ある日、森の中で彼女に出会った

レイちゃん

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本編(出会い)

単なる吸血鬼

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(ここ、どこ…)

目が覚めると、知らない部屋だった。
少しして、昨日の出来事を思い出す。

(”魔女の森”だ…!)

夢であって欲しかったけど、そんな都合のいい奇跡は起きないらしい。
ベッドから身を起こすと、見たことも無いネグリジェを着せられていた。
どこかのお屋敷の客間のようで、ベッドの他にテーブルセットや姿見が備えられている。

(確か昨日、あのメイドさんが”お嬢様”と言っていた。
 じゃあここは”魔女”の館…?)

一刻も早く森を出て、家に帰りたい。
とはいえ昨夜あれほど馬車で走った距離を徒歩で走破できるとは思えない。
そういえば、あのメイドさんに服を掴まれた瞬間からの記憶が無い。
ここは森のどの辺なのだろう…




ドアが静かにノックされた。

「は、はい!」

慌てて返事をすると、メイドさんが入ってきた。
昨夜、後から現れた女性だった。

「おはようございます。
 主が、朝食の席でお話をお伺いしたいと申しております。
 こちらをどうぞ。」

「は、はい。」

メイドさんがガウンを羽織らせてくれる。
そして促されると部屋を出る。
廊下は長かった。
私の家よりも。

「あ、あの…」

歩きながら、それも御当主への挨拶前に使用人と話し込むのはマナー違反。
それでも昨夜のことや、ここのことを知りたかった。
そんな私の気持ちを知ってか、メイドさんは。

「詳しくは後程。
 どうぞ、こちらで主アーシュがお待ちしております。
 申し遅れました、私はキャティと申します。」

そう言うとドアを開け、私に頭を下げた。




「はじめまして。」

この館の当主と案内されたアーシュさんは、12歳くらいの少女だった。
日光に輝く綺麗な銀髪と、青を基調としたクラシカルなロリータドレスが特徴的で。
その妖精のような容姿に見とれてしまう。

「…驚いたかの、こんな小娘が当主で?」

「失礼しました。
 フィッツ男爵家長女、スーと申します。
 昨夜は助けて頂きありがとうございます。」

椅子を勧められ腰掛ける。

「お腹も空いたであろう。
 簡素じゃが朝食を用意した、まぁどうぞ。」

キャティさんがパンやサラダを並べてくれる。
考えれば昨日の朝食以降、何も口にしていない。
おそらく毒などは入っていないだろう…多分。

「さて、そなたには聞きたいことが山ほどある。
 最初に…何じゃ、あの無作法な男たちは。」

「私も知らなくて…おそらく誘拐だと思うのですが。
 ところで私、帰れますよね!?
 ここって”魔女の森”なんですか!?」

私の言葉にアーシュさんの眉がピクリと動き。

「そうせっつかずとも後程ゆっくり説明する、まずは我の質問に答えるがよかろう。
 ここは我の森で、我の館で、我の世界じゃ。
 そしてそなたは我が招待もしていないのに男と一緒に乱入してきた人間。
 あの場で死ななかったのは全くの偶然じゃ。
 ゆえに、そなたはいつ死んでもおかしくない。
 立場をわきまえよ。」

「まぁ前準備も無くいきなり”転移”させられたので、スー様は事情を聞く前に昏睡されましたけど。」

「…それについては完全に当方に責任があるな。
 全くあの駄犬は…
 すまんな、あれは基本的には優秀なのじゃが…」

ため息。
そうだ、この人はあのメイドさんの主だ。
言葉一つで人間を殺せる、あのメイドさんの。

「あ、あの…殺さないでください…」

「それは約束できん。」

平然と、そんなことを言うアーシュさん。

「そなた、寝ている時に耳元で羽虫が飛んでいれば不快であろう。
 それと一緒じゃ。」

「じゃあ…アーシュさんは、魔女…なのですか…?」

怯える私に、アーシュさんもキャティさんも苦笑する。

「我は魔女じゃないわ。
 単なる吸血鬼。」
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