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エピローグ
王国の
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「どうしてこうなった…」
御前会議の場で、国王は内心頭を抱えていた。
否、そもそもの原因は分かっている。
ここ十年ほど、筆頭公爵の勢いが増大していた。
公爵家だけならまだよいが、取り巻きの派閥貴族まで増長し始めたので、各地で軋轢を生じていた。
そのバランスを取るための、次席公爵家長女と第一王子の婚約だったのだ。
発表から数年間、しばらくはパワーバランスは保たれた。
が、年上の色香に惑わされたか…
第一王子が筆頭公爵家の次女に手を出して、一気に話がおかしくなった。
言うまでもなく筆頭公爵家は責任を求める。
第一王子は独断で次席公爵家長女との婚約破棄を口外する。
こうなると国王として困るのは、この次席公爵家の扱いである。
第一王子を諫めるのが筋だが、そうなると次女に手を出された筆頭公爵家が激怒する。
おまけに第一王子本人が筆頭公爵家側に立っている。
やむなく、次席公爵家長女の言動に不遜な一面があったのを口実に、理屈をこじつけて死地に放り込んだのだ。
ちょうど次席公爵が相次いで行政の失態を重ねていたことも背中を押すこととなった。
(心の中で儂も詫びた、手も合わせた。
なのに、何で13歳の男爵と17歳の家令と、400人の奴隷だけで、1万の帝国兵に勝てるんだよ…!)
しかも報告によると、戦闘というより一方的な蹂躙だったらしい。
帝国の死者は千人規模、負傷者は半数を超え、指揮官クラスの貴族・騎士はことごとく捕縛。
男爵側の奴隷については詳細な報告は無いが、全滅ではない模様だ。
しかも、形式上ではあるが生存者全員を奴隷商に売り、男爵には数万ゴールドの現金が渡ったらしい。
(その上、貴族に身代金5万ゴールド…
伯爵家の家禄すら買える額だぞ…)
御前会議が荒れているのも、この点であった。
「この度の、王国の危機を救った勝利!
自らの危険を顧みず、1万もの大軍に立ち向かった勇気!
なればこそ、ベガドリア男爵を子爵か伯爵に取り立ててしかるべきだ!」
声を上げるセージ公爵。
第一王子の身勝手のために、長女を死地に放り込まれたのだ。
ここぞとばかりに主張を述べる。
「待たれよ、次席公爵殿。
男爵はともかく、相続でもないのに13歳で子爵や伯爵など前例がない。」
もちろん第一王子は反対だ。
王国として表立ってベガドリア男爵を報奨できないのは、この点にある。
過度に褒めれば第一王子の名誉は地に落ちる、もちろん筆頭公爵も面白くない。
しかし報奨無しであれば「王国・王宮はどこまで薄情なのだ」と次席公爵派閥が爆発する。
そもそもベガドリア男爵として死地に送り込んだこと自体、言わば第一王子の身勝手からの無理強いだ。
こんな醜聞が国民に広まれば、王家そのものへの反感になる。
「そもそも帝国との最前線。
子爵や伯爵なら国庫からの交付金も増額されるではありませんか。」
「ならば、男爵は既に十分の現金を手にしていると聞き及んでいるが?」
「それは男爵の正当な報酬ではありませんか!」
これも面倒な問題である。
男爵が独断で帝国と交戦したのならともかく、王国と帝国の正式な戦争だ。
しかも王国からの助力を一切受けず、単独で勝利したのだ。
手にした奴隷の売却益も貴族の身代金も、王国は表向きは干渉できない。
さりとて一度煮え湯を飲ませた相手に再度手を出すと…
最悪、1万に圧勝した悪鬼のごとき400の兵を相手にすることになる。
どれだけの被害が及ぶか分からない。
ベガドリア男爵という存在は、今や、婚約破棄の時点など比較できないほど面倒な存在になった。
