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思い出したくもないこと
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「××…お疲れ様。本当にありがとう。今日が今までで1番幸せな日だ」
「あぁ…良かった。良かった。生まれてきてくれて、私たちのところに来てくれて、ありがとう」
産まれたばかりの子の手を握り、その日両親となった二人が顔を見合せて泣きながら笑う。
「ふふ…××さん、もうこの子の名前は決めたの?」
「ああ。名前は───」
反転。
「何をしているんだ!」
「だって…だって…!この子が、いくらあやしても泣き止まなくって…ほら、私のことを責めるみたいに泣くのよ…!やっぱり、私たちじゃこの子を幸せになんて…!」
「この子はまだ産まれたばかりの乳幼児だ!ただ泣いているだけだ!赤ちゃんなら普通だろ!?」
「もういや…!もういやよ、私…!あなただって、全然私の事手伝わずに毎日毎日飲み会になんて行って!」
「俺が悪かった。悪かったよ。もう飲み会にも行かない。だから元に戻ってくれ、××…」
反転。
「××、もうお前とはやっていけない。離婚してくれ」
「この子はまだ5歳よ!?片親にするつもり!?」
「もううんざりなんだ!俺らはやっぱり、家族としてなんてやっていけない…!愛されたことの無い親二人で、どうやったら自分の子供を愛せるんだ!?」
「そんなの…あの時言ってくれたことは、何だったの!?」
「お互い憧れてしまったんだ。家族なんてものに…もうやめよう。これ以上一緒にいたって、俺たちに家族の愛なんて見つかりっこない!」
「お願いだから…!お願いだから、この子が成人するまでは離婚しないで…!この子を私と同じにしないで!」
「お前はいつもそればっかりだ…!この子のことだって、自分のためにしか見ていない!」
「そうよ!それの何が悪いの!だって…だって…!」
反転。
「ねえ、あのこね、××のママが言ってたんだけどね、かわいそうなこどもなんだって!」
「なんでー?」
「おやにあいされてないんだって!りこんすんぜんなんだって!」
「えーかわいそー」
反転。
「うわぁ××菌がついた!」
「こっち来んなー!」
「タッチ!」
「うわ、××菌がついちまった!きもちわりい!」
「ちょっと!そういうのかわいそうでしょ!」
「でた委員長!つまんね」
「……いつもごめんね」
「あいつらが悪いの!××は謝んなくていいの」
「委員長ってさ、もしかしてあいつのこと好きなの?」
「ええー趣味わる」
「ええっ、違うよ。可哀想なだけで、付き合うのはちょっと…ねえ?」
「良い子の委員長でもやっぱあいつは無理?」
「無理無理、だってなんか重そうじゃん?」
反転。
「僕は××の味方でいるよ!だからなんでも相談してね」
「…本当に?」
「もちろん!」
反転。
「お前、本当に…最低だ…!それを恩を仇で返すような真似をするなんて!」
「違う……」
「お前なんか……お前なんか、死んでしまえ!!」
反転。
「………俺が、生きてる意味って、あるのかな」
反転────。暗闇が目の前に広がって、そしてぼんやりと消えていき────。
──俺は今日、自殺する。
こう言うと心優しい人達は止めたり、励ましたりするのだろうけども、そんな言葉はもう頭に入ってこないと思う。
思えば悲惨な人生だった。
そんなポエミーなことを事実として言える日が来るなんて、この世界で産まれた時には全くこれっぽっちも思っていなかったけど。
二十歳の誕生日。
こんな日に飛び降り自殺なんて、何だか虚しくなるけど。
(もう少しだけ頑張る、なんて…無理なんだよ)
立ち入り禁止と書かれた貼り紙が貼ってある、鍵がかかってない屋上へと続くドアを開けた。
殴られた腹が痛む。傷だらけの手が、足が悲鳴をあげている。
俺の体が今すぐ病院へ向かえと訴えかけている。けれどもそんなのは無視して、歩き出す。
あと三歩だ。
それで俺は、楽になれる。こんなクソみたいな人生から解放される。
俺は、夏の太陽の、まるで責めるような日差しを浴びながら青い青い空へ。…一歩踏み出した。
───反転。
ゆっくり目を見開くと、そこは見知らぬ場所だった。
歴史の教科書とかに載ってる、紀元前の神殿みたいな、天井がない古い建物の中。
俺はそこで、仰向けになって倒れていた。
…空へと走り出したはずの俺の体は、冷たい石の上にあった。
(…ファッ?!?!)
