144 / 168
最終章 旅路の涯
130 決戦前
ヒムカ平原へ転移した一行を最初に出迎えたのは、ギルド総本部総務部長シェンだった。
「やあ、君たちですか。代表は?くたばってませんよね?」
転移陣の天幕にデスクを持ち込んで、明らかに総務業務を行っている。ちらと見えた書類は費用決済の山だ。
こめかみにビキビキした青筋の幻影が視える笑顔で、シェンはさらりと毒吐いた。
「この山に承認印押してもらうまでは、死んでもらうと困るんですよね~。早く帰って来いって、あれだけ言ったのになあ」
ばこばことシェンのサイン印鑑が、書類に押されていく。
あまりの虫の悪さに誰しもが口火を切りたくないのか、何故かアルカに視線が集まる。
「え~っと、代表ですが現在死竜と引き続き交戦中です。で、もう1体、こちらで迎え撃つ必要があります」
「ああ、報告来てますよ。分裂したんでしょ?」
「はい、現況上がってます?」
未だ普通の会話が続いていて、ややホッとしながら進める。
「スタンピード自体は1箇所に留まらず、真っ直ぐこちらへ向かっているそうです。通りすがりに置いていくお土産が、それぞれ街道沿いで暴れていますが、事前対策のおかげで何とかなってますよ」
「今どの辺りまで来てます?」
「チェンチャンの町を過ぎたので、この速度なら明日の午前には到着するでしょうね」
「想定より早いですね。了解しました」
「代表が居ないので、作戦詰め直しますかね」
シェンが漸く書類から顔を上げて、レグルスを見た。
作戦会議を終え、炊き出しで腹拵えをする頃には、ヒムカ平原に夕陽が落ちていった。
広い平原は冬枯れで乾いて、寒風に下草の切れ端が舞う。
ヒムカ平原防衛戦線には、ギルドの第2部隊とランカー、ハンク直下の光魔法士部隊、王宮部隊が結集していて、約1500人が配置されている。
ヤズマイシュは市街地防衛が入るため、この倍の人数を配置しているが、ここら一帯には人が住む場所が無いため、攻撃に特化した人員を配置した。
野営用のテント村の中、空きテントにレグルスと早々に引っ込む。
後は明朝まで待機のため、レグルスの魔力を回復させなければいけない。
「レグ、魔力―……」
呼びかけたレグルスは明らかに怒っていた。返事もせず、目も合わせず俯いている。
深刻な雰囲気だが、それよりもレグルスの魔力の方が重要だ。
手を伸ばして触れようとした瞬間、レグルスが避けた。
「そうやって誤魔化せると思ってるだろ、俺のこと」
レグルスに拒絶されたのは初めてで、分かってはいるが内心ではショックを受ける。
「レグ……」
「なんで!……なんで、何も言ってくれないんだ……!」
真っ直ぐに視線がぶつかり、レグルスが怒気の下に傷ついていることを隠しているのが解る。
「俺はそんなに信用無い?俺はアルカの1番の味方じゃないの?俺は君に全て捧げてるのに、これ以上何をしたら1番にしてもらえるの?」
もどかしそうな声に、言葉に詰まる。
「俺は君のためなら、何だってやる。君が叶えたいこと、全部やる。何を捨てても、俺の命を差し出しても、君のことならなんだって!俺はアルカのために生きて、死ぬって約束した!」
番になった日に告げた言葉は、レグルスの礎として魂に刻まれている。
告げてはいないが、同じ誓いをアルカも魂に刻んでいる。
「ごめん。王子たちのことせっかく遠ざけてくれたのに、自分から近付くことになって、言い出せなかった」
拒絶された手を下ろして微笑む。レグルスは何故か泣きそうに眉を顰めた。
「違うよ、違う。君は……何を考えてるんだ、アルカ」
「何って……、スタンピードを終わらせて、お前と帰ることしか考えてないよ」
「アルカ、テスタから帰って来てから変だ。分かんないことや出来ないことは、2人で考えようって言っただろ?」
触れたくて伸びかけた指を握り込む。互いに想うが故に、譲れないのだ。
「女神から、言い使ったことを果たしてただけだよ。誰にも言うなって言われて」
「女神……?」
「そう、イザベラさんと一緒に会った」
レグルスは考え込みながらも、アルカをじっと見た。竜の眼で真偽を確かめようとしている。
