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第1話
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夏美が死んだ。
突然の交通事故が、俺の恋人の命を奪っていった。
3ヶ月後には、結婚式を上げることになっていたのに・・・・・。
彼女の通夜の席で、俺は親類の席に座っていた。
彼女の両親はすでに10年前に亡くなっていて、彼女の親せきが喪主を務めていた。
「ねえ、咲也くんはまだ来ないの?」
夏美の叔母にあたる女性が、喪主を務めていた夫に小声で話しかけた。
「今日の午前中の便で空港には着いているはずだから、もうきてもいい頃なんだが―――」
咲也━━━確か、夏美の弟、だよな。
去年の夏からスペインに留学してるって聞いてる。
会ったことはないけれど・・・・・
その時。
ざわざわとしていた玄関の方が、一瞬静かになった。
誰かが、入ってくるしっかりとした足音。
そして、1人の男が部屋に入ってきた。
あたりを払うような、強烈なオーラを放つ若い男。
透けるような白い肌に、大きな瞳、長い睫毛、整った眉―――。
整い過ぎた顔は、まるでヨーロッパの彫刻のようだと思った。
赤い唇は軽く結ばれ、目の前の夏美の遺影をじっと見つめていた。
「なっちゃん・・・・・・」
「咲也くん」
夏美の叔母が立ち上がり咲也の側へ行こうとしたが、咲也はその横をスッと通り過ぎ、夏美の眠る棺の前に立った。
「―――なっちゃん・・・・っ、なんで・・・・・」
その時、咲也の大きな瞳から、涙が一粒零れ落ちた。
その横顔があまりにも綺麗で―――
俺は、こんなときなのに咲也に見とれてしまっていた・・・・・
俺は通夜の席を抜けると、そっと家を出て辺りを見回した。
親類席に座るよう促された咲也は、何も言わずただ首を横に振って出て行ってしまった。
俺は、まだ咲也にあいさつもしていなかった。
それに、俺は彼に渡したい物があったのだ。
「―――いねえな・・・・・」
そう呟き、頭をかいていると―――
「誰探してんの?」
よく通る低く艶のある声に、俺は弾かれたように振り向いた。
「あ―――」
そこに立っていたのは咲也だった・・・・・。
「あんた・・・・真田さん?」
「え?なんで・・・・・」
「なっちゃん・・・・姉から、聞いてる。結婚したい人がいるって。俺に、会って欲しいって、先週メールもらって・・・・・」
そこまで言うと、咲也は目をそらし、きゅっと唇を結んだ。
そして、咲也は突然くるりと背を向けた。
「あの―――」
俺が話しかけようとすると、咲也はすたすたと歩き出してしまった。
「え、あの―――」
慌てて追いかけるけれど、咲也が足を止める気配はなくて。
仕方なくそのままついて行くと、人気のない公園に着いた。
もう夜の8時を過ぎていて、辺りは真っ暗だった。
その公園のベンチの傍まで行くと、咲也はぴたりと足を止めた。
「―――帰ってきたら、まず文句言ってやろうと思ってたんだ」
「え・・・・・」
「俺が留学してる間に、勝手に恋人作って、勝手に結婚決めて―――そんなもん、認めねえって、言ってやるつもりだったんだ」
「・・・・・・」
「10年前に親が事故で死んで、姉弟2人で暮らしてきた。なっちゃんは、ずっと俺のために働いて・・・・・留学までさせてくれて・・・・・帰ってきたら、恩返ししようって・・・・・なっちゃんにいろんなことしてやろうって思ってたんだ。なのに―――」
咲也が、拳をぎゅっと握りしめた。
その後ろ姿も声も、微かに震えていた。
俺は、どう声をかけたらいいのかわからなかった。
2人きりで苦労しながら暮らしてきたことは夏美からも聞いている。
夏美は、自分が苦労したとは絶対に言わなかったけれど、両親を早くに亡くしたせいで弟には苦労させてしまったと言っていた。
「なんで、こんな急に・・・・!!」
絞り出すような声で吐き出し、咲也がその場にしゃがみこむ。
俺は咄嗟に咲也に駆け寄った。
「咲也くん!俺―――」
震える肩に手をかけようとしたその瞬間、咲也は俺の腕を振り払った。
「触るな!お前なんかに俺の―――!!」
そこまで言って、突然言葉が途切れた。
体がびくりと震え、地面に両手をつく咲也。
「え・・・・咲也くん?どうした?」
具合でも悪くなったのか?
俺はもう一度咲也の肩に触れようとして―――
『柊真・・・』
「え・・・・・?」
その声は、確かに咲也が発しているのに、まるで女性のような声で・・・・・・
それは、俺の良く知っている声によく似ていて・・・・・・
『柊真・・・・ごめんね・・・・・』
咲也が振り向く。
その瞳からは涙が零れていた。
だけど、その声は咲也の声ではなくて・・・・・
「・・・・・夏美・・・・・?」
咲也・・・・夏美が、ふわりと笑う。
その笑顔は、俺の大好きだった夏美の笑顔で・・・・・
『柊真・・・・!』
咲也が、俺に抱きついた・・・・・。
突然の交通事故が、俺の恋人の命を奪っていった。
3ヶ月後には、結婚式を上げることになっていたのに・・・・・。
彼女の通夜の席で、俺は親類の席に座っていた。
彼女の両親はすでに10年前に亡くなっていて、彼女の親せきが喪主を務めていた。
「ねえ、咲也くんはまだ来ないの?」
夏美の叔母にあたる女性が、喪主を務めていた夫に小声で話しかけた。
「今日の午前中の便で空港には着いているはずだから、もうきてもいい頃なんだが―――」
咲也━━━確か、夏美の弟、だよな。
去年の夏からスペインに留学してるって聞いてる。
会ったことはないけれど・・・・・
その時。
ざわざわとしていた玄関の方が、一瞬静かになった。
誰かが、入ってくるしっかりとした足音。
そして、1人の男が部屋に入ってきた。
あたりを払うような、強烈なオーラを放つ若い男。
透けるような白い肌に、大きな瞳、長い睫毛、整った眉―――。
整い過ぎた顔は、まるでヨーロッパの彫刻のようだと思った。
赤い唇は軽く結ばれ、目の前の夏美の遺影をじっと見つめていた。
「なっちゃん・・・・・・」
「咲也くん」
夏美の叔母が立ち上がり咲也の側へ行こうとしたが、咲也はその横をスッと通り過ぎ、夏美の眠る棺の前に立った。
「―――なっちゃん・・・・っ、なんで・・・・・」
その時、咲也の大きな瞳から、涙が一粒零れ落ちた。
その横顔があまりにも綺麗で―――
俺は、こんなときなのに咲也に見とれてしまっていた・・・・・
俺は通夜の席を抜けると、そっと家を出て辺りを見回した。
親類席に座るよう促された咲也は、何も言わずただ首を横に振って出て行ってしまった。
俺は、まだ咲也にあいさつもしていなかった。
それに、俺は彼に渡したい物があったのだ。
「―――いねえな・・・・・」
そう呟き、頭をかいていると―――
「誰探してんの?」
よく通る低く艶のある声に、俺は弾かれたように振り向いた。
「あ―――」
そこに立っていたのは咲也だった・・・・・。
「あんた・・・・真田さん?」
「え?なんで・・・・・」
「なっちゃん・・・・姉から、聞いてる。結婚したい人がいるって。俺に、会って欲しいって、先週メールもらって・・・・・」
そこまで言うと、咲也は目をそらし、きゅっと唇を結んだ。
そして、咲也は突然くるりと背を向けた。
「あの―――」
俺が話しかけようとすると、咲也はすたすたと歩き出してしまった。
「え、あの―――」
慌てて追いかけるけれど、咲也が足を止める気配はなくて。
仕方なくそのままついて行くと、人気のない公園に着いた。
もう夜の8時を過ぎていて、辺りは真っ暗だった。
その公園のベンチの傍まで行くと、咲也はぴたりと足を止めた。
「―――帰ってきたら、まず文句言ってやろうと思ってたんだ」
「え・・・・・」
「俺が留学してる間に、勝手に恋人作って、勝手に結婚決めて―――そんなもん、認めねえって、言ってやるつもりだったんだ」
「・・・・・・」
「10年前に親が事故で死んで、姉弟2人で暮らしてきた。なっちゃんは、ずっと俺のために働いて・・・・・留学までさせてくれて・・・・・帰ってきたら、恩返ししようって・・・・・なっちゃんにいろんなことしてやろうって思ってたんだ。なのに―――」
咲也が、拳をぎゅっと握りしめた。
その後ろ姿も声も、微かに震えていた。
俺は、どう声をかけたらいいのかわからなかった。
2人きりで苦労しながら暮らしてきたことは夏美からも聞いている。
夏美は、自分が苦労したとは絶対に言わなかったけれど、両親を早くに亡くしたせいで弟には苦労させてしまったと言っていた。
「なんで、こんな急に・・・・!!」
絞り出すような声で吐き出し、咲也がその場にしゃがみこむ。
俺は咄嗟に咲也に駆け寄った。
「咲也くん!俺―――」
震える肩に手をかけようとしたその瞬間、咲也は俺の腕を振り払った。
「触るな!お前なんかに俺の―――!!」
そこまで言って、突然言葉が途切れた。
体がびくりと震え、地面に両手をつく咲也。
「え・・・・咲也くん?どうした?」
具合でも悪くなったのか?
俺はもう一度咲也の肩に触れようとして―――
『柊真・・・』
「え・・・・・?」
その声は、確かに咲也が発しているのに、まるで女性のような声で・・・・・・
それは、俺の良く知っている声によく似ていて・・・・・・
『柊真・・・・ごめんね・・・・・』
咲也が振り向く。
その瞳からは涙が零れていた。
だけど、その声は咲也の声ではなくて・・・・・
「・・・・・夏美・・・・・?」
咲也・・・・夏美が、ふわりと笑う。
その笑顔は、俺の大好きだった夏美の笑顔で・・・・・
『柊真・・・・!』
咲也が、俺に抱きついた・・・・・。
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