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第七章 降臨
第10話
しおりを挟む「シュドー?」
ルタのせいでエルフの村が滅ぼされそうになったのを、メラマがルタを殺すことで許して貰おうとしたところ、リリーディアが来てルタをとある魔族の人に15億ディミで売る事で解決したという話。
解決したことはまぁ良いけど、でも15億なんていう大金で買うという人の方に興味というか、不思議なので聞いてみたところ、お義母様の口から、シュドーという聞いたことの無い言葉が出て来た。
「ええ、衆道。ちょっと前にリリちゃんと遊んでた時に衆道を究めたいという私の友達を紹介したの。その時に彼が、小姓を探しているけど中々見付からないって言う話をしててね。それと、その人は身体が大きいから健康が心配だって言う話だったから、エルフの坊やならぴったりだと思ったの。」
きわめる?コショウ?スパイス?医者?
「あの、お義母様?私その、勉強不足ですみませんが、シュドーっていうのが解らなくて…。」
「あら?ミコーディアは衆道に興味があるの?」
シュドーが何なのか知りたいだけで、興味?
「興味とは違うと思うんですけど…きわめるってことは研究ってことですか?それとも鍛錬的なものなのか…。」
「ザラ?勿体ぶらずに教えてよ。秘密にされたら気になっちゃうじゃん。」
「別に勿体振る訳じゃ無いわ。衆道っていうのはね…。」
シュドーとは?
「男が男とえっちするのよ。」
「えぇっ!?」私。
「えぇっ!?」マキ。
「えぇっ!?」ブル。
「ほう?」オリア。
オリアだけ反応が違う。流石ね。
でも、そうなるとルタは…。
「ルタはシュドーの人に買われたんですよね?」
「ええ。」
「…そういう目的ってことですか?」
「ええ。」
「それはルタも了解してるんですか?」
「了解なんて要らないわ、売られるんだから。あとは、リリちゃんが伝えるかどうかだけど、多分リリちゃんも言わないわね。着いてからのお楽しみ、ってとこよ。」
リリちゃん…リリーディアよね?
いつの間にそんなに仲良くなったんだろう?
でも昔会ったことあるって仰ってたし…。
「お義母様?リリーディアとは昔からの仲良いんですか?」
「…そうね。昔は、前もデンワで言ったと思うけど、リリちゃんが冒険者だった頃にちょっとだけ話したことがある程度ね。その頃はまだ普通に、人と会ったら記憶を消してたから、リリちゃんは私の顔とかは覚えてない筈よ。仲良くなったのは、最近。」
…なんだろう?
お義母様がほんの少しだけ目線を逸らした様な…気のせいかな?
「そうなんですか…でもそういえば、何で記憶を消してたんですか?確か、王様の所でも記憶を消してらしたみたいですけど…。」
「覚えられてはいけないからよ。」
「え?」
覚えられてはいけない?って魔族だからってこと?でも、それならチウンさんとか、他の魔族の人も同じよね?
「でも、私が会ってるザラは別にそんなことしなかったでしょ?私はちゃんと覚えてるもん。」
オリアも知らないみたい。私も消されてる訳じゃないし、マキだってブルだってそうな筈。何でなのかしら?
「うーん…内緒。」
えぇ~?
「ちょっとザラ!?ここまで話聞いたら知りたくなっちゃうじゃん!」
「衆道のことは教えたじゃない?」
「シュドー…ちなみになんだけど、あのエルフはどうなっちゃうの?」
「その人、身体がこーんなに大きいから、最初は奥歯ががたがた言っちゃうかも知れないけど、じきに慣れるらしいって話よ?」
お義母様が手を目一杯伸ばしてその人の身体の大きさを表現する。それはなんだか子供っぽい仕草で、カワイイ。
でも奥歯ががたがた言うなんて、純粋に怖い。
「…でもザラさん?私友達から聞いたことがあるんですけど、身体の大きさには必ずしも比例しないって…。」
ブルはなんでも知ってる。でも、もう負けてらんないわ。今度その友達も紹介して貰えば…でも皆十代なのよね…。
「そうなの?」
「えぇっ!?いや、まぁ、そういう話を聞いたってだけで、実際には見た事無いですから、よくは知らないんですけど…。」
「ちなみにタキはどうだった?」
「え、えぇっ!?し、知りませんよまだ見た事無いし!」
「あら?ミコーディアと一緒に見たのでは無くて?」
「えぇっ!?」
飛び火した。てかまだ見てないわよ。
…まだ。
「み、ミコさんと?」
「ほら、朝にタキの部屋に行って2人とも見たじゃない?どうだった?マキも聞きたいでしょ?」
ああ、あの時の…でもあれは本気って感じじゃなかった。だから、私も聞いておきたい所存。
「はい!あれ?オリアは良いの?」
「オリアは知ってるものね?あ、知ってるのはオリアの太ももか。」
「ザザザザラ!?」
「太もも?」
太もも?