しかし述べたこと自体は、ほぼ純然たる真実だ。気の済むまで視線を受け止める。
「女神が何で、アルカに?」
「たまたま俺が、メイヒムを倒すのに必要な全員と知り合いだったからだって」
探るような瞳が覗き込んでいて、信用されていないことがよく分かる。
「レグ、どうしたら許してくれる?」
レグルスは虚を突かれた顔で、言葉を失った。
「許すも何も……、責めてる訳じゃ……、いや、責めてたけど……」
「色々内緒にして、不安にさせてごめんね。もう秘密は無いよ」
少し冷静になったらしいレグルスが、まだ混乱している瞳を瞬かせた。
「魔力、回復させていい?怒っててもいいから、それだけは受け入れて欲しい」
結局、煙に巻いているのは、もしかしたらレグルスも分かってはいるかも知れない。
だが、明日の戦いを考えるとどうしても必要だ。
「イザベラさんの薬は、明日まで取っておいて。俺は普通の薬で回復出来るから、魔力は俺から取って」
このために既に満タンに回復させているし、魔力回復薬も十分に用意している。
「……触っていい?」
意図していなかったが、少しだけ不安が声に滲んでしまい、レグルスが今度こそ泣きそうに顔を歪めた。
「ごめん。傷付けたい訳じゃなかった。……ごめん」
ぎゅっと抱き締められて、ホッとして抱き返す。
「君が、俺を置いてっちゃう気がして。すごく焦るんだ。ずっとこの件だけは、俺を遠ざけてたでしょ?」
「……ごめん。色々考えたら、レグルスには戦いだけに集中して欲しくて。……多分、明日来るのは、魔障に冒された精霊だから」
「うん。俺も、きっとそうだと思う」
レグルスの力強い腕の中で、漸く恐ろしい事実を言葉にする。
「……怖い?」
「……うん」
誰も戦ったことの無い存在だ。凶暴化した精霊に滅ぼされた、大昔の都市の被害記録を見たことがある。
その時は精霊の相手になる者など1人もおらず、精霊が呪いに変わり果てるまで人々は一方的に蹂躙され、一国が傾く原因となったとされている。
だが今は、レグルスがいる。
言い換えると、まともに精霊の相手を出来るのは、レグルスだけだ。
そのレグルスでさえ、前回のセドルアでは通常状態の精霊と五分に見えた。
魔力が十全で無かったにしろ、レグルスの最大火力を誇る最上級魔法でさえ、仕留められなかったのだ。
女神の言葉通りになるのは間違いないと、自分でも判断が出来る。
「怖いよ、レグルス」
「アルカ……」
ぎゅっとしがみついて胸に顔を埋めると、応えて抱く腕が強くなる。
「大丈夫。君は俺が守るから。怖くないよ」
「違う。お前だよ。レグルスは自分のことを守って、1番に」
「俺は大丈夫だよ。ちゃんと精霊を弱らせるから。負けないからね」
「うん。誰よりも信じてる。だけど、絶対に死ぬなよ。俺のために、絶対に生きろよ」
「心配し過ぎだよ。俺、竜だし。頑丈だから」
へらっと笑ったレグルスの顔を見上げて、両頬を掴む。
「約束。返事は、はいしか認めない」
「……はい」
「死んだら絶対許さないから。破ったら殺すからな」
「ふふ、約束するよ」
「じゃあ、俺の魔力受け取れ」
「うん。俺に頂戴。君の力があるなら、俺、強くなれるから」
唇を互いに寄せて、しっかりと合わす。向き合って膝の上で抱かれたまま、魔力をゆっくり流し込んでいく。
「アルカの味だ」
「美味い?」
「うん、世界一」
「な、これじゃ朝までかかるよ」
「そうだね」
レグルスが防音結界を張るのに合わせて、2人まとめて浄化する。
「脱がせて、レグ」
「ん……」
脱がされながら、収納袋からガシャガシャと魔力回復薬の瓶を何本も取り出して、1瓶呷る。
もう1本の栓を抜いて、とろみのある液体を手の平にぶち撒けてから尻に入れる。
直腸から直接吸収する魔素に、体の温度が上がる。
ぐじゅぐじゅと拡張していると、レグルスの張った喉仏が上下する。
「お預けしてごめん。ん……ぁ、もう、いいよ」
魔素が自分に馴染んだところで囁くと、直ぐにレグルスが押し入って来る。
「は……、ん、キツ……」
まだ少し馴染ませ足りなかったせいで、互いに酷い圧迫感を感じるが、逆に鮮明で興奮する。
まるで番になった日を繰り返しているようだ。
「レグルス、形、分かるよ……。俺の中でびくびくしてる」
