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最終章 旅路の涯
133 イザベラ
「メイヒム!!そこに直れ!!」
箒に跨ったイザベラが、空に浮いていた。
俄には信じ難い光景だったが、良く視ると火と風魔法を組み合わせて、オリハルコン杖から放出させて浮いている様子だった。
いずれ物凄い緻密な魔力操作が必要な技術だ。
「我が麗しの魔女殿か!?」
メイヒムは自分より高い場所に浮かぶイザベラを見て、ゾッとするような笑みを浮かべた。
「メイヒム!何故、何故なんだ!この大馬鹿者!」
上級の火と風魔法を組み合わせた、火旋風が放たれた。
現役を引退した老人とは思えない程の威力に、イザベラが魔女と呼ばれ、畏怖された伝説の一端を垣間見る。
「ふはは、少し老いたんじゃないか?ザジ!」
「余計なお世話だよ!あんたこそ、魔物なんかに堕ちやがって!」
「ふふ、良いだろう!色々渡り歩いてここまで来てな、この精霊が1番大変だったよ。その失敗作が竜を殺してくれたおかげで隙が出来て、良い体が手に入った。これで王都を征服出来るというものだ。今度こそ俺は全てを手に入れて、更に高みに至るのさ!」
凄まじい魔法の応酬に上空で繰り広げられ、付け入る隙が無い。今の内にレグルスに魔力を回復させる。
「あんた、まだあの馬鹿げた理論を振りかざしてんのかい!?」
「懐かしいな!ザジ!あの頃はよく有意義な討論をしたものだ!」
「あんたの理論は昔から、危なっかしかった!それでも一線は越えないって信じてた!」
「天啓を得たのさ!その竜が番を喰った時に!正しくは番の核を取り込んだ時にだが、俺は可能性を見たんだ!」
氷の槍とイザベラの炎嵐がぶつかり、上空で爆発した。結界を揺るがす程の衝撃波が放たれる。
上空から降りた2人が睨み合う。アルカたちの前に立ったイザベラの背中は、何よりも大きく圧倒される。
「……だから、あんたは何の咎も無い赤子に、あんな酷いことをしたのかい!?あんたがこの子に何を背負わせたのか、知らないとは言わせない!」
「はっ、そんなことは知ったこっちゃないね。その器はそもそも、俺が入るために用意したんだから。それなのに肝心の光属性が継承されるどころか、貴重な竜核も無駄にした」
メイヒムはやれやれと首を振ってから、思い出したように笑った。
「でも、こいつから魔力分離をさせようとする中で、人を魔石にする方法も大分洗練されたから、その点は良かったかな」
レグルスの耳を塞ぎたい思いで一杯だった。あまりの残酷な言葉に、イザベラの背が震える。
「なあ、ザジ。俺たち毎晩話したじゃないか。どうしたら強くなれるかって。簡単さ。あの竜みたいに、強い力を取り込めば良いんだ」
「メイヒム、もう口を閉じな」
「だけど竜核じゃ、その失敗作みたいに、人には強過ぎて上手くいかないことが分かったからな。だから、人の魔力をたくさん重ねて核に変換するんだ。それを取り込めば、属性追加や魔力の上限を超えるのも夢じゃあない!」
興奮したメイヒムが美しい精霊の顔を、狂気に輝かせて笑う。
「どうだ?素晴らしいだろ?まだまだ研究の余地があるからな。また王族に乗り移って、早く研究を再開したいんだ。今度は王都の住民を存分に使うからな。人手が要るから、ザジも助手になるかい?」
俯いたイザベラの肩がぶるぶると震えた。
「私たちはやっぱり罪人だった。あんたも私も、地獄がお似合いだよ。でもね、それでも私は、腐っても緑の魔女だ。命と引き換えにでも、あんたを討つ!」
「ばーちゃん……!」
隣のイドが目を見開いて、顔を蒼白にした。
「大丈夫。死なせない」
レグルスが真っ直ぐイザベラを見つめたまま、きっぱりと言った。
「ザジ、お前にはマディーをあげただろ?なのに、俺の命まで取ろうって?図々しい」
「……、そうさね。私はあんたから全て奪うよ。あんたの夢はここで終わりだ……!」
