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最終章 旅路の涯
120 かつての村へ
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「メイヒム……?何故それを、先代が知ってるんです?」
イザベラの足元に跪いたレグルスが、その背を抱えながら問う。
少し落ち着いて来たのか荒い息は治まったようだが、イザベラの顔色は未だ悪い。
「……メイヒムには、……特別なスキルがあると聞いたことがある。何かまでは教えてくれはしなかったが」
イザベラは、よろよろと立ち上がった。
「イザベラさん、まだ無理はしないで下さい」
慌てて2人で立ち上がるが、イザベラはきっぱりと首を振った。
「女神様にお会いしなければ」
「女神様?何故……」
「レグルス、イドを呼んどくれ」
イザベラは問いには答えずに、収納袋から様々な薬を取り出した。
顔を見合わせてから、レグルスがイドを呼びに行く。
「アルカちゃん、レグルスのことを頼むよ。ついでにイドのことも面倒見てやっておくれ」
「ま、待って下さい、イザベラさん。……俺、俺も行きます。ピピ=ティティテスタ大密林に行くんでしょ?一緒に行かせて下さい」
尋常では無い様子の、イザベラの両手を取って包む。
「……結局は全て、私たちの因縁だった。全部、私たちのせいなんだよ、きっと。そしてまた、あの子に因果が集約する……」
ぎゅっと目を瞑ったイザベラの、目元の皺が深くなる。
「イザベラさん。……俺には何が正しいのかは分からないけど、1つ覚えてることがあります」
強張った指も、枯れて節くれ立っている。アルカはそれを丁寧に擦って解す。
「全部必要なことだって、必要じゃないことなんてないって。ただ今を生きろって。教えてくれたのは貴方だ」
イザベラがゆっくりと顔を上げた。漸く目が合って微笑む。
「アルカちゃん……」
「大丈夫。もう独りで背負わなくていい。これからは俺も背負います」
マティアス亡き後、彼女は独りで背負って来たのだ。
重すぎる罪を、実の息子同然の愛弟子への罪悪感と贖罪を。
互いに悲しみに耐えられずに、一度袂を分かった後も。ずっと。
「レグルスを、レグルスにしてくれて、ありがとう。俺が、今のあの人を足らしめるために、貴方たちが繋いで来た全てを忘れずに、ずっと一緒に生きていきます」
レグルスを構成している誰かの罪と罰、そして愛。その全てを遠い先まで覚えておく。
自分もまた、その繋がりの内の1人になるのだ。
「……あ、あぁ……!」
イザベラの目から、大粒の涙が流れて行く。握った手の上に、後から後から雫が降り注いで行く。
「ばーちゃん!?」
扉を開けたイドがすっ飛んで来て、イザベラの両肩を掴んだ。
「どうした!?具合悪いのか!?すぐ直す!」
「ああ、違うんだ、これは違うんだよ。イド」
「何が違うんだよ、顔色だって悪いぞ!」
あまりの剣幕に涙が引っ込んだのか、イザベラは笑った。
「イドや。私たちはこれからテスタに行かなきゃいけない。だからあんたに、この薬を預けていくよ」
「テスタに?何で?」
「女神様にお会いしに行くんだよ」
イドは少し首を傾げたが、素直に頷いた。
「いいかい、影に潜り出したら、ジークに飲ませている強壮の薬をお前も飲みなさい。あとこれ、魔力感応を助ける薬だ」
先程取り出した煎じ薬の束をイドに渡し、イザベラはナンを見た。
「ナンや、お前は私が戻るまで、引き続きイドを助けておやり」
「ナン」
「はいはい、テスタ鶏ね。本当抜け目無い猫だよ。イド、この子、こっそり王鮭を捕りに行ってるだろうから、気配遮断だけは徹底させておくれ」
イザベラがやれやれと肩を竦めると、ナンは明後日の方を見て顔を逸らした。