「オリア?タッ君の、太ももで何したの?」
「な、何もしてないよ!?ザラも変なこと言わないで!?」
「……。」
お義母様が無言。
やっぱりタキ君と親子。
「何か言ってよ!私の太ももが何かしたみたいになっちゃうじゃん!」
「それじゃ、オリアも全然知らないのね?」
「うん知らないよ。」
しれっと言う感じが怪しいオリア。
「まぁしょうがないかしら?まだあの時のタキは完全じゃなかったものね。」
「えっ?あれでまだ完全じゃないの?」
あれ?
「オリア?あれって…。」
「あ…いや、今はそれどころじゃないよミコちゃん!ザラ!?あれで完全じゃないってどういうこと!?まさかあれから更に…。」
そんなに凄いの!?
「知らないわ。ちょっと、かまを掛けただけよ?」
「ほっ…。」
「ほっ、じゃないわよ。オリア?あんたタッ君のタッ君がどんなだったか、やっぱり知ってるんじゃないの。」
マキも、タッ君じゃないっての。
「ご、ごめん。つい独占欲が…。」
独占って、どうせいずれは皆知ることになるのに。
「で?」
「うん?」
「うん?じゃないわよ。タッ君のタッ君はどんなだった訳?あんた1人ずるいわよ。それは共有すべき情報だわ。ねぇミコ?」
「そうね、私も一応知っておきたいかな?」
聞かなくても、タキ君の記憶が戻ったらすぐに…でも、ある程度知っておけば覚悟が出来るってものだし?
「わ、私も脚に当たっただけで見た訳じゃないから!ただ…。」
…ごくり。
「ごくり。」「ごくり。」「ごくり。」
マキとブルは解るけど、お義母様?
そして溜めるだけ溜めてオリアが言った。
「なんかズッキーニを好きになりそう。」
なんですって?
「オオオオリア?まさかタッ君のタッ君はズッ…。」
「言っちゃ駄目!言ったら、好きなのに食べられなくなるじゃん!」
「で、でもでも、ズッキーニにも大小ありますよね?」
「…縦切りしてソテーで食べるやつだよ。」
ソテーか。それならズッキーニとしてはぎりぎり小さめだけど…。
「モーグとタキが似ているのは、顔だけじゃないのね。」
お義母様…。
「ザラ?モーグもその、アレはあれだったの?」
オリアが聞く。
「うーん…内緒。」
えぇ~?
「えー?良いじゃん、教えてよ!」
「良いじゃない、どうせそのうち串刺しに…口が滑ったわ。」
す、滑っちゃいけない言葉が…。
「く、串刺し?」
「オリア危なかったわね?危うくタッ君に串刺しにされるとこだったんだから、やっぱり止められて良かったんじゃない?」
「わ、私はまだ学校卒業してないからまだ串刺しは大丈夫です!」
「あらあら、皆だらしが無いわね?良いわ、私が替わりに…。」
それは駄目!
「私はいけます!」
「ミコ?」
「ミコちゃん?」
「ミコさん?」
「私、串刺しでも何でも、タキ君のことを受け入れます!だからお義母様はちょっと待って下さい!」
「それが聞きたかった。」
「え?」
「ああ、なんでも無いのよ?それで?ミコーディアがやきとりになるって言うなら止めないけど、でもそれならその前にタキの記憶を戻さなきゃいけないのでは無くて?」
やきとりじゃないけど…そうだった。
「タキ君を元に戻す方法を教えて貰えますか?」
「でも、確実では無いのよ?」
確実では無い、でも絶対に無理っていう訳でもないなら、取るべき行動はひとつ。
「それでも、可能性があるなら、私は、私達は何でもします。ね、皆?」
「ええ。私も、タッ君の為なら何でも出来るわ。」
「私も、タキちゃんを戻したい。治して貰ったお礼をちゃんと言いたいし。」
「私も、タキさんを元に戻したいです。きっと、デビイもそう言うと思います。」
デビイはここには居ないけどブルの言う通り、絶対何でもするって言ってくれる筈。
「解ったわ。それじゃ、少し昔話をしましょう。」
むかしばなし?
記憶を戻すのは昔の儀式か何かなのかしら?
