血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら

文字の大きさ
50 / 51

俺たちの幸せ

しおりを挟む
「きょおくん、このうどん味がしない」

陽向を連れて家に帰ってから数日。
怪我は大したことなかったものの陽向は翌日から熱を出し学校を休むことになった。
料理なんてしたことがなかったが、食欲がないという陽向のために俺は冷蔵庫にあったうどんを茹でてみた。

「え、まじで?」
「何入れたの?」
「冷蔵庫に入ってた出汁の粉みたいなやつと醤油」
「砂糖とか・・・・」
「うどんて砂糖入れるの?甘くなっちゃうじゃん」
「・・・・も、いいや、俺がやる」

陽向はとことことキッチンへ向かうと、冷蔵庫から調味料を取り出し鍋に残っていたうどんに入れ始めた。

「・・・・こんなもんかな。きょおくんて頭いいくせに料理とか全然だめだよね」
「う・・・・陽向は、何でもできるんだな」
「・・・・ずっとお父さんと2人だったからね。お父さんも仕事以外何もできなくて・・・・。よくまずいカレーとか焼きそばとか食べさせられたな。あんまりまずいから自分で作ろうと思ったの」

そう言って陽向はふふ、と笑った。
その笑い方はいつもと同じようで少し違って見えた。
あれ以来、陽向は無口だ。
体調が悪いせいもあるだろうが、どこか俺との会話を避けているような気がしていた。

「・・・・なあ、陽向・・・・話したくないかもしれないけど、お前の‥‥お父さんのこと」

本当のことを知ってしまった以上、陽向と今までのような関係は続けられない。
それはいつか陽向が自分の父親がどうして死んだかを知った時、そして自分と父親の関係が間違っていたと知った時、間違いなく自分を責めるだろうと思ったから。
それでも、俺は陽向が好きだけれど。
その俺との関係まで間違いだったと自分を責めないように。
違う形で俺の愛情を伝えておきたかった。

「・・・・・思い出したよ、俺」

陽向が静かに言った。

「え?」
「あの日・・・・お父さんはドライブに行こうって言ったんだ。夜、2人で車に乗って・・・・海を見に行こうって。海に向かって走ってる時、お父さんはお母さんの話をしてくれた。きれいで明るくて、自由が好きで・・・・。お母さんが出て行ったのは、自由でいたいからだって。だから・・・お母さんを自由にしてあげようって言ったんだ。恨んじゃダメだって。でもお父さんはお母さんがいないと生きていけないから・・・・だから、陽向はずっとお父さんと一緒にいてくれって」

陽向は淡々と語った。
まるで他人事のように・・・・


「俺、いいよって言ったよ。お父さんが大好きだから、ずっと一緒にいるよって。お父さん、ありがとうって。お前を愛してるって。それから―――ごめんって」
「ごめん・・・・?」
「今までごめんって。お父さんのしたことは間違ってたって。俺はお母さんじゃないのに・・・・お母さんはもうお父さんのそばにいないのに、それを認めたくなかったって。本当にごめんって言ってた」
「それで・・・・」

陽向はおかしそうに、でも悲しそうに笑った。

「なんで謝ってるのかわからなかった。お父さんは何も悪くない。ずっと俺のそばにいて、俺を幸せにしてくれてたんだから。なんで謝るんだろうって思ったよ。そう思った瞬間―――車が海に突っ込んだんだ」
「・・・・陽向・・・・」
「次に気づいたときは病院にいて・・・・きょおくんのお父さんが俺を見てた。何も覚えてない俺に、俺のお父さんは車の事故で亡くなったって。それで・・・・良ければ自分の子供にならないかって。自分にも息子がいるけど、母親が亡くなって寂しい思いをしてるからその息子の弟になってほしいって言われたんだ」
「父さんが、そんなこと・・・・」
「俺、訳が分からなくて。お父さんが死んじゃったこともまだ信じられなくてどうしたらいいかわからなかったんだけど、児童保護局の人が来てきょおくんのお父さんの子供にならなければ施設に行くことになるって言われて、それは嫌だなって思って・・・・それで、ここに来ることにしたの」

そこまで話すと、陽向は俺を見てにっこりと笑った。

「来て、良かった。俺、きょおくんの弟になれて・・・・幸せだよ」
「陽向・・・・俺も・・・俺も、陽向が弟になってくれて幸せだよ。だから―――」
「俺が・・・・俺とお父さんがしてたことは・・・・間違ってたってわかってる。でも・・・・認めたくなかったんだ。お父さんは俺を愛してくれた。誰が何と言おうと、俺とお父さんは・・・・・愛し合ってたんだ」
「・・・・・そうだな」

形はどうあれ、陽向の父親が陽向を愛していたのは間違いなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

処理中です...