どうしてこうなった

レイちゃん

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あとがきと、幕間で語られる胸くそ悪い追憶と

男爵の夢は叶わない

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執務室のドアがノックされる。

「入れ。」

私の声にメイド服姿の亜人が入ってくる。
第7支援小隊のヒューフォックス、ミューだ。。
兵士の中でも年長の部類に入る。

「お疲れ様です、男爵閣下。
 紅茶とお菓子をお持ち致しました。」

「ご苦労。
 書類を片付けるので、わき机に用意してくれ。」

「了解しました。」

ワゴンの取っ手を持ったまま、ミューが直立不動で待っている。
さすがに機密情報を含む場合もあるので、専門知識を習得していない者には触らせられない。

(正直、亜人の処遇も問題なんだよなぁ…)

順調なうちはいいが、ベガドリア男爵は不安定な存在だ。
さすがに王国から謀殺される可能性は、まぁ実家である次席公爵派閥がいる限り、低いだろう。
ただ、何かの理由で女神の実験が中止されれば、私という存在もどうなるか分からない。
それに、仮に私が戦死すれば、間違いなく奴隷へと逆戻りになる。

その際は、能力によって奴隷の価値が決まる。
体力があり、格闘技術による護衛能力があり、命令には基本忠実で、接客や書類整理も出来る。
少なくとも労働のみの奴隷のように、劣悪な環境で使い捨てにはならないだろう。

(さすがに、亜人への偏見が強い貴族社会じゃ無理だよなぁ…
 まぁアファームがいいようにするだろうなぁ。)

ミューの淹れた紅茶がいい香りを立てる。
私は左手に持った書類を見つめたままカップを取ろうと、右手をわき机へと伸ばした。






「ひゃンッ!?」

右手が触れたこともない何かに振れ、そして、聞いたこともない声に思わず右を見る。
そこには驚いた表情で、両手でお尻を抑えたミューが立っていて。
当然のごとく、ヒューフォックスのお尻には、尻尾があり。

「あ、あのだな…
 もしかして今…」

「はい、閣下が尾を…」

「すまん!」

即座に頭を下げる。
何か分からないが、とにかく謝る。

「いえ、とんでもないです…」

気まずい沈黙が流れる。

「ところで、ひとつ教えて欲しい。
 いや、その何だ、純粋な興味なのだが…
 ほら、私には尻尾が無いだろう。
 ミューの尻尾って、私の体に例えると何なのだ?」

焦る私に、ミューはしばらく考え込み。


「胸…でしょうか。」


瞬間、スッと顔から血の気が引くのが分かった。
1万の帝国兵を前にしても微塵も戸惑わなかった私に、冷汗が噴き出した気がした。

「もう夜も遅い。
 私も今日は終えるので、フィーも寝ろ。」

夕暮れ過ぎにも関わらずかなり苦しい言い訳をしながら、私は部屋からフィーを追い出した。






(嘘だろ嘘だろ嘘だろ!
 あの”キツネッポ”って胸と同義なのか!?)

仮眠用ベッドに身を投げ出し、枕を抱きしめて悶絶する

(いや、そりゃすっごい感触だったけど!
 すっごく気持ちよかったけど!)

一瞬だったが、あれほどの感触は記憶にない。
だが、よりにもよって、胸である。
ヒトで例えるとするならば…

『おはようフィーナ。
 今日もいい天気だな、胸揉ませろ。』
『ただいまより本日の教練を開始する!
 大隊長、股間を揉ませろ。』


どこの変態か。


フィーナを押し倒そうとした好色の筆頭公爵も、ここまでではないだろう。
と言うか、逮捕投獄した方がいいレベルだ。

(もういっそ手篭てごめにするか!?
 いや却下だ!)

脳裏に浮かんだ暴論を即座に否定する。
今この状況下で兵士たちの信頼を失えば、何もかもが破綻する。

(そもそも私は、凌辱属性なんか持ってねぇよ!)

かなり広いストライクゾーンを持ち、好みにデザインしたメイド服をケモミミに着せるほど、公私混同もする私だが。
グロやホラーと並んで凌辱は持ち合わせていない属性だ。
それにしても。


(私のモフモフパラダイスは、そこまで困難なのかぁ!?)


心の中で絶叫した。
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