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王宮絵巻
王宮の宴 4
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「それで、火薬で…」
「えぇ。
帝国製の火薬で帝国兵が吹き飛ぶ様は、なかなか痛快でした。」
「しかし、その着火はどうしたのですか?
そんなタイミングで火薬を爆発させる方法など…」
子爵の言葉に、アラスタは少し目を伏せる。
「奴隷の亜人ですわ。
彼らは決死隊として、見事にその役目を果たしました。」
「まさか…奴隷に着火をさせた、と…」
「亜人の皆様は、この国への、国民への、何より国王陛下への忠義を示したのです。
その犠牲は無駄ではありません。
火薬を調合する時の事故も、火薬を設置する時の事故も。」
祈りを捧げるように手を組むアラスタ。
一方のマティス公爵派の面々は、ただただ沈黙。
「あなたは、亜人の奴隷を大量に買い付けて…囲っていると…」
「まぁ公爵閣下。
亜人ですよ?
奴隷商人に言えば、ダース単位で入手できますわ。
最も、奴隷と火薬の購入で頂いた支度金も尽きてしまいました。
帝国からのお金が無ければ、飢えていましたわ。」
こう言われると、帝国から巻き上げた数万ゴールドを責められない。
戦いに参加もしていないのに口を挟めば、恥をかくのは自分だ。
飢えて死ねなど、絶対に言えない。
「では閣下、お名残り惜しいのですが。
久しぶりに王宮へ参りまして、人に酔ってしまいました。
万が一にも無様な醜態を晒せば、お詫びのしようもございません。
ですので、陛下にご挨拶申し上げたら今宵は失礼させて頂きます。」
「もう帰られるのか。
しかし、セージ公爵はまだ…」
「私はセージ公爵家長女ではなく、ベガドリア男爵として参っております。
であれば、父とは別に動くのが”筋”でございます。
最も、王都で館どころか馬車すら持てない貧乏男爵ですので、貸し馬車で帰ることになります。
まぁさすがに両親が許しませんので、滞在先は実家ですけれど。
…国王陛下の招へいですので、ベガドリアからの旅費も滞在費も、王国にご負担頂き助かります。」
次席公爵家の人間の言葉では無い。
少なくとも、金は勝手に湧いてくると勘違いしている阿呆な貴族令嬢では。
「それでは閣下、失礼致します。」
「待たれよ男爵殿。
第一王子殿下にはご挨拶されないのか?」
「合わす顔がございませんわ。
だって、殿下が婚約を破棄されたのは、ひとえに私が未熟であったため。
将来は王妃として国家国民に尽くす器では無いと判断されたため。
恥ずかしくて、とても御前になど…恐れ多いことです…」
アラスタは深々と頭を下げ、サロンを辞した。
「おいマティス公爵!
アラスタが帰るぞ!」
「…無理ですよ、殿下。」
サロンに駆け込んできた第一王子に、マティス公爵は苦々しく応える。
アラスタの応対に、突っ込む隙が無い。
もし第一王子への不満を口にすればと思い、近くに待機頂いて、アラスタを挑発もしてみたのだが。
「どうにかして、不敬罪か国家反逆罪にでも出来ないのか!?」
「そんな方法があるのなら、ぜひご教授頂きたいものです。」
そんな恐怖政治を敷けば革命が起こる。
しかし、残念ながら王子はその辺を理解できないようだ。
アラスタをどうにかしろと喚いている。
(阿呆が…
いや、我が家が実権を握られるのなら、阿呆で十分構わんが…)
それにしても、完全にしてやられた。
恨みごとの一つでも出れば第一王子が存分に騒いだだろうし、悪口の一つでも出れば不敬罪にも問えた。
もちろんそれだけで投獄するのは無茶だが、少なくともセージ次席公爵には多少のダメージになる。
完全に空振りだ。
「あの小娘の説明、どう思う?」
「閣下からお見せ頂いた近衛師団の資料と、矛盾する点は無いかと。
戦闘後に戦地を検分した駐在武官も、火薬がさく裂したような跡を無数に見ております。
剣や弓で出来るようなものではないので、そこは不思議でした…」
騒ぐ王子の相手を子爵たちに任せ、マティス公爵は伯爵と小声で相談する。
「神の加護持ちとはいえ、それは単に水を出すとかいうものですよね?
戦争に使えるものではありません。」
「と言うか、あれは本当に13歳の小娘か?
第一王子と婚約していた頃は、あんな雰囲気じゃ無かったぞ。」
仮に自分の娘が、無理やりに放り込まれた死地から帰還すれば。
先ほどの謁見の際に不満をぶちまけていただろう。
(そうであれば、不敬罪で有罪に持っていけたのだがな…)
アラスタの後ろ姿を眺めながら、マティス公爵は説明すら出来ない大きな違和感を解消できずにいた。
「えぇ。
帝国製の火薬で帝国兵が吹き飛ぶ様は、なかなか痛快でした。」
「しかし、その着火はどうしたのですか?
