【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

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最終章 旅路の涯

125 デート

 結局昼まで抱き潰され、少し微睡んで起きると夕方だった。

「腹、減った……」

 空腹に目を開くと、抱き合ったままのレグルスもゆっくりと目を開けた。
 目が合った瞬間、圧倒的な快楽を体が思い出して肚がまた疼く。圧倒的な快感の余韻が脳を支配している。

 何が何だか分からないが、とにかくすごかった。

「ヤバい……、廃人になる……」

 頬に熱が一気に集まったのを自覚すると、レグルスは目を丸くしてから、珍しくニヤッと悪い笑い方をした。

「ふふ、かっわいー。ね、そんなに良かった?もう1回しよっか。俺もすごーく良かった、アルカの1番奥」

 ひそひそと耳打ちされ、腰が疼くのを誤魔化すように起きる。

「だめ!今からデート行く!」
「あっ、アルカ……!」

 立ち上がって歩こうとした瞬間、かくんと腰が抜けて床にへたり込む。
 じわ、と尻から溢れる感触に、また赤面する。

「嘘だろ……、俺、こんな軟じゃ……」

 呆然としている間に寄って来たレグルスに抱えられて、機嫌良く風呂場に運ばれた。


 ヒールで歩けるほど回復してから、レグルスと街に出た。
 少し早い夕食を取ることにして、夕暮れの街を手を繋いで歩いていく。

 今日は特に冷えるのか、街ゆく人の息は白く早足で歩いている。

「あー、結局また、指輪見に来れなかったな」

 通りすがりの宝石店のショーウインドウに飾られた、指輪をガラス越しに覗き込む。

「こういうのがいいの?」

 レグルスも隣に並んで覗き込む。視線が示しているのは、色石が載った装飾用の指輪だ。

「違うよ、毎日着けるから石は要らない。シンプルなやつ。俺たち長い年月着けるから、飽きないやつね」

「ふうん、……アルカに似合うのが良いな。肌白いから、銀色のが良いよね」
「うーん……、でもレグには金が良いんだよなー……」

 2人で真剣に覗いていると、もう閉店らしき作業をしていた店員と目が合って、慌てて店を離れた。

「ふ、はは、別に逃げなくても、良かったよね」
「んん、そうだな、何か逃げちゃった。今度営業時間に来よう」

 2人で笑い合って、また歩き出す。

「なに食べたい?」
「うーん、レグは?」

「えー、アルカの好きなの」
「それ決まんないやつじゃん。じゃあ、飲んじゃおっかな~」

 繋いだ指をぶらぶらさせて悪戯に笑うと、レグルスはにこっと笑って左耳に顔を寄せた。

「酔い潰れてもいいよ。勃たなくても、イけるもんね?」
「……っ!」

 パッと顔を離して睨みつける。また駆け上がった感覚に、顔が一々赤らむ。
 いつもと逆転して余程嬉しいのか、普段の百倍強気なレグルスの逆襲に遭い続けている。

「クソ、後で覚えておけよ……!」
「ふふ、誘ってる?」
「絶対ヒンヒン泣かせてやるからな」

 ぎろっと睨んでから、未だ赤いであろう顔を逸らした。


 結局ぶらぶらと、商業区北外れの丘の麓にある高級レストランまで来てしまった。
 王都の港から毎日運ばれる新鮮な魚介を使った有名店だ。

 魚介の出汁がふんだんに染みた大きなオマール海老入りのブイヤベースに、どうせなら贅沢してしまおうと、ラムラックのステーキまで頼んだ。

 レストランは木組みの背の高い天井が開放的で、窓が広く取られていて、暖かな色の照明で過ごしやすい。

「なんか、デートぽいな!」
「そう言えばこういうとこ、来たことないよね」

 上等な赤ワインのグラスを機嫌良く傾ける。

「今度から、たまにはこういうデートしようね」
「ふふ、そうだな。なんか貴族になった気分だわ」
「いや、君も貴族だからね?」

 レグルスと他愛の無い会話をしながら、朝も昼も抜いた分、ゆっくりとデザートまで食事を楽しんだ。


