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本編(ざまぁ)
ま、どれもこれも逝ってしもうたがの。
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一瞬の後、フガフガと絶叫する3人。
「五月蠅い、少し『黙れ』。」
睨みつけるパティさんが一瞬で家族を沈黙させる。
「良いのか?
その方の家族であろう。」
「陛下。
貴族は、国民領民の納税によって生きる者。
その範を示すことなく悪事に手を染めたならば、その裁きを受けるのも必定。
しかし、しかしながら、家族です。
一思いに、安らかな処刑を。」
「…ま、阿呆ではないようで何よりじゃ。」
アーシュさんはニッコリと。
「もし家族だからと庇うようであれば、そなたを見限っておっただろう。」
「お嬢様。
あの美味な血を持つ者が、そんな愚かなわけないかと存じます。」
第一級殺人ともなれば、余程の事情があったとしても長期刑。
情状酌量の余地が一切ない上に、誘拐に監禁に詐欺。
最低でも死刑、酷ければ砂漠へ追放しての餓死刑だろう。
御家お取り潰しも免れそうにない。
使用人達の再就職は大丈夫だろうか。
「…そなたの貴族としての心意気、余も重々に留めおこう。
判決は様々な証拠証言を元に法廷が下すが、まぁ最低限の”恩情”は期待するが良い。」
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げる。
そして3人は近衛兵に連れ出された。
「それにしても、その…そこのスーは、本当に不老不死なのですか?」
「我を信じられぬか?」
「そういうわけでは、ないのですが…」
国王陛下が疑うのも当然。
私だって、自分が不老不死の吸血鬼だというのは信じられないし、実感もない。
「ふむ…
のうスー、ちょっとそこの近衛兵に斬られてみよ。」
「はぁ!?」
「斬られたところで、失血死もせぬしショック死もせぬ。
痛みも一定のレベルを超えると感じなくなるしの。
そういうわけで、斬られて死なねば吸血鬼の従者じゃ。」
その場合、もし仮に斬られて死ねば私はどうなるのですか?
死にますよね?
「…ま、冗談じゃ。
その証明は簡単じゃよ。
不老不死という以上、今後一切成長せぬ。
外見を成長したように”惑わす”ことは可能じゃがな。
であれば、5年後10年後に確かめれば良い。」
「残念なことにスー、あなたが私のように20代の体になることは無いの。
不老不死を”永遠の美”などと単純に割り切らない方がいいわ。」
キャティさんの目は、どこか寂しそうで。
「あなたが誰か男の方と恋仲になって、結ばれて、子を産んだとして。
その男の方も、子も、孫さえも、間違いなくあなたより先に死ぬ。
逝くのをただ見送るしかない。
そのことは忘れないで。」
「仮に従者が吸っても、その相手は不老不死にはならない。
それが出来るのは、唯一”真祖”であるお嬢様のみ。」
そういえばキャティさんは1000年前に生まれたと言っていた。
外見から推測すれば、アーシュさんに吸われたのは20代。
そこから延々と、友人知人を見送ってきたのだろう。
「我もそうじゃ。
童の曽祖父なぞ豪気で馬が合ったし、それを育て上げた乳母も気前が良かった。
この国が最も貧しかった頃じゃが、重鎮一同それを笑い飛ばしておった。
ま、どれもこれも逝ってしもうたがの。」
ため息ひとつ。
「…少々湿っぽくなったの、詫びよう。
そういうわけじゃ皆の衆。
これ以後スーを含め従者に刃を向ける者は、我に向けると同じじゃ。
覚悟せい。」
「は、ははぁ!」
国王陛下と背後の皆様が一斉に頭を下げる。
「童よ、ひとまずそなたの臣下であるスーは連れて行くぞ。
こやつは我の従者じゃからな。
その上でこやつがどう身を振るかは、改めてこやつ自身が決めることじゃ。
まぁ数日内に一度こちらへ戻すから安心せい。」
「希望であれば、将来的に何か役職を与えて重用することも…」
「過度の配慮は無用じゃ。
”相互に干渉せず”と言ったであろう。
極論、こやつを次期国王にせよなどと要求されれば困るであろ?
そういうことじゃ。
まぁ国王としての良心に従い、適度に見てくれれば良い。
フィッツ男爵家を取り潰すのならば、それは法によるものじゃから、存分にせい。」
アーシュさんが立ち上がる。
話すべきことは全て話したと言わんばかりに。
「あ、あの!
恐れながら、国王陛下に申し上げます!」
部屋の全員の視線を浴びながら。
「まだ実感が無いのですが。
しかし、たとえ吸血鬼の従者となったとしても。
私は陛下の臣下です。
どうか、それだけは…」
「うむ。
そなたが余の臣下であることは、この場にいる全員も証明しよう。」
陛下の言葉に、再び深々と頭を下げる。
「とはいえ、御家がお取り潰しになれば臣下では無くなりますが。」
「パティ、そういうことを言うものじゃありません。」
プイと横を向くパティさん。
「さて、では暇しよう。
改めて言うまでもないが、我らのことは他言無用じゃ。
スーのことが無ければ、そもそも次期国王や臣下どもに会うことも無かったからの。」
「心得ております。
実は”魔女の森”に、人間ではどうやっても勝てない吸血鬼が住んでいるなど…
余や側近が口外すれば無用な混乱を招きましょう。」
「分かっていれば良いよ。
では、の。」
「五月蠅い、少し『黙れ』。」
睨みつけるパティさんが一瞬で家族を沈黙させる。
「良いのか?
