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第五章 四角三角
第12話
しおりを挟む「で?お前、今度は何をした訳?」
「とりあえず俺のせいみたいに言うな。あと、横に居るなら、お前も手伝え。」
俺は今、皿を洗ってる。シンは今日のローストが出切ったということで、横で手伝う振りして、さぼってる。
「しょうがねぇな。ほら、どんどん回せ…お前が悪い以外思い当たらないだろ?ブルゼットちゃんも急に来て働き出すし、その辺だろ?」
「話せば長くなるが。」
「皿ならまだたっぷりある。順を追って話すがよい。」
「パンツ見ようとしたんだ。」
「そこから始めて皿洗いまでちゃんと辿り着けるか心配。」
「マキちゃん抱き締めたら照れて皿洗いに行っちゃってな。その後ブルゼットにパンツ見せて貰おうと思ったんだけど、その前にリズィちゃんにばれてな。ただでさえ忙しいのにマキちゃんが皿洗い始めて半切れのところにそんなことがあって怒られて、マキちゃんの代わりに皿洗ってろってな。」
「全然すぐにパンツから皿洗いに到達したわ。しかもやっぱりお前のせいじゃねぇか。」
「褒めるな褒めるな。しかし、人の彼女にこんなこと言うのもなんだが、リズィちゃんってちっちゃいから、怒っててもぷりぷりしてるのが可愛いな。」
「そうだな、まぁ可愛い。でも、それならまだ本気じゃないな。あいつが本当に怒ると、無表情の無言になるんだぞ?」
「それはちょっと怖いな。そこまで怒らせたことあるの?」
「ああ。リズに内緒でプレゼント買おうと思ってリズの友達に相談したんだけど、相談してるとこを別の友達に見られて、その子が浮気じゃないかってリズに言っちゃったんだな。」
「別にそんなの、実はこうでした、で済みそうだけど。リズィちゃんだってそれくらい解るでしょ?」
「それが、俺がロクラーンに行く直前で、あいつもぴりぴりというか、不安だった時でな。それで悪いことってのは重なるもので、相談した子は俺のこと格好良くて良いねって褒めてたらしくて、俺もその子のこと、あの子可愛いよねって言ったことがあって…。」
「おーう。」
「しかも、その子はブルゼットちゃんみたいにスタイル良くて綺麗だったんだよ。」
「お前、その子を敢えて選んだろ?でなけりゃ何人か一緒に聞いた方が安心確実安全だろ?それをわざわざ1人選ぶとは最低だな。うりゃ!」
シンの鼻に泡付けてやった。
「あっ!お前にだけは言われたくないぞ?そりゃ!」
仕返しされた。
「お前、ちょっと目を離した隙にブルゼットちゃんまで増えてるじゃねぇか。あの子本当に可愛いよな。しかもやっぱりカンジの妹だけあって良い子だ。そのパンツ見ようとしたんだろ?お前は地獄に落ちろ!」
泡の塊投げて来やがった。
「ところで、どんなパンツか知りたくないかね?この目で見た訳じゃないが、噂だけは耳にしている。」
「お前どうしたんだ?こんな泡だらけで。拭いてやろう。」
「優しいな。お前も拭いてやろう。」
「それより…。」
「あんた達、やっぱりできてんの?」
・・・。
「酷い目にあったぜ。」
「うふふ、タキ君とシン君がいちゃいちゃしてるの、皆見てたからね。」
「いちゃいちゃしてないし!」
「でも、楽しそうに2人でお皿洗いながら、じゃれあって顔に泡付け合ってお互いの顔拭くとかホント、恋人みたいでしたよ?」
「リズに、盗られちゃうんじゃない?って言ったら、キスしますかね?って、何期待してんのよって思わず言っちゃったわ。」
「するか。」
「でもマキさんの怒り方、本当に凄かったなぁ。」