「ふ、ははは、ははは!……いつかザジとは、こうなると思っていた!だが衰えたな?」
イザベラを丸ごと潰すくらいの、大きな氷柱が空から隕石のように降って来る。
咄嗟にアルカも同じサイズの氷柱を、それにぶつけて幾つかの塊に割る。
「魔女の力、舐めなさんな!」
太古の御伽噺、八岐の大蛇のような焔がイザベラの周りに立ち昇り、一斉にメイヒムを襲った。
焔の大蛇は8つの頭を交互に繰り出し、メイヒムへ咬みつこうとする。
レグルスが加勢の火魔法を放ち、辺りは冬だと言うのに熱気に溢れ、魔障が見る間に吸収され昇華されていく。
「まるで神話だ……」
後ろで影の1人が呆然と呟いた。全く同感だが、アルカは振り向いて、レイと王子に魔力回復を指示した。
イザベラの加勢で大分押してきている。もしかしたら早晩決着がつくかも知れない。
「イド、どうだ!?」
「片方が大分弱ってきてる!」
「真央!傍に!」
「はい!」
王子たちがアルカの直ぐ後ろに待機した。
「真央、合図したら直ぐに出来るよう、覚悟しててくれ」
「分かった……!いつでもいけるよ!」
レイとしてではなく、女子高生という若い身空で、異世界に逸れてしまった魂に向き合う。
「頑張って、お前の会いたい人たちにもう1度会うんだ。そして、あっちの世界で精一杯生き抜けよ……!」
「……うん。私、戻ったら、事故のせいでヤバくなってるかもだけど、どんな風になってても、また皆と会って、ちゃんと生きるから」
真央は目に強い光を持って、アルカをしっかりと見た。
ドンとまた大きな爆発が起きて、片腕を再生する間もないメイヒムに弱りが見えてきた。
「ザジ!マディーはどう死んだ?俺を視て泣いてなかったか!?」
「貴様!」
イザベラより早く反応したレグルスが、一際大きな爆炎を放った。
「ふふ、俺なぁ、見てたんだ!ずっと!哀れなダニーから抜け出てから、ずーっと、マディーが死ぬまで一緒に居たんだ!傍で見守ってたんだ!」
中サイズの氷柱が高速で放たれ、イザベラの前で散弾のように弾けた。
「うっ!」
「ばーちゃん!!」
「師匠!」
イザベラの結界が間に合わずに、防御した腕を貫通した。
咄嗟にヒールを飛ばし、その傷を癒す。女神の加護か魔障の影響は無さそうだ。
「これくらいでがたがた言うんじゃない!畳み掛けるよ!」
イザベラは自分に喝を入れるように、腹から声を出した。
メイヒムの言葉に、マティアスの晩年の話を思い出す。
彼が精神を蝕まれたのは病と薬のせいだと思われてきたが、もしかするとメイヒムの影響もあるかも知れない。
乗り移らずにそれこそ悪霊のように、ずっとマティアスに取り憑いていたのだとしたら。
にやにやしているメイヒムに、イザベラの焔蛇が絡みついた。
「毎晩、毎晩、耳元で囁いてやるんだよ。ああ、マディー、俺の兄弟、何故俺を裏切った、何故俺を殺したんだって!あいつはクソ真面目だからな、その度に泣いて謝るんだよ!でかい図体で傑作だったら!」
「黙れ!先生を侮辱するな!」
レグルスが特級の雷炎を放つ。かつて超古代の町を滅ぼしたような高温の雷の矢が、天からメイヒムに刺さり落ちて爆発した。
「片方、掴んだ!アルカ!今なら邪魔出来ない!」
イドの合図に真央を振り返る。真央は頷いて、隣にいたセルシアスに向き直った。
「じゃあね、セルシアス!バイバイ!」
「レイ!?」
にこっと微笑んだレイの瞳からポロっと涙が零れて、がくんと崩れ落ちた。
「レ、レイ!?どうしたんだ!起きろ!」
意識を無くしたレイを抱えて、セルシアスが何度も叫ぶ。
幼く拙いものだったが、セルシアスがレイを守る時だけは本物だったのを知っている。
ゾーイが影に退避させるよう指示したのを留める。セルシアスには、真央を最後まで見届けて欲しい。
「イド!真央は!?今抜けた魂は!?」
「メイヒムに憑いた!せめぎ合ってる……!」