その方の家族であろう。」
「陛下。
貴族は、国民領民の納税によって生きる者。
その範を示すことなく悪事に手を染めたならば、その裁きを受けるのも必定。
しかし、しかしながら、家族です。
一思いに、安らかな処刑を。」
「…ま、阿呆ではないようで何よりじゃ。」
アーシュさんはニッコリと。
「もし家族だからと庇うようであれば、そなたを見限っておっただろう。」
「お嬢様。
あの美味な血を持つ者が、そんな愚かなわけないかと存じます。」
第一級殺人ともなれば、余程の事情があったとしても長期刑。
情状酌量の余地が一切ない上に、誘拐に監禁に詐欺。
最低でも死刑、酷ければ砂漠へ追放しての餓死刑だろう。
御家お取り潰しも免れそうにない。
使用人達の再就職は大丈夫だろうか。
「…そなたの貴族としての心意気、余も重々に留めおこう。
判決は様々な証拠証言を元に法廷が下すが、まぁ最低限の”恩情”は期待するが良い。」
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げる。
そして3人は近衛兵に連れ出された。
「それにしても、その…そこのスーは、本当に不老不死なのですか?」
「我を信じられぬか?」
「そういうわけでは、ないのですが…」
国王陛下が疑うのも当然。
私だって、自分が不老不死の吸血鬼だというのは信じられないし、実感もない。
「ふむ…
のうスー、ちょっとそこの近衛兵に斬られてみよ。」
「はぁ!?」
「斬られたところで、失血死もせぬしショック死もせぬ。
痛みも一定のレベルを超えると感じなくなるしの。
そういうわけで、斬られて死なねば吸血鬼の従者じゃ。」
その場合、もし仮に斬られて死ねば私はどうなるのですか?
死にますよね?
「…ま、冗談じゃ。
その証明は簡単じゃよ。
不老不死という以上、今後一切成長せぬ。
外見を成長したように”惑わす”ことは可能じゃがな。
であれば、5年後10年後に確かめれば良い。」
「残念なことにスー、あなたが私のように20代の体になることは無いの。
不老不死を”永遠の美”などと単純に割り切らない方がいいわ。」
キャティさんの目は、どこか寂しそうで。
「あなたが誰か男の方と恋仲になって、結ばれて、子を産んだとして。
その男の方も、子も、孫さえも、間違いなくあなたより先に死ぬ。
逝くのをただ見送るしかない。
そのことは忘れないで。」
「仮に従者が吸っても、その相手は不老不死にはならない。
それが出来るのは、唯一”真祖”であるお嬢様のみ。」
そういえばキャティさんは1000年前に生まれたと言っていた。
外見から推測すれば、アーシュさんに吸われたのは20代。
そこから延々と、友人知人を見送ってきたのだろう。
「我もそうじゃ。
童の曽祖父なぞ豪気で馬が合ったし、それを育て上げた乳母も気前が良かった。
この国が最も貧しかった頃じゃが、重鎮一同それを笑い飛ばしておった。
ま、どれもこれも逝ってしもうたがの。」
ため息ひとつ。
「…少々湿っぽくなったの、詫びよう。
そういうわけじゃ皆の衆。
これ以後スーを含め従者に刃を向ける者は、我に向けると同じじゃ。
覚悟せい。」
「は、ははぁ!」
国王陛下と背後の皆様が一斉に頭を下げる。
「童よ、ひとまずそなたの臣下であるスーは連れて行くぞ。
こやつは我の従者じゃからな。
その上でこやつがどう身を振るかは、改めてこやつ自身が決めることじゃ。
まぁ数日内に一度こちらへ戻すから安心せい。」
「希望であれば、将来的に何か役職を与えて重用することも…」
「過度の配慮は無用じゃ。
”相互に干渉せず”と言ったであろう。
極論、こやつを次期国王にせよなどと要求されれば困るであろ?
そういうことじゃ。
まぁ国王としての良心に従い、適度に見てくれれば良い。
フィッツ男爵家を取り潰すのならば、それは法によるものじゃから、存分にせい。」
アーシュさんが立ち上がる。
話すべきことは全て話したと言わんばかりに。
「あ、あの!
恐れながら、国王陛下に申し上げます!」
部屋の全員の視線を浴びながら。
「まだ実感が無いのですが。
しかし、たとえ吸血鬼の従者となったとしても。
私は陛下の臣下です。
どうか、それだけは…」
「うむ。
そなたが余の臣下であることは、この場にいる全員も証明しよう。」
陛下の言葉に、再び深々と頭を下げる。
「とはいえ、御家がお取り潰しになれば臣下では無くなりますが。」
「パティ、そういうことを言うものじゃありません。」
プイと横を向くパティさん。
「さて、では暇しよう。
改めて言うまでもないが、我らのことは他言無用じゃ。
スーのことが無ければ、そもそも次期国王や臣下どもに会うことも無かったからの。」
「心得ております。
実は”魔女の森”に、人間ではどうやっても勝てない吸血鬼が住んでいるなど…
余や側近が口外すれば無用な混乱を招きましょう。」
「分かっていれば良いよ。
では、の。」
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