そして目の前にいたのは銀髪青眼のイケメン。
彼の手に光が灯り、傷が消えてく。
無表情で…あれだ、ロボットみたいに淡々と仕事をこなしていくようなそんな感じだ。
10階建てのビルから落ちたのに、その時の傷は何一つ存在しなくて、元々あった傷は消えていく。
俺の頭は一つの、有り得ない答えを導き出した。
いやいやまさか。でも、この状況は…
「どうしてこんな所にいるんですか?…死にたいんですか?」
「そうだよ俺は死にたいんだ、なのに何でこんな時に限って異世界トリップしたんだよ!!」
ビルから飛び降りた瞬間に異世界に来てしまったのだと、漠然と理解した。
自殺しようとしていた俺を嘲笑うような、馬鹿みたいな状況。
ついに俺の頭はパンクして、気絶して、それから───────。
違う。その前に。
「本当に知りたいの?知らないでいた方が、ずっとずぅぅぅっと楽だよ?」
5歳の俺が気遣うように顔を覗き込んでくる。
「俺は…過去に向き合わなくちゃ」
時間が巻き戻っていった。
あと3歩で、空に落ちる。
「誰かが怒ってるよ。お前のせいだ、って。……本当に、本当に知りたいの?」
もちろん、と頷いた瞬間、背中を強い力で押された。青い青い空へと落ちていく。
ぐしゃり、と全身が潰れた。周りは、いつの間にか森に変わっている。ルーンと過ごしてきたいつもの場所。
「た、ただ、あい、あいされたか、った」
俺の声が、掠れながらそう呟く。命を落とすその瞬間、視界に銀髪と青眼が映る。
「くそ…どう足掻いたって、私じゃ叶えられない」
聞いたことがないような、全く別人のような声と顔で、ルーンは顔を歪めていた。
「あぁ…良かった。良かった。生まれてきてくれて、私たちのところに来てくれて、ありがとう」
産まれたばかりの子の手を握り、その日両親となった二人が顔を見合せて泣きながら笑う。
「ふふ…××さん、もうこの子の名前は決めたの?」
「ああ。名前は───」
反転。
「何をしているんだ!」
「だって…だって…!この子が、いくらあやしても泣き止まなくって…ほら、私のことを責めるみたいに泣くのよ…!やっぱり、私たちじゃこの子を幸せになんて…!」
「この子はまだ産まれたばかりの乳幼児だ!ただ泣いているだけだ!赤ちゃんなら普通だろ!?」
「もういや…!もういやよ、私…!あなただって、全然私の事手伝わずに毎日毎日飲み会になんて行って!」
「俺が悪かった。悪かったよ。もう飲み会にも行かない。だから元に戻ってくれ、××…」
反転。
「××、もうお前とはやっていけない。離婚してくれ」
「この子はまだ5歳よ!?片親にするつもり!?」
「もううんざりなんだ!俺らはやっぱり、家族としてなんてやっていけない…!愛されたことの無い親二人で、どうやったら自分の子供を愛せるんだ!?」
「そんなの…あの時言ってくれたことは、何だったの!?」
「お互い憧れてしまったんだ。家族なんてものに…もうやめよう。これ以上一緒にいたって、俺たちに家族の愛なんて見つかりっこない!」
「お願いだから…!お願いだから、この子が成人するまでは離婚しないで…!この子を私と同じにしないで!」
「お前はいつもそればっかりだ…!この子のことだって、自分のためにしか見ていない!」
「そうよ!それの何が悪いの!だって…だって…!」
反転。
「ねえ、あのこね、××のママが言ってたんだけどね、かわいそうなこどもなんだって!」
「なんでー?」
「おやにあいされてないんだって!りこんすんぜんなんだって!」
「えーかわいそー」
反転。
「うわぁ××菌がついた!」
「こっち来んなー!」
「タッチ!」
「うわ、××菌がついちまった!きもちわりい!」
「ちょっと!そういうのかわいそうでしょ!」
「でた委員長!つまんね」