「な、レグ、ちょっと丘登ろう」
「良いけど、この上、何かあったっけ?」

 店を出て、首を傾げたレグルスの腕をグイグイ引っ張りながら遊歩道を歩き出す。
 それほど高い丘ではないため、四半刻もあれば頂上に着く。

「あ、アルカ。俺、暗くて見えないから介護して」
「んっ、ふはは、しょうがないなぁ、レグルスは。ほら、お手」

 街灯が少なく暗い中、今日もレグルスはいつかと同じ嘘を吐いて、差し出したアルカの手に大きな手を重ねる。

 世界で1番好きな手だ。ぎゅっと握って引き寄せて、あの日とは違って腕を組む。
 人も居ないし、暗がりでいつもより大胆になる。

「介護レベル上がった……!」
「ふっ、今は仔竜ちゃんだから、お守りの方がしっくりくるな?」

 少し膨らんだ頬を突いてじゃれ合いながら、のんびりと丘の上に着いた。

「うわ、王都にこんなとこあったんだぁ……」

 レグルスが目を丸くした先に、王都の夜景が広がる。
 街灯が無いただの丘の分、夜景の明かりが良く見える。今夜は一段と冷えるせいか、星の瞬きも美しい。

「鼻赤くなってる。寒くない?」

 頬を柔らかく擦られて、悪戯っぽく笑いながらひそと囁く。

「寒いから、もう少し人の居ない方行こ?」
「?」

 視線を巡らせたレグルスが、少し顔を赤らめる。
 良く確認するとちらほら多くは無いが、重なる人影が複数組ある。

「ふふ、恋人たちの丘」
「……!先に言ってよ……」

 ひそひそとやりながら人気の無い方に避けて、乾いた草の上に座る。

 特に指示しなくても、ちゃんと背後から抱いてくれて温かい。遠慮なく体重を預けて夜景を見つめる。

「イイとこだろ?」
「う、まあ……、うん」

 暗闇でも気まずそうに、赤面しているのが何となく分かる。

「何でこんな場所、知ってんの?……誰かと来てないよね?」
「ふっふふふ……、お前って本当可愛いよな」

 最近は素直に、嫉妬や独占欲を見せてくれるようになったのが嬉しい。
 番になるまでは嫌われるんじゃないかと、どこか怯えている節があった。

「は?誰かと来たの?」
「ないよ、ないない。お前が初めて。ついでに言うと、抱かせて結腸抜かせたのも、お前が初めて」

「……っ」
「は~、一々赤面してくれるとこ、愛してる」

 頬を擽る髪の一房を、軽く引っ張って口付ける。回された腕が強くなる。

「ずっとこのままでいてよ。可愛いまんまで、俺だけの仔竜ちゃんでいて」
「俺はとっくに大人ですぅ。アルカより年上だしぃ」
「ふふん、確かにこっちは立派な大人だな?」

 腰の辺りを少し揺らして、その下にある股の間を軽く刺激する。

「わ、こら!外……!」
「見えないし、誰も興味無いよ。……皆、それぞれ忙しそうだから」

 くすくす笑うと、左耳を甘く噛まれる。

「ね、アルカ」
「んっ……」

 耳朶に直接吹き込まれる声に、ぞわぞわと背中が痺れる。

「そろそろ一緒に背負わせてよ。俺は君の力になれないの?」

 ぎゅっと抱き締める指が、もどかしそうに服を掴んだ。

「……力になってない訳ないだろ。……俺が頑張れんのは、レグルスがいるから」

 その指を掬い上げ、口付ける。長くて節がしっかりして男らしいのに美しい指だ。
 この指に慈しまれると、深く安堵出来て幸せになる。

「時々さ、お前が言う通り、何処か遠くで2人だけで、お前しかいない世界で生きるのも良いなって、俺も思うんだ。全部捨てて、逃げて、俺とお前だけ」

 いつかそんな日が来るだろう。人の世から外れる時が、必ず来る。

「お前は、俺がお前以外に大事なものたくさんあるって、そう思ってるだろ」

 レグルスは何も答えない。故に否では無いと判断する。

「逆だよ、逆。それ、お前の方だよ。俺には無いもの方が多いから、今持ってる少ないものに必死なだけ。前にお前は、何も持って無いって言ったな。それって、お前が気付いてないだけ。レグルスはね、俺以外にもたくさんの人に大事にされてんだよ」

