【完結】BLゲーにモブ転生した俺が最上級モブ民の開発中止ルートに入っちゃった件

漠田ロー

文字の大きさ
140 / 168
最終章 旅路の涯

127 ヤズマイシュ防衛戦線

「封印部隊、魔障切り離し用意、撃てッ!」

 光封印球が一際濃い魔障の渦に放たれ、魔障を封印し圧縮する。
 魔障に吸い寄せられて、可視化出来るほど集まった大気中の魔素が、次いで放たれた魔術師隊の魔法で燃焼させられる。

 まるで花火が上がっているかの如く北地区の空は輝いているが、その下は阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 事前の避難計画で魔物に転化した人は見当たらないが、魔障を纏った魔物の死骸、それを焼却する部隊、襲い来る魔物と戦う部隊と、戦場は混乱を極めていた。

 負傷が一発即死に近いため、多数で1匹の魔物に当たれるよう班分けをしている。
 かつ光魔法士の配置も増やし、光結界でサポートもさせているため、あまり大きな怪我人や死人は未だ出ていないようだ。

 街や建物は大きな損害は免れないが、仕方あるまい。
 北地区避難所の幾つかは、きちんと光結界が展開されているため人命は守れている。

 一先ず安堵しながら、アルカは魔障を散らし敵を倒しながらレグルスを探す。

 手癖で双剣を出したくなるのを堪え、魔法のみで凶暴化した魔熊を仕留める。
 1番戦闘が激しくて厳しい場所に、レグルスが居る筈だ。

 魔障が集まる暗い場所を探して走り、住宅街に差し掛かったところで良く知る魔力反応があった。

「ジョエルーっ!ウルクーっ!」
「アルカさーん!」

 応えた方角を見ると、1本向こうの通りに部下2人の姿を見つけた。

「無事か!?」
「はい、アルカさんは?」

 急いで合流して首を巡らす。通りにはジョエルとウルクしか居ない。

「イドは?どこだ?」
「イドですか?来てないですよ?」
「え!?防衛線に集合命令出してたんだけど、来てないか?」

 2人は困惑したように顔を見合わせた。

「俺ら割と早くから来てましたけど、1回も見てないっす……」

 確かにイドには伝令陣で、スタンピード時は防衛基地へ集合するように伝え、本人からも了承の返事が返って来ていた。

 ということは何かあったのだ。来られなくなるような重大な何か。イドは仕事の約束は必ず守る男だ。

 イドが居なければ、メイヒムを封印出来ない。
 どうすれば、と思考の海に沈んだ瞬間だった。

「やだああ!ママぁーー!」
「!」

 魔障に冒された魔狼が、軒先で泣いている小さな子供に襲い掛かった。何故子供が取り残されて、そんな言葉が一瞬過ぎり反応が遅れた。

「先輩!!」

 水魔法の特級の水槍を放って飛び込んだのは、ジョエルだった。

 攫った勢いで転がりながらも、ジョエルは子供を抱えて守った。
 ウルクが駆け付けて子供を受け取りながら、ジョエルを起こそうと手を伸ばした。

「ジョエル!!」

 仕留めきれなかった魔狼が最後の力で、眼の前に投げ出されていたジョエルの足首に噛み付いた。

「うっ、あ!?」
「ジョエル先輩!」

 魔狼が纏っていた黒い魔障の霧が、ジョエルの足首に纏わりつき侵食していく。

「ウルク!!舌!!」
「!!」

 持ち前の勘の良さで、ウルクが理解したのを目の端で捉える。
 アルカは強化で一足飛びに、刹那の間にその膝下を斬り落とした。

「~~~っ!!?」
「ぐっ!」
「燃やせ、ウルク!」

 ジョエルの口に片手の殆どの指を突っ込んだまま、ウルクは落とされた足ごと魔狼を燃やした。

「ジョエル、我慢な、我慢だぞ」

 声にならない悲鳴を上げているジョエルの足に、高速再生させるヒールを施す。ついでに怯える子供に睡眠を付与した。

 ジョエルの口に突っ込んだままのウルクの指から、その手首を止め処なく血が伝っている。

「ウルクも悪い、もう少しだけ耐えてやって。すぐ終わらせる」
「……大丈夫っす。先輩に比べたら、こんなの全然」

 眠らせた方が良いだろう。欠損の高速再生は通常のヒールと違って、相当の痛みを伴う筈だ。
 自分でも腕を落とした時にやったことがあるが、涙が出るほどの激痛だった。

「ごめんな、ジョエル。良い子だから、もう眠れ」

 もう1段魔力を強めると、ジョエルは耐えきれずに気絶した。見る間に膝下が再構成されていく。

「ウルク、手、出せ」
「先に先輩を助けてやって下さい」

「いや、お前も再生必要だろ」
「……何で分かるんすかぁ?」
「出血量見れば分かるよ」

 あっという間に足首まで再生させたところで、ざわりと肌が震え辺りを見回すと、多数の魔鹿の群れが走って来ていた。
 再生中は治療を止められない。ウルクも魔障に冒された魔物の群れは、1人では対処が難しいだろう。