「あっ、猫、お前、明け方出てくのってそういうことか!」
私は治療に集中していますという顔で、ナンは神妙にジークの上でひたすらに目を瞑っている。
「まあ、魔力消費が凄まじいだろうからね、大目に見とくよ。じゃあ、ナン、頼むよ」
「ナン」
「レグルス、人工魔石事件の調査任務ってことで、俺、イザベラさんとテスタに行って来る」
話がまとまったところでレグルスに告げると、目を丸くした。
「まるで俺と行かないみたいな言い方だね?」
「当たり前だろ?魔石事件は秘匿だし、未だ凍結中なんだから、お前まで動かしたら不味いって」
「……それはそうだけど、アルカと組んでるのは俺だし」
「お前は残って代表に報告、セドルア対策を進めておいて」
分かってはいるのだろうが、レグルスは一気に眉を顰めた顔になった。
「やれやれ、これじゃどっちが局長なんだか分かりゃしないよ。アルカちゃんに本当べったりなんだから。用事はすぐに終わるよ」
「アルカが局長になんの?」
イザベラたちの会話を聞いて、さすがにレグルスもバツの悪い顔をして溜息を吐いた。
「あのセット、ちゃんと持ってるね?」
「うん。大丈夫。待ってて」
「……分かった」
ぐいっと肩を引かれて腕の中に抱き込まれ、レグルスの背で皆から隠される。
抗議する間もなく唇を塞がれて、魔力が大量に送り込まれた。
「はぁ……、あんた本当、見境無いねぇ」
「ナン」
「おい、気を遣えよなぁ。ジークが見たら死ぬぞ」
3人の呆れた声を聞きながら、バシバシ背中を叩くとレグルスは漸く唇を外して、真っ直ぐに瞳を覗き込んだ。
「もう危ないことしちゃ駄目だよ」
「分かってるって。心配しないで、良い子にしててな」
見えないのを良いことに開き直って、レグルスの頬を撫でて、掠めるように素早く口付けた。
漸く満足したレグルスから解放されて、咳払いしながら背から出てくると生温い視線が突き刺さり、顔が赤くなるのはどうしようもなかった。
ジークの家の前庭で、イザベラが見事な転移陣を描いた。さすが元王宮魔術師団長であり、伝説の魔女だ。
「じゃあ、行って来るよ」
「イド、頼んだぞ」
頷く見送りの2人に手を振り、イザベラとアルカは転移陣を起動させた。
「暑!」
極寒のヤズマイシュから常夏のテスタへ飛んだアルカたちは、慌てて冬装備を脱いだ。
ピピ=ティティテスタの気温は年中暖かく、冬と言っても20℃近くある。ヤズマイシュとの寒暖差は約30℃になる。
「この気温差は、年寄りには応えるね……」
「いや、俺もですよ」
春の装いくらいまでに調整すると、2人で人心地付く。
「……ここは?」
辺りを見回すと、苔と草に覆われた廃墟の中だった。
「かつて村があった場所さね」
レグルスの記憶に拠れば、ここはイザベラの故郷のようだ。
イザベラの娘時代から貧しく小さな村だったとのことで、随分前に人が去ったのだろう。
繁殖力の強い密林植物に覆われ、村跡と言っても殆ど土壁の残骸と、基礎の名残しか残っていない。
時の流れは人の痕跡を消して行く。
確かにここで息をして飯を食い、暮らしていた人々が居たことすら、遠く曖昧にしていく。
「アルカちゃん?」
「あ、すみません。行きましょうか」
さっさと歩き出していたイザベラの後を追い、隣に並んだ。
獣道すら見当たらない草やらが、気づけば何故か道に変わっている。
「本当はね、私以外の人は誰も、女神様に会えないんだよ。だからもし途中ではぐれたら、テスタの街で待っていておくれ」
「え、そうだったんですね。俺、邪魔になります?」
自分を連れていることで、女神の機嫌を損ねないか不安になる。
「いや、呼ばれてるよ。恐らくあんたも一緒に」
思わずイザベラを見ると、少し思案げに呟いた。
「答えなくて良いけれど、アルカちゃん、何かと契約しているね。その魔力質が女神様の愛し子に近いから、あんたは気に入られてるんだと思う」