 レグルスの過去を視て、思ったのはそれだ。どちらが良いという話ではない。
 アルカから見れば、命すら掛ける程の愛情に繋がれて、生かされて来たのがレグルスだ。

「俺はね、出来るだけ長く、お前に人の世に居て欲しいんだ。お前を愛して、大事にしてくれる人は、本当はたくさん居る。それを知って、そこで生きて欲しい」
 
 それ程の想いを掛けられることなく、捨て置かれたのがアルカ。
 まともな人間関係だって、実のところはそれほど持って無いと思う。

 本心では誰も信用しない愛さない、そんな者が何故誰かと深い関係を築けてきたのだろうか。

 だから、たくさんの愛で生かされてきたレグルスに愛されるのは奇跡のようで、アルカに持てなかった価値と心を与えた。

 誰かのスペア、居ても居なくても変わらない存在から、命を賭ける価値のある唯一の存在としてくれた。

「だから俺は、お前を大事にしてくれるものを大事にしたい。それを守るためなら、何だって頑張れる」
「アルカ……」

 ぎゅっと抱き竦められ、肩に顔を埋められる。

「ねぇ、頑張らなくて良いよ。俺、……何だか怖いんだよ。最近、すごく怖いんだ」

 埋められた頭を撫でて、こめかみに口付ける。

「俺、アルカが居れば、それで良いんだ。他の誰かじゃなくて、君が傍に居ればそれでいい。アルカの居る場所が、俺の居る場所」

 冷えた空気に輝く星を見上げる。あの遠い光のように、いつかレグルスにも届くだろうか。

「だから俺に君を守らせてよ。一緒に背負わせて。何か重いの持ってんなら、俺が持つから」

 1つ息を吐いて、口を開く。

「もうすぐセドルアの結界が消える。そしたらスタンピードが起きる。それを率いるのはメイヒムだ」
「……メイヒム?……それって、英雄の?」

「そう、メイヒムは魂だけになって、魔物に乗り移った。俺たちはそれを倒すんだ」
「魔物って……、結界の中にいるのは、スノウドラゴンと……」

 少し考えたレグルスがハッと息を飲む。

「アルカ、馬鹿だな。俺、何にも傷つかないよ。そもそも何の感情も持たない人だし、俺には父親が2人もいるから」

 息苦しい程に抱き締められる。目的のために、ランスロットだけではなくレグルスまでも傷つける。
 これでは、腹芸が得意だと言われても仕方がない。
 
「ごめん、ずっと言えなくて。……ごめんな」
「なんでアルカが謝るの。ごめん、これこそ君が背負う必要の無いものだ。俺のために要らないもの、負わせたね」

「ううん、俺はお前の半分だから。お前がそうしてくれるように、俺も背負いたいの。レグのことで要らないものなんか、1個もない」

 首に腕を回し、抱き締め返す。レグルスの肩越しに、白い息が夜気に紛れて消えて行く。

「ここでするのは夏までお預けにしよ」
「ん、んん、夏ね、夏……」

「な、レグ、ちょっと寒い。もう帰ろ。今日は家で、中まで温めて」
「うん。帰ったら、いっぱい温めてあげるね」

 抱かれたまま転移陣を開いて、2人であっという間に自室へ帰る。

「ふふ、世界一贅沢な緊急転移陣の使い方だな」

 横抱きにされたままくすくす笑うと、レグルスから口付けが降る。

「もう少ししたら忙しくなるから、それまで毎日抱いてね」
「うん、たくさんイチャイチャする」

 嬉しそうに笑うレグルスの頬を撫でた。
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