「う……、アルカの中も、俺の形になって吸い付いてる」
「あっ、……ん、もっと、キスしよ。魔力持ってって」
狭いテントの中で揺れないように、ゆっくりと腰を互いに動かして唇を合わせる。
ずるりと魔力が抜ける感覚と、下からの抽送に直ぐに体温が上がり酩酊する。
「飲ませて、あっ、レグ……!」
転がっていた回復薬を含んで、レグルスが口移しで飲ませてくる。レグルスの魔力が微かに混ざって、いつもより美味い。
直ぐに馴染んで回復した魔力を、レグルスが遠慮無く吸い取り、何度も何度もその一連を繰り返す。
自分の力が、レグルスを満たしていくのが分かる。
この力がレグルスを守るように。祈りながら、アルカはレグルスに魔力を送り続けた。
やがて飽和して満たされ、2人で裸のまま魔力を繋げながら、広げた寝袋に包まる。
「今、何かあったら怒られちゃうな」
「医療行為って言えば良いよ」
2人で少し笑いながら足を絡めて、抱き合いを深くする。
「もっかい、したいなぁ……」
額に口付けながら、レグルスがとろんと呟く。
「どうせ明日シェンさんに嫌味言われるから、いいよ。まだ早いし、ぎりぎりまでしよ。俺も足りないから」
くっついた下腹部を擦り合わせると、レグルスは嬉しそうに笑った。
「ね、あんまり動くと、バレちゃうんだけど」
「ふふ、ヨシヨシして欲しいのかな?甘えん坊だな~、レグルス君は」
にやにやと顎を擽ると、レグルスもけらけらと笑った。
「んっ、ふふ、うん、そう。俺の上で腰振ってる、えろーいアルカが見たいの」
「どうしようかな~。やっぱ終わるまでお預けにしよっかな。魔力はもう一杯だしな?」
「あー、お願いお願い!明日頑張るから、先にご褒美頂戴。後からも欲しいけど。そしたら俺、頑張るから」
「ふふ、しょうがないな、レグルスは。じゃあ、ヨシヨシしてやるし、終わったら今日の100倍エロいことしてやる」
「うん!ふふ、明日頑張れる」
にこっと笑ったレグルスに、言いたいことを全て飲み込む。
愛していると告げるのさえ怖く、ただただレグルスに溺れた。
「やあ、君たちですか。代表は?くたばってませんよね?」
転移陣の天幕にデスクを持ち込んで、明らかに総務業務を行っている。ちらと見えた書類は費用決済の山だ。
こめかみにビキビキした青筋の幻影が視える笑顔で、シェンはさらりと毒吐いた。
「この山に承認印押してもらうまでは、死んでもらうと困るんですよね~。早く帰って来いって、あれだけ言ったのになあ」
ばこばことシェンのサイン印鑑が、書類に押されていく。
あまりの虫の悪さに誰しもが口火を切りたくないのか、何故かアルカに視線が集まる。
「え~っと、代表ですが現在死竜と引き続き交戦中です。で、もう1体、こちらで迎え撃つ必要があります」
「ああ、報告来てますよ。分裂したんでしょ?」
「はい、現況上がってます?」
未だ普通の会話が続いていて、ややホッとしながら進める。
「スタンピード自体は1箇所に留まらず、真っ直ぐこちらへ向かっているそうです。通りすがりに置いていくお土産が、それぞれ街道沿いで暴れていますが、事前対策のおかげで何とかなってますよ」
「今どの辺りまで来てます?」
「チェンチャンの町を過ぎたので、この速度なら明日の午前には到着するでしょうね」
「想定より早いですね。了解しました」
「代表が居ないので、作戦詰め直しますかね」
シェンが漸く書類から顔を上げて、レグルスを見た。
作戦会議を終え、炊き出しで腹拵えをする頃には、ヒムカ平原に夕陽が落ちていった。
広い平原は冬枯れで乾いて、寒風に下草の切れ端が舞う。
ヒムカ平原防衛戦線には、ギルドの第2部隊とランカー、ハンク直下の光魔法士部隊、王宮部隊が結集していて、約1500人が配置されている。
ヤズマイシュは市街地防衛が入るため、この倍の人数を配置しているが、ここら一帯には人が住む場所が無いため、攻撃に特化した人員を配置した。
野営用のテント村の中、空きテントにレグルスと早々に引っ込む。
後は明朝まで待機のため、レグルスの魔力を回復させなければいけない。
「レグ、魔力―……」