「……いつもごめんね」
「あいつらが悪いの!××は謝んなくていいの」
「委員長ってさ、もしかしてあいつのこと好きなの?」
「ええー趣味わる」
「ええっ、違うよ。可哀想なだけで、付き合うのはちょっと…ねえ?」
「良い子の委員長でもやっぱあいつは無理?」
「無理無理、だってなんか重そうじゃん?」
反転。
「僕は××の味方でいるよ!だからなんでも相談してね」
「…本当に?」
「もちろん!」
反転。
「お前、本当に…最低だ…!それを恩を仇で返すような真似をするなんて!」
「違う……」
「お前なんか……お前なんか、死んでしまえ!!」
反転。
「………俺が、生きてる意味って、あるのかな」
反転────。暗闇が目の前に広がって、そしてぼんやりと消えていき────。
──俺は今日、自殺する。
こう言うと心優しい人達は止めたり、励ましたりするのだろうけども、そんな言葉はもう頭に入ってこないと思う。
思えば悲惨な人生だった。
そんなポエミーなことを事実として言える日が来るなんて、この世界で産まれた時には全くこれっぽっちも思っていなかったけど。
二十歳の誕生日。
こんな日に飛び降り自殺なんて、何だか虚しくなるけど。
(もう少しだけ頑張る、なんて…無理なんだよ)
立ち入り禁止と書かれた貼り紙が貼ってある、鍵がかかってない屋上へと続くドアを開けた。
殴られた腹が痛む。傷だらけの手が、足が悲鳴をあげている。
俺の体が今すぐ病院へ向かえと訴えかけている。けれどもそんなのは無視して、歩き出す。
あと三歩だ。
それで俺は、楽になれる。こんなクソみたいな人生から解放される。
俺は、夏の太陽の、まるで責めるような日差しを浴びながら青い青い空へ。…一歩踏み出した。
───反転。
ゆっくり目を見開くと、そこは見知らぬ場所だった。
歴史の教科書とかに載ってる、紀元前の神殿みたいな、天井がない古い建物の中。
俺はそこで、仰向けになって倒れていた。
…空へと走り出したはずの俺の体は、冷たい石の上にあった。
(…ファッ?!?!)
そして目の前にいたのは銀髪青眼のイケメン。
彼の手に光が灯り、傷が消えてく。
無表情で…あれだ、ロボットみたいに淡々と仕事をこなしていくようなそんな感じだ。
10階建てのビルから落ちたのに、その時の傷は何一つ存在しなくて、元々あった傷は消えていく。
俺の頭は一つの、有り得ない答えを導き出した。
いやいやまさか。でも、この状況は…
「どうしてこんな所にいるんですか?…死にたいんですか?」
「そうだよ俺は死にたいんだ、なのに何でこんな時に限って異世界トリップしたんだよ!!」
ビルから飛び降りた瞬間に異世界に来てしまったのだと、漠然と理解した。
自殺しようとしていた俺を嘲笑うような、馬鹿みたいな状況。
ついに俺の頭はパンクして、気絶して、それから───────。
違う。その前に。
「本当に知りたいの?知らないでいた方が、ずっとずぅぅぅっと楽だよ?」
5歳の俺が気遣うように顔を覗き込んでくる。
「俺は…過去に向き合わなくちゃ」
時間が巻き戻っていった。
あと3歩で、空に落ちる。
「誰かが怒ってるよ。お前のせいだ、って。……本当に、本当に知りたいの?」
もちろん、と頷いた瞬間、背中を強い力で押された。青い青い空へと落ちていく。
ぐしゃり、と全身が潰れた。周りは、いつの間にか森に変わっている。ルーンと過ごしてきたいつもの場所。
「た、ただ、あい、あいされたか、った」
俺の声が、掠れながらそう呟く。命を落とすその瞬間、視界に銀髪と青眼が映る。
「くそ…どう足掻いたって、私じゃ叶えられない」
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