どうしてこうなった 第2章もしくは幕間 ~婚約破棄された公爵令嬢の凱旋~

レイちゃん

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プロローグ

筆頭公爵 2

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「どう思う?」

バズル男爵が応接室を去った後、マティス公爵は座ったまま背後の家令に声をかける。

「嘘は言っていないかと。
 私の調査とも符合します。」

「閣下、恐れながら本職も同意見です。」

衛兵長も直立のまま応える。

「怯えすぎて、もう漏らしそうでしたよ。
 あれが演技なら、貴族など辞めて王立歌劇団に行った方がいい。」

その言葉に笑いが起きる。

「そうだな。
 あそこの小娘がベガドリアを家令で回せるのは、まぁ納得だな。
 商家への輿入れを考えていたのなら、おそらく数字や経営学は重点的に学ばせていたはずだ。」

「貴族社会も学ばせておくべきでしたな。
 筆頭公爵の顔を蹴り飛ばすのが、どれほどの不敬か。」

「全くだ…
 男爵家とはいえ、久しぶりに貴族家の娘を抱けると思っていたのにな。
 怒りのあまりベガドリアに左遷してしまったわ。」

「いいじゃないですか。
 その日のうちに、優秀な家令殿が娼館の姫君たちを呼び寄せたのですから。」

一人呼ぶだけで男爵家が傾くほどの美女を集めることくらい、筆頭公爵家では造作もないことである。

「と、なると…だ。」

「やはり、アラスタ嬢かと。」

家令がファイルを取り出す。
王家直轄の近衛師団が様々な報告をまとめた資料だ。
国王と一部の宰相しか見られないはずの軍事機密だが、公爵家の家令ともなれば簡単に入手できる。

「フィーナ嬢では無理でしょう。
 奴隷も、市場で売買されていた者のようです。
 神の加護も、ヒトはともかく亜人には確認されていませんしな。」

「加護、な…
 確かアラスタの加護は…」


「はい、『』というものです。
 若干9歳で、既に100リットル近い水を出せたとか。」


貴族家では神の加護を持つ者も複数知られている。
アラスタはセージ公爵家の実子だが、有能な加護を持つ子が市民の間に生まれれば、大金で養子縁組することも多い。

「それで戦争に勝てるか?
 やはり、直接確かめるしかないか…」

「では。」

「癪だが、折れるしかあるまい。
 男爵のままベガドリアへ押し込んでおく代わりに、陛下への目通りと報奨3万ゴールド。
 ま、こんなところだろう。」




北方の直轄地に、国王の意が伝えられた。
直ちに駐在武官がベガドリア男爵の領館へと向かう。
追放同然に北方へ送られたアラスタの凱旋が2か月後に決まった。
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