呼びかけたレグルスは明らかに怒っていた。返事もせず、目も合わせず俯いている。
深刻な雰囲気だが、それよりもレグルスの魔力の方が重要だ。
手を伸ばして触れようとした瞬間、レグルスが避けた。
「そうやって誤魔化せると思ってるだろ、俺のこと」
レグルスに拒絶されたのは初めてで、分かってはいるが内心ではショックを受ける。
「レグ……」
「なんで!……なんで、何も言ってくれないんだ……!」
真っ直ぐに視線がぶつかり、レグルスが怒気の下に傷ついていることを隠しているのが解る。
「俺はそんなに信用無い?俺はアルカの1番の味方じゃないの?俺は君に全て捧げてるのに、これ以上何をしたら1番にしてもらえるの?」
もどかしそうな声に、言葉に詰まる。
「俺は君のためなら、何だってやる。君が叶えたいこと、全部やる。何を捨てても、俺の命を差し出しても、君のことならなんだって!俺はアルカのために生きて、死ぬって約束した!」
番になった日に告げた言葉は、レグルスの礎として魂に刻まれている。
告げてはいないが、同じ誓いをアルカも魂に刻んでいる。
「ごめん。王子たちのことせっかく遠ざけてくれたのに、自分から近付くことになって、言い出せなかった」
拒絶された手を下ろして微笑む。レグルスは何故か泣きそうに眉を顰めた。
「違うよ、違う。君は……何を考えてるんだ、アルカ」
「何って……、スタンピードを終わらせて、お前と帰ることしか考えてないよ」
「アルカ、テスタから帰って来てから変だ。分かんないことや出来ないことは、2人で考えようって言っただろ?」
触れたくて伸びかけた指を握り込む。互いに想うが故に、譲れないのだ。
「女神から、言い使ったことを果たしてただけだよ。誰にも言うなって言われて」
「女神……?」
「そう、イザベラさんと一緒に会った」
レグルスは考え込みながらも、アルカをじっと見た。竜の眼で真偽を確かめようとしている。
しかし述べたこと自体は、ほぼ純然たる真実だ。気の済むまで視線を受け止める。
「女神が何で、アルカに?」
「たまたま俺が、メイヒムを倒すのに必要な全員と知り合いだったからだって」
探るような瞳が覗き込んでいて、信用されていないことがよく分かる。
「レグ、どうしたら許してくれる?」
レグルスは虚を突かれた顔で、言葉を失った。
「許すも何も……、責めてる訳じゃ……、いや、責めてたけど……」
「色々内緒にして、不安にさせてごめんね。もう秘密は無いよ」
少し冷静になったらしいレグルスが、まだ混乱している瞳を瞬かせた。
「魔力、回復させていい?怒っててもいいから、それだけは受け入れて欲しい」
結局、煙に巻いているのは、もしかしたらレグルスも分かってはいるかも知れない。
だが、明日の戦いを考えるとどうしても必要だ。
「イザベラさんの薬は、明日まで取っておいて。俺は普通の薬で回復出来るから、魔力は俺から取って」
このために既に満タンに回復させているし、魔力回復薬も十分に用意している。
「……触っていい?」
意図していなかったが、少しだけ不安が声に滲んでしまい、レグルスが今度こそ泣きそうに顔を歪めた。
「ごめん。傷付けたい訳じゃなかった。……ごめん」
ぎゅっと抱き締められて、ホッとして抱き返す。
「君が、俺を置いてっちゃう気がして。すごく焦るんだ。ずっとこの件だけは、俺を遠ざけてたでしょ?」
「……ごめん。色々考えたら、レグルスには戦いだけに集中して欲しくて。……多分、明日来るのは、魔障に冒された精霊だから」
「うん。俺も、きっとそうだと思う」
レグルスの力強い腕の中で、漸く恐ろしい事実を言葉にする。
「……怖い?」
「……うん」
誰も戦ったことの無い存在だ。凶暴化した精霊に滅ぼされた、大昔の都市の被害記録を見たことがある。
その時は精霊の相手になる者など1人もおらず、精霊が呪いに変わり果てるまで人々は一方的に蹂躙され、一国が傾く原因となったとされている。
だが今は、レグルスがいる。
言い換えると、まともに精霊の相手を出来るのは、レグルスだけだ。
そのレグルスでさえ、前回のセドルアでは通常状態の精霊と五分に見えた。
魔力が十全で無かったにしろ、レグルスの最大火力を誇る最上級魔法でさえ、仕留められなかったのだ。