焔蛇に巻かれたメイヒムが、急に動きを止めた。
「なんだ、お前!こ、小娘!止めろ!器が壊れる……!」
氷精霊の体から水蒸気が上がり、胸の辺りが光り出す。
「この、今、良いところなのに、邪魔立てするなァ……!く、魔力が足りぬ……!」
メイヒムは苦悶の表情を浮かべ、胸を掻きむしり出した。
「仕方ない。こうなれば……!」
メイヒムが左手を構えた。見る間に辺りに漂っていた魔障が、氷精霊に集まって来る。
「アブゾーブ!?」
「ヤバ、い……!弾かれる……!」
氷精霊があっという間に魔障を吸っていく。魔障は精霊の周りを囲み、黒い渦と化した。
「アルカ!弾かれた!」
「魂はどうなってる!?」
イドは黒い渦に目を凝らした。
「多分3つ入ってる。けど、よく視えねえ……!」
ざわざわと辺りに風が吹き、身の毛がよだつ気配がする。
凄まじく悍ましい気配に、1度下がったレグルスたちと固まった。
「アルカ!イド!」
「状況は!?」
不吉な気配を打ち破るように、魔物を薙いで来ただろうジークとハンクが駆け付けて来た。
「良くないです!氷精霊が魔障を吸収し、変質し出した……!」
レグルスが残りの魔力回復薬を全て呷りながら、ハンクへ手短に報告する。
「ジーク、ヤズマイシュは?」
「ああ、不死竜は倒した。まだ残党狩り中だが、間もなく平定出来る筈だ。死者は1人も出てない」
「そうか、良かった……!」
「じゃ、サクッとこいつ倒しちまおうぜ!」
ジークがニッと笑うのに頷いて、拳をぶつけ合う。子供の頃からの共闘する時の合図だ。
「あんたたち!構えな!とんでもないのがお出ましだ……!」
イザベラの一喝に、全員が瞬時に構える。
黒い渦と化した魔障がぐんぐん氷精霊に吸い込まれ、最後の一筋まで飲み込まれてゆく。
「者ども!気合い入れろよ!」
「応!」
ハンクの一声に、決戦の火蓋が切って落とされた。
箒に跨ったイザベラが、空に浮いていた。
俄には信じ難い光景だったが、良く視ると火と風魔法を組み合わせて、オリハルコン杖から放出させて浮いている様子だった。
いずれ物凄い緻密な魔力操作が必要な技術だ。
「我が麗しの魔女殿か!?」
メイヒムは自分より高い場所に浮かぶイザベラを見て、ゾッとするような笑みを浮かべた。
「メイヒム!何故、何故なんだ!この大馬鹿者!」
上級の火と風魔法を組み合わせた、火旋風が放たれた。
現役を引退した老人とは思えない程の威力に、イザベラが魔女と呼ばれ、畏怖された伝説の一端を垣間見る。
「ふはは、少し老いたんじゃないか?ザジ!」
「余計なお世話だよ!あんたこそ、魔物なんかに堕ちやがって!」
「ふふ、良いだろう!色々渡り歩いてここまで来てな、この精霊が1番大変だったよ。その失敗作が竜を殺してくれたおかげで隙が出来て、良い体が手に入った。これで王都を征服出来るというものだ。今度こそ俺は全てを手に入れて、更に高みに至るのさ!」
凄まじい魔法の応酬に上空で繰り広げられ、付け入る隙が無い。今の内にレグルスに魔力を回復させる。
「あんた、まだあの馬鹿げた理論を振りかざしてんのかい!?」
「懐かしいな!ザジ!あの頃はよく有意義な討論をしたものだ!」
「あんたの理論は昔から、危なっかしかった!それでも一線は越えないって信じてた!」
「天啓を得たのさ!その竜が番を喰った時に!正しくは番の核を取り込んだ時にだが、俺は可能性を見たんだ!」
氷の槍とイザベラの炎嵐がぶつかり、上空で爆発した。結界を揺るがす程の衝撃波が放たれる。
上空から降りた2人が睨み合う。アルカたちの前に立ったイザベラの背中は、何よりも大きく圧倒される。
「……だから、あんたは何の咎も無い赤子に、あんな酷いことをしたのかい!?あんたがこの子に何を背負わせたのか、知らないとは言わせない!」
「はっ、そんなことは知ったこっちゃないね。その器はそもそも、俺が入るために用意したんだから。それなのに肝心の光属性が継承されるどころか、貴重な竜核も無駄にした」