「そう、ですか……」
「ああ、その証拠に道が開いている。普通はね、私以外の人にはこうはならなくて、いつの間にか戻されるんだ。普通のルートに」
そうなのだ。大密林には何度か来ているし、先日の1件でも記憶に新しいが、ルート外にこんなに歩きやすい道は無い筈なのだ。
辺りの景色もどこがどうとは言えないが、茫洋と雰囲気が違う。
しかもただただ濃い緑の中を、例えるなら光の膜が張られたトンネルを歩いているような。
加えていつもなら吊るされているはずだが、そんな気配も無い。
生き物の気配も時間も遠くなっていて、異界のような違和感がある。
「大丈夫。怯えなくても良い。もう着くさ」
イザベラが腕を掴んで、ハッとする。
「あ、ありがとうございます。もしかして、女神様の結界内ですか?」
緊張感と畏怖が湧く広大な魔力に、肌がひりつく。
「ふふ、あんた、本当に優秀な魔術師だね。レグルスよりも見込みがあるよ。弟子にしたいくらいだ」
「レグより……?そんなまさか」
イザベラがにんまり笑って、アルカは目を丸くした。
「あの子はね、魔術的なモンは全部竜の力と直感頼みだからね。魔術師としての自覚もないし研鑽もない。魔力はバカみたいにあるが、操作は下手だし独創性もないし、力技ってだけ。人として魔術を使うってことを、疎かにしてんだ」
オマケにズボラで寝汚くて、とイザベラがボヤくのに思わず笑う。
「まあ、その竜の力技に何度も救われてますし。魔術師としてなら、俺が支えますから」
「本当に出来た嫁さんだよ。あんた本当にアレが旦那で良いのかい?」
「ふふ、レグルスが良いんです。俺にとっても、たった1人の番ですから」
「あらまあ、当てられちゃうよ」
少し和やかな雰囲気になり、地に足が着く感触に安堵したところで、不意に開けた空間に出る。
滴るほどの圧倒的な緑の魔力。イザベラが頷いた。
「さあ、ここだ。ピピ=ティティテスタの中心、女神坐す最奥祭壇だよ」
イザベラの足元に跪いたレグルスが、その背を抱えながら問う。
少し落ち着いて来たのか荒い息は治まったようだが、イザベラの顔色は未だ悪い。
「……メイヒムには、……特別なスキルがあると聞いたことがある。何かまでは教えてくれはしなかったが」
イザベラは、よろよろと立ち上がった。
「イザベラさん、まだ無理はしないで下さい」
慌てて2人で立ち上がるが、イザベラはきっぱりと首を振った。
「女神様にお会いしなければ」
「女神様?何故……」
「レグルス、イドを呼んどくれ」
イザベラは問いには答えずに、収納袋から様々な薬を取り出した。
顔を見合わせてから、レグルスがイドを呼びに行く。
「アルカちゃん、レグルスのことを頼むよ。ついでにイドのことも面倒見てやっておくれ」
「ま、待って下さい、イザベラさん。……俺、俺も行きます。ピピ=ティティテスタ大密林に行くんでしょ?一緒に行かせて下さい」
尋常では無い様子の、イザベラの両手を取って包む。
「……結局は全て、私たちの因縁だった。全部、私たちのせいなんだよ、きっと。そしてまた、あの子に因果が集約する……」
ぎゅっと目を瞑ったイザベラの、目元の皺が深くなる。
「イザベラさん。……俺には何が正しいのかは分からないけど、1つ覚えてることがあります」
強張った指も、枯れて節くれ立っている。アルカはそれを丁寧に擦って解す。
「全部必要なことだって、必要じゃないことなんてないって。ただ今を生きろって。教えてくれたのは貴方だ」
イザベラがゆっくりと顔を上げた。漸く目が合って微笑む。
「アルカちゃん……」
「大丈夫。もう独りで背負わなくていい。これからは俺も背負います」
マティアス亡き後、彼女は独りで背負って来たのだ。
重すぎる罪を、実の息子同然の愛弟子への罪悪感と贖罪を。
