メクレロ!

ふしかのとう

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第六章 ルタド

第4話

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 俺とミコはメラマさんの研究室で、ルタさんの話を聞いていた。どうにも、関係の修復は絶望的らしい。

 そして…。


 「ながみみかい?」

 「そう、長耳会。」

 「長耳会って、今もあるんだ?」

 「ああ。あいつはそれに所属してるようだ。」

 「ミコ?ながみみかいって?」

 「私は子供の頃に聞いたことあるくらいで良く知らないんだけど、エルフだけで構成されてる、色んな悪いこととかしてる集団…よね?」

 「まぁそんな感じみたいだな。それでエルフの村を追い出されて、こっちでやってたらしいんだけど、それがいつしかエルフこそが最も偉い生き物だみたいな、変な思想の集まりになってるみたいだ。」

 「そこにルタさんが?」

 「ああ。最近なんかおかしいし、丁度良いから聞いたんだよ。お前もしかして長耳会に入ってないか?って。うんとは言わなかったが、違うとも言わなかったから、まぁ間違いないだろう。最近は大人しいと言っても元々危ない奴等の集まりだからな。一応衛兵にも伝えて、しばらくあいつは城に出入り禁止だ。」

 「ふぅん。そもそもなんだけど、ルタはなんで城に居たの?」

 「あいつも医者としてそれなりに優秀でな。城に頼まれて調べたりすることがあるんだ。変な死体があった時とかに犯罪かどうかとかね。」

 「それなら出入り禁止だと、何かあった時にお城が困っちゃうんじゃないですか?」

 「別に優秀な医者なら他にも沢山居る。あいつは偶々その枠に空きがあった時に、俺が紹介しただけだ。仕事には真面目だし、城の方もエルフの方が長生きだから替えを探す手間が省けて良かったんだがなぁ。」

 「なんでそんなことになっちゃったのかしらね?本当に馬鹿だわ。」

 「さぁな。とにかく、あいつとはしばらく関わらない方が良い。」

 「しばらくなんて言わず、一生死ぬまで関わらなくて良いわ。」

 「あいつが長耳会を抜けて、ちゃんとタキ君に、ミコにも謝って、しっかり反省してるようならまた仲良くしても良いと思うぞ?」

 「それは…その時考えるわ。」

 「…ま、それはミコに任せるとしよう。それで話は変わるけど、研究所に入れて良かったな。おめでとう。」

 「ありがと。まぁ、なんかすんなり認めて貰えたわ。」

 「やっぱりタキ君のお陰かな?」

 「いや、リリーディアさんのお陰かと。」

 「どっちもでしょ?」

 「ふぅん。王様はリリーディアさんのことも知ってたんだ?」

 「まぁ、リリーディアも色んなとこ行ってるから顔が広いみたいね。」

 家庭教師の話は一応伏せておくミコ。

 「そっか。何にしても良かったな。それで?助手はタキ君にするのかい?」

 「助手?」

 「あれ?手引きは貰わなかった?」

 「ああ、これ?家に帰ってから読もうと思ってたけど…。」

 「なんだ、ここで手引きも読まずにずっといちゃいちゃしてたのか?関心せんなぁ。」

 にやにやするメラマさん。

 「なっ!?あ、あんなことがあったからタキ君が慰めてくれただけだから!」

 「キスしながら?」

 「えぇっ!?それも聞こえてたの!?」

 「いや、ミコの泣き声がなんか変だったからそうなのかなって思って、かまかけてみた。そしたら、今ミコが教えてくれた。」

 「くっ…。」

 殺せ、とまでは言わないものの、顔を真っ赤にして悔しがってる。恥ずかしがってるのか。

 「話を戻すと、研究者には助手を2名まで付けられる。助手にも一応給料が出る。詳しいことは手引きに書いてあるから読むと良い。それで、ミコはタキ君に頼んだのかなって。」

 「……。」

 顔を見合わす俺とミコ。

 「ええ、助手はタキ君よ。」

 「…うん?ああ、それなら後でタキ君も受付で手続きしてくと良い。すぐ受理される筈だ。」

 変なものを見たような顔をしてるメラマさん。

 「何よ?変な顔して。」

 「うん?いや、目を合わせるだけで良いんだと思って。」

 「え?まぁ、ずっと一緒にいるし?」

 「…言っておくが、個人研究室は恋人といちゃいちゃする場所じゃないからな?」

 「わ、わかってるわよ!」

 「助手といちゃいちゃするだけです。」

 「しないから!タキ君も変な事言わないで!」

 「まぁ良いさ。一応、扉は厚いとこにって言っておくから、程々にな。」

 「良かったね。」

 「しないってば!もう!」

 「じゃ薄いとこでも良いの?」

 「…厚いとこで、いちお…。」

 「ふふっ、伝えとくさ。それで、早速なんだけどミコの魔法紙について教えてくれないか?」

 「本当に早速ね…良いけど。」


 …ミコは俺に渡した魔法紙について話した。


 「…なるほど。解るような解らないような…今度実際作るところから見せてくれないか?タキ君が使うところも。」

 嫌です。メラマさんが幼馴染みだとしても、ミコのパンツは見せられません。ま、ミコも流石に駄目って言うよな。

 「解ったわ。」

 「ミコ!?メラマさんにミコのパンツ見せる気!?」

 「そんな訳ないでしょうが!」

 「パンツ?」

 「メラマは気にしないで!」

 「俺ホントに嫌なんだけど。」

 「しないっつってんでしょ!」

 「でもメラマさんが、俺が魔法使うとこ見たいって…。」

 「スカート捲る以外もあるでしょうが!」

 「え?無いよ?」

 「無いってこと無いでしょうが!手紙飛ばすとか…。」

 「手紙ならもうメラマさんの前で飛ばしたよ?他には?」

 「他には…あれ?」

 「ほらね?俺にはミコのスカートを捲ることしか出来ないんだ。」

 「な、なんてことなの…そんな下らない魔法しかやってないなんて!」

 「下らないなんてことないでしょ?俺がミコを想っての魔法なんだから。俺がミコのことを好きだから上手くいったんだ。違う?」

 「う…そ、それはそうかも知れないけど…。」

 「俺が使う魔法は俺の気持ちなんだ。それを下らないなんて…。」

 「あ、いや、ち、違うのよ?スカートを捲ることが下らないのであって、タキ君の気持ちはとっても嬉しい…。」

 「俺は好きな人のことは何でも知りたいんだ。でも、ミコは違うんだね…。」

 「ううん。そんなことない、そんなことないよ?私だって同じ。私だってタキ君のことは何でも知りたい。それは、私がタキ君のことを好きだから…。」

 「ミコ…。」

 「タキ君…。」

 ちゅ。

 「…うふふっ、もういっかい。ね?」

 「うぉっほん。」

 「メメメメラマ!?いつからそこに!?」

 「ずっと居ただろうが…まったく、なんつう声で甘えるんだよ。流石に気まずくなったぞ?」

 「あまっ…。」

 「タキ君?ミコはいつもこうなの?」

 「ええまぁ。」

 「ち、違うから!もう!タキ君のせいなんだからね!?」

 「嫌なの?」

 「えっ?いや別に嫌って訳じゃないけど…はっ!?またこの流れ!もう騙されないわよ!」

 「俺は別に騙してる訳じゃ…。」

 「いいえ!都合が悪くなるとあなたはいつもそうやってすぐ人を騙して、キスして誤魔化してるわ!」

 「すぐ騙されたり、キスで誤魔化されたり方も悪いと思うぞ?」

 「メラマ!あんた、私がキスひとつでふにゃふにゃのでれでれになって誤魔化されてても良いって言うの!?」

 「それで2人の仲が良いなら良いだろ?続きは家で好きなだけやってくれ。俺はもうお腹いっぱいだ。」

 「う…。」

 「それじゃとにかく、タキ君は何か別の魔法を使えば良いんだな?俺の方で必要な物は用意しとくから、そっちで別の魔法考えといてくれ…。」



 ・・・。



 「別の魔法かぁ…。」

 城からオズの家にブルゼットを迎えに行く途中である。少し時間は早いけど、家に帰るのも面倒なので直接行くことにした。混んでたら混んでたで何か考えれば良い。

 「私がそもそもそんなに得意じゃなかったから、別のって言われてもすぐには思い付かないわね。」

 「皆が使うようなので何か無いの?」

 「皆が使うのも手紙飛ばすくらいだもん。昔みたいに冒険したり魔法で戦ったりの時代は色々あったけど。」

 まぁそうか。シンだって火を点けるくらいしか出来ないって言ってたし。本当に必要だったり便利だったりするものだけが残ってるんだな。そう考えると、学長のやったこともそう悪い気がしなくなってくる。

 「それに、基本的にはどんな魔法でも原理は一緒なのよ?風の精霊を使って風を起こして貰う。それを強くして貰ったり、固めて貰ったりするだけ。」

 「固める?」

 「そう。手紙を飛ばすのは、手紙の周りを固めてるのよ。掴んでって言ったのは、その方が解り易いっていうか、リリーディアがそう説明してくれてたから…そういえば、家庭教師やってたのよね。」

 リリーディアさんは王様の元家庭教師。美人家庭教師を好きになっちゃったのは仕方ないだろう。響きがえっちだし。

 「ミコが教え方上手なのはリリーディアさんの血かもね。」

 「私は別に教え方とか解らないけど…。」

 そう言いながら、ちょっと照れてるミコ。

 「でもブルゼットが言ってたでしょ?ミコは教え方上手いって。いつか教師とかやってみたら?」

 「教師か…まぁ今は研究することの方が楽しいけど、いつか自分の結果に満足することがあったら、学校の教師もやってみても良いかもね。」

 ミコ先生か…ん?

 「教師やるなら女の子だけのとこじゃないと。」

 「なんで?」

 「こんな可愛い先生居たら、授業が耳に入らないでしょ?いつもクラスの成績が落ちて、ミコは退職させられちゃうよ。」

 「ふふっ、ありがと。でも、多分大丈夫よ?そう言うあなたは、講義は真面目にやってたじゃない。」

 「俺はほら、博士の研究手伝って俺無しじゃ居られない身体にする目的があったから。」

 「真面目な顔の裏でそんなこと考えてたなんて…でも、それならそういう生徒が沢山いれば…。」

 「駄目駄目。口説かれちゃうよ?」

 「ふふっ、大丈夫だってば。だって、私はその時はきっと、本物の人妻でしょ?違う?」

 「違わないけど、人妻でも気にしないってやつも居るかも?」

 俺みたいに。

 「誰かさんみたいにそんな非常識な人は、世界に1人で充分だわ。」

 「俺も、誰かさんみたいに非常識な人は1人で充分。」

 「…私のどこが非常識だって言うのよ?」

 「可愛いとこ。こんなに好きにさせといて!」

 「もう…。」

 真っ赤なジト目ミコ可愛い。

 「でも、あなたは1人って訳じゃないじゃない。別にそのことに文句を言う訳じゃないけど。」

 「いや、それは違うな。なんていうか、ミコは特別なんだよ。」

 「それは…素直に嬉しいですけど。」

 「例えば、マキちゃんやブルゼットは人間でしょ?先に行っちゃう。その時は悲しいけど、ミコとオイちゃんは居るよね?」

 「まぁ、うん。」

 「だけど、もし仮になんかの事故とかでミコが死んじゃったら、俺は即座に3人と別れるね。」

 「…そう簡単に別れてくれるとは思わないけどね。」

 「別れるよ。だって俺はミコを追い掛けるからね。」

 「それは駄目。追い返すからね?」

 「それで言う事聞く俺はミコを口説けたでしょうか?」

 「死んでからも口説こうって言うの?」

 「勿論。それこそ本当に、永遠に、だね。この指輪ってそうなんでしょ?」

 ツタの花言葉は、ずっと離さない、だよな?

 「永遠にって意味もあるけど、死んでも離さないっていうのもあった筈…そっちの意味になるとは。」

 「ふふっ、そんな訳で、末長く宜しくお願いします。死んでも諦めて下さい。」

 「ふふっ、どんな挨拶よ…まぁでもそれなら、こちらこそ末長く覚悟して下さい。」

 「覚悟?」

 「死んでも甘えるからね。」

 「どうぞどうぞ。死んでも甘やかすから。」

 「ふふっ…でも、偶には他の3人も可愛がってあげて下さいな?」

 「ん?それは…王妃様?」

 王様に、メイド長さんのことを。

 「ええ、似てるわよね。似てるというより、同じなのかしら?王様達と私達。」
 
 王妃様が、メイド長さんのことも偶には、って言ったのはきっと、愛されていて沢山可愛がって貰ってるから出てくる言葉だろう。ミコがその言葉を言うということは、ミコも今は満足してて…。
 
 「よし!それじゃあ同じってことで、マキちゃんとブルゼットにもこの薬を飲んで貰って、ミコにも後で…。」

 「そ、それは駄目よ!」

 「え?でも、王様達と同じって…。」

 「そういうことじゃないから!もう!本当は解ってるんでしょ?」

 「まぁ解ってるけど。」

 俺達はそんな薬いらない。

 そんな薬が無くてもいちゃいちゃ出来る。

 そして、そんな薬無しで普通にしたい。

 「それに、それはシン君にあげるんでしょ?」

 「うん。まぁ、シンはいらないって言うかもだけどね。」

 薬で酷い目に遭ってるからな。

 …まぁ?リズィちゃんは性欲の化身だから、これはこれとして欲しがるかもしれないし?

 「ま、その時はその時よ…着いたわ。」

 シンもリズィちゃんもいらないって言った時。

 その時は…。



 からん。

 「いらっ…リズ!お皿洗う人が来た!」


 マキちゃんに飲んで貰おう。




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