メクレロ!

ふしかのとう

文字の大きさ
22 / 118
第二章 魔法使い

第8話

しおりを挟む

 「あら?どちらさま?」

 そう言う博士は笑顔、可愛い笑顔なんだが、言ってる事がおかしい。よもや俺のことを忘れちゃった訳じゃないだろう。これは怒ってるに違いない。

 でも何故だろう?会ってない一昨日から今日までで博士に俺がやったことといえば、手紙を飛ばしたくらいしか思い当たらない。その手紙だってちゃんと届いたのか判らないし、届いたにしても内容は特に問題は無い筈だ。

 「えっと、俺はタ…。」

 「俺?」

 「…僕はミック博士の研究室の研究生のタキです。」

 「ふぅん、タキ君ですか。なんとなくだけど、そのタキ君は、私に何か言うべきことがあると思うんだけど。」

 「すみませんでした。」

 「すみませんでした?何が?あなた何か悪い事でもしたの?」

 難問…やっぱり手紙の件だろうか?いやでもあれは博士にとって照れこそするかもしれんが、今までだって色々言ってきたし、怒られるようなもんじゃない…はっ!?まさか、ブルゼットのことか?

 ブルゼットからの手紙だと円満な感じだったけど、実はやきもちを焼いていたのに相手が16歳だから強くも出れず、拳を握り締めながら笑顔で応対したのかもしれん。可愛いなぁ。

 「あははブルゼットのことですか?博士もかわ…。」

 「何がおかしいの?違います。」

 「すみません。」

 違うのかよ。もうネタ切れだ。諦めて、手紙飛ばせたことの報告して喜ばせて、ついでに照れさせてうやむや作戦に切り替えよう。

 「あ、そういえば!一昨日、手紙飛ばせたんですよ!ちゃんと届きました?いやぁちょっと恥ずかしかったんですけどね、まいっかって。」

 「えぇしっかりと受け取ったわあなたが家でもちゃんと真面目に頑張ってたという結果が私の元に届いたというのはそうね私とっても嬉しいわ。」

 こっちが当たりだったか。

 「あの、何か手紙の内容に問題でも…?」

 「いいえ?交際関係にある訳じゃないとはいえ、男の子からあんなお手紙を貰えたのはとっても嬉しいわ。」

 「なんだそれなら…。」



 「飛ばした時間さえ間違えなければね。」



 すげぇ!こんな低い声でも可愛く思えるなんて、恋ってすげぇ!

 「でも俺…僕も、もし寝てたら悪いなって思っておやすみなさ…。」

 「一昨日はね、前にも話した魔法を守る会の会合があってね。その後で、この前の懇親会の時に声掛けてきた子と、他に仲の良い2人の4人で、昔から知ってるお店で飲んでたの。」

 旦那さんに報告しようかって言ってた人か。

 「それで、あなたのことを聞かれたりして話してた時に、ママが、そのお店のおかみさんを皆ママって呼んでるんだけど、ママがミコーディア・ミックさーんって呼んだの。いつもはミコちゃんて言うのにおかしいなと思ったら、にこにこしながらあなたからの手紙を持ってたの。」

 「え?博士のとこじゃなく?」

 「お店の窓が全部閉まってたの。ママが窓に何か当たった音に気付いて外を見に行ったら落ちてたんですって。」

 「まぁでも、所詮はおやすみなさいだし…。」

 「あのね?普通わざわざ恋人でもなんでもない人におやすみなさいなんて、そんなの飛ばす?お陰で友達皆して、健気ねとか、可愛いわねとか、すっごくからかわれたんだから。」

 おうふ。おやすみなさい程度でそれってことは…。

 「そんな風に、20年くらい恋話から遠ざかってたような子達が久しぶりの甘酸っぱい話にキャーキャー盛り上がってた中に追加の2通をママが持ってきたの。あんな中身の。もうママはおろか他の常連さん達まで盛り上がっちゃって大騒ぎよ…。」

 おおう…。

 「ママなんて、今日は私も飲む!皆奢りよ!とか叫んでお店は完全にパーティー。私はもう飲むしかないと思ってひたすらに飲んで、飲みまくって、酔っ払って、気付いたら昼過ぎで家のトイレ抱いて寝てて、昨日は一日中酷い二日酔い。全部あなたのせいよ。」

 「いや、飲み過ぎたのは俺のせいじゃ…。」

 「元はと言えばあなたの手紙のせいでしょうが!1通目は飛ばす練習だと思えば、百歩譲って許しても良いけど、あとの2通はいらなかったでしょうが!」

 「いや、返事がなかなか来ないから届かなかったのかなとか、折角書いたから捨てるのも勿体無いなって…。」

 「あんな雰囲気の中、返事なんか書ける訳無いでしょうが!それに、あなたがその返事にどんな返ししてくるかわかったもんじゃなかったし!大体、1通目のあとすぐに飛ばしてきたじゃないの!」

 「いやそれが、待ってると時間が凄く長く感じちゃって…。」

 「ああぁぁもう!…もうしばらくあのお店行けないぃ…。」

 がっくり項垂れる博士。これは俺が悪かった。もう全面的に悪い。

 「すみませんでした。その、どうお詫びして良いやら…。」

 「…禁止よ。」

 「禁止?」

 「ええ。もう、好きとかそういうの、言うの禁止。元々言い過ぎだったところに今回の件よ?ちゃんと駄目って言わなかった私も悪いけど、また今回みたいなことがあっては困ります。よって、もう禁止です。」

 「そんな!海で泳いでる人間に息継ぎするなって言うようなもんですよ!?」

 「大丈夫。そんなことでは人間死なないわ。」

 「いや死ぬでしょうよ!?いや待って下さいよ!死んじゃいますよ!」

 「…別に最近は言わなくても大丈夫だったじゃない。」

 「いやそれは…ん?気付いてたんですか?」

 「え?あ、いや別にその、毎日あったものが無くなったら、そりゃまぁ普通気付くわよね?」

 「ふぅん…それじゃ、やっぱり毎日あった方が良いんじゃないですか?」

 「…禁止です。」

 「明日までですか?」

 「ずっとです。」

 「明日からですか?」

 「今からです。」

 「では、とりあえず来週からにしてあげます。」

 「なんで上から。しかも延びてるし。禁止ったら禁止、今からと言ったら今からです。」

 「…じゃあ言いません。」

 「書くのも禁止です。」

 「はぁ!?良い加減にして下さいよ!俺が何をしたっていうんですか!?」

 「良い加減にして欲しいのはこっち!こっちの気も知らずに好きです好きですって、私はもう色々ぐちゃぐちゃなの!とりあえず、一度落ち着くまで禁止です。」

 「なんだ、一生じゃないのか。なら良いや。」

 「あと、明日からテスト明けまでの10日間、ここに来るのも禁止します。」

 「いやいやいや…いやいやいや何を仰るのかと思えば!いやいやいや!そんなこと出来る訳無いでしょう!?俺、博士に会う為に生きてるんですよ?俺に死ねって言うんですか!?」

 「明日からテスト明けまでは午後の選択講義はお休み。タキ君の研究室入りは選択講義扱い。よってあなたはお休み、立ち入り禁止です。」

 「勉強聞きに来るのは?」

 「他の講師の方に聞いて下さい。」

 「顔見に来るのは?」

 「禁止です。」

 「ああぁぁぁ…。」

 なんということだ。たった3通の手紙がこんなことになってしまうなんて…。


 コンコン。


 ん?誰か来た。これはもしや博士を諫めに来た博士の友達じゃなかろうか?タキ君も悪気は無かったんだし、許してあげて?みたいなみたいな!お迎えにあがらねば!

 「俺、出ます!」

 「え?ああうん、お願い。」


 ガチャリ。

 「はーい、どちらさ…。」

 「あの、こちらはミック博士の研究室で…タッ君!」


 いやいやいや!今じゃねぇだろ!?

 なんで、マキちゃんが、ここに、今、来るとか、もう何から何までおかしいだろ。


 「マキちゃん?どうしてここに?帰ったんじゃないの?」

 「帰ったわよ?帰ったんだけどおばあちゃんに、惚れた男見付けたって言うから忙しい週末に休ませたのに捕まえもせずにおめおめ帰って来たのか!それでもフリジールの女か!って怒られちゃって、今すぐまた行ってこい!って…馬車に乗り過ぎてお尻が痛いわ。」

 もう何がなんだか…。

 「それでとりあえず前は叶わなかった博士に会おうと思って学校に来て、その辺に居たおじさんに声掛けたら学長さんで、事情を話してミック博士に会いたいって言ったらここの場所を教えてくれたの。」

 学長、ゆる過ぎだろ。

 「お店で酔っ払いのおじさん相手にするの慣れてるのがこんなとこで役に立つとは思わなかったわ。」

 学長は酔っ払いのおじさんじゃねーだろ!

 「…で、博士は?」

 「タキ君?どなた?」

 おーうふ。

 「あなたが博士…あのっ!私、こちらにいるタキ君の友達のシン・オズの姉で、マキ・オズと言います。」

 割とまともな挨拶出来るんだな。

 「それで、今日伺ったのは…。」

 「シン君の姉ってことは、オズの家の!?」

 「え?ええ、実家はオズの家ですけど、ご存知…。」

 「きゃーホントにまだあるんだ!懐かしい!私、学生時代に通ってたの!」

 「あ、いつもご贔屓していただ…。」

 「私あのお店のローストが大好きで!きゃー!私、学生の頃に皆でどれくらい食べれるか競争して、3人前食べたことがあるの!」

 「あの…ミック博士…。」

 「もう!マキちゃん?私のことはミコちゃんって呼んで!おかみさんにはいつもそう呼ばれてて…おかみさんは元気?」

 「相変わらず超元気ですけ…。」

 「超元気!良かったぁ!私のこと覚えてるかなぁ?もう20年以上前だから忘れちゃってるかなぁ?忘れちゃってるよね?」

 「はぁ、でもおばあちゃんの口癖は、うちのおみ…。」

 「うちのお店に来た子は皆私の子供達よ!よね?うわーっ、ホントに懐かしい!なんだか久しぶりにフリジールに帰りたくなっちゃった!」

 あのマキちゃんがたじたじ、押されに押されて困ってる。そりゃそうか。この泥棒猫!とかのつもりで来てこんな感じで感激されてたら、やり難いことこの上無いだろう。


 コンコン。ガチャリ。

 「すみません。シン・オズと言います。こちらに…タキ、すまん。」

 「いやまぁ、マキちゃんは今、博士に懐かれて困ってるとこだわ。」

 「ふぅん。修羅場じゃないのな。」

 「タイミングが最低かと思ったら救世主だったかも知れない。」

 「良いのよタッ君。今晩泊めてくれたら私何でもする。そんな覚悟で来てるの。おばあちゃんにも、胸にひっ付けてるのはキャベツかい!?って言われてるし。」

 「姉ちゃん…博士から逃げてきたの?」

 ひそひそ。

 「あの人、お父さんがお母さんと出会う前の話とかしてるのに、どうやって泥棒猫の話出来るって言うのよ!」

 小声で怒鳴る器用なマキちゃん。
 
 懐かしさで興奮してる博士。

 俺はどうしたら良いんだ?

 なぁシン…教えてくれよ…。



 こう言うと、シンが死んだみたいだな。





 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

処理中です...