メイヒムはやれやれと首を振ってから、思い出したように笑った。
「でも、こいつから魔力分離をさせようとする中で、人を魔石にする方法も大分洗練されたから、その点は良かったかな」
レグルスの耳を塞ぎたい思いで一杯だった。あまりの残酷な言葉に、イザベラの背が震える。
「なあ、ザジ。俺たち毎晩話したじゃないか。どうしたら強くなれるかって。簡単さ。あの竜みたいに、強い力を取り込めば良いんだ」
「メイヒム、もう口を閉じな」
「だけど竜核じゃ、その失敗作みたいに、人には強過ぎて上手くいかないことが分かったからな。だから、人の魔力をたくさん重ねて核に変換するんだ。それを取り込めば、属性追加や魔力の上限を超えるのも夢じゃあない!」
興奮したメイヒムが美しい精霊の顔を、狂気に輝かせて笑う。
「どうだ?素晴らしいだろ?まだまだ研究の余地があるからな。また王族に乗り移って、早く研究を再開したいんだ。今度は王都の住民を存分に使うからな。人手が要るから、ザジも助手になるかい?」
俯いたイザベラの肩がぶるぶると震えた。
「私たちはやっぱり罪人だった。あんたも私も、地獄がお似合いだよ。でもね、それでも私は、腐っても緑の魔女だ。命と引き換えにでも、あんたを討つ!」
「ばーちゃん……!」
隣のイドが目を見開いて、顔を蒼白にした。
「大丈夫。死なせない」
レグルスが真っ直ぐイザベラを見つめたまま、きっぱりと言った。
「ザジ、お前にはマディーをあげただろ?なのに、俺の命まで取ろうって?図々しい」
「……、そうさね。私はあんたから全て奪うよ。あんたの夢はここで終わりだ……!」
「ふ、ははは、ははは!……いつかザジとは、こうなると思っていた!だが衰えたな?」
イザベラを丸ごと潰すくらいの、大きな氷柱が空から隕石のように降って来る。
咄嗟にアルカも同じサイズの氷柱を、それにぶつけて幾つかの塊に割る。
「魔女の力、舐めなさんな!」
太古の御伽噺、八岐の大蛇のような焔がイザベラの周りに立ち昇り、一斉にメイヒムを襲った。
焔の大蛇は8つの頭を交互に繰り出し、メイヒムへ咬みつこうとする。
レグルスが加勢の火魔法を放ち、辺りは冬だと言うのに熱気に溢れ、魔障が見る間に吸収され昇華されていく。
「まるで神話だ……」
後ろで影の1人が呆然と呟いた。全く同感だが、アルカは振り向いて、レイと王子に魔力回復を指示した。
イザベラの加勢で大分押してきている。もしかしたら早晩決着がつくかも知れない。
「イド、どうだ!?」
「片方が大分弱ってきてる!」
「真央!傍に!」
「はい!」
王子たちがアルカの直ぐ後ろに待機した。
「真央、合図したら直ぐに出来るよう、覚悟しててくれ」
「分かった……!いつでもいけるよ!」
レイとしてではなく、女子高生という若い身空で、異世界に逸れてしまった魂に向き合う。
「頑張って、お前の会いたい人たちにもう1度会うんだ。そして、あっちの世界で精一杯生き抜けよ……!」
「……うん。私、戻ったら、事故のせいでヤバくなってるかもだけど、どんな風になってても、また皆と会って、ちゃんと生きるから」
真央は目に強い光を持って、アルカをしっかりと見た。
ドンとまた大きな爆発が起きて、片腕を再生する間もないメイヒムに弱りが見えてきた。
「ザジ!マディーはどう死んだ?俺を視て泣いてなかったか!?」
「貴様!」
イザベラより早く反応したレグルスが、一際大きな爆炎を放った。
「ふふ、俺なぁ、見てたんだ!ずっと!哀れなダニーから抜け出てから、ずーっと、マディーが死ぬまで一緒に居たんだ!傍で見守ってたんだ!」
中サイズの氷柱が高速で放たれ、イザベラの前で散弾のように弾けた。
「うっ!」
「ばーちゃん!!」
「師匠!」
イザベラの結界が間に合わずに、防御した腕を貫通した。
咄嗟にヒールを飛ばし、その傷を癒す。女神の加護か魔障の影響は無さそうだ。
