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第七章 降臨
第14話
しおりを挟む「ザラ様がえっちに興味を持たれたんだ。」
「それが何故悪夢に?」
「出会った全ての女を徹底的に可愛がることで、女達がすっかりザラ様のものになってしまったんだ。」
「女なんですか?男ではなく?」
えっちなら男じゃないの?
「ああ。ザラ様はまず、私が勝ち進むうちに、何故子供を授かる為の行為なのに恥じることがあるのか?又、ひとりで練習するよりも皆ですれば良いのに何故そうしないのか?と不思議に思ったらしい。」
恥ずかしいのは、子作りじゃない、やらしいことをしてる自覚があるからだ。ひとりでするのは、その方が何かと都合が良いからだ。
何の都合?とリズに真顔で聞かれた時は、何も答えられなかったけれども、都合があるったらあるのである。リズにもそういう都合があるだろうが。
「そこでザラ様は周りの女達から聞いたり、私の書いた記録の本を読んだりして研究した結果、どうやら子作りとえっちが違うことを知り、そしてえっちの時には男よりも女の方が可愛いと思ったんだそうだ。」
えっちの研究。
「でも、それが悪夢なんですか?」
「ザラ様は女達を口説き回るし、女達がザラ様にすっかり夢中になって、男なんか相手してくれなくなっちゃったんだ。」
おうふ、それは悪夢かもしれない。
「でも、恋人がいる女の子も居たのでは?」
「恋人が居ても関係無しで口説き落として回ったんだ。」
「でも、それなら恋人の方がザラさんに会わせないようにするとかで対処出来そうですけど?」
「勝負があるから、その恋人の方も防ぎようが無かったんだ。私とその恋人が勝負してる隙に口説き落としたり、負けて班に加わって行動を共にしてる時にいつの間にか落としてた。あれは最早、ひとつの芸だったよ。」
口説き芸。タキが色々口説き落としてたのは母ちゃん譲りだったのか。
「そしてトッコウで1番の班になった時にはすっかり男と女に分かれていて、しかも女の方は男を徹底的に近寄らせないようになっていた。」
子供の頃の学校でそういうことになったことはあるけど、大人になってからだときついな。今いきなりリズがそういう風になったらキスもえっちも出来やしない訳で。
「我々はやっぱり女の身体に触れたいから機嫌を取ったり謝ったり宥めたりしてみたんだが、全然取り合って貰えない。決まりがあるから無理矢理って訳にもいかないし、なす術もなく悶々と過ごしていた。」
「ザラさんはどうしてたんですか?皆を幸せにする話はどこに?」
「その頃から姿が見えなくて、話す機会も無かったからどこで何をしているのか、何を考えているのか分からなかった。女達の記録を見ても、ザラ様の関係してそうな部分が無かったんだ。だが、色々皆で探ったり調べていたら、どうやらザラ様は夜になると若い女達と集まっていることが分かった。」
爛れた匂いがぷんぷんしてきた。
「そこで、我々の中で気配を消して探ることに長けた1人の男を送り込み、その記録を読む事で皆で何が起こっているのかを調べることにした。その時の男の記録がこれだ。」
ーー男は塀に囲まれた、女達の集まる建物に侵入した。そして天井裏を進み、女の悩ましげな声が聞こえる部屋を覗くと、多くの裸の女達が見えた。そしてその中心には1人の裸の女が座っていて、もう1人の裸の女がその側に立っていた。立っているのはザラ様だ。そして、ザラ様の背中には純白の大きな翼があった。ザラ様は翼から抜き取ったであろう1本の羽根で座っている女の耳や首筋を撫でながら、キスしたり、耳元で話し掛けたりしている。「あっ!」男は驚きの余り声が漏れ、天井から落ちてしまった。そして、女達に捕まった。ザラ様が近付いて来て、男の耳元で言った。「見たわね?でも大丈夫よ?あなたも可愛がってあげる。あと、そっちの皆もね?」そう言うと…。