そんなタイミングで火薬を爆発させる方法など…」
子爵の言葉に、アラスタは少し目を伏せる。
「奴隷の亜人ですわ。
彼らは決死隊として、見事にその役目を果たしました。」
「まさか…奴隷に着火をさせた、と…」
「亜人の皆様は、この国への、国民への、何より国王陛下への忠義を示したのです。
その犠牲は無駄ではありません。
火薬を調合する時の事故も、火薬を設置する時の事故も。」
祈りを捧げるように手を組むアラスタ。
一方のマティス公爵派の面々は、ただただ沈黙。
「あなたは、亜人の奴隷を大量に買い付けて…囲っていると…」
「まぁ公爵閣下。
亜人ですよ?
奴隷商人に言えば、ダース単位で入手できますわ。
最も、奴隷と火薬の購入で頂いた支度金も尽きてしまいました。
帝国からのお金が無ければ、飢えていましたわ。」
こう言われると、帝国から巻き上げた数万ゴールドを責められない。
戦いに参加もしていないのに口を挟めば、恥をかくのは自分だ。
飢えて死ねなど、絶対に言えない。
「では閣下、お名残り惜しいのですが。
久しぶりに王宮へ参りまして、人に酔ってしまいました。
万が一にも無様な醜態を晒せば、お詫びのしようもございません。
ですので、陛下にご挨拶申し上げたら今宵は失礼させて頂きます。」
「もう帰られるのか。
しかし、セージ公爵はまだ…」
「私はセージ公爵家長女ではなく、ベガドリア男爵として参っております。
であれば、父とは別に動くのが”筋”でございます。
最も、王都で館どころか馬車すら持てない貧乏男爵ですので、貸し馬車で帰ることになります。
まぁさすがに両親が許しませんので、滞在先は実家ですけれど。
…国王陛下の招へいですので、ベガドリアからの旅費も滞在費も、王国にご負担頂き助かります。」
次席公爵家の人間の言葉では無い。
少なくとも、金は勝手に湧いてくると勘違いしている阿呆な貴族令嬢では。
「それでは閣下、失礼致します。」
「待たれよ男爵殿。
第一王子殿下にはご挨拶されないのか?」
「合わす顔がございませんわ。
だって、殿下が婚約を破棄されたのは、ひとえに私が未熟であったため。
将来は王妃として国家国民に尽くす器では無いと判断されたため。
恥ずかしくて、とても御前になど…恐れ多いことです…」
アラスタは深々と頭を下げ、サロンを辞した。
「おいマティス公爵!
アラスタが帰るぞ!」
「…無理ですよ、殿下。」
サロンに駆け込んできた第一王子に、マティス公爵は苦々しく応える。
アラスタの応対に、突っ込む隙が無い。
もし第一王子への不満を口にすればと思い、近くに待機頂いて、アラスタを挑発もしてみたのだが。
「どうにかして、不敬罪か国家反逆罪にでも出来ないのか!?」
「そんな方法があるのなら、ぜひご教授頂きたいものです。」
そんな恐怖政治を敷けば革命が起こる。
しかし、残念ながら王子はその辺を理解できないようだ。
アラスタをどうにかしろと喚いている。
(阿呆が…
いや、我が家が実権を握られるのなら、阿呆で十分構わんが…)
それにしても、完全にしてやられた。
恨みごとの一つでも出れば第一王子が存分に騒いだだろうし、悪口の一つでも出れば不敬罪にも問えた。
もちろんそれだけで投獄するのは無茶だが、少なくともセージ次席公爵には多少のダメージになる。
完全に空振りだ。
「あの小娘の説明、どう思う?」
「閣下からお見せ頂いた近衛師団の資料と、矛盾する点は無いかと。
戦闘後に戦地を検分した駐在武官も、火薬がさく裂したような跡を無数に見ております。
剣や弓で出来るようなものではないので、そこは不思議でした…」
騒ぐ王子の相手を子爵たちに任せ、マティス公爵は伯爵と小声で相談する。
「神の加護持ちとはいえ、それは単に水を出すとかいうものですよね?
戦争に使えるものではありません。」
「と言うか、あれは本当に13歳の小娘か?
第一王子と婚約していた頃は、あんな雰囲気じゃ無かったぞ。」
仮に自分の娘が、無理やりに放り込まれた死地から帰還すれば。
先ほどの謁見の際に不満をぶちまけていただろう。
(そうであれば、不敬罪で有罪に持っていけたのだがな…)
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