「レグルス!俺を守れ!」

 咄嗟に叫ぶと、魔鹿の群れが横に吹っ飛んだ。次いで爆煙が上がり、ゆらとレグルスの姿が現れた。

「アルカ……!」

 レグルスは約束通り、ちゃんと迎えに来ていた。一目見るなり状況を察したレグルスは、直ぐに辺りの魔物を掃討し始めた。
 これで心置きなく治療に専念出来る。よしと気合を入れる。

「ウルク、一緒にやっちゃうから、手」
「は、はい……」

 出されたウルクの指は酷い有様だった。特に小指の先端が無くなっている。

「悪い、お前は寝かせなくていいな?」
「もちろんっす。先輩を守ります」
「よし、偉いな。ただしめちゃくちゃ痛いからな」

 ふうと息を吐いて、短い時間で済むように魔力を込める。

「い゛っ!!?」

 ウルクが再生中の左手を押さえて、のたうち回る。あっという間に片手が元通りになった。

「は、はあ、はあ……、すげ、こんな速い再生初めて見ました」
「次はこれじゃ済まないかもだから、お互い気を付けような」
「っす……」

 ジョエルの足の再生が終わり、アルカは額の汗を拭った。

「これで大丈夫。魔障にも冒されてない。だけど血がかなり流れたから、お前たちは1度基地へ撤退」
「はい」

 神妙な顔をして頷いたウルクの顔から、数ヶ月前の青さが抜けていて成長を見る。

「ウルク、基地に第2王子たちがいる。イドが来たら、王子たちと必ず一緒にいるよう伝えてくれ」 
「第2王子!?何だっているんすか!?」

「イドと彼らに役目があるからだ。今回の魔障を鎮めるのに、重要なんだ。イドに会ったら、必ず伝えてくれ」

「……、分かりました。必ずイドに伝えます!基地の方は任せて下さい!」

 真剣に見つめると、ウルクが全ての疑問を飲み込み頷いた。何処か幼かった顔が、随分頼もしくなっている。
 感慨深く口を開きかけたところで、ドンと後方で爆発があった。ゆっくりはしていられない状況だ。

「ジョエルが起きたら、ごめんって伝えて」
「はい。でも直ぐ復帰しますから、待ってて下さいね!」

「いや、直ぐ終わらせたいよ、こんなの」
「っすね。早く終わらせて飲みに行きましょうね!」

 少し軽口を叩いて調子が出たのか、ウルクは子供とジョエルを抱え、基地への転移陣を起動させて消えた。


「レグ!」

 爆発があった後方からレグルスが走って来た。まだ魔力に余裕はありそうでホッとする。

「アルカ……」
「待て、時間が無い。イザベラさんの魔力回復薬、まだあるよな?」

「うん。まだ手を付けてないよ。アブゾーブも使ってるし」
「それは駄目なやつだろ!魔障吸ったらヤバいって!」
「大丈夫だよ。そうじゃないとこ判るから」

 アルカ以外からは魔力譲渡も受け付けないレグルスが、戦場で魔力を急回復させるには、アブゾーブかイザベラ特製の魔力回復薬しか方法がない。

 だが魔障はアブゾーブすると、魔力になるどころか魔物へと転化させてしまう。それ故、スタンピード時は禁止されているのだが。

「あのなあ……。まあいい、取り敢えずメイヒムの件だ」

 走って来た魔物たちにアルカとレグルスの魔法が放たれ、直ぐに殲滅する。

「あの列の最後尾、居るの判るな?」
「うん。かなり大きい」

 レグルスは竜の瞳で、近づいて来た最後尾の一際大きな魔障の塊を見る。

「メイヒムを倒すには、まずお前にスノウドラゴンを瀕死まで追い込んで欲しい」
「分かった」
「奴を弱らせたら、魂をスノウドラゴンから出す……」

 目の端で捉えていた、黒いスタンピードの群れが徐ろに膨らみ出す。

「レグ、あれ何だ?」

 指差した先、セドルア大山1合目に差し掛かっていた一際大きな魔障が丸く固まった。
 2人とも目が離せずに黙ってそれを見つめる中、大きな球体になった魔障はぱくりと2つに別れた。

「分裂した!?」

 スタンピードの群れが二手に分かれるなど、前代未聞だ。

「レグルス……!」
「……っ」

 二手の内、片方はそのまま北区に、もう片方は南下する街道を目指している。
 どちらもその最後尾に、大きな魔力反応を感じる。

 どっちだ?どっちにメイヒムが居る?
 アルカは半ばパニックになりながら、必死に目を凝らした。

「アルカ!落ち着いて!大丈夫!」

 強く肩を掴まれて視線が合う。

「先ずはこっちに来るのを討とう。南下するのはヒムカで迎え討つ。大丈夫。ルートに対策部隊、たくさん配置してるだろ?」
「う、ん……」

「伝令もするから、1度基地前の雪原まで戦線を下げる。アレは個別で当たると、他の部隊は全滅する」
「……分かった。俺が合図上げるから、レグは伝令!」

 レグルスから渡された、基地まで撤退の合図になる信号弾を素早く打ち上げた。
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。