【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

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最終章 旅路の涯

119 魂の形

「魂には形があるそうなんだ。お前、視えてるんじゃないか?」

 アルカがそういうと、イドは全員を見渡した。

「……あ、あれか!もしかして、他の奴が、視えないって言うやつか?ばーちゃんはでっかいし、アルカは混ざってるし、キョクチョーはおっかねーやつ!あと、そこら辺に残ってるやつとか!」

 思わず辺りを見回してから、レグルスと顔を見合わせる。

「イド君、その俺のおっかないやつって、どんなの?」

 レグルスに話しかけられたイドは、少しジークの方へ後退った。

「大丈夫、未成年の言うことに一々怒るほど子供じゃないから、局長は。ね?」
「う、はい、まあ」

 レグルスに笑むと、罰の悪そうに頷いた。

「なんか、とにかくマジでヤバいやつ。人じゃない気配がするやつ」

 イドは小声で、もぞもぞと早口で呟いた。

「イザベラさんや、俺は?詳しく言えるか?」
「ばーちゃんはでかいの、優しいけど、おっかないやつが入ってる。これも人じゃない」

 チラリとイザベラを見ると頷いた。やはり魔力とは違う、何かを視ているのかも知れない。

「アルカは、キョクチョー臭過ぎてよく分からねーけど、アレだ、山に居たのと似てる。これも人じゃねーな」

「それって1人ずつ、全然違うのか?」
「うん。違うよ。色も形も大きさも全部。丸いは丸いけど、歪だったりして、同じ形は1個も視たことない」

「イド、恐らくそれが魂だよ。視えたものは他人に言っちゃいけないよ」
「へ~、これが魂なんだ?何で言っちゃいけないの?」

「神が定めた秘するものだからだ。本人に細かく伝えると、成長を奪うからね」
「ふうん?よく分かんねーけど、ばーちゃんが言うなら、分かった」

 何だか幼子と祖母を見ているようで、アルカの胸にもイドの過去が去来する。
 イドが本当の祖母と、生き別れたことを思い出す。

「イド、魔術真名は分かるよな?」
「ああ、分かるよ。俺のは」

「待て、言わなくて良い。あれも古い言葉で、お前の魂の本質を表す言葉なんだ。これも人に明かさず、大事にしろよ」

 魔法を初めて使うと魂に刻まれる真名で、女神の贈り物とされている。主に魔術誓約に使うもので、その者の魂を表す言葉となる。

「分かった。……魂は1つ、皆違う、名前がある、内緒にする。うん、覚えた」
「よし、偉いな。じゃあ、影の説明な」

 アルカはイドに暗記していた文献を、分かりやすく諳んじた。

「つまり、他人の影で発狂するのは、別の魂の情報に触れ過ぎて、自分の魂の形があやふやになるから、らしいんだ。その分、自分を見失わない強い魂を持ってる人は、正気を保っていられるんだと思う」

「なるほど……、それなら納得出来るね」

 イザベラが思案しながら頷いた。

「イド、お前が影や魔力を縛る時、本当は魂に触ってるんだ。だからお前は、魂に触れるはずなんだ」
「……そうか」

 黙って聴いていたレグルスが、得心したように頷いた。

「ジークの魂の形を、お前が触って思い出させるんだ。お前が戻って来た時のように、導いてあげてくれないか」

「……影に入れば良いんだな?」
「ああ。試してほしい。お前に負担かけてしまうけど、お願いだ。ジークを助けて欲しい」

 イドに向かって頭を下げると、力強く頷いた。

「分かった、俺、やるよ。やってみる……!」
「ありがとう、イド」

 少し視線を彷徨わせてから、イドが不器用に笑った。

「じゃあ早速」
「待て、イド。その前に少し別件で、イザベラさんに話がある。少しだけ3人にしてくれないか?」
「ナン」
「ああ、ナンも入れて4人」

 そう告げると、イドは全員の顔を見渡した。

「いーよ。俺、牛の世話あるから」

 イドはふらりと部屋を出て行った。

 イドにはセドルア監視任務という名目で、1日1回の結界の様子を報告させて後は好きにさせているが、かなり馴染んでしまったようである。
 その内ギルドから抜けて、畜産業でも始めてしまいそうだ。