女神の言葉通りになるのは間違いないと、自分でも判断が出来る。
「怖いよ、レグルス」
「アルカ……」
ぎゅっとしがみついて胸に顔を埋めると、応えて抱く腕が強くなる。
「大丈夫。君は俺が守るから。怖くないよ」
「違う。お前だよ。レグルスは自分のことを守って、1番に」
「俺は大丈夫だよ。ちゃんと精霊を弱らせるから。負けないからね」
「うん。誰よりも信じてる。だけど、絶対に死ぬなよ。俺のために、絶対に生きろよ」
「心配し過ぎだよ。俺、竜だし。頑丈だから」
へらっと笑ったレグルスの顔を見上げて、両頬を掴む。
「約束。返事は、はいしか認めない」
「……はい」
「死んだら絶対許さないから。破ったら殺すからな」
「ふふ、約束するよ」
「じゃあ、俺の魔力受け取れ」
「うん。俺に頂戴。君の力があるなら、俺、強くなれるから」
唇を互いに寄せて、しっかりと合わす。向き合って膝の上で抱かれたまま、魔力をゆっくり流し込んでいく。
「アルカの味だ」
「美味い?」
「うん、世界一」
「な、これじゃ朝までかかるよ」
「そうだね」
レグルスが防音結界を張るのに合わせて、2人まとめて浄化する。
「脱がせて、レグ」
「ん……」
脱がされながら、収納袋からガシャガシャと魔力回復薬の瓶を何本も取り出して、1瓶呷る。
もう1本の栓を抜いて、とろみのある液体を手の平にぶち撒けてから尻に入れる。
直腸から直接吸収する魔素に、体の温度が上がる。
ぐじゅぐじゅと拡張していると、レグルスの張った喉仏が上下する。
「お預けしてごめん。ん……ぁ、もう、いいよ」
魔素が自分に馴染んだところで囁くと、直ぐにレグルスが押し入って来る。
「は……、ん、キツ……」
まだ少し馴染ませ足りなかったせいで、互いに酷い圧迫感を感じるが、逆に鮮明で興奮する。
まるで番になった日を繰り返しているようだ。
「レグルス、形、分かるよ……。俺の中でびくびくしてる」
「う……、アルカの中も、俺の形になって吸い付いてる」
「あっ、……ん、もっと、キスしよ。魔力持ってって」
狭いテントの中で揺れないように、ゆっくりと腰を互いに動かして唇を合わせる。
ずるりと魔力が抜ける感覚と、下からの抽送に直ぐに体温が上がり酩酊する。
「飲ませて、あっ、レグ……!」
転がっていた回復薬を含んで、レグルスが口移しで飲ませてくる。レグルスの魔力が微かに混ざって、いつもより美味い。
直ぐに馴染んで回復した魔力を、レグルスが遠慮無く吸い取り、何度も何度もその一連を繰り返す。
自分の力が、レグルスを満たしていくのが分かる。
この力がレグルスを守るように。祈りながら、アルカはレグルスに魔力を送り続けた。
やがて飽和して満たされ、2人で裸のまま魔力を繋げながら、広げた寝袋に包まる。
「今、何かあったら怒られちゃうな」
「医療行為って言えば良いよ」
2人で少し笑いながら足を絡めて、抱き合いを深くする。
「もっかい、したいなぁ……」
額に口付けながら、レグルスがとろんと呟く。
「どうせ明日シェンさんに嫌味言われるから、いいよ。まだ早いし、ぎりぎりまでしよ。俺も足りないから」
くっついた下腹部を擦り合わせると、レグルスは嬉しそうに笑った。
「ね、あんまり動くと、バレちゃうんだけど」
「ふふ、ヨシヨシして欲しいのかな?甘えん坊だな~、レグルス君は」
にやにやと顎を擽ると、レグルスもけらけらと笑った。
「んっ、ふふ、うん、そう。俺の上で腰振ってる、えろーいアルカが見たいの」
「どうしようかな~。やっぱ終わるまでお預けにしよっかな。魔力はもう一杯だしな?」
「あー、お願いお願い!明日頑張るから、先にご褒美頂戴。後からも欲しいけど。そしたら俺、頑張るから」
「ふふ、しょうがないな、レグルスは。じゃあ、ヨシヨシしてやるし、終わったら今日の100倍エロいことしてやる」
「うん!ふふ、明日頑張れる」
にこっと笑ったレグルスに、言いたいことを全て飲み込む。
愛していると告げるのさえ怖く、ただただレグルスに溺れた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。