どうしてこうなった 第2章もしくは幕間 ~婚約破棄された公爵令嬢の凱旋~

レイちゃん

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北方の地の、とある奇跡

この想いは永遠に 3

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幼い頃、私はよく母の尾に抱きついていた。
フワフワの尾に包まれると安心できた。
ある日、母に尋ねたことがある。
なぜ私は、気が付くと尾に抱きついているのか、と。
母は優しい表情で、私の頭を撫でながら答えてくれた。
ヒューフォックスの尾は、心なのだと。
抱きつくのは、その人のことが本当に好きなのだと。
抱きつかれるのは、本当に好かれているのだと。
だから、私に抱きつかれるのは、本当に嬉しいことなのだと。
それが嬉しくて、尾にしがみつく私に。
「それは自然なことなの。
 もう少し大きくなったら、キューにきっと抱きつかれるわ。
 その時は、お姉ちゃんなんだから、しっかりと応えてあげなさい。
 そして、友達とか、好きな人が出来たら、きっとミューも分かるわ。」
そう言ってくれた。


そんな私の目前で。
くすぐったいとキャーキャー言って逃げ回るキューを、アラスタ様は容赦なく部屋中を追い回し。
後ろから腰に抱きつくとベッドに押し倒し、尾を抱きしめて顔を埋める。

「閣下!
 くすぐったいです!
 あと恥ずかしいです!」

「我慢しなさい。
 ミューは大丈夫だったわよ。」

「いえ、閣下。
 私だって恥ずかしくないわけじゃありませんから…」

ただ幼少期からキューに抱きつかれて、慣れているだけだ。
それでも妹と閣下では、同じというわけにはいかない。
抱かれると思って入念にお風呂で全身洗っていて本当によかった。
これがもし教練直後の汗まみれ埃まみれの尾では、さすがに耐えられない。

「本当、すごくスベスベで気持ちいい…
 ミューに比べると若干ボリュームは足りないけど、毛の艶は負けず劣らず…」

「説明しないでください!比べないでください!」

私も妹も徒手格闘の教練は受けているので、その気になればアラスタ様を迅速かつ無傷で制圧できる。
しかし、それは野暮というものだ。
なのでアラスタ様の思うように応じていたのだが。

「耳!
 閣下、耳!」

仰向けにひっくり返された妹が、アラスタ様に両耳を愛撫されながら甘噛みされて悶絶している。
何か、もう普通に抱かれたり目の前でエッチされるより、アラスタ様の愛が激しすぎて恥ずかしい。




緊張の糸が切れたのか、それとも散々”もてあそばされた”疲れからか。
妹はアラスタ様のベッドで眠り始め。
そしてアラスタ様は、足を投げ出して座った私の膝を枕にして、左手で尾を抱いて右手でブラッシングしていた。

「あぁ、もう死んでもいい…」

「こんなことで死なないでください…」

満足いくまで尾を堪能できたのか、アラスタ様は満足そうな表情をしていた。

「それにしても…閣下って不思議な方ですね。」

「ん?」

「普通、尾なんかより体の方に手を出しませんか?
 閣下って生粋きっすいのヒト、ですよね。」

「こんな見事なキツネッポを目の前にしてか?
 いや、決してお前が魅力的ではないという意味ではないぞ。
 しかしだ…私はこの尻尾をモフれる方が、幸せだ。」

とかとかいうのは、まぁニュアンス的に何となく意味は分かる。
どこまで尾が好きなのだろう。

「しかし、今回は母との再会の御礼ということだったが…少し多すぎるぞ。
 これではもらい過ぎだ。」

「そんなことは…」

「尻尾どころか耳まで堪能させてもらったしな。」

「言わないでください…」

甘噛みどころか舌まで入れられた。
もう妹の前であられもない嬌声を散々上げさせられた。
正直、明日どんな顔で妹と顔を合わせればいいのか分からない。

「だがまぁ、だいたいの要求は通るぞ。
 せっかくだから、何か言ってみろ。」
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