「…と、ここで男の記録が取れなくなった。私を介して調べてることに気付いてたんだろうな。」
なにそれ怖い。
「ザラさんが天使ってことは知らなかったんですか?」
「ああ。翼を隠していたんだ。もっとも、その時は翼があっても天使とも思わず、天使と知ったのはその後のことだがね。」
耳が長い人も居れば、髪の毛無い人も居るし、他にも体が大きかったり小さかったり色んな人を見たことあるし、翼くらい普通ってことか。
「それで、その人はどうなっちゃったんですか?」
「天国と地獄、とぶつぶつ呟きながら、げっそりして帰って来た。何があったのか聞くと、がたがた震え出し一言、逃げろと言ったんだ。」
本当に怖い。
「逃げたんですか?」
「いや、とりあえず裸のザラ様はちらとでも良いから自分の目で見てみたいし、こちらも溜まりに溜まってるから、ひょっとしたら良いこともあるかもと、皆でちょっと楽しみにしてたんだ。」
まぁ、溜まるわいな。そしたらちょっと楽しみになるわいな。
「次の日から女達は積極的に私達を捕まえに来た。そして、勇気と性欲のある1人が自ら捕まった。我々は何が起こるのか見ていたが、女達も見せ付けるように、その男を処刑、後に我々はそれを処刑と呼んだんだが、その処刑をしたんだ。」
処刑。
その言葉の響きだけでも恐ろしいが、えっちな期待も出来るな。
「何をされたんですか?」
「木に縛り付けられて目隠しをされて、首の匂いを嗅がれたり、身体を擦り付けられたり、耳元で囁かれたり、顔中にキスをされたり、顎を撫でられたり…。」
天国かな?
「…を、何時間も。」
地獄かな?
「溜まりに溜まってるところで女達にそんなことをされているのに縛られてるから触れない。目隠しをされてるから、妄想と股間はどんどん膨らむ。だが、焦らされるだけ焦らされて捨てられるんだ。」
なんて凶悪なんだ。
「それから我々は必死で逃げた。だが逃げても必ず誰かしら捕まって処刑された。覗いたくらいで、あとは何の悪い事もしてない筈なのに、だ。」
本当にそうだ。理不尽。
「ザラ様には会えないから、どういうつもりなのかも分からない。しかも、昼も夜も関係無く、寝てても襲われるから気が気でない。疲れたやつは簡単に捕まる。まさに悪夢だったよ。」
きつ過ぎるな。これこそが悪夢なのか。
「チウンさんも捕まったんですか?」
「ああ。全裸なら大丈夫かも知れないという噂が出たから実践してみたが、普通に処刑された。」
むしろ恥ずかしいだけじゃん。
「しかし、その悪夢の様な日々は男が皆処刑された次の日に突然終わったんだ。」
「終わった?」
「ああ。真っ白になった我々の元にザラ様が来て、皆で集まりましょうと言ってきた。また処刑されるんじゃないかとびくびくしていたのだが、心配いらないから来なさいと言う。そこで我々が大人しくザラ様の後について行くと、女達が御馳走を用意して待っていてくれたんだ。」
「どういうことなんでしょうか?」
「焦らしてごめんね!いっぱい食べてね!デザートはワ・タ・シ!大会だ。」
「……。」
「……。」
大会ってことは…。
「当然皆、その場でデザートから食べた。」
もう滅茶苦茶。
「結局タキの母ちゃんは何がしたかったんですかね?」
「ザラ様は何も言わずに優しい笑顔で我々を見ていただけだったから正確には分からんが、結果を見れば我々男女はお互いの大切さを知り、結束が固くなった。」
狙ってやってたとは思えないけど。
「そして、ここから再びトッコウが始まったんだ。」
「また?なんでですか?」
「ザラ様が大会の締めで、また最初からやりましょう、と言ったんだ。これは、私の勘違いかも知れないが、私の為にそうしてくれたのかも知れない。」
チウンさんの為?