「さて、どうしたんだい?」

 イザベラは真っ直ぐにレグルスを見た。

「マクファーレンの先代の話です」
「……、分かった。詳しく聞こう」

 レグルスはスノウドラゴンの件とヒト魔石の件を、イザベラにも説明した。

「……なんて、悍ましい。人を魔石にだなんて……」

「すみません、師匠。既に引退した貴方に、こんな話を聞かせてしまい。でも先代が関わってるかも知れなくて。何か思い付くことを教えて欲しいんです」

 顔面を強張らせたイザベラへ、レグルスは頭を下げた。

「良いんだ、よく話してくれたね。これは女神様もお許しならない話だ……。お前たちはダニエルが未だ生きていて、一連の者たちを操っていると考えているんだね?」

「はい。ドラゴンもマーカスも、先代しか言わない言葉を俺に言いましたから」

「ダニエルを討った時、私もその場に居たんだ。それから研究資料も押収して解析した……」

 イザベラは記憶を思い起こすかのように、宙を見つめた。

「ダニエルは、お前から竜の魔力を抽出する方法を、研究してたんだ。死んだ人から魔力を取り出せるか、生きた人から魔力だけを抽出出来るか。アブゾーブが大気魔素以外に使用できるか。そして、人を魔力に変換する方法。……それらを光魔法を主軸に研究していた」

「光魔法を主軸に?」

「ああ。魔力を取り出すという点から、肉体と魔力の分離を試みていた。それに光魔法固有の封印を使っていたんだ。体内の魔力を集めて封印で覆って、言わば核を作れば良いのではないかと、奴は理論を構築していた」

「核ですか……。師匠、アズカンの魔術工房ですが、自動でアブゾーブを行う魔術装置と結界装置を組み合わせて、人を魔物に転化させてなお、魔素を与えていました」

「何てむごい……」 
「それだけじゃないんです。ルルーカにあった工房跡には、……たくさんの粉砕された肉体片が」

 言葉を選んだレグルスだが、やはりその残忍さを隠す適当な言葉が見つからないようで、首を振った。

「……魔石や核というのはね、高濃度の魔素が何かに宿って凝縮されたものなんだ。だけど魔素の凝縮ってのは、一朝一夕にはいかない。長い時間が必要だ。それこそ魔石みたいにね」

 だけど、とイザベラは顔を顰めて、皺のある拳を握り締めた。

「こんなこと、私だって信じたくないけど、ダニエルの研究やこの件で、思い付いちまった方法がある」

 白い顔でイザベラは苦悩しながら、震える指を開いて握るを繰り返す。

「光封印があるだろう?あれは魔障対策でも使うね?あらゆるものを封じて、圧縮することが出来る」

 導かれた答えに、アルカも息を飲んだ。
 3人の魔術師は一様に口を噤んだ。あまりにも人道に反する行いを、軽々に言葉に出来ない。

「人を高濃度の魔素で満たし、魔力を増加させ、封印して圧縮する。それで残るのが魔力の結晶」

 余りに悍ましい考えだが、そう仮定するならルルーカの惨状の説明が付く。
 あの肉片は結晶を取り出した後の、文字通りの残骸だ。

 そう呟いてイザベラを見ると、微かに顎を引いた。

「やはり、ダニエルが関わっているんだと思う。通じるものがあるんだ。奴は光属性に固執していて、結界と封印を中心に魔術理論を組み立ててたから」

 イザベラは背中を小さく丸めて、長い息を吐いた。

「でも、どうやって……。あの日、私は確かに奴の死体を確認したよ。あれが嘘だったなんて、とても思えない。マティアスが首を落とした音だって覚えてる」

 レグルスが、はたと思い返した顔をした。

「師匠、ハリスからも話を聴いたんです。ダニエルの最期の言葉」
「最期の言葉?」

「はい。ダニエルは最期に、先生にだけ言ったらしいんです。マディーって。それから先生がおかしくなったって。師匠、何のことか分かりますか?」

「……誰が誰に言ったって?」
「先代、ダニエルが先生に……」

 イザベラが胸を押さえて傾いで、咄嗟にレグルスと2人駆け寄る。

「イザベラさん!」
「師匠!?」

 大きく震え目を見開いて、荒い息をしているイザベラにヒールを施す。レグルスが背中を擦った。
 まだ震えたままのイザベラが、手を上げて制する。

「マディーはね、マティアスの孤児院時代のあだ名なんだ」

 孤児院時代のあだ名を、何故ダニエルが呼ぶのか。アルカとレグルスは顔を見合わせた。

「ずっとおかしいと思ってたんだよ。あの魔術理論の組み立て方には、既視感があった……!何度も何度も話したのに、何故私は信じなかったのか……!」

 イザベラは絞り出すように声を荒げた。

「マティアスをマディーと呼ぶのは、この世でただ1人だ。いや、1人だった」
「師匠、一体どういう意味ですか?」

 尋常ではない空気に、固唾を飲む。イザベラはゆっくりと目蓋を閉じた。

「メイヒムだ。マディーはね、メイヒムだけが使う、特別な呼び名なんだ……」
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