互いに悲しみに耐えられずに、一度袂を分かった後も。ずっと。
「レグルスを、レグルスにしてくれて、ありがとう。俺が、今のあの人を足らしめるために、貴方たちが繋いで来た全てを忘れずに、ずっと一緒に生きていきます」
レグルスを構成している誰かの罪と罰、そして愛。その全てを遠い先まで覚えておく。
自分もまた、その繋がりの内の1人になるのだ。
「……あ、あぁ……!」
イザベラの目から、大粒の涙が流れて行く。握った手の上に、後から後から雫が降り注いで行く。
「ばーちゃん!?」
扉を開けたイドがすっ飛んで来て、イザベラの両肩を掴んだ。
「どうした!?具合悪いのか!?すぐ直す!」
「ああ、違うんだ、これは違うんだよ。イド」
「何が違うんだよ、顔色だって悪いぞ!」
あまりの剣幕に涙が引っ込んだのか、イザベラは笑った。
「イドや。私たちはこれからテスタに行かなきゃいけない。だからあんたに、この薬を預けていくよ」
「テスタに?何で?」
「女神様にお会いしに行くんだよ」
イドは少し首を傾げたが、素直に頷いた。
「いいかい、影に潜り出したら、ジークに飲ませている強壮の薬をお前も飲みなさい。あとこれ、魔力感応を助ける薬だ」
先程取り出した煎じ薬の束をイドに渡し、イザベラはナンを見た。
「ナンや、お前は私が戻るまで、引き続きイドを助けておやり」
「ナン」
「はいはい、テスタ鶏ね。本当抜け目無い猫だよ。イド、この子、こっそり王鮭を捕りに行ってるだろうから、気配遮断だけは徹底させておくれ」
イザベラがやれやれと肩を竦めると、ナンは明後日の方を見て顔を逸らした。
「あっ、猫、お前、明け方出てくのってそういうことか!」
私は治療に集中していますという顔で、ナンは神妙にジークの上でひたすらに目を瞑っている。
「まあ、魔力消費が凄まじいだろうからね、大目に見とくよ。じゃあ、ナン、頼むよ」
「ナン」
「レグルス、人工魔石事件の調査任務ってことで、俺、イザベラさんとテスタに行って来る」
話がまとまったところでレグルスに告げると、目を丸くした。
「まるで俺と行かないみたいな言い方だね?」
「当たり前だろ?魔石事件は秘匿だし、未だ凍結中なんだから、お前まで動かしたら不味いって」
「……それはそうだけど、アルカと組んでるのは俺だし」
「お前は残って代表に報告、セドルア対策を進めておいて」
分かってはいるのだろうが、レグルスは一気に眉を顰めた顔になった。
「やれやれ、これじゃどっちが局長なんだか分かりゃしないよ。アルカちゃんに本当べったりなんだから。用事はすぐに終わるよ」
「アルカが局長になんの?」
イザベラたちの会話を聞いて、さすがにレグルスもバツの悪い顔をして溜息を吐いた。
「あのセット、ちゃんと持ってるね?」
「うん。大丈夫。待ってて」
「……分かった」
ぐいっと肩を引かれて腕の中に抱き込まれ、レグルスの背で皆から隠される。
抗議する間もなく唇を塞がれて、魔力が大量に送り込まれた。
「はぁ……、あんた本当、見境無いねぇ」
「ナン」
「おい、気を遣えよなぁ。ジークが見たら死ぬぞ」
3人の呆れた声を聞きながら、バシバシ背中を叩くとレグルスは漸く唇を外して、真っ直ぐに瞳を覗き込んだ。
「もう危ないことしちゃ駄目だよ」
「分かってるって。心配しないで、良い子にしててな」
見えないのを良いことに開き直って、レグルスの頬を撫でて、掠めるように素早く口付けた。
漸く満足したレグルスから解放されて、咳払いしながら背から出てくると生温い視線が突き刺さり、顔が赤くなるのはどうしようもなかった。
ジークの家の前庭で、イザベラが見事な転移陣を描いた。さすが元王宮魔術師団長であり、伝説の魔女だ。
「じゃあ、行って来るよ」
「イド、頼んだぞ」