「私のやり方は少し強過ぎただろう?だが、皆が他の人のデザートの食べ方を見た以上、それまでと同じという訳にはいかなくなった。恥ずかしい事が無ければ別に怖くも何とも無いからね。私の能力の弱点だ。」
確かに全部開き直っちゃえばどうということは無い。
そんなやつがいるのかは別として。
「今度は私も班に誘われて班を組めたから、その中の格闘技に長けた人に教わったりして体を鍛えたんだ。」
「ザラさんはどうしたんですか?」
「何人かの若い女だけの班に入ったよ。」
チウンさんの為じゃなくて、気兼ねなく楽しむ為じゃないのかと思えてきた。
「そのトッコウはどうなったんです?」
メラマさんが聞く。
「純粋な戦闘勝負になったからザラ様を配下に入れたいという多くの班がザラ様の居る班に勝負を挑んだ。」
まぁそうなるわな。
「それはそうなりますよね。」
「その時はまだ誰もザラ様が天使とは知らなかったし、キスや耳さえ気を付ければ勝てると思ってたからな。ザラ様のところに挑戦する為の勝負もあったくらいだ。」
「その時に天使ってばれたんですか?」
「ああ。ザラ様の班は勝負から逃げ回っていたんだが、挑戦する班が次第に大きくなっていったから逃げられなくなったんだ。その時のことを話そうか。」
ーー「へへっ、ザラ様?俺と勝負して下さい。もし俺が勝ったら俺達の班に入って…俺の膝の上に座って下せぇ。」
男は有名な剣士だった。
「んなっ!?ザラ様にそんなことをさせるなんて!?」
「えっち!すけべ!変態!」
「わかったわ。」
「ザラ様!?」
「駄目です汚れちゃう!」
「怪我だって…。」
「でも、これは勝負。挑まれたら断れないわ。」
「……むふ。」
「まぁいやらしい!」
「えっち!すけべ!変態!」
「ザラ様?あの人は剣の使い手よ?でもザラ様は素手だし、わ、私が…。」
「お前が俺とやるってのか?俺は良いぜ?お前を膝に乗せてからザラ様に挑むだけよ。」
「大丈夫、私がやるわ。剣ならあるし。」
「へぇ?それじゃ早速…。」
「ただ、ここには無いの。ちょっと借りてくるから、待っててくれる?」
「借りる?誰にです?」
「お父様に。」
「ぷふっ、ザラ様?パパの剣で戦おうってんですかい?俺はまぁ別に良いですけど、重くて持てないとか勘弁して下さいよ?」
「大丈夫よ。ちょっと待っててね。」
そう言ってザラは天使の王のところへ行った。
「おや?どんな美女が現れたかと思ったらザラではないか。しばらく見ない間に一層美しく可愛くなって、お前はどこまで魅力的になれば気が済むというのだ?おかえり。」
「ただいま。ではお父様?剣をお借りしますね?」
「無鉄砲でお転婆というのは言い換えれば勇敢、まさにザラのことだと思う。しかし、剣は危ないから、もしザラに傷など付いたら三千世界の大損失だよ?」
「でもお父様?私は勝負を挑まれたのです。愛する人々を守る為、人々を愛する為に戦わなければならないのです。」
「戦の神と美の神が同時に嫉妬する程に美しく勇敢な戦士が生まれた瞬間に立ち会えたこと、それは最上の幸せであると同時に、愛する娘が自らの足で立ち上がった瞬間の喜びに潜む一抹の寂しさに似た感情がある。では、予備があるから、それを持って行きなさい。」
「ではお父様?予備を置いて行きますわ?」
「ザラよ。流石にこの世で、あの世も含めて1番可愛いザラとは言え、本物は私の側に無ければ、母さんに怒られてしまう。」
「でもお父様?その為の予備ですわ?」
「まさにお前の言う通りだ。持って行きなさい。ただ、本当に気を付けるんだよ?」
「はいお父様。では行って参ります。」
「ああ。万が一怪我をしそうになったら剣を捨てて逃げなさい。」
「大丈夫ですわ。お母様によろしく。」
ザラは剣を持って戻った。
「ごめんなさい、待たせたわね。」
「いえいえ、膝を洗ってましたから。剣の用意は良いですかね?」
