

 肉を喰いたいのではない。流れる血から、魔素を直接取り込んで酩酊している。
 ならば話は簡単だ。魔術師が1番深く濃い魔力を摂取出来る方法で、満たしてやれば良い。

「あぁ、後で責任取れよ……!」

 ふうと息を吐いて、覚悟を決める。尻に浄化を掛けてから、既に勃ち上がっているレグルスの陰茎を掴む。

 この部屋にローションなんて、そんなものは無い。
 濡らしたくても、首筋をホールドされていて動けない。早くしないと、魔素を全て取られる。

「っ、ぐ……!」

 昨夜に抱かれたとは言え、何の準備も無く挿入するのは流石に無理がある。レグルスの先走りだけじゃ足りない。

「レグ、レグルス、良い子だから……!」

 首筋に埋めた顔を引き剥がして唇を塞ぐ。直ぐに侵入して来た舌から、自らの血の味がする。

 唾液からでも魔素は摂取出来るため、完全に理性が飛んだレグルスは、今度はこちらに夢中になってくれた。
 そのままレグルスの反り返った昂ぶりを、十分に濡れるまで扱く。

 酷く興奮した息遣いが聞こえて、手に付いたカウパーを雑に後孔に塗り込めて、切っ先を充てがう。

「うっ、うぁ……っ、い」

 みりみりと肉を裂く感触がするが、構わずに腰を落としていく。
 普段あれだけ快楽をもたらす肉棒は、今はただただ凶悪で苛烈な責め苦だ。

 また深くなる魔力の混ざり合いに、そろそろ限界を迎えて奪い返す。
 1番深くで結合している分、アルカにも暴れるレグルスの魔力を抑えて丸めていくことが出来る。

「レグルス……、レグルス、そう、良い子だね。分かる?俺だよ、受け入れて」

 薄っすら開いた金の瞳を見つめる。太腿を伝う温い感触がしたが、返って楽になった。
 痛みはある。だが、今、身の内に抱いているのは、本能が剥き出しになった愛しい男だ。痛みすら歓びが湧く。

「俺の魔力、美味い?」
「美味い……、アルカ……、欲しい」
「素直でいいね……、っう……」

 腰を上げて落とす。いつもには無い痛みが走るが構わない。

「俺も美味いよ、レグルスの魔力」
「うん、……あげる」

 今まで吸われた分が、ぶわりと一気に送り込まれて、今度はアルカが酩酊する。

「良い子だね、レグ。半分こにしよう。俺とお前、全部半分ずつ。……出来るな?」
「うん、……する、半分」

「ふふ、偉いね。大好きだよ。愛してる、レグルス」

 目を見開いて硬直したレグルスの唇を塞いで、腰を動かす。

 今、抱いている男は誰が何と言おうと、アルカのただ1人の男だ。
 それだけが全て。この身の内に全て受け入れる。

 レグルスのものならば、痛みすら愛している。もう1度、心の底から告げる。

「愛してるよ、レグルス」
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