「これくらいでがたがた言うんじゃない!畳み掛けるよ!」
イザベラは自分に喝を入れるように、腹から声を出した。
メイヒムの言葉に、マティアスの晩年の話を思い出す。
彼が精神を蝕まれたのは病と薬のせいだと思われてきたが、もしかするとメイヒムの影響もあるかも知れない。
乗り移らずにそれこそ悪霊のように、ずっとマティアスに取り憑いていたのだとしたら。
にやにやしているメイヒムに、イザベラの焔蛇が絡みついた。
「毎晩、毎晩、耳元で囁いてやるんだよ。ああ、マディー、俺の兄弟、何故俺を裏切った、何故俺を殺したんだって!あいつはクソ真面目だからな、その度に泣いて謝るんだよ!でかい図体で傑作だったら!」
「黙れ!先生を侮辱するな!」
レグルスが特級の雷炎を放つ。かつて超古代の町を滅ぼしたような高温の雷の矢が、天からメイヒムに刺さり落ちて爆発した。
「片方、掴んだ!アルカ!今なら邪魔出来ない!」
イドの合図に真央を振り返る。真央は頷いて、隣にいたセルシアスに向き直った。
「じゃあね、セルシアス!バイバイ!」
「レイ!?」
にこっと微笑んだレイの瞳からポロっと涙が零れて、がくんと崩れ落ちた。
「レ、レイ!?どうしたんだ!起きろ!」
意識を無くしたレイを抱えて、セルシアスが何度も叫ぶ。
幼く拙いものだったが、セルシアスがレイを守る時だけは本物だったのを知っている。
ゾーイが影に退避させるよう指示したのを留める。セルシアスには、真央を最後まで見届けて欲しい。
「イド!真央は!?今抜けた魂は!?」
「メイヒムに憑いた!せめぎ合ってる……!」
焔蛇に巻かれたメイヒムが、急に動きを止めた。
「なんだ、お前!こ、小娘!止めろ!器が壊れる……!」
氷精霊の体から水蒸気が上がり、胸の辺りが光り出す。
「この、今、良いところなのに、邪魔立てするなァ……!く、魔力が足りぬ……!」
メイヒムは苦悶の表情を浮かべ、胸を掻きむしり出した。
「仕方ない。こうなれば……!」
メイヒムが左手を構えた。見る間に辺りに漂っていた魔障が、氷精霊に集まって来る。
「アブゾーブ!?」
「ヤバ、い……!弾かれる……!」
氷精霊があっという間に魔障を吸っていく。魔障は精霊の周りを囲み、黒い渦と化した。
「アルカ!弾かれた!」
「魂はどうなってる!?」
イドは黒い渦に目を凝らした。
「多分3つ入ってる。けど、よく視えねえ……!」
ざわざわと辺りに風が吹き、身の毛がよだつ気配がする。
凄まじく悍ましい気配に、1度下がったレグルスたちと固まった。
「アルカ!イド!」
「状況は!?」
不吉な気配を打ち破るように、魔物を薙いで来ただろうジークとハンクが駆け付けて来た。
「良くないです!氷精霊が魔障を吸収し、変質し出した……!」
レグルスが残りの魔力回復薬を全て呷りながら、ハンクへ手短に報告する。
「ジーク、ヤズマイシュは?」
「ああ、不死竜は倒した。まだ残党狩り中だが、間もなく平定出来る筈だ。死者は1人も出てない」
「そうか、良かった……!」
「じゃ、サクッとこいつ倒しちまおうぜ!」
ジークがニッと笑うのに頷いて、拳をぶつけ合う。子供の頃からの共闘する時の合図だ。
「あんたたち!構えな!とんでもないのがお出ましだ……!」
イザベラの一喝に、全員が瞬時に構える。
黒い渦と化した魔障がぐんぐん氷精霊に吸い込まれ、最後の一筋まで飲み込まれてゆく。
「者ども!気合い入れろよ!」
「応!」
ハンクの一声に、決戦の火蓋が切って落とされた。
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・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
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