「ええ。それじゃ…。」
「ざ、ザラ様?やはり私が行って少しでも疲れさせた方が…。」
「大丈夫よ。あなた達は離れて見てて?」
そう言ってザラが剣を抜くと目映い光に包まれ、ザラのトッコウ服の背中を突き破って純白の翼が現れた。そして、そのあまりの神々しさに男だけでなく、周りの全ての者が驚いた。
そして、剣士の男は恐る恐る口を開いた。
「…あのぅ…。」
「なに?」
「その剣、何か…変じゃないですか?」
「え?ちゃんと本物よ?」
「何か光って…。」
「本物だから。」
「…ちなみにどなたにお借りしたので?」
「お父様よ?」
「…お父様のお仕事は?」
「天使の王なの。」
それを聞いた者達は騒ついた。
「えぇっ!?それじゃざ、ザラ様はて、天使なんですか?」
「ええ。」
「す、すみませんでした!そんなこととはつゆしらず…。」
「決まりで平等になったから大丈夫よ?」
「でも…。」
「勝負、しないの?」
「しょ、しょうぶ?」
「ほら、あなたが勝ったら私があなたの膝の上に座る話よ?」
「いやいや!いやいやいやそんな恐れ多いこと…。」
「いやなの?」
ザラは上目遣いで剣士の男を見る。
「うぐっ、可愛い…よ、よし!それじゃ俺が勝ったら…駄目だ!やっぱり剣を抜けません!」
「でも折角借りてきたのに…。」
「すみません、俺の負けです。」
「駄目よ、勝負してないもの。でも、私と勝負出来ないというなら、私達は行くわね?」
「あの…俺達も…。」
「勝負して私が勝ったら、の筈よ?あなたとは勝負してないから…。」
「勝負!勝負しますから!」
「順番があるから、また今度勝負しに来て頂戴。ね?」
「はい!必ずや!」
ザラが班に戻ると、仲間の女達は震えていた。
「あなた達どうしたの?」
「あ、あの、わた、私、私達、ザラ様が天使様とは知らなくて…。」
「言ってなかったものね。別に隠してたつもりじゃなかったのよ?ごめんなさいね?」
「い、いえいえ!ザラ様が謝ることなんて!私達の方こそどうか、今までの非礼無礼をお許し下さい!」
「…平等の決まりよ?」
「え?」
「別に天使だから偉いって訳じゃないのよ?ちょっと親が天使なだけ。それに、私達は平等の決まりがあるの。だから畏まったり、怖がられたりしたら私は…。」
「したら?」
「泣いちゃうかも。」
「え?」
「私は泣いちゃうわ。それでもあなた達はそうやって私を仲間外れにするの?」
「仲間外れだなんてそんな!」
「じゃあ、前みたいに普通にして頂戴。ね?」
「…良いんですか?」
「勿論よ。ね?だから、後でまた皆でお風呂入りましょ?」
「…本当に良いんですか?」
「ええ。剣を返しに行くけど、その後で。ね?」
「は、はい!」
「うふふ、今夜もたっぷり可愛がってあげる。」
「あの…天使の話よりも、女の子達とどっぷりなのが気になるんですけど。」
「そういうお年頃、とでも思っておこう。」
おとしごろ。
「それで、ザラさんは天使ってことでまた勝ち進んだんですか?」
「いや、その頃くらいから人間やエルフやドワーフ達が来る様になってたんだ。冒険者だね。段々その対応に追われるようになってうやむやになってしまったんだ。」
冒険者か。
「そして、その時から我々は魔族と呼ばれるようになったんだ。」
魔族か。
それは人間達の勝手から生まれた呼び方だ。
「それは嫌じゃなかったんですか?」
「ワルより格好良いわね、と言った人が居てな。」
もう、誰って聞かなくてもわかるわ。
「他に良い呼び名も無いし、ザラ様は気に入ってるしで、我々は魔族になったんだ。」
女の子とえっちなことするの大好きな天使で魔族。
女の子同士でどんなことをしていたのか、正直物凄く気になる。
今度会った時にでも教えてくれないかなぁ?
…教えてくれないよなぁ。
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