これをネタに筆頭公爵と次席公爵の冷戦が激しくなる、下手すると王国が二つに割れる。
国王は、胃が痛くなるのを感じた。
御前会議の場で、国王は内心頭を抱えていた。
否、そもそもの原因は分かっている。
ここ十年ほど、筆頭公爵の勢いが増大していた。
公爵家だけならまだよいが、取り巻きの派閥貴族まで増長し始めたので、各地で軋轢を生じていた。
そのバランスを取るための、次席公爵家長女と第一王子の婚約だったのだ。
発表から数年間、しばらくはパワーバランスは保たれた。
が、年上の色香に惑わされたか…
第一王子が筆頭公爵家の次女に手を出して、一気に話がおかしくなった。
言うまでもなく筆頭公爵家は責任を求める。
第一王子は独断で次席公爵家長女との婚約破棄を口外する。
こうなると国王として困るのは、この次席公爵家の扱いである。
第一王子を諫めるのが筋だが、そうなると次女に手を出された筆頭公爵家が激怒する。
おまけに第一王子本人が筆頭公爵家側に立っている。
やむなく、次席公爵家長女の言動に不遜な一面があったのを口実に、理屈をこじつけて死地に放り込んだのだ。
ちょうど次席公爵が相次いで行政の失態を重ねていたことも背中を押すこととなった。
(心の中で儂も詫びた、手も合わせた。
なのに、何で13歳の男爵と17歳の家令と、400人の奴隷だけで、1万の帝国兵に勝てるんだよ…!)
しかも報告によると、戦闘というより一方的な蹂躙だったらしい。
帝国の死者は千人規模、負傷者は半数を超え、指揮官クラスの貴族・騎士はことごとく捕縛。
男爵側の奴隷については詳細な報告は無いが、全滅ではない模様だ。
しかも、形式上ではあるが生存者全員を奴隷商に売り、男爵には数万ゴールドの現金が渡ったらしい。
(その上、貴族に身代金5万ゴールド…
伯爵家の家禄すら買える額だぞ…)
御前会議が荒れているのも、この点であった。
「この度の、王国の危機を救った勝利!
自らの危険を顧みず、1万もの大軍に立ち向かった勇気!
なればこそ、ベガドリア男爵を子爵か伯爵に取り立ててしかるべきだ!」
声を上げるセージ公爵。
第一王子の身勝手のために、長女を死地に放り込まれたのだ。
ここぞとばかりに主張を述べる。
「待たれよ、次席公爵殿。
男爵はともかく、相続でもないのに13歳で子爵や伯爵など前例がない。」
もちろん第一王子は反対だ。
王国として表立ってベガドリア男爵を報奨できないのは、この点にある。
過度に褒めれば第一王子の名誉は地に落ちる、もちろん筆頭公爵も面白くない。
しかし報奨無しであれば「王国・王宮はどこまで薄情なのだ」と次席公爵派閥が爆発する。
そもそもベガドリア男爵として死地に送り込んだこと自体、言わば第一王子の身勝手からの無理強いだ。
こんな醜聞が国民に広まれば、王家そのものへの反感になる。
「そもそも帝国との最前線。
子爵や伯爵なら国庫からの交付金も増額されるではありませんか。」
「ならば、男爵は既に十分の現金を手にしていると聞き及んでいるが?」
「それは男爵の正当な報酬ではありませんか!」
これも面倒な問題である。
男爵が独断で帝国と交戦したのならともかく、王国と帝国の正式な戦争だ。
しかも王国からの助力を一切受けず、単独で勝利したのだ。
手にした奴隷の売却益も貴族の身代金も、王国は表向きは干渉できない。
さりとて一度煮え湯を飲ませた相手に再度手を出すと…
最悪、1万に圧勝した悪鬼のごとき400の兵を相手にすることになる。
どれだけの被害が及ぶか分からない。
ベガドリア男爵という存在は、今や、婚約破棄の時点など比較できないほど面倒な存在になった。
これをネタに筆頭公爵と次席公爵の冷戦が激しくなる、下手すると王国が二つに割れる。
国王は、胃が痛くなるのを感じた。
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