8 / 10
物語は動き出す
しおりを挟む
さくさく、と草を踏みながら歩いていく。
隣にはルーンがいて、俺と同じように食べられるものを探しているけれど、もう数時間も経つのに何も見つけられていない。
「誰からも見捨てられた場所」、その脅威が今更牙をむいた。「氷時期」に入ってしまったのだ。
紀元前に建てられたような神殿で俺たちは生活していて、「誰からも見捨てられた場所」は神殿も含めた森のことを言う。
街に行くには、5時間ぐらいまっすぐ歩き続けなくてはならないぐらい森は広い。
今はまだ秋なのに、足元の草は全て凍り枯れてしまっていて、一日前までは緑だった光景がいつの間にか銀と茶色しか見当たらない。
ここには何故か、大型の動物が存在しない。鳥とか虫とかならいるけれど、ウサギやクマなんかは見たことがない。
「ルーン、どうすんだ?」
「とりあえず、二週間分くらいの食料ならあります。けれど、この前はこれが一年続いたので本格的にやばいかもしれません」
「街は?」
「氷時期になった時、結界が作られるのでこの森から出ることはできないんです」
「やばくね?」
「やばいです」
焦った顔でお互いを見た。
頼りにしていた果実なんかは全部枯れてしまっている。罠をしかけて捕えていた鳥も、今日は姿が見えない。蟻1匹すら見当たらない。
今まではどうしていたのかと聞くと、いつもは神殿の周りだけは果実がなっていたらしい。
今回は神殿まで氷に覆われてしまっている。今まではこんなこと無かったと、ルーンは焦ったように言った。
「にしても、なんで寒くないんだ?」
周りは氷だらけなのに、なぜか寒くない。冷たいとすら感じない。
風が一向に吹かないし、薄着でいても大丈夫なくらいでむしろ暖かい。
「分かりません…前は、ちゃんと寒かったんですが」
「考えられるとしたら…人数が増えたからとかか?」
俺がここに来たことで、「氷時期」のルールが変わったのかもしれない。
ちなみに、ルーンの今まで体験してきた「氷時期」についてはルーンが来る前から説明が神殿に書いてあったらしい。
すると、急に道が開けて空間ができた。何度も通った場所なのに、こんな空間は見たことがない。
そして、極めつけは…
「なんでだ…?」
「なんですか、これ?」
銀世界の中で目立っている赤色の鳥居に、ひたすら続く石階段、段差一つ一つの端に狐の置物があり、その更に先には祠があった。
異世界にあってはならない景色。
それは、まぎれもなく神社だった。
ちゃりん、とどこかで鈴がなる音がした。
それはまるで、関係性が止まってしまった俺たちの物語がーーー動きはじめる、合図だった。
隣にはルーンがいて、俺と同じように食べられるものを探しているけれど、もう数時間も経つのに何も見つけられていない。
「誰からも見捨てられた場所」、その脅威が今更牙をむいた。「氷時期」に入ってしまったのだ。
紀元前に建てられたような神殿で俺たちは生活していて、「誰からも見捨てられた場所」は神殿も含めた森のことを言う。
街に行くには、5時間ぐらいまっすぐ歩き続けなくてはならないぐらい森は広い。
今はまだ秋なのに、足元の草は全て凍り枯れてしまっていて、一日前までは緑だった光景がいつの間にか銀と茶色しか見当たらない。
ここには何故か、大型の動物が存在しない。鳥とか虫とかならいるけれど、ウサギやクマなんかは見たことがない。
「ルーン、どうすんだ?」
「とりあえず、二週間分くらいの食料ならあります。けれど、この前はこれが一年続いたので本格的にやばいかもしれません」
「街は?」
「氷時期になった時、結界が作られるのでこの森から出ることはできないんです」
「やばくね?」
「やばいです」
焦った顔でお互いを見た。
頼りにしていた果実なんかは全部枯れてしまっている。罠をしかけて捕えていた鳥も、今日は姿が見えない。蟻1匹すら見当たらない。
今まではどうしていたのかと聞くと、いつもは神殿の周りだけは果実がなっていたらしい。
今回は神殿まで氷に覆われてしまっている。今まではこんなこと無かったと、ルーンは焦ったように言った。
「にしても、なんで寒くないんだ?」
周りは氷だらけなのに、なぜか寒くない。冷たいとすら感じない。
風が一向に吹かないし、薄着でいても大丈夫なくらいでむしろ暖かい。
「分かりません…前は、ちゃんと寒かったんですが」
「考えられるとしたら…人数が増えたからとかか?」
俺がここに来たことで、「氷時期」のルールが変わったのかもしれない。
ちなみに、ルーンの今まで体験してきた「氷時期」についてはルーンが来る前から説明が神殿に書いてあったらしい。
すると、急に道が開けて空間ができた。何度も通った場所なのに、こんな空間は見たことがない。
そして、極めつけは…
「なんでだ…?」
「なんですか、これ?」
銀世界の中で目立っている赤色の鳥居に、ひたすら続く石階段、段差一つ一つの端に狐の置物があり、その更に先には祠があった。
異世界にあってはならない景色。
それは、まぎれもなく神社だった。
ちゃりん、とどこかで鈴がなる音がした。
それはまるで、関係性が止まってしまった俺たちの物語がーーー動きはじめる、合図だった。
0
あなたにおすすめの小説
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
君は神様。
志子
BL
全5~6話を予定。
異世界転生した俺、ことマルク・フランソンはフランソン男爵の三男として平々凡々として生きていた。そんなある日のこと。母さんが一人の子どもを家に連れてきた。名前はエルトリオン。彼はまるで体温を持った美しい人形のようだった。喋ることもなく、自分で進んで動くこともない。原因は母さんの父親だった。
美形×平凡のBL異世界
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
異世界転生して約2年目だけど、モテない人生に飽き飽きなのでもう魔術の勉強に勤しみます!〜男たらし主人公はイケメンに溺愛される〜
他人の友達
BL
※ ファンタジー(異世界転生)×BL
__俺は気付いてしまった…異世界に転生して2年も経っているのに、全くモテないという事に…
主人公の寺本 琥珀は全くモテない異世界人生に飽き飽きしていた。
そしてひとつの考えがその飽き飽きとした気持ちを一気に消し飛ばした。
《何かの勉強したら、『モテる』とか考えない様になるんじゃね?》
そして異世界の勉強といったら…と選んだ勉強は『魔術』。だが勉強するといっても何をすればいいのかも分からない琥珀はとりあえず魔術の参考書を買うことにするが…
お金がもう無かった。前までは転生した時に小さな巾着に入っていた銀貨を使っていたが、2年も銀貨を使うと流石に1、2枚あるか無いか位になってしまった。
そうして色々な仕事を探した時に見つけた仕事は本屋でのバイト。
その本屋の店長は金髪の超イケメン!琥珀にも優しく接してくれ、琥珀も店長に明るく接していたが、ある日、琥珀は店長の秘密を知ることになり…
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる