4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら

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イケメンVS四男

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チャイムが鳴り休憩時間になると、俺は早速隣の梨夢くんのクラスへ行った。

俺が急いでいるのにはわけがある。

中学生になって俺と梨夢くんは別々のクラスになってしまった。

それだけだって不満なのに。

梨夢くんに近付く影に、俺のレーダーが反応していた。



「梨夢~、どの部活に入るか、まだ決めてないの~?」

ちょうど俺が教室の入り口から顔を出したとき、ちょうどそいつが梨夢くんに話しかけたところだった。

「うん・・・・・あ、周」

梨夢くんが、俺に気付いて手を振った。

俺はちょっと笑って見せ、ゆっくり中に入って梨夢くんに近付いて行った。

ちらりと、梨夢の傍に立っていたそいつを睨む。


渋木和也


今、クラスで一番仲がいいと梨夢くんが言っているやつだ。

背が高く、きりっとした顔は女にもてそうだった。

野球部に入ろうと思っていたらしく、梨夢くんも誘われたと言っていた。

「ねえ梨夢、野球部に入ろうよ」

渋木は入ってきた俺にはちらりと視線を向けただけで、梨夢くんとの会話を続ける。

―――ヤロー、無視しやがったな

「え~。野球は無理だよ。坊主とか日焼けとか、絶対NGだし」

「なんだよ、それ~。女みたいなこと言ってんなって。だって梨夢、小学校の頃はやってたんだろ?」

「やってたけど、別にそんなうまくもなかったし。ね、周」

梨夢くんが俺を見る。

「うまかったよ、梨夢くんは。でもキャッチャーだったからね、兄貴たちは写真が撮れないって文句言ってたけど」

「写真?へえ~、梨夢って可愛がられてるんだな」

クスクスと、からかうように笑う渋木。

思わずカチンときて、文句言ってやろうかと思ったけど―――

「兄弟なんだから、いいじゃん。とにかく、野球部には入らないよ」

ピシリと、梨夢くんが言いきった。

その言葉に渋木はちょっと目を瞠り―――

不満そうに眉を顰めると、『ふ~ん』と言いながら席を離れて行った。


渋木が離れたことにホッとしてると、梨夢くんがじっと俺を見た。

「周、気にしないで」

「え?」

「あいつ―――和也、口は悪いけど、いいやつなんだよ。一緒にいると面白いし。さっきのも、悪気があって言ったんじゃないから」

渋木を庇う梨夢くんに、ちょっと不満はあったけれど・・・・・

「大丈夫。気にしてないから」

と言って、俺は笑った。

梨夢くんはすぐに人に気ぃ使うから。

俺が渋木を嫌いと言ったら、きっと気にするだろうと思った。

だけど、別に渋木がどんなやつかなんて関係ないんだ。

梨夢くんに近付くやつは、結局どんなやつだって好きになんかなれないからね。

「―――で、結局何部に入るの?」

「うん・・・・すげえ悩んだんだけど、やっぱりバスケ部にしようかなって」

「バスケ部?なんで?」

ちょっと意外な気がした。

梨夢くんは外に出るのが好きだったし、もともとサッカーに興味を持ってたから、サッカー部に入るものだと思ってた。

バスケだって嫌いじゃなかったけど、廉くんと良くサッカーの話とかしてたし。

「昨日ね、護とちょっと話してたんだけど」

「うん」

「慎くんは、バスケ部に入ってからすごく背が伸びたって」

―――ああ、なるほど。

「俺、ちっちゃいじゃん。女の子よりもちっちゃくて、からかわれたりするし・・・・・まあそれはいいんだけどさ。そんなに気にしてないし。でも、やっぱりもっと大きくなりたいなあと思って」

気にしてない、というのは嘘だと思うけどね。

3ヶ月俺の方が上だけど、同い年の俺よりも背が低いこと、梨夢くんは結構気にしてるんだ。

兄弟5人でいるときは俺の隣に立ちたがらなかったりするし。

「そっか。じゃ、俺もバスケにする」

「いいの?周は別に、周のやりたい部活に入ってもいいよ?」

「いいの。俺、特にこれと言ってやりたいと思うものもないし、バスケも好きだから」

「ふーん?ならいいけど」

そう言って、梨夢くんはちょっとほっとしたように笑った。


そんな梨夢くんを、ちょっと離れたところからじっと見ている渋木を、俺はちらりと見た。

―――あいつは、野球部って言ってたよな。

俺が気に入らないってのもあるけど、とにかく梨夢くんのことに関してはうるさい兄貴がいるからね。

俺が目を光らせてなきゃいけない。

あいつは絶対要注意だ。

イケメンでいいやつとか、一番嫌なタイプじゃん。

特に廉くんは梨夢くんのことに関しちゃめちゃめちゃ心配症だから、廉くんには気付かれないように気をつけないとな・・・・・
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