頷く見送りの2人に手を振り、イザベラとアルカは転移陣を起動させた。
「暑!」
極寒のヤズマイシュから常夏のテスタへ飛んだアルカたちは、慌てて冬装備を脱いだ。
ピピ=ティティテスタの気温は年中暖かく、冬と言っても20℃近くある。ヤズマイシュとの寒暖差は約30℃になる。
「この気温差は、年寄りには応えるね……」
「いや、俺もですよ」
春の装いくらいまでに調整すると、2人で人心地付く。
「……ここは?」
辺りを見回すと、苔と草に覆われた廃墟の中だった。
「かつて村があった場所さね」
レグルスの記憶に拠れば、ここはイザベラの故郷のようだ。
イザベラの娘時代から貧しく小さな村だったとのことで、随分前に人が去ったのだろう。
繁殖力の強い密林植物に覆われ、村跡と言っても殆ど土壁の残骸と、基礎の名残しか残っていない。
時の流れは人の痕跡を消して行く。
確かにここで息をして飯を食い、暮らしていた人々が居たことすら、遠く曖昧にしていく。
「アルカちゃん?」
「あ、すみません。行きましょうか」
さっさと歩き出していたイザベラの後を追い、隣に並んだ。
獣道すら見当たらない草やらが、気づけば何故か道に変わっている。
「本当はね、私以外の人は誰も、女神様に会えないんだよ。だからもし途中ではぐれたら、テスタの街で待っていておくれ」
「え、そうだったんですね。俺、邪魔になります?」
自分を連れていることで、女神の機嫌を損ねないか不安になる。
「いや、呼ばれてるよ。恐らくあんたも一緒に」
思わずイザベラを見ると、少し思案げに呟いた。
「答えなくて良いけれど、アルカちゃん、何かと契約しているね。その魔力質が女神様の愛し子に近いから、あんたは気に入られてるんだと思う」
「そう、ですか……」
「ああ、その証拠に道が開いている。普通はね、私以外の人にはこうはならなくて、いつの間にか戻されるんだ。普通のルートに」
そうなのだ。大密林には何度か来ているし、先日の1件でも記憶に新しいが、ルート外にこんなに歩きやすい道は無い筈なのだ。
辺りの景色もどこがどうとは言えないが、茫洋と雰囲気が違う。
しかもただただ濃い緑の中を、例えるなら光の膜が張られたトンネルを歩いているような。
加えていつもなら吊るされているはずだが、そんな気配も無い。
生き物の気配も時間も遠くなっていて、異界のような違和感がある。
「大丈夫。怯えなくても良い。もう着くさ」
イザベラが腕を掴んで、ハッとする。
「あ、ありがとうございます。もしかして、女神様の結界内ですか?」
緊張感と畏怖が湧く広大な魔力に、肌がひりつく。
「ふふ、あんた、本当に優秀な魔術師だね。レグルスよりも見込みがあるよ。弟子にしたいくらいだ」
「レグより……?そんなまさか」
イザベラがにんまり笑って、アルカは目を丸くした。
「あの子はね、魔術的なモンは全部竜の力と直感頼みだからね。魔術師としての自覚もないし研鑽もない。魔力はバカみたいにあるが、操作は下手だし独創性もないし、力技ってだけ。人として魔術を使うってことを、疎かにしてんだ」
オマケにズボラで寝汚くて、とイザベラがボヤくのに思わず笑う。
「まあ、その竜の力技に何度も救われてますし。魔術師としてなら、俺が支えますから」
「本当に出来た嫁さんだよ。あんた本当にアレが旦那で良いのかい?」
「ふふ、レグルスが良いんです。俺にとっても、たった1人の番ですから」
「あらまあ、当てられちゃうよ」
少し和やかな雰囲気になり、地に足が着く感触に安堵したところで、不意に開けた空間に出る。
滴るほどの圧倒的な緑の魔力。イザベラが頷いた。
「さあ、ここだ。ピピ=ティティテスタの中心、女神坐す最奥祭壇だよ」
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