「あはは、ばちーんってね。タッ君のせいでオズ家は滅茶苦茶よ!って、いつ滅茶苦茶になったのよ?おっかしいんだから。」
「あれくらいで滅茶苦茶になっちゃうなんて…。」
「ブル違うのよ?前にちょっと色々あってね?蓋を開けてみれば違ったんだけど、その時の話なのよ。」
「何かあったんですか?」
「ミコが俺の裸を見たんだ。」
「み、見たけど、そうじゃないでしょ!?…前にマキとオリアと私の3人で買い物に行って帰ったら、タキ君とシン君が裸で陣取りゲームしてたのよ。それをまぁ、私達が勘違いしたんだけど…。」
「マキさんの、やっぱり!っていうのは、そういうことだったんだ…でも、タキさんとシンさんは本当に仲良いよね。前も、いっつもシンさんのことばっかり…あ。」
「別に気にしなくて良いのよ?それに、さっきどこまで聞いたか判らないけど、ブルのことも家族、妹みたいに思うから。」
「ミコさん…。」
「だから、ブルも私のこと、お姉ちゃんみたいに思ってくれたら、嬉しいな。どうかな?」
「お姉ちゃんか…でもそしたら、お姉ちゃんの恋人を好きになった悪い妹になっちゃいますけど…。」
「誰かを好きになることが悪いなんてことは無いの。それに、私達皆家族よ?家族のタキ君とブルが仲良くて、悪いことなんて無いわ。」
「…それじゃ私、タキさんに甘えたりしても良いんですか?」
「勿論。ブルなら、誰かさんみたいに相手に恋人が居ようと一切何も気にせずやりたい放題やるってことも無いだろうし。」
「誰だろう?」
「誰かしら?」
「ブルゼット。君のお姉ちゃんが何かよく分からないことを…。」
「やりたい放題は本当のことでしょ?」
「私も、デビイの散歩中とかにやりたい放題やられてた気がする!ミコさん聞いて?タキさんたら、デビイにやるみたいに私の髪の毛ぐしゃぐしゃにするんだから!折角綺麗にしたのに!」
「まぁ!タキ君ったら酷いのね!」
ブルゼットは味方してくれると思ってたのに!
「でも、デビイは喜んでたし、ブルゼットも喜んでたし。」
「よ、喜んでません!朝早く起きて、ママにからかわれて、頑張って梳かしたりして、可愛いって褒めてくれるかなって思ってたのにぐしゃぐしゃって、あり得ない!お詫びのちゅうを求めます!…ミコさん、良い?」
「ふふっ、良いわよ。」
…ミコがブルゼットに甘い。元々甘いけど、一層甘くなってる。妹とか欲しかったのかな?
「その後に可愛いくらいは言ってたと思うんだけど、仕方ないな…ほっぺただぞ?」
「うん!」
とりあえず俺が悪いらしいので、ミコがお姉ちゃんと決まったらぐいぐい甘えるようになったブルゼットの頬にキスをする…と、直前でブルゼットがこっち向いた。
「ぷわ、あぶなっ!ブルゼット!?」
「むぅ、惜しい。」
ぎりぎり唇の横だ。あっぶね。
「いやいや、惜しいじゃないから!」
「でも、ミコさんが家族だって言ってたよ?」
「こーら。ブル?流石にそれは駄目よ?」
「でも、ミコさんは私のことを妹って思うなら、タキさんはお兄ちゃんですよ?お兄ちゃんなら妹とキスしてもおかしくないでしょ?」
「そう…なのかな?いやいや、そんなことは無い、筈!駄目よ!」
「それじゃ腕を組むので我慢するから、良い?」
「それくらいならまぁ…。」
「やった!…タキさん?腕組んでも良い?」
「普通は組む前に聞くんだぞ?」
「駄目なの?」
「いやまぁ…駄目じゃないけど。」
「ふふーん。それでタキさん、どう?」
…当ててるやつの話だろう。これをすっとぼけて、どうって何が?などと返すと、ブルゼットの思う壺。からかわれて、ろくな事にならない。
…待てよ?キスを狙うような素振りを見せたのは、腕を組んでからかう為だったんじゃなかろうか?だとすると、俺とミコは今、いたずら好きな妹に上手いこと遊ばれてるのだ。
ミコを見るとにやりと笑って頷いた。ミコも気付いたらしい。そして、やれってことだな。よし。
「ブルゼットは前より大きくなった?」
「えぇっ!?そう来るとは…まぁ、あんまり変わってないと思うけど…それで?どう?」
「どうって言われても…そういえば、ブルゼットは上の下着もえっちなの?」
「えぇっ!?いや、それは…。」
「お兄ちゃんが妹の下着を確認するのは当たり前だよね?」
「そ、そんなの聞いたこと無いです!」
「キスしたり、おっぱい当てたりしても良いのに?」
「そ、それは違うの!妹だからって下着を見せるなんて…。」
慌てて少し離れるブルゼット。さよならおっぱい、また今度。
「なんだ、見せてくれないのか残念。」
「当たり前です!どこの世界に妹の下着を見る人が…。」
「あら?そういえば、私は妹の下着を見たことあるような?」
「だだだ駄目だよ言っちゃ…ってミコさん?」
にやにや笑うミコを見て、からかうつもりがからかわれてたことに気付いたらしい。
「もう!2人してもう!」
「うふふ、お兄ちゃんお姉ちゃんをからかうからよ。」
「そうそう。ほら、ブルゼットも手繋ぐ?」
「…でも、それだとタキさん真ん中で、なんか変じゃない?」
「良いのよ、どうせ私達変なんだし。」
「…そっか、ふふっ。そういえば、変でした。」
俺の手を取るブルゼット。やってみると確かにかなり変だ。だが…。
「変なものか。両手に花ですぞ?」
「あら?タキ君は両手じゃ足りないでしょ?」
「本当だ!それじゃ両足も?」
オイちゃんとマキちゃんが俺の両足にしがみ付いてるところを想像する。
「俺動けないじゃん。」
重さより多分、脚に当たる感触のせいだけど。
「うふふっ、タキさん頑張って!…あれ?でもそしたらデビイは?」
「デビイ?そうねデビイは…いやいや何言ってるのよタキ君!?」
「ミコはえっちだなぁ。」
「ち、違うから!タキ君たら一体何を言ってるんだか…。」
「え?なんでミコさんがえっちに…タタタタキさん!?」
「ブルゼットもえっちだ。」
「違うから!私は別にデビイとタキさんのそういうの想像した訳じゃないし!」
えっちなブルゼットは素直。
「両手にえっち。」
「タキ君がえっち。」
「タキさんがえっち。」
「えっちで結構。さ、早く帰って3人でお風呂入ろ?」
「入りません。」
「は、入ります。」
「ちょっ、えっ?ブル!?」
「それじゃブルゼットと2人か。なんか寂しいね。」
「駄目に決まってるでしょうが!ブルも何考えてんのよ!?」
「えっ?ミコさんもマキさんもオリアさんも皆、タキさんの裸見てるなら私もって。妹だし?」
「あんたの妹観どうなってんのよ?えっちな下着は見られちゃ駄目なのにお風呂は良いとか!」
「ミコは逆にパンツ見られても良いけど、お風呂は駄目だもんね。」
「あなたが勝手に捲ってるだけでしょうが!とにかく駄目よ!」
「それなら、タキさんと一緒に寝る。妹がお兄ちゃんと寝るだけ。絶対えっちな事しないから。それなら良いでしょ?」
「タキ君がえっちな事するから駄目です…あのねブル?あんたさっきから、絶対駄目って言われるって解ってる事を言って、仕方無く妥協した風に言ってなんとか通そうとしてるでしょ?そうはいかないんだからね!」
「むぅ、お姉ちゃんが手強い…それじゃ3人で寝るのは?」
「ふぅん…それならまぁ、良いかな?」
「やった!妹がうっかり抱き付いても、よくある事だからね!」
「うふふっ、タキ君?静かにね?」
「ミコこそ静かにね。」
「静かに?もしかしていびきとか?」
「いえ、私達えっちするから。」
「んなっ!?嘘でしょ!?…あっ!またそうやって私をからかってるだけでしょ?騙されませんよ?3人で寝るったら寝ます!」
どうあっても3人で寝ると宣言したブルゼット。だが、ミコお姉ちゃんがそんな妹を許す筈も無く。
「ブル?あなた、オズの家のローストが人気なのは知ってるわよね?」
「え?なんで急にロースト…まぁ、はい。今日何度も運びましたし、リズさんがこっそり端っこの部分を食べさせてくれたんですけど、すっごく美味しくって!人気なのも納得です。」
「そう、ローストはとっても美味しいの。だから、フリジールではちょっとだけ噂になっててね。」
「それはそうでしょうね。私も、ロクラーンに帰ったら友達とかに言っちゃうかも。すっごく美味しい料理食べたよって。」
「そうね。あなたはきっと褒めて、どのくらい美味しかったかを詳細に話すでしょう。柔らかくって、ジューシーで、いくらでも食べられちゃう。それを聞いた友達はどう思うかしら?」
「私も食べたい、でしょうね。」
「そうね。でも、なかなかフリジールに行く機会は無い。学生だからお金も余裕は無いし、時間だってなかなか取れないものね。」
「まぁ、次の長期休みまで待つか…でもお金が無いから卒業して働いてからとかになるのかな?」
「そうなるわね。でも、ブルがちょくちょく美味しかった、また食べたいと言い続ける。それを聞いた中の1人の、肉料理好きの友達は、食べたいけど食べられない気持ちを持ちながら過ごし、やっと卒業して働き始めた。それなのに、ある日その友達は捕まって無実の罪で牢屋に入れられてしまうの。」
「そんな、酷い!」
「酷いわね…でも、無実の罪はなかなか晴れず、牢屋から何年も出して貰えない。やっと無実の罪が証明されて釈放されても、その友達はやるせなさや悔しさ、色々な感情に押し潰されそうになっているの。それで、ブルがその友達を慰める為にせめて美味しいものでもと思って、よく話してたオズの家に連れて行くの。そして、ローストを注文すると…すみません今日は残り一食なんです。」
「勿論、友達に食べて貰います!」
「同じテーブルで、その友達が自分だけなんてって遠慮しても?」
「ええ。そこで私が食べたいなんて絶対に言いませんよ!当たり前でしょ?その友達が美味しく食べてくれる姿を見るだけで私も満足です。気兼ねなく食べて貰います!」
「そう?それじゃ今夜は3人で寝ましょうね。」
「……えぇっ!?いやいや、まさかそんな、えぇっ!?」
「おいおい、今夜は俺がロースト気分かい?」
「私がロースト大好きなの、知ってるでしょ?」
「…ふーん、ふーん。それなら、私は2番目だから…。」
「あら?ブルは、その友達が美味しそうに食べてるところで、ひと口頂戴って言うの?」
「…1人で寝ます。」
「あら?今夜は3人で寝るったら寝るってブルが言ったのよ?それにこの家ではブルは私と一緒に寝るって決めたでしょ?1人でなんて寝かせられないわ。」
「うぅ、もう降参です…タキさんと寝るとか言いませんから!ミコさんと2人で大人しく寝ますから!」
「うふふっ。ま、その代わりと言っちゃなんだけど、タキ君の秘密教えてあげるから、それで我慢なさい。」
「ほんと!?」
「ええ。きっと楽しんで貰えると思うわ。」
「ミコ?何話すのよ?」
「ないしょ。うふふっ…。」
ミコが話す俺の秘密って何だ?
俺の愛すべき魔族のタッ君だろうか?
えっち姉妹め。
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