とにかく、お義母様は語り始めた。
ーー昔昔、魔女が女の子を眠ったままにする呪いを掛けました。その女の子が本当に愛している男の子がキスをすると目が覚めました。めでたしめでたし…。
本当に少しだった。
「…と、いう訳なのよ。」
「ザラ?面倒臭くなっちゃったのはともかく、要はタキちゃんが本当に愛してる人がキスすれば良いってことでしょ?」
「ええ、そうよ。」
タキ君が本当に愛してる人、か…。
「ふぅん、それじゃミコちゃんで良いじゃん。ねぇ?」
「まぁちょっと悔しいけど、ミコよね。」
「ミコさんがキスすれば良いんですよね?」
「そうね。タキが本当に、本当にミコーディアを愛していたなら、だけど。」
…そうなのだ。
タキ君は、私のことを好きって言ってくれてた。何度も聞いたこと。でも、もし私のキスで元に戻らなかったら…。
「もしミコーディアのキスで起きなかったら、あなた達3人の誰かなのかしら?それともデビイかしら?それとも、もしかして私かも?」
その可能性も全然ある。マキか、オリアか、ブルか、デビイか、お義母様か…もしそれでも駄目ならもう打つ手は無いってこと?それとも、私達の知らない誰か女の子とか…まさかシン君じゃないわよね?
「ミコ?どうしたの?」
「マキ…私怖い。もし、タキ君が私のキスで元に戻らなかったらって考えたら…。」
「ふぅん…ミコ?」
「何?」
「甘ったれるんじゃないわよ!」
え?
「ミコ?あんたは、タッ君に愛されてるかどうかを知るのが怖いからって、タッ君の記憶を戻すことから逃げるわけ?ふざけんじゃないわよ。あんたがそんなんだったら、私がタッ君にキスする…これは多分、駄目だと思う。だけどね?私は、私がタッ君の記憶を元に戻してあげたいって思う気持ちに嘘は吐きたくない。例え駄目でも、タッ君が私のことを本当に愛してるんじゃなくても、私がタッ君を好きな気持ちは本当だから!」
そっか…そうだ。これは、私が愛されてるかどうかなんて関係無いんだ。
「マキ、ありがと。私に行かせて貰うわ。勿論、駄目だった時はマキやオリア、ブルもデビイも、そしてお義母様にも、最悪シン君にもお願いする。でも、とにかく1番は私。さっきまでの私は、嘘の私なの。そして、私は絶対にタキ君の記憶が戻してみせるわ!」
「ミコ!」
マキと抱き合う。
「あんたが駄目だったら、私が次に行く。もし私で大丈夫だったら、ええ!ミコは2番にしてあげる!」
「あんたの出番は無いわ!だけど私の次に串刺しになりなさい!」
「ミコ!」
「マキ!」
「あのふたりの盛り上がり方、おかしくないですか?」
「最悪シン君って、ミコちゃん何考えてんのよ。」
「うふふ、うふふのふ…あら?」
ー俺は、母さん!?のこと、好きだよ?俺は、母さん!?のこと…。
「た、タキちゃん?どこに…。」
ーもしもし私?うん、ええ、わかったわ、おつかれさま……。
長方形の板を耳に付けて…黒デンワ?
お義母様はそれを帯に挟むと私の方を見た。
「ミコーディア。」
え?
「はい。」
「タキは今、記憶が戻らなかった時の為に私が用意した家に居るわ。でも、チウンがタキの記憶を戻す為の魔法を掛けて眠っているの。タキは、あなたがキスをして記憶が戻れば、目が覚める。1日…明日のこの時間までに兆候が無ければ、マキ、オリア、ブルゼット、デビイを行かせるわ。この意味、解るわよね?」
私じゃ駄目だということ…。
私は1番の資格が無いということ…。
「はい。」
「それじゃ、外に馬車を用意してあるわ。行きなさい。」
「はい…皆、行ってくるね。もし…やっぱりやめとく。」
「ミコちゃん…早まっちゃ駄目だよ?」
「ミコさんは大丈夫です!乙女の勘ですけど。」
「オリアったら、大丈夫よ…ブルの乙女の勘なら、心強いわね。マキ…行ってきます。」
「行ってらっしゃい…行ってらっしゃいミコ。」
「うん。」
マキ。オリア。ブル。皆ありがとう。
タキ君、待っててね?
もし駄目でも、1日あるわ。
1日たっぷり、愛を込めたキスをして、タキ君を骨抜きにしてあげる。
でも…。
神様、ちょっとだけ力を貸